6000万円の住宅ローンを検討する前に
6000万円の住宅ローンを検討する際、「必要な年収はいくらなのか」「月々の返済額はいくらになるのか」「無理なく返済できるのか」と不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、6000万円の住宅ローンに必要な年収の目安、月々の返済額シミュレーション、審査のポイント、返済計画の立て方、リスク管理について、住宅金融支援機構や国税庁の公式情報を元に解説します。
初めて高額の住宅ローンを組む方でも、返済計画や注意点を理解できるようになります。
この記事のポイント
- 6000万円の住宅ローンを組むには年収900万円〜が最低ライン、無理なく返済するには年収1,000万〜1,200万円が理想
- 35年返済・変動金利0.5%の場合、月々約15.6万円、固定金利1.5%の場合は月々約18.4万円
- 返済負担率は手取り収入の25%以内が理想、30%を超えると家計が圧迫される
- 借りられる額と返せる額は異なり、ライフプラン全体を考慮した慎重な借入額設定が重要
- 金利上昇リスクや教育費・老後資金とのバランスを考慮した返済計画が必要
1. 6000万円の住宅ローンを組む前に知っておくべきこと
(1) 6000万円の住宅ローンは誰が対象か
6000万円の住宅ローンは、高額物件の購入を検討する方が対象となります。都心部のマンションや一戸建て、郊外の広い土地付き物件など、物件価格が6000万円を超える場合に必要となる借入額です。
6000万円という金額は高額借入に該当するため、年収や返済能力の審査が厳しくなります。金融機関は返済負担率や年収倍率を基準に審査を行い、無理のない返済計画が立てられるかを重視します。
(2) 諸費用も含めた総費用の把握(物件価格の10〜12%)
住宅ローンを組む際には、物件価格以外に諸費用がかかります。諸費用は物件価格の10〜12%程度が目安で、6000万円の物件なら600〜720万円程度の諸費用が必要です。
主な諸費用には以下が含まれます。
- 仲介手数料: 物件価格の3%+6万円+消費税
- 登記費用: 所有権移転登記、抵当権設定登記
- 融資手数料: 金融機関に支払う事務手数料
- 不動産取得税: 固定資産税評価額の3%(軽減措置あり)
- 火災保険料: 10年一括払い
諸費用は基本的に現金で用意する必要があるため、物件価格とは別に準備しておくことが重要です。
2. 必要な年収の目安|返済負担率の考え方
(1) 借入可能な年収の下限(年収900万円〜)
6000万円の住宅ローンを借りるには、年収900万円程度が最低ラインとされています。これは、金融機関が審査の際に重視する「年収倍率」(借入額を年収で割った値)が6〜7倍程度を目安としているためです。
年収900万円の場合、年収倍率は約6.7倍となり、金融機関の審査基準をギリギリ満たす水準です。ただし、他の借入れや信用情報により審査結果は異なります。
(2) 無理なく返済できる年収(年収1,000万〜1,200万円)
借入可能な年収と、無理なく返済できる年収は異なります。6000万円の住宅ローンを無理なく返済するには、年収1,000万〜1,200万円が理想とされています。
年収1,200万円の場合、年収倍率は約5倍となり、返済負担が軽減されます。金利上昇や家計の変動にも対応しやすく、教育費や老後資金との両立が可能になります。
(3) 返済負担率の目安(25%以内が理想、30%が上限)
返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を指します。一般的に25%以内が理想、30%以内が上限の目安とされています。
住宅金融支援機構の調査によると、返済負担率15〜20%が最多となっており、無理のない返済計画が主流です。
| 年収 | 返済負担率25% | 返済負担率30% | 年間返済額 |
|---|---|---|---|
| 900万円 | 225万円 | 270万円 | 約187万円(月々約15.6万円) |
| 1,000万円 | 250万円 | 300万円 | 約187万円(月々約15.6万円) |
| 1,200万円 | 300万円 | 360万円 | 約187万円(月々約15.6万円) |
年収900万円で6000万円の住宅ローンを組むと、返済負担率は約20.8%となり、ギリギリの水準です。年収1,200万円であれば約15.6%と余裕が生まれます。
(4) ペアローン・収入合算という選択肢
単独で6000万円の住宅ローンを組むのが難しい場合、夫婦でローンを組む方法があります。
- ペアローン: 夫婦がそれぞれ住宅ローンを組む方法。2人とも住宅ローン控除を受けられる
- 収入合算: 夫婦の収入を合算して1本の住宅ローンを組む方法
ペアローンの場合、夫婦それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入する必要があり、どちらかが死亡した場合も片方のローンは残ります。メリット・デメリットを理解した上で選択してください。
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3. 月々の返済額シミュレーション|金利・返済期間別
(1) 変動金利0.5%・35年返済の場合(月々約15.6万円)
35年返済・変動金利0.5%の場合、月々の返済額は約15.6万円です。年間返済額は約187万円となります。
変動金利は固定金利より低い傾向がありますが、将来的に金利が上昇した場合、返済額が増加するリスクがあります。
(2) 固定金利1.5%・35年返済の場合(月々約18.4万円)
