仲介手数料の勘定科目と仕訳|不動産売買・賃貸での会計処理

公開日: 2025/10/27

仲介手数料の勘定科目とは

不動産を取引した際、「仲介手数料の勘定科目がわからない」「経費計上できるのか」と困惑する個人事業主や法人の経理担当者は少なくありません。

この記事では、仲介手数料の勘定科目を、取引の種類(売買・賃貸・売却)と目的(事業用・投資用・自宅)別に解説します。

個人事業主や法人で不動産を取引した方が、仲介手数料の正しい会計処理を理解でき、適切に経費計上や減価償却できるようになります。

この記事のポイント

  • 仲介手数料の勘定科目は取引の種類(売買・賃貸・売却)と目的(事業用・投資用・自宅)により異なる
  • 事業用・投資用不動産の購入時は「取得費」として資産計上し、減価償却で徐々に経費化
  • 賃貸時は「支払手数料」または「賃借料」として経費計上(どちらでも税務上の差異なし)
  • 売却時は「支払手数料」または「譲渡費用」として経費計上
  • 自宅購入の仲介手数料は個人の生活費のため経費計上不可

仲介手数料の勘定科目は、取引の種類と目的により以下のように分類されます。

取引の種類 目的 勘定科目 処理方法
購入(売買) 事業用・投資用 建物・土地の取得費 資産計上 → 減価償却
購入(売買) 自宅 - 経費計上不可
賃貸 事業用 支払手数料 または 賃借料 経費計上
売却 事業用 支払手数料 または 譲渡費用 経費計上

重要: 取引の種類と目的を正確に判断し、適切な勘定科目を選択することが重要です。

不動産売買時の仲介手数料の勘定科目

不動産を購入した際の仲介手数料は、目的により処理が異なります。

事業用不動産の購入

所得税法・法人税法により、事業用不動産(事務所・店舗・倉庫等)を購入した場合、仲介手数料は「建物」「土地」の 取得費 として資産計上します。

仕訳例: 事業用建物1000万円購入、仲介手数料33万円(税込)

借方 金額 貸方 金額
建物 10,330,000 現金 10,330,000

重要: 建物と土地の按分は、固定資産税評価額等で計算します。建物部分は減価償却の対象となり、土地部分は減価償却しません。

投資用不動産の購入

投資用不動産(賃貸マンション・アパート等)を購入した場合も、事業用不動産と同様に「建物」「土地」の取得費として資産計上します。

自宅の購入

自宅を購入した場合の仲介手数料は、個人の生活費のため 経費計上不可 です。

不動産賃貸時の仲介手数料の勘定科目

事業用物件を賃貸した際の仲介手数料は、経費として計上できます。

事業用物件の賃貸

事業用物件(事務所・店舗等)を賃貸した場合、仲介手数料は「支払手数料」または「賃借料」として経費計上します。

仕訳例: 事務所賃貸、仲介手数料11万円(税込)

借方 金額 貸方 金額
支払手数料 110,000 現金 110,000

または

借方 金額 貸方 金額
賃借料 110,000 現金 110,000

支払手数料と賃借料の使い分け

「支払手数料」と「賃借料」のどちらを使用しても、税務上の差異はありません。会社の経理ルールに従って選択してください。

繰延資産としての処理

賃貸期間が複数年にわたる場合は、繰延資産として処理し、賃貸期間で按分して経費計上する方法もあります(20万円以上の場合は繰延資産処理が必要となる場合があります。具体的な基準は税理士にご相談ください)。

: 賃貸期間3年、仲介手数料33万円の場合

  • 1年目: 33万円 ÷ 3年 = 11万円を経費計上
  • 2年目: 11万円を経費計上
  • 3年目: 11万円を経費計上

ただし、賃貸期間が1年以内なら、全額即時経費計上でOKです。

不動産売却時の仲介手数料の勘定科目

不動産を売却した際の仲介手数料は、経費として計上できます。

事業用不動産の売却

事業用不動産を売却した場合、仲介手数料は「支払手数料」または「譲渡費用」として経費計上します。

仕訳例: 不動産売却、仲介手数料66万円(税込)

借方 金額 貸方 金額
支払手数料 660,000 現金 660,000

個人の譲渡所得での扱い

個人が不動産を売却した場合(確定申告で譲渡所得として申告)、仲介手数料は「譲渡費用」として譲渡所得から控除できます。

計算式:

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

仲介手数料を譲渡費用として計上することで、譲渡所得を減らし、税金を抑える効果があります。

譲渡費用としての計上

譲渡費用には、仲介手数料の他に、以下のものが含まれます。

  • 売買契約書の印紙税
  • 測量費
  • 建物解体費
  • 立退料

消費税と仕訳例

消費税の扱い

消費税法により、仲介手数料は 課税仕入れ で、消費税控除が可能です(免税事業者を除く)。

仕訳時は、税込金額で資産計上または経費計上します。

: 仲介手数料33万円(税込)の内訳

  • 本体価格: 30万円
  • 消費税: 3万円

消費税を区分する場合の仕訳例:

借方 金額 貸方 金額
支払手数料 300,000 現金 330,000
仮払消費税 30,000 - -

仕訳例:事業用建物の購入

具体例: 建物1000万円購入、仲介手数料33万円(税込)

税込で資産計上する場合:

借方 金額 貸方 金額
建物 10,330,000 現金 10,330,000

消費税を区分する場合:

借方 金額 貸方 金額
建物 10,300,000 現金 10,330,000
仮払消費税 30,000 - -

個人事業主と法人の違い

基本的な考え方は同じですが、法人は厳密な会計処理が求められます。個人事業主は簡易な処理も可能です。

不明点は税理士に相談することをおすすめします。

まとめ

仲介手数料の勘定科目は、取引の種類(売買・賃貸・売却)と目的(事業用・投資用・自宅)により異なります。

  • 購入(売買): 事業用・投資用は取得費として資産計上 → 減価償却、自宅は経費計上不可
  • 賃貸: 支払手数料または賃借料として経費計上
  • 売却: 支払手数料または譲渡費用として経費計上

消費税は課税仕入れで、消費税控除が可能です。個人事業主と法人では処理が異なる場合があるため、不明点は税理士に相談してください。

よくある質問

Q1仲介手数料は全額経費にできますか?

A1賃貸・売却時は経費計上できます。購入時は取得費として資産計上し、減価償却で徐々に経費化します。自宅購入の仲介手数料は個人の生活費のため経費計上不可です。

Q2個人事業主と法人で勘定科目は違いますか?

A2基本的な考え方は同じですが、法人は厳密な会計処理が求められます。個人事業主は簡易な処理も可能です。不明点は税理士に相談することをおすすめします。

Q3消費税の処理はどうすればいいですか?

A3仲介手数料は課税仕入れで、消費税控除が可能です(免税事業者を除く)。仕訳時に税込金額で資産計上または経費計上します。消費税を区分する場合は「仮払消費税」を使用します。

Q4賃貸の仲介手数料を繰延資産にする必要はありますか?

A4賃貸期間が複数年の場合は繰延資産として処理し、按分して経費計上する方法もあります。ただし、賃貸期間が1年以内なら全額即時経費計上でOKです。会社の経理ルールに従って選択してください。