自営業の住宅ローン審査は厳しい?現状を解説
自営業やフリーランスで住宅購入を検討する際、「会社員より審査が厳しいのでは?」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、自営業者でも住宅ローン審査に通りやすい金融機関の特徴、審査基準、必要書類、そして審査通過のための具体的な対策を、住宅金融支援機構・三井住友銀行等の公式情報を元に解説します。
初めて住宅購入を検討する自営業者の方でも、自分に合った金融機関を選び、適切な準備を進められるようになります。
この記事のポイント
- 977の金融機関中、自営業者を除外しているのは10機関のみで、多くの選択肢がある(2025年)
- フラット35は確定申告書2年分のみで審査可能で、自営業者に最もおすすめ
- SBI新生銀行やauじぶん銀行など、ネット銀行は比較的審査基準が明確で通りやすい傾向
- 3期連続黒字、頭金20%以上、税金の未納なしが審査通過の重要ポイント
(1) 自営業者でも住宅ローンは借りられる
「自営業だから住宅ローンは無理」と諦める必要はありません。多くの金融機関が自営業者向けの住宅ローンを提供しています。
会社員と比べて審査基準が厳しいのは事実ですが、適切な準備と金融機関選びで審査通過は十分可能です。
(2) 977の金融機関中、除外しているのは10機関のみ
2025年時点のデータによると、977の金融機関中、自営業者を除外しているのはわずか10機関です。つまり、ほとんどの金融機関が自営業者も申込対象としています。
選択肢は豊富にあるため、自分の事業年数や所得水準、事業の安定性に合った金融機関を選ぶことが重要です。
自営業の住宅ローン審査が厳しい3つの理由
自営業者の住宅ローン審査が会社員より厳しいとされる理由を理解することで、対策が立てやすくなります。
(1) 収入の安定性が低いと判断される
会社員は毎月固定給を受け取りますが、自営業者は月ごと・年ごとに収入が変動します。金融機関は「返済能力が継続するか」を重視するため、収入の安定性が低いと判断される傾向があります。
(2) 事業の継続性に懸念がある
自営業は会社員と異なり、病気や市場環境の変化で収入が途絶えるリスクがあります。金融機関は「今後も事業が継続できるか」を審査し、事業年数が短い場合や業績が不安定な場合は慎重に判断します。
(3) 売上ではなく所得で審査される
住宅ローン審査では、**売上ではなく所得(売上 - 経費)**で返済能力を判断します。
過度に節税のために経費を計上すると、所得が低くなり審査に不利になるというジレンマがあります。節税と審査通過のバランスを考慮する必要があります。
自営業の住宅ローン審査基準
自営業者の住宅ローン審査で重視される主な基準を解説します。
(1) 3期連続黒字が基本条件
多くの金融機関では、直近3年間の確定申告で全て所得がプラスであることが基本条件です。1期でも赤字があると審査落ちの可能性が高くなります。
フラット35は2年分の確定申告書で審査可能なため、事業年数が短い場合はフラット35を優先的に検討するのが良いでしょう。
(2) 所得水準:年収200-300万円以上が目安
金融機関によって異なりますが、一般的には以下の水準が目安です。
| 金融機関 | 所得水準の目安 |
|---|---|
| SBI新生銀行 | 2年間の平均年収300万円以上 |
| auじぶん銀行 | 前年度の所得200万円以上 |
| フラット35 | 明確な所得基準なし(総返済負担率で判断) |
(3) 事業年数:2-3年以上が一般的
事業の継続性を確認するため、多くの金融機関では事業年数2-3年以上を条件としています。
SBI新生銀行は事業年数2年以上、フラット35は2年分の確定申告書があれば申込可能です。
(4) 納税状況:未納があると審査に通らない
税金や社会保険料の未納があると、審査に通りません。住宅ローンを申し込む前に、必ず納税証明書を取得し、未納分がある場合は納付してから申し込むことが必須です。
自営業で住宅ローンが通りやすい金融機関の種類別比較
自営業者に適した金融機関を種類別に比較します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の状況に合った選択をしましょう。
(1) フラット35:決算書不要、確定申告書2年分のみ(最もおすすめ)
特徴:
- 住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利型住宅ローン
- 決算書不要で確定申告書2年分のみで審査可能
- 事業年数が短い、所得が不安定という場合でも比較的通りやすい
メリット:
- 自営業者に最も推奨される選択肢
- 全期間固定金利で返済計画が立てやすい