35年返済・固定金利1.5%の場合、月々の返済額は約18.4万円です。変動金利と比べて月々約2.8万円、年間約33.6万円の差が生じます。
固定金利は金利が変動しないため、将来の返済額が確定し、返済計画が立てやすい点がメリットです。2025年12月時点で大手銀行5行の10年固定型金利は平均2.446%と5ヶ月連続で上昇しています。
(3) 返済期間20年vs35年の総支払額比較(750万円以上の差)
返済期間を短くすると、月々の返済額は増えますが、総支払額(元本+利息)を抑えられます。
| 返済期間 | 金利 | 月々返済額 | 総支払額 | 総支払利息 |
|---|---|---|---|---|
| 20年 | 0.5% | 約28.3万円 | 約6,792万円 | 約792万円 |
| 35年 | 0.5% | 約15.6万円 | 約6,554万円 | 約554万円 |
返済期間を20年にすると、月々の返済額が約12.7万円増えますが、総支払額は約238万円減ります。一方、35年返済の場合は月々の負担が軽減され、家計に余裕が生まれます。
(4) 2025年の金利動向(10年固定型が上昇傾向)
2025年12月時点で、大手銀行5行の10年固定型金利は平均2.446%と5ヶ月連続で上昇しています。変動金利も今後上昇する可能性があるため、金利タイプの選択は慎重に行うことを推奨します。
4. 審査のポイント|借りられる額と返せる額の違い
(1) 金融機関の審査基準(返済負担率・年収倍率)
金融機関は以下の基準で審査を行います。
- 返済負担率: 年収に対する年間返済額の割合(30〜35%が上限)
- 年収倍率: 借入額を年収で割った値(6〜9倍程度)
6000万円の住宅ローンの場合、年収倍率は6.7倍程度となり、金融機関の審査基準をギリギリ満たす水準です。
(2) 完済時年齢の上限(75〜80歳未満が一般的)
多くの金融機関では、完済時の年齢上限を75〜80歳未満としています。35年返済を希望する場合、申込時の年齢が40〜45歳以下である必要があります。
45歳以上の方が35年ローンを組むことは難しくなるため、返済期間の見直しが必要です。
(3) 信用情報・他の借入れの影響
住宅ローンの審査では、信用情報と他の借入れが重視されます。
- 信用情報: 過去のクレジットカード延滞、ローン返済の遅延などが審査に影響
- 他の借入れ: カードローン、自動車ローン、奨学金などがある場合、借入可能額が減少
信用情報に傷がある場合、高額融資の審査は厳しくなるため、事前に信用情報を確認しておくことを推奨します。
(4) 借りられる額≠返せる額(慎重な借入額設定が重要)
金融機関が「借りられる」と判断した金額が、実際に「返せる」金額とは限りません。返済負担率30%で審査に通っても、家計が圧迫され、教育費や老後資金が不足する可能性があります。
借入額を設定する際は、返済負担率25%以内を目安とし、ライフプラン全体を考慮した慎重な判断が必要です。
5. 返済計画の立て方とリスク管理|金利上昇・ライフプラン
(1) 金利上昇リスクへの備え(変動金利の注意点)
変動金利は固定金利より低い傾向がありますが、将来的に金利が上昇した場合、返済額が増加するリスクがあります。
例えば、変動金利が0.5%から1.5%に上昇した場合、月々の返済額は約15.6万円から約18.4万円に増加し、年間約33.6万円の負担増となります。金利上昇に備えて、返済負担率に余裕を持たせておくことが重要です。
(2) 教育費・老後資金とのバランス
6000万円の住宅ローンを組む場合、教育費や老後資金とのバランスを考慮する必要があります。
- 教育費: 子ども1人あたり1,000万〜2,000万円(大学まで)
- 老後資金: 夫婦で2,000万〜3,000万円(年金不足分)
これらの費用を考慮すると、住宅ローン返済だけでなく、貯蓄や投資も並行して行う必要があります。
(3) 繰上返済戦略の検討
繰上返済を活用することで、総支払額を抑えることができます。繰上返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。
- 期間短縮型: 返済期間を短縮し、総支払利息を大幅に削減
- 返済額軽減型: 月々の返済額を軽減し、家計の負担を軽減
どちらを選ぶかは、ライフプランに応じて判断してください。
(4) 住宅ローン控除の活用(年間控除額の目安)
国税庁によると、住宅ローン控除は住宅ローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。新築住宅の場合、最大13年間の控除が受けられます。
6000万円の住宅ローンの場合、年間控除額は最大42万円(6000万円×0.7%)となります。ただし、所得税額が控除上限を下回る場合、控除しきれない分は住民税から控除されます(上限あり)。
6. まとめ:6000万円の住宅ローンを無理なく返済するために
6000万円の住宅ローンを組むには年収900万円〜が最低ライン、無理なく返済するには年収1,000万〜1,200万円が理想です。35年返済・変動金利0.5%の場合、月々約15.6万円、固定金利1.5%の場合は月々約18.4万円となります。
返済負担率は手取り収入の25%以内が理想で、30%を超えると家計が圧迫されます。借りられる額と返せる額は異なるため、ライフプラン全体を考慮した慎重な借入額設定が重要です。
金利上昇リスクや教育費・老後資金とのバランスを考慮し、無理のない返済計画を立てましょう。専門家(ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザー)への相談も検討してください。
