公務員の不動産投資は副業禁止に該当するのか?
「公務員は副業禁止なのに不動産投資はできるのか」「どの規模までなら許可されるのか」と不安を感じていませんか。
この記事では、公務員の不動産投資の可否、人事院規則14-8の許可基準、承認申請の手続き、違反時の懲戒処分を、人事院や総務省の公式情報をもとに解説します(2025年時点の情報)。
公務員が不動産投資を始める前に確認すべきポイントが分かります。
この記事のポイント
- 公務員の不動産投資は一定規模以下なら「資産運用」と判断され承認不要
- 5棟10室未満・年間家賃収入500万円未満・管理委託必須の3条件をすべて満たす必要がある
- 基準を超える場合は事前承認申請が必須(無断で行うと懲戒処分)
- 地方公務員は自治体ごとに基準が異なるため、所属の人事担当に確認が必要
- 公務員は信用力が高く融資を受けやすい反面、悪質な営業を受けるリスクがある
公務員の不動産投資は副業禁止に該当するのか?
公務員は原則として副業が禁止されています。しかし、不動産投資は一定規模以下であれば「資産運用」と判断され、承認不要で可能です。
公務員の副業制限の法的根拠
公務員の副業規制は以下の法律に基づいています。
国家公務員:
- 国家公務員法第103条: 営利企業の役員等を兼ねることの制限
- 国家公務員法第104条: 自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業に従事することの制限
地方公務員:
- 地方公務員法第38条: 任命権者の許可なく営利企業への従事等を行うことの制限
これらの法律により、公務員は原則として副業が禁止されています。
不動産投資が「資産運用」と判断される理由
ただし、不動産投資は一定規模以下であれば「事業」ではなく「資産運用」と判断され、承認不要で可能です。
その基準が、人事院規則14-8で定められています。
公務員の不動産投資が承認不要となる基準
人事院規則14-8によれば、国家公務員が承認不要で不動産投資できる基準は以下の5つです。
人事院規則14-8の5つの基準
以下のすべての条件を満たす場合のみ、承認不要で不動産投資が可能です。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| ① 独立家屋 | 5棟未満 |
| ② 区分所有建物 | 10室未満 |
| ③ 土地 | 10件未満(駐車場を含む) |
| ④ 賃貸料収入 | 年額500万円未満(駐車場収入を含む) |
| ⑤ 管理業務 | 事業者に委託(自己管理禁止) |
(出典: 人事院規則14-8)
5棟10室未満、年間家賃収入500万円未満の詳細
5棟10室の判定方法:
人事院規則14-8の運用基準によると、以下のようにカウントします。
- 戸建て1棟 = 2室としてカウント
- 区分所有建物(マンション・アパート)1室 = 1室としてカウント
例:
- 戸建て2棟 + マンション6室 = 2棟×2 + 6室 = 10室 → 基準超過(承認申請が必要)
- 戸建て2棟 + マンション5室 = 2棟×2 + 5室 = 9室 → 基準内(承認不要)
年間家賃収入500万円未満:
- 不動産賃貸収入(駐車場収入を含む)が年間500万円未満であること
- 管理費・修繕費等の経費を差し引く前の「総収入」で判定
管理委託必須:
- 物件の清掃・入居者募集・契約管理等の管理業務を、管理会社に委託すること
- 自己管理(自分で入居者募集・契約対応等を行う)は禁止
地方公務員は自治体ごとに基準が異なる
国家公務員は人事院規則14-8に基づきますが、地方公務員は各自治体の職員服務規程に基づくため、基準が異なる可能性があります。
重要: 地方公務員の方は、他の自治体の事例を参考にするのではなく、必ず所属自治体のルールを確認し、所属の人事担当に相談してください。
基準を超える場合の承認申請の手続き
5棟10室以上、または年間家賃収入500万円以上の規模で不動産投資を行う場合は、事前承認申請が必須です。
承認申請が必要なケース
以下のいずれかに該当する場合、承認申請が必要です。
- 戸建て5棟以上、または区分所有建物10室以上を所有
- 年間家賃収入が500万円以上
- 管理業務を自己管理する
申請の流れと必要書類
承認申請の一般的な流れ:
