賃貸併用住宅ローンとは?仕組み・審査基準・メリット・デメリットを解説
「賃貸併用住宅を購入したいが、住宅ローンは使えるのか」「賃貸住宅ローンの金利はどのくらいなのか」と悩む方は多いのではないでしょうか。
この記事では、賃貸住宅ローンの仕組み、賃貸併用住宅で住宅ローンを活用する方法、審査基準・金利相場、住宅ローンから賃貸ローンへの借り換えについて、住宅金融支援機構や国税庁の公式情報を元に解説します。
賃貸住宅ローンの選び方と注意点を正確に理解し、自分に合った資金計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 賃貸併用住宅なら自己居住部分が50%以上で住宅ローンが利用可能、金利を大幅に抑えられる
- 賃貸住宅ローン(アパートローン)の金利は3-4%以上と住宅ローンより高く、返済期間も短い
- メガバンクは金利約2%(審査厳しい)、日本政策金融公庫は1.1%~(女性・若年層向け優遇あり)
- 住宅ローン返済中の物件を無断で賃貸化すると、金融機関から一括返済を求められる可能性がある
- 2024年3月に日銀がマイナス金利政策を終了、2025年以降は金利上昇が見込まれる
賃貸住宅ローンとは何か
賃貸住宅ローン(アパートローン)の定義
賃貸住宅ローン(アパートローン)とは、賃貸収入を目的とした不動産の建設・購入・リフォームに使えるローンです。
主な用途:
- アパート・賃貸マンションの建設
- 賃貸用の戸建て・区分マンションの購入
- 既存物件のリフォーム・リノベーション
賃貸住宅ローンは、投資用不動産ローンとも呼ばれ、自己居住用の住宅ローンとは異なる商品です。
住宅ローンとの違い
賃貸住宅ローンと住宅ローンには、以下の違いがあります。
| 項目 | 住宅ローン | 賃貸住宅ローン |
|---|---|---|
| 金利 | 0.3〜1.5%程度 | 3〜4%以上 |
| 返済期間 | 最長35年 | 20〜25年程度 |
| 審査 | 本人の返済能力重視 | 物件の収益性・事業計画も重視 |
| 用途 | 自己居住用 | 賃貸収入を目的 |
| 住宅ローン控除 | 適用可能 | 適用不可 |
(出典: 住宅金融支援機構、各金融機関情報を元に作成)
賃貸住宅ローンは、金利が高く返済期間も短いため、月々の返済負担が大きくなります。
対象となる物件と用途
賃貸住宅ローンの対象となる物件:
- アパート(木造・鉄骨造・RC造)
- 賃貸マンション(区分所有・一棟)
- 賃貸併用住宅(自己居住部分が50%未満の場合)
- 賃貸用戸建て
対象外となる物件:
- 自己居住用のみの住宅
- 別荘・セカンドハウス
- 店舗・事務所用途のみの物件
金融機関により対象物件が異なるため、事前に確認してください。
賃貸併用住宅と住宅ローンの活用
賃貸併用住宅とは何か
賃貸併用住宅とは、自己居住部分と賃貸部分を併せ持つ住宅です。
例:
- 1階を賃貸スペース、2階を自宅として使用
- 同じ建物内に複数の住戸があり、一部を賃貸
賃貸併用住宅は、賃貸収入を得ながら自宅としても使用できるため、住宅ローンの返済負担を軽減できます。
自己居住部分50%以上で住宅ローンが使える
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するには、自己居住部分が建物全体の50%以上である必要があります。
この条件を満たすと、以下のメリットがあります。
- 金利が低い: 住宅ローン金利(0.3〜1.5%程度)を適用
- 返済期間が長い: 最長35年の返済期間
- 住宅ローン控除の適用: 税制優遇を受けられる
例:
- 建物全体の床面積: 200㎡
- 自己居住部分: 110㎡(55%)
- 賃貸部分: 90㎡(45%)
この場合、住宅ローンが利用可能です。
(出典: 各金融機関の融資条件を元に作成)
