仲介手数料の勘定科目とは
不動産を取引した際、「仲介手数料の勘定科目がわからない」「経費計上できるのか」と困惑する個人事業主や法人の経理担当者は少なくありません。
この記事では、仲介手数料の勘定科目を、取引の種類(売買・賃貸・売却)と目的(事業用・投資用・自宅)別に解説します。
個人事業主や法人で不動産を取引した方が、仲介手数料の正しい会計処理を理解でき、適切に経費計上や減価償却できるようになります。
この記事のポイント
- 仲介手数料の勘定科目は取引の種類(売買・賃貸・売却)と目的(事業用・投資用・自宅)により異なる
- 事業用・投資用不動産の購入時は「取得費」として資産計上し、減価償却で徐々に経費化
- 賃貸時は「支払手数料」または「賃借料」として経費計上(どちらでも税務上の差異なし)
- 売却時は「支払手数料」または「譲渡費用」として経費計上
- 自宅購入の仲介手数料は個人の生活費のため経費計上不可
仲介手数料の勘定科目は、取引の種類と目的により以下のように分類されます。
| 取引の種類 | 目的 | 勘定科目 | 処理方法 | 
|---|---|---|---|
| 購入(売買) | 事業用・投資用 | 建物・土地の取得費 | 資産計上 → 減価償却 | 
| 購入(売買) | 自宅 | - | 経費計上不可 | 
| 賃貸 | 事業用 | 支払手数料 または 賃借料 | 経費計上 | 
| 売却 | 事業用 | 支払手数料 または 譲渡費用 | 経費計上 | 
重要: 取引の種類と目的を正確に判断し、適切な勘定科目を選択することが重要です。
不動産売買時の仲介手数料の勘定科目
不動産を購入した際の仲介手数料は、目的により処理が異なります。
事業用不動産の購入
所得税法・法人税法により、事業用不動産(事務所・店舗・倉庫等)を購入した場合、仲介手数料は「建物」「土地」の 取得費 として資産計上します。
仕訳例: 事業用建物1000万円購入、仲介手数料33万円(税込)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 
|---|---|---|---|
| 建物 | 10,330,000 | 現金 | 10,330,000 | 
重要: 建物と土地の按分は、固定資産税評価額等で計算します。建物部分は減価償却の対象となり、土地部分は減価償却しません。
投資用不動産の購入
投資用不動産(賃貸マンション・アパート等)を購入した場合も、事業用不動産と同様に「建物」「土地」の取得費として資産計上します。
自宅の購入
自宅を購入した場合の仲介手数料は、個人の生活費のため 経費計上不可 です。
不動産賃貸時の仲介手数料の勘定科目
事業用物件を賃貸した際の仲介手数料は、経費として計上できます。
事業用物件の賃貸
事業用物件(事務所・店舗等)を賃貸した場合、仲介手数料は「支払手数料」または「賃借料」として経費計上します。
仕訳例: 事務所賃貸、仲介手数料11万円(税込)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 110,000 | 現金 | 110,000 | 
または
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 
|---|---|---|---|
| 賃借料 | 110,000 | 現金 | 110,000 | 
支払手数料と賃借料の使い分け
「支払手数料」と「賃借料」のどちらを使用しても、税務上の差異はありません。会社の経理ルールに従って選択してください。
繰延資産としての処理
賃貸期間が複数年にわたる場合は、繰延資産として処理し、賃貸期間で按分して経費計上する方法もあります(20万円以上の場合は繰延資産処理が必要となる場合があります。具体的な基準は税理士にご相談ください)。
例: 賃貸期間3年、仲介手数料33万円の場合
- 1年目: 33万円 ÷ 3年 = 11万円を経費計上
- 2年目: 11万円を経費計上
- 3年目: 11万円を経費計上
ただし、賃貸期間が1年以内なら、全額即時経費計上でOKです。
不動産売却時の仲介手数料の勘定科目
不動産を売却した際の仲介手数料は、経費として計上できます。
事業用不動産の売却
事業用不動産を売却した場合、仲介手数料は「支払手数料」または「譲渡費用」として経費計上します。
仕訳例: 不動産売却、仲介手数料66万円(税込)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 660,000 | 現金 | 660,000 | 
個人の譲渡所得での扱い
個人が不動産を売却した場合(確定申告で譲渡所得として申告)、仲介手数料は「譲渡費用」として譲渡所得から控除できます。
計算式:
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
仲介手数料を譲渡費用として計上することで、譲渡所得を減らし、税金を抑える効果があります。
譲渡費用としての計上
譲渡費用には、仲介手数料の他に、以下のものが含まれます。
- 売買契約書の印紙税
- 測量費
- 建物解体費
- 立退料
消費税と仕訳例
消費税の扱い
消費税法により、仲介手数料は 課税仕入れ で、消費税控除が可能です(免税事業者を除く)。
仕訳時は、税込金額で資産計上または経費計上します。
例: 仲介手数料33万円(税込)の内訳
- 本体価格: 30万円
- 消費税: 3万円
消費税を区分する場合の仕訳例:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 300,000 | 現金 | 330,000 | 
| 仮払消費税 | 30,000 | - | - | 
仕訳例:事業用建物の購入
具体例: 建物1000万円購入、仲介手数料33万円(税込)
税込で資産計上する場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 
|---|---|---|---|
| 建物 | 10,330,000 | 現金 | 10,330,000 | 
消費税を区分する場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 
|---|---|---|---|
| 建物 | 10,300,000 | 現金 | 10,330,000 | 
| 仮払消費税 | 30,000 | - | - | 
個人事業主と法人の違い
基本的な考え方は同じですが、法人は厳密な会計処理が求められます。個人事業主は簡易な処理も可能です。
不明点は税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
仲介手数料の勘定科目は、取引の種類(売買・賃貸・売却)と目的(事業用・投資用・自宅)により異なります。
- 購入(売買): 事業用・投資用は取得費として資産計上 → 減価償却、自宅は経費計上不可
- 賃貸: 支払手数料または賃借料として経費計上
- 売却: 支払手数料または譲渡費用として経費計上
消費税は課税仕入れで、消費税控除が可能です。個人事業主と法人では処理が異なる場合があるため、不明点は税理士に相談してください。