- 明確な所得基準がなく、総返済負担率で判断される
デメリット:
- 金利が変動金利より高い傾向
- 物件が技術基準を満たす必要がある
(2) ネット銀行:SBI新生銀行(事業年数2年以上、平均年収300万円以上)
特徴:
- 事業年数2年以上、2年間の平均年収300万円以上が審査基準
- 審査基準が明確で、条件を満たせば通りやすい
メリット:
- ネット銀行特有の低金利
- 審査基準が明確で事前に準備しやすい
デメリット:
- 平均年収300万円以上という基準がやや高め
- 対面相談が限られる
(3) ネット銀行:auじぶん銀行(前年度所得200万円以上)
特徴:
- 前年度の所得200万円以上で申込可能
- 比較的ハードルが低い
メリット:
- 所得基準が200万円以上と比較的低め
- ネット銀行特有の低金利
デメリット:
- 前年度のみの所得で判断されるため、直近の業績が重要
(4) 地方銀行・信用金庫:メインバンクが有利
特徴:
- 事業用口座を開設している銀行(メインバンク)に申し込むと、事業の実態を把握しているため審査で有利
- 自営業者の50%が地方銀行・信用金庫を選択
メリット:
- 事業の安定性を理解してもらいやすい
- 対面で相談しながら進められる
デメリット:
- 金利がネット銀行より高い場合がある
- 審査基準が金融機関ごとに異なる
(5) メガバンク:審査は厳しいが実績があれば通る可能性
特徴:
- 三井住友銀行などメガバンクは審査基準が厳しい傾向
- 事業実績や所得が十分にあれば通る可能性がある
メリット:
- ブランド力・信頼性が高い
- 店舗数が多く相談しやすい
デメリット:
- 審査基準が厳しい
- 金利がネット銀行より高い場合がある
自営業の住宅ローン必要書類
自営業者が住宅ローンを申し込む際に必要な書類を解説します。事前に準備しておくことでスムーズに審査を進められます。
(1) 確定申告書3年分(税務署受付印付き)
確定申告書は1年間の所得を税務署に申告する書類で、自営業者の収入証明として必須です。
- 一般的に3年分が必要(フラット35は2年分)
- 税務署受付印付きが必須(e-Taxの場合は受信通知を添付)
(2) 納税証明書(その1・その2)
納税証明書は税金を納めていることを証明する書類です。
- その1:納付すべき税額、納付済額、未納税額
- その2:所得金額、所得控除額
- 税務署で発行可能(未納があると審査に通らない)
(3) 青色申告決算書または収支内訳書
青色申告決算書は青色申告者が提出する詳細な決算書(損益計算書、貸借対照表等を含む)です。白色申告の場合は収支内訳書を提出します。
(4) 事業用の帳簿・通帳(金融機関による)
金融機関によっては、事業用の帳簿や通帳の提出を求められる場合があります。メインバンクであれば、既に事業用口座の取引履歴があるため有利です。
まとめ:自営業が住宅ローン審査を通すための7つの対策
自営業者が住宅ローン審査に通るための対策をまとめます。
(1) 頭金を20%以上用意する
頭金を20%以上用意すると、借入額を減らせるため審査通過率が上がります。返済負担率も下がり、金融機関の評価が高まります。
(2) 過度な節税を避け、所得をある程度確保する
節税しすぎると所得が低くなり、住宅ローン審査で不利になります。特に直近年度は、住宅ローン申込を見据えて所得をある程度確保することが重要です。
(3) メインバンク(事業用口座がある銀行)に申し込む
事業用口座を開設している銀行に申し込むと、事業の実態を把握しているため審査で有利です。まずはメインバンクに相談してみましょう。
(4) 税金や保険料の未納分を納付する
税金や保険料の未納があると審査に通りません。住宅ローンを申し込む前に、必ず納税証明書を取得し、未納分がある場合は納付してから申し込むことが必須です。
(5) 3期連続黒字を確保する
3期連続黒字が基本条件です。1期でも赤字がある場合は、黒字転換してから数年間の実績を作ってから申し込むのが確実です。
(6) フラット35を優先的に検討する
フラット35は確定申告書2年分のみで審査可能で、自営業者に最もおすすめです。事業年数が短い、所得が不安定という場合でも比較的通りやすい傾向があります。
(7) 専門家(ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー等)へ相談する
節税と住宅ローン審査の両立が難しいため、税理士やファイナンシャルプランナーへの相談を推奨します。専門家のアドバイスを受けながら、無理のない資金計画を立てましょう。
自営業者でも、適切な準備と金融機関選びで住宅ローン審査に通ることは十分可能です。複数の金融機関を比較し、自分の状況に合った選択をすることが成功のカギです。