住宅ローン控除の適用条件
賃貸併用住宅で住宅ローン控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
国税庁の適用要件:
- 自己居住部分が建物全体の50%以上
- 床面積が50㎡以上(自己居住部分のみ)
- 返済期間が10年以上
- 合計所得金額が2,000万円以下
- 新築または取得から6ヶ月以内に入居
住宅ローン控除により、年末時点のローン残高の0.7%(最大21万円/年)が最長13年間、所得税・住民税から控除されます。
注意: 将来、自己居住部分を賃貸化すると、住宅ローン控除が受けられなくなります。
賃貸住宅ローンの審査基準・金利相場
審査で重視されるポイント(属性・物件価値・事業計画)
賃貸住宅ローンの審査では、以下のポイントが重視されます。
1. 借主の属性:
- 年収・勤続年数
- 既存の借入状況
- 信用情報(過去の返済履歴)
2. 物件の価値:
- 立地(駅からの距離、周辺環境)
- 築年数・構造(RC造は評価が高い)
- 賃料相場・空室リスク
3. 事業計画:
- 賃貸収入の見込み
- 返済計画の妥当性
- 空室率の想定
住宅ローンは本人の返済能力のみを審査しますが、賃貸住宅ローンは物件の収益性も重視されます。
金融機関別の金利相場(メガバンク・地銀・公庫)
賃貸住宅ローンの金利は、金融機関により大きく異なります。
| 金融機関 | 金利相場 | 審査の厳しさ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| メガバンク | 約2% | 厳しい | 低金利だが審査基準が高い |
| 地方銀行・信用金庫 | 2〜4% | 中程度 | 地域密着、柔軟な審査 |
| ノンバンク | 約4% | 緩い | 審査が緩いが金利が高い |
| 日本政策金融公庫 | 1.1%〜 | 中程度 | 女性・若年層向け優遇あり |
(出典: HOME4Uを元に作成、2025年時点)
日本政策金融公庫は、政府系金融機関であり、女性・若年層・シニア向けの優遇金利制度があります。
審査の厳しさと金利は反比例する傾向があります。低金利を狙う場合は、事前に自己資金や事業計画を準備してください。
審査期間と必要書類
賃貸住宅ローンの審査期間は、約1ヶ月程度です。
審査の流れ:
- 事前審査(約1週間): 建築計画・収支計画の確認
- 本申込(約3週間): 正式な書類審査
- 融資実行: 契約・抵当権設定後
必要書類:
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
- 収入証明書(源泉徴収票・確定申告書)
- 物件資料(建築計画書・販売図面)
- 事業計画書(収支シミュレーション)
- 既存借入の返済予定表
事業計画書は、賃料収入・管理費・修繕費・税金を含めた詳細な収支計画が必要です。
住宅ローンから賃貸ローンへの借り換え
借り換えが必要なケース
以下のようなケースでは、住宅ローンから賃貸ローンへの借り換えが必要です。
- 転勤・海外赴任で自宅を賃貸に出す
- 親の介護で実家に戻り、自宅を賃貸化する
- 投資用物件として運用したい
住宅ローンは自己居住用が原則であり、賃貸化する場合は金融機関への連絡と賃貸ローンへの借り換えが必要です。
無断賃貸化のリスク(一括返済請求)
住宅ローン返済中の物件を無断で賃貸に出すと、以下のリスクがあります。
契約違反:
- 住宅ローンは自己居住用が条件
- 無断賃貸化は契約違反に該当
一括返済請求:
- 金融機関が契約違反を確認した場合、残債の全額返済を請求される可能性がある
- 期限の利益を喪失し、分割返済の権利を失う
住宅ローン控除の返還:
- 賃貸化すると住宅ローン控除が受けられなくなる
- 過去に受けた控除額の返還を求められる場合がある
必ず金融機関に相談し、賃貸ローンへの借り換え手続きを行ってください。
