ゼロ金利解除で住宅ローンはどう変わるのか
日本銀行が2024年3月にマイナス金利政策を解除し、2024年7月と2025年1月に追加利上げを実施したことで、住宅ローンを組んでいる方、またはこれから組もうとしている方の多くが不安を感じています。
この記事では、ゼロ金利解除が住宅ローン金利に与える影響、変動金利と固定金利の選び方、借り換えや繰上返済の検討ポイントを、住宅金融支援機構や金融機関の最新情報を元に解説します。
執筆時点(2025年)の金融政策を踏まえながら、今後の対策を具体的に提示しますので、ご自身の状況に合わせてご活用ください。
この記事のポイント
- 2024年3月のマイナス金利解除後、政策金利は約0.5%まで上昇し、2025年後半には1%程度に達する予測
- 変動金利は短期プライムレートと連動し、基準金利改定は年2回(4月・10月)、実際の借入金利反映はその3ヶ月後
- 固定金利は長期金利の影響を受け、フラット35は2%超えの可能性
- 変動金利・固定金利の選択は個人の家計状況により異なり、一方的な推奨はできない
- 借り換えは手数料(30〜70万円)と金利差を比較し、ファイナンシャルプランナー等への相談を推奨
ゼロ金利解除とは?マイナス金利政策からの転換
(1) 日銀の金融政策の変遷(2016年〜2025年)
日本銀行は2016年1月に「マイナス金利政策」を導入し、政策金利をマイナスにすることで、金融機関の貸出を促進しました。この政策は2024年3月19日に解除され、政策金利は0%に引き上げられました。
その後、2024年7月と2025年1月に追加利上げが実施され、政策金利は約0.5%に到達しています。日銀の金融政策決定会合(年8回開催)では、今後の金利方針が公表されるため、この発表内容を確認することで金利の動向を予測できます。
(2) 政策金利と住宅ローン金利の関係
政策金利は、変動金利と固定金利に異なる形で影響を与えます。
- 変動金利: 短期プライムレート(短プラ)と連動しており、政策金利の変動が直接的に影響します。ただし、短プラは2009年1月から1.475%で据え置かれており、金利改定は慎重に行われています。
- 固定金利: 長期金利(10年国債利回り等)の影響を受けます。政策金利の上昇が長期金利の上昇につながり、固定金利も上昇する傾向があります。
変動金利・固定金利への影響【2025年最新】
(1) 変動金利への直接的影響(短期プライムレート連動)
変動金利型の住宅ローンは、短期プライムレート(短プラ)を基準としています。住宅金融支援機構によると、基準金利の改定は年2回(4月1日、10月1日)のみで、実際の借入金利への反映はその3ヶ月後となります。
2025年12月時点で、大手銀行の変動金利は0.3〜0.7%程度に維持されていますが、今後の政策金利上昇により、2026年4月に基準金利が0.25%引き上げられる可能性があると予測されています。
ただし、新規借入では金融機関が「優遇幅」(基準金利から差し引く割引幅)を縮小する可能性があり、実質的な金利負担が増えるケースもあります。
(2) 固定金利への間接的影響(長期金利の上昇)
固定金利型の住宅ローン(フラット35等)は、長期金利の影響を受けます。政策金利の上昇に伴い、長期金利も上昇傾向にあり、2024年から固定金利は上昇を続けています。
住まいサーフィンの調査によると、長期金利は2026年7〜9月に1.63%まで上昇する予測があり、フラット35の金利が2%を超える可能性があります。
固定金利は借入時の金利が返済期間中ずっと変わらないため、金利上昇局面では「今のうちに固定金利で借りる」という選択が有利になる場合もあります。
変動金利と固定金利の選び方
(1) 変動金利が向いている人・固定金利が向いている人
変動金利と固定金利のどちらが有利かは、個人の家計状況や金利上昇リスクの許容度により異なります。
| 項目 | 変動金利が向いている人 | 固定金利が向いている人 |
|---|---|---|
| 金利水準 | 低金利(0.3〜0.7%)を重視 | 返済額の安定を重視 |
| 金利上昇リスク | 家計に余裕があり、金利上昇にも対応可能 | 家計がタイトで、金利上昇に対応できない |
| 借入期間 | 短期間(10〜20年)で完済予定 | 長期間(30〜35年)の借入 |
| 繰上返済 | 積極的に繰上返済できる | 繰上返済が難しい |
住宅金融支援機構は、金利上昇局面では「キャッシュフロー表」を作成し、金利上昇時の家計への影響を事前に予測することを推奨しています。
(2) 金利タイプ別の返済シミュレーション
以下は、借入額3,000万円、返済期間35年の場合の返済額シミュレーションです。
| 金利タイプ | 適用金利 | 月々返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|---|
| 変動金利(0.5%) | 0.5% | 約7.8万円 | 約3,270万円 |
| 変動金利(1.5%に上昇) | 1.5% | 約10.3万円 | 約4,320万円 |
| 固定金利(フラット35 2.0%) | 2.0% | 約11.0万円 | 約4,620万円 |
金利が1%上昇すると、月々の返済額は約2.5万円増加し、総返済額では約900万円増える計算になります。
金利上昇時の対策(借り換え・繰上返済)
(1) 借り換えの損益分岐点と手数料
変動金利から固定金利への借り換えを検討する場合、手数料と金利差を比較し、総コストで判断する必要があります。
借り換えにかかる主な費用は以下の通りです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 事務手数料 | 借入額の2%程度(3,000万円なら60万円) |
| 登記費用 | 10〜20万円 |
| 印紙税 | 2〜6万円 |
| 合計 | 30〜70万円程度 |
イオン銀行によると、借り換えで金利が0.5%以上下がり、残存期間が10年以上ある場合は、借り換えのメリットがあるケースが多いとされています。
ただし、景気悪化時には利上げ打ち止め、または利下げの可能性もあるため、固定金利への借り換えタイミングは慎重に判断すべきです。ファイナンシャルプランナー等の専門家への相談を推奨します。
(2) 繰上返済と家計管理のポイント
金利上昇局面では、繰上返済により元本を減らすことで、将来の利息負担を軽減できます。
繰上返済には2つのタイプがあります。
- 期間短縮型: 返済期間を短くし、総利息を大幅に削減
- 返済額軽減型: 月々の返済額を減らし、家計の負担を軽減
金利上昇リスクに備えるためには、まず「キャッシュフロー表」を作成し、金利が1〜2%上昇した場合の家計への影響をシミュレーションすることが重要です。
まとめ:住宅ローン金利上昇に備えるポイント
ゼロ金利解除により、住宅ローン金利は上昇局面に入りました。2024年3月のマイナス金利解除以降、政策金利は約0.5%まで上昇し、2025年後半には1%程度に達する予測です。
変動金利は短期プライムレートと連動し、基準金利改定は年2回(4月・10月)、実際の借入金利反映はその3ヶ月後となります。固定金利は長期金利の影響を受け、フラット35は2%超えの可能性があります。
変動金利・固定金利のどちらが有利かは個人の状況により異なるため、キャッシュフロー表で金利上昇時の影響を予測し、必要に応じて借り換えや繰上返済を検討しましょう。
金融機関やファイナンシャルプランナーに相談しながら、ご自身に合った住宅ローン選びを進めてください。