- 所属の人事担当に相談
- 「営利企業への従事承認申請書」を提出
- 以下の情報を報告:
- 投資物件の詳細(所在地、規模、購入価格等)
- 賃貸収入の見込み
- 管理委託契約の内容
- 所属長・任命権者の承認を得る
承認が得られない場合もある
承認の可否は個別判断です。公務の公正性・信頼性を損なう恐れがあれば、承認されない可能性もあります。
例:
- 職務と利害関係がある地域での不動産投資
- 規模が大きすぎて本業に支障をきたす恐れがある
重要: 承認を得ずに行った場合は、懲戒処分の対象となります。
違反時の懲戒処分と実際の事例
基準を超える不動産投資を無断で行うと、国家公務員法・地方公務員法違反で懲戒処分の対象となります。
無断で不動産投資を行った場合の処分
懲戒処分の種類:
- 戒告: 注意・警告(最も軽い処分)
- 減給: 給与の一部を減額
- 停職: 一定期間の職務停止
- 免職: 公務員としての身分を失う(最も重い処分)
実際の懲戒処分事例
過去の懲戒処分事例を紹介します。
2009年 税務署職員(アパート経営):
- 無断でアパート経営を行い、減給処分
- 年間家賃収入が500万円超であったことが発覚
2016年 教員(マンション賃貸):
- 無断でマンション賃貸を行い、戒告処分
- 10室以上のマンションを所有していたことが発覚
2019年 仙台市職員(複数物件):
- 無断で複数物件を所有し、減給処分
- 年間家賃収入が1,000万円超であったことが発覚
(出典: 各自治体の公式発表、報道資料)
発覚する理由(住民税額の変動、確定申告)
無断で不動産投資を行うと、以下の理由で発覚します。
住民税額の変動:
- 不動産所得が増えると、住民税額が増加
- 勤務先が給与から住民税を天引きする際、税額の変動に気づく
確定申告:
- 不動産所得がある場合、確定申告が必要
- 税務署から自治体に所得情報が共有される
「確定申告しなければバレない」という考えは誤りです。無申告は別途脱税として処罰されます。
公務員が不動産投資で注意すべきリスク
公務員は信用力が高く融資を受けやすい反面、悪質な営業を受けるリスクがあります。
「信用力が高い」を理由に悪質な営業を受けるリスク
公務員は安定した収入があり、金融機関から融資を受けやすいです。しかし、この信用力を悪用する悪質な不動産会社が存在します。
国民生活センターや消費者庁の注意喚起によると、以下のような悪質な営業手法が報告されています。
悪質な営業手法:
- 職場への電話(「公務員の方限定の投資プラン」等)
- 組織的な勧誘(同じ職場の複数の職員に接触)
- 高額物件の強引な営業(「公務員なら融資が通る」と押し切る)
高額物件・割高物件を勧められる危険性
公務員は融資が通りやすいため、相場より高額な物件を勧められることがあります。
リスク:
- 購入価格が高すぎると、家賃収入で返済できず赤字経営に
- 売却時に購入価格を大きく下回る(資産価値の減少)
対策:
- 複数の不動産会社に相談する
- 類似物件の相場を調べる
- 収支シミュレーションを慎重に行う
家族名義でも実質的に本人運営なら規制対象
「家族名義で不動産投資すれば大丈夫」という誤解を防ぐため、注意点を明記します。
実質的に本人が運営している場合:
- 購入資金を本人が出している
- 管理業務を本人が行っている
- 家賃収入を本人が受け取っている
これらの場合、形式上は家族名義でも、実質的に本人が運営していると判断され、規制対象となる可能性があります。
重要: 脱法行為と判断され、懲戒処分のリスクがあります。個別具体的な判断は、所属の人事担当に相談してください。
まとめ:公務員が不動産投資を始める前に確認すべきこと
公務員の不動産投資は、5棟10室未満・年間家賃収入500万円未満・管理委託必須の3条件をすべて満たす場合、承認不要で可能です。
基準を超える場合は事前承認申請が必須であり、無断で行うと懲戒処分(戒告・減給)のリスクがあります。
地方公務員は自治体ごとに基準が異なるため、必ず所属の人事担当に確認してください。
公務員は信用力が高く融資を受けやすい反面、悪質な営業を受けるリスクもあります。複数の不動産会社に相談し、慎重に物件を選定しましょう。
不動産投資を始める前に、所属の人事担当に相談し、個別具体的な服務判断を仰ぐことをおすすめします。