借り換えにかかる費用
住宅ローンから賃貸ローンへの借り換えには、以下の費用がかかります。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 繰上返済手数料 | 無料〜5万円程度 |
| 新規ローンの事務手数料 | 借入額の2%程度 |
| 印紙税 | 2〜6万円(借入額による) |
| 抵当権設定費用 | 借入額の0.4%程度 |
| 司法書士報酬 | 5〜10万円 |
例: 借入額3,000万円の場合
事務手数料: 3,000万円 × 2% = 60万円
抵当権設定費用: 3,000万円 × 0.4% = 12万円
印紙税: 2万円
司法書士報酬: 7万円
合計: 約81万円
借り換え費用は高額になるため、金融機関に事前確認が必要です。
賃貸住宅ローンのメリット・デメリット
メリット:賃貸収入で返済負担を軽減
賃貸住宅ローンの主なメリットは以下の通りです。
1. 賃貸収入で返済負担を軽減:
- 賃料収入でローン返済の一部をカバー
- 家賃保証会社を利用すれば、空室リスクを抑えられる
2. 資産形成:
- 完済後は安定した賃貸収入が得られる
- 将来の年金代わりになる
3. 相続対策:
- 不動産は相続税評価額が低くなる
- 賃貸物件は評価額がさらに下がる
賃貸併用住宅の場合、住宅ローン金利(0.3〜1.5%程度)で借りられるため、返済負担を大幅に抑えられます。
デメリット:金利が高い・審査が厳しい
賃貸住宅ローンのデメリットは以下の通りです。
1. 金利が高い:
- 住宅ローンと比べて金利が2〜3倍高い
- 返済総額が大幅に増える
2. 審査が厳しい:
- 物件の収益性・事業計画も審査される
- 自己資金が多く必要
3. 空室リスク:
- 賃料収入が途絶えると返済が困難になる
- 管理費・修繕費の負担がある
4. 住宅ローン控除が使えない:
- 賃貸住宅ローンは住宅ローン控除の対象外
- 税制優遇を受けられない
賃貸住宅ローンは、収支計画を慎重に検討し、空室リスクを想定した返済計画が必要です。
2024年以降の金利動向
2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を終了し、政策金利を-0.1%から0.1%に引き上げました。
これにより、賃貸住宅ローンの金利も以下の影響を受けています。
2024年以降の金利動向:
- 短期金利・長期金利ともに上昇傾向
- アパートローン金利も徐々に上昇
- 2025年以降も金利上昇が見込まれる
(出典: 大和ハウス工業)
賃貸住宅融資を検討する際は、金利動向を注視し、固定金利と変動金利のメリット・デメリットを比較してください。
まとめ:賃貸住宅ローンの選び方と注意点
賃貸併用住宅なら、自己居住部分が50%以上で住宅ローンが利用可能です。金利を大幅に抑えられ、住宅ローン控除の適用も受けられます。
賃貸住宅ローン(アパートローン)の金利は3〜4%以上と住宅ローンより高く、返済期間も短いため、月々の返済負担が大きくなります。メガバンクは金利約2%(審査厳しい)、日本政策金融公庫は1.1%~(女性・若年層向け優遇あり)です。
住宅ローン返済中の物件を無断で賃貸化すると、金融機関から一括返済を求められる可能性があります。必ず金融機関に相談し、賃貸ローンへの借り換え手続きを行ってください。
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を終了し、2025年以降は金利上昇が見込まれます。賃貸住宅融資を検討する際は、金利動向を注視し、収支計画を慎重に検討してください。
賃貸住宅ローンは金利が高く審査も厳しいため、物件の収益性・事業計画をしっかり準備し、専門家(ファイナンシャルプランナー、不動産業者等)に相談しながら進めることをおすすめします。
