住宅ローンのつなぎ融資とは
注文住宅や建て替えを検討する際、「着工金や中間金の支払いはどうすればいいのか」と不安を感じる方は少なくありません。住宅ローンは建物完成後にしか実行されないため、建築期間中の資金をどう調達するかが課題となります。
この記事では、つなぎ融資の仕組み、金利・費用、必要なケース、注意点を、住宅金融支援機構・金融庁の情報を元に解説します。
注文住宅や建て替えを検討している方が、つなぎ融資の仕組みを正しく理解し、利用すべきか判断できるようになります。
この記事のポイント
- つなぎ融資は、建物完成前に着工金・中間金を支払うための短期融資
- 金利は2-4%程度で住宅ローン(0.5-1%程度)より高く、利息は住宅ローン実行時に一括返済
- フラット35利用時はつなぎ融資が必須、民間ローンは分割実行型商品もあり
- 注文住宅や建て替えでは必要だが、建売・中古住宅では不要
- 建築中止時もつなぎ融資の返済義務は残るため、施工会社の信用調査を推奨
つなぎ融資が必要なケース
注文住宅の建築
注文住宅を建てる場合、工事の進捗に応じて以下のように代金を支払います。
| 支払時期 | 支払項目 | 割合 | 
|---|---|---|
| 契約時 | 着工金 | 工事費の30%程度 | 
| 上棟時 | 中間金 | 工事費の30%程度 | 
| 引渡し時 | 残金 | 工事費の40%程度 | 
例えば、工事費が3000万円の場合、着工金900万円、中間金900万円、残金1200万円を支払います。
住宅ローンは建物完成・引渡し後にしか実行されないため、着工金・中間金の支払いにつなぎ融資を利用します。
建て替え
建て替えの場合も、注文住宅と同様に着工金・中間金の支払いが必要です。既存建物の解体費用もつなぎ融資でカバーできる場合があります。
つなぎ融資が不要なケース
以下のケースでは、一般的につなぎ融資は不要です。
- 建売住宅: 引渡し時に一括決済のため不要
- 中古住宅: 引渡し時に一括決済のため不要
- 分割実行型住宅ローン: 工事の進捗に応じて住宅ローンを分割実行できる商品(ただし取扱金融機関は少ない)
つなぎ融資の金利と費用
金利水準
つなぎ融資の金利は2-4%程度で、住宅ローン(0.5-1%程度)より高く設定されています(各金融機関の公式サイトによる)。
金利が高い理由:
- 短期融資であり、金融機関の事務コストが相対的に高い
- 無担保融資である(建物が完成していないため抵当権を設定できない)
- リスクが高い(建築中止のリスク等)
利息の支払い方法
つなぎ融資の利息は、住宅ローン実行時に一括返済します。建築期間中は利息の支払いはありませんが、元金に上乗せされて住宅ローンに組み込まれる形となります。
例えば、着工金900万円を6ヶ月間借りた場合(金利3%)、利息は以下の通りです。
利息 = 900万円 × 3% × 6ヶ月 ÷ 12ヶ月 = 約13.5万円
この利息は住宅ローン実行時に元金と一緒に返済されます。
その他の費用
つなぎ融資には金利以外にも以下の費用がかかります。
- 融資手数料: 10-20万円程度
- 印紙代: 数千円~数万円
借入期間は数ヶ月~1年程度と短期ですが、金利負担と諸費用を合わせると数十万円になる場合があります。
つなぎ融資の利用方法と注意点
申込方法と審査
つなぎ融資は、住宅ローンと同じ金融機関で申し込みます。審査は住宅ローンと一体で実施され、住宅ローンが承認されればつなぎ融資も同時に承認されるケースが多いです。
別々の審査ではないため、手続きは比較的スムーズに進みます。
フラット35でのつなぎ融資
フラット35は建物完成後にしか融資実行されないため、注文住宅や建て替えではつなぎ融資が必須です。
フラット35を取り扱う金融機関の多くがつなぎ融資も提供していますが、金利・手数料は金融機関により異なります。複数の金融機関で見積もりを取ることを推奨します。
分割実行型住宅ローンとの違い
分割実行型住宅ローンは、つなぎ融資を利用せず、工事の進捗に応じて住宅ローンを分割実行できる商品です。
メリット:
- つなぎ融資の高い金利負担がない
- 住宅ローン金利(0.5-1%程度)が適用される
デメリット:
- 取扱金融機関が少ない
- 建築期間中から住宅ローンの返済が始まる(賃貸住まいの場合、家賃とローン返済の二重負担)
つなぎ融資と分割実行型住宅ローン、どちらが有利かは個々の状況により異なります。金融機関に相談して判断してください。
つなぎ融資のリスクと対処法
建築中止時のリスク
つなぎ融資の最大のリスクは、建築中止時でも返済義務が残ることです。
施工会社が倒産した場合や、契約トラブルで建築が中止になった場合でも、借入金は返済する必要があります。建物が完成しなければ住宅ローンも実行されないため、つなぎ融資の返済資金を自己資金で用意しなければなりません。
対処法:
- 契約前に施工会社の信用調査を行う
- 施工会社の経営状況、過去の実績を確認
- 完成保証制度を提供している施工会社を選ぶ
金利上昇リスク
つなぎ融資の金利は変動金利が一般的です。建築期間が長引いた場合、金利上昇により利息負担が増える可能性があります。
対処法:
- 建築期間を短く設定できる施工会社を選ぶ
- 工事の進捗を定期的に確認し、遅延を防ぐ
返済計画の確認
つなぎ融資の利息は住宅ローン実行時に一括返済されるため、住宅ローンの借入額が増えます。
例えば、つなぎ融資の利息が50万円の場合、住宅ローンの借入額は当初予定より50万円多くなります。
対処法:
- つなぎ融資の利息を含めた総返済額を事前に試算
- 返済可能か慎重に確認
- 月々の返済額が予算内に収まるか確認
まとめ
つなぎ融資は、注文住宅や建て替えで着工金・中間金の支払いに必要な短期融資です。金利は2-4%で住宅ローンより高く、利息は住宅ローン実行時に一括後払いとなります。
フラット35利用時はつなぎ融資が必須です。民間ローンでは分割実行型商品もありますが、取扱金融機関は少ないです。
建築中止時もつなぎ融資の返済義務は残るため、施工会社の信用調査が重要です。また、利息を含めた総返済額を事前に試算し、返済可能か確認してください。
複数の金融機関で見積もりを取り、専門家(FP、銀行)に相談しながら、利用を判断することを推奨します。
