戸建て三階建てとは|狭小地や都市部での人気の理由
戸建て購入を検討する際、「狭小地でも広い生活空間を確保したい」「三階建ては建築コストや老後の階段移動が心配」と悩む方は少なくありません。
この記事では、三階建てのメリット・デメリット、建築費用と税金、間取りのポイントを、国土交通省の公式情報を元に解説します。
狭小地や都市部で戸建て購入を検討する方でも、三階建ての全体像を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 三階建ては狭小地でも延床面積100〜120㎡を確保可能で、土地代を抑えられる
- 建築費用は二階建てより2〜3割増、構造計算費用(20〜50万円)も別途必要
- 老後の階段移動が大きな負担になる(75歳以降に問題化)
- 1階で生活完結できる間取りや将来のエレベーター設置スペース確保が老後対策
- 断熱性向上で上下階の温度差問題を軽減できる
三階建てのメリット|延床面積確保と土地代節約
三階建て住宅は、狭小地や都市部で延床面積を確保しつつ、土地代を抑えられるメリットがあります。
(1) 狭小地でも延床面積100〜120㎡を確保可能
三階建ては、敷地面積が狭くても縦方向に空間を活用することで、延床面積100〜120㎡程度を確保できます。
例えば、敷地面積50㎡(約15坪)の狭小地でも、建ぺい率60%・容積率300%であれば、延床面積90㎡(約27坪)の住宅を建築可能です。
(2) 土地代を抑えて広い生活空間を実現
都市部では土地価格が高いため、広い土地を購入すると土地代が高額になります。
三階建てにすることで、狭い土地でも必要な延床面積を確保でき、トータルコスト(土地代+建築費)を抑えられる場合があります。
(3) 容積率を最大限に活用できる
容積率(敷地面積に対する延床面積の割合の上限)が300%以上の地域では、三階建てで容積率を最大限に活用できます。
(4) 眺望や日当たりの良さ(3階部分)
3階部分は周囲の建物の影響を受けにくく、眺望や日当たりが良好です。
三階建てのデメリット|建築コスト・老後の階段・耐震性
三階建てには、建築コスト増、老後の階段移動、採光・通風の課題などのデメリットもあります。
(1) 建築費用が2〜3割増(構造計算費用も別途必要)
三階建ては、二階建てと比べて建築費用が2〜3割増となります。
また、木造三階建ては構造計算書の提出が義務付けられており、構造計算費用(20〜50万円)が別途必要です。
(2) 老後の階段移動が大きな負担(75歳以降に問題化)
パナソニックホームズによると、75歳以降に階段がきつくなる人が多く、老後の生活に大きな負担となります。
対策として、1階で生活が完結できる間取りにする、将来ホームエレベーターや階段昇降機を設置できるスペースを確保しておくことが賢明です。
(3) 1・2階の採光・通風が確保しにくい
周囲に建物が密集している場合、1・2階は採光・通風が確保しにくくなります。
設計段階で窓の配置や吹き抜けの活用を工夫することが重要です。
(4) 上下階の温度差によるヒートショックリスク
3階建ては上下階の温度差が大きくなりやすく、冬季に暖かい2階から寒い1階へ移動する際のヒートショックリスクがあります。
断熱性を高める(トリプルガラス、高断熱外壁)ことで、温度差・冷暖房効率の問題を軽減できます。
(5) 固定資産税の違い
三階建ては延床面積が広くなるため、固定資産税も二階建てより高くなる傾向があります。
ただし、固定資産税評価額は築年数により減価するため、長期的には差が縮小します。
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三階建ての建築費用と税金|二階建てとの比較
三階建ての建築費用と税金を、二階建てと比較して確認しましょう。
(1) 坪単価の相場と費用差(2〜3割増)
LIFULL HOME'Sによると、三階建ての坪単価は二階建てより2〜3割増が目安です。
| 項目 | 二階建て | 三階建て |
|---|---|---|
| 坪単価 | 60〜80万円 | 75〜100万円 |
| 延床面積30坪の建築費用 | 1,800〜2,400万円 | 2,250〜3,000万円 |
(出典: LIFULL HOME'S、2025年時点)
(2) 構造計算費用(20〜50万円)の必要性
木造三階建ては、国土交通省の建築基準法により、構造計算書の提出が義務付けられています。
構造計算費用は20〜50万円程度で、建築費用に別途加算されます。
(3) 固定資産税の違い
固定資産税は、延床面積に応じて増加します。
計算例(東京都内、固定資産税評価額を建築費の60%と仮定):
- 二階建て(延床面積30坪、建築費2,400万円): 評価額1,440万円 → 固定資産税約20万円/年
- 三階建て(延床面積30坪、建築費3,000万円): 評価額1,800万円 → 固定資産税約25万円/年
年間で5万円程度の差が生じます。
(4) トータルコストで見た土地代との関係
都市部では土地価格が高いため、狭い土地で三階建てを建てる方が、広い土地で二階建てを建てるよりトータルコストが安くなる場合があります。
比較例(東京都内、延床面積30坪を確保する場合):
- 二階建て: 土地60㎡(坪単価150万円)+ 建築費2,400万円 = 合計6,900万円
- 三階建て: 土地40㎡(坪単価150万円)+ 建築費3,000万円 = 合計6,000万円
土地代を抑えることで、建築費増を相殺できます。
三階建ての間取りのポイントと実例|家事動線・採光・老後対策
三階建ての間取りのポイントと実例を確認しましょう。
(1) 一般的な間取りパターン(1階ガレージ、2階LDK、3階寝室)
三階建ての一般的な間取りパターンは以下の通りです。
| フロア | 用途 | ポイント |
|---|---|---|
| 1階 | ガレージ・玄関・水回り | 外出時の動線を集約 |
| 2階 | LDK(リビング・ダイニング・キッチン) | 家族が集まる中心フロア |
| 3階 | 寝室・子供部屋 | 静かな環境を確保 |
(2) 家事動線の工夫(洗濯機とバルコニーの配置)
洗濯機とバルコニーは同一フロア(2階または3階)にまとめると、家事動線が楽になります。
推奨例:
- 2階: LDK + 洗濯機 + バルコニー
- 3階: 寝室 + 子供部屋
洗濯物を干すために階段を上り下りする負担を軽減できます。
(3) 採光・通風を確保する設計
1・2階の採光・通風を確保するため、以下の工夫が有効です。
- 吹き抜けの活用: 2階から3階へ光を取り込む
- 窓の配置: 南側だけでなく東西にも窓を配置
- 天窓の設置: 3階に天窓を設けて採光を確保
(4) 老後対策(将来のエレベーター設置スペース確保)
老後の階段移動に備えて、将来ホームエレベーターや階段昇降機を設置できるスペースを確保しておくことが賢明です。
また、1階に寝室・トイレ・浴室を配置し、1階だけで生活が完結できる間取りにすると、老後も安心です。
(5) 断熱性向上で温度差問題を軽減
断熱性を高める(トリプルガラス、高断熱外壁、高性能断熱材)ことで、上下階の温度差・冷暖房効率の問題を軽減できます。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)対応の三階建て住宅も増加しており、省エネと快適性を両立できます。
まとめ|三階建てを選ぶべきか判断するポイント
三階建ては、狭小地でも延床面積100〜120㎡を確保可能で、土地代を抑えられるメリットがあります。ただし、建築費用は二階建てより2〜3割増、老後の階段移動が大きな負担になる点に注意が必要です。
トータルコスト(土地代+建築費)で見ると、都市部では三階建ての方が経済的な場合もあります。老後対策として、1階で生活が完結できる間取りや将来のエレベーター設置スペース確保を検討しましょう。
詳細な建築プランや費用見積もりについては、建築士や不動産会社への相談をおすすめします。
