不動産売却にかかる諸費用の全体像
不動産売却を検討する際、「売却価格から諸費用を差し引いた手取り額はいくらになるのか」「仲介手数料や税金はどのくらいかかるのか」と気になる方も多いでしょう。
この記事では、不動産売却時の諸費用の内訳、仲介手数料の計算方法、譲渡所得税の税率、登記費用、諸費用を抑える方法を、国税庁や国土交通省の公式情報を元に解説します。
売却価格から諸費用を差し引いた手取り額を正確に把握し、資金計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 不動産売却にかかる諸費用の総額は売却価格の4~6%程度が目安
- 仲介手数料の上限は「(売却価格×3%+6万円)×1.1(消費税込)」(400万円超の場合)
- 譲渡所得税は所有期間5年超で20%、5年以下で約40%と大きく異なる
- マイホーム売却の場合は3000万円特別控除が適用でき、税負担を大幅に軽減できる
- 諸費用を抑えるには、3000万円特別控除の活用、所有期間5年超での売却、複数社の仲介手数料比較が有効
(1) 諸費用の総額(売却価格の4~6%程度)
不動産売却にかかる諸費用の総額は、売却価格の4~6%程度が目安です。3,000万円の物件なら120~180万円程度が諸費用となります。
諸費用の総額は、売却価格、物件状況、所有期間により大きく異なります。詳細な金額は、不動産会社や税理士に相談してください。
(2) 主な諸費用の内訳(仲介手数料、税金、登記費用等)
不動産売却にかかる主な諸費用は以下の通りです。
主な諸費用の内訳
| 項目 | 目安額 | 備考 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格の約3.3% | 売却価格400万円超の場合の上限 |
| 譲渡所得税・住民税 | 譲渡所得の20%〜40% | 所有期間により異なる |
| 印紙税 | 1,000円〜6万円 | 売却価格に応じて変動 |
| 抵当権抹消費用 | 2〜3万円 | 住宅ローンが残っている場合 |
| 測量費 | 50〜80万円 | 境界が不明確な場合 |
| 解体費 | 100〜300万円 | 古い建物を解体する場合 |
(3) 諸費用の支払いタイミング
諸費用の支払いタイミングは項目により異なります。
- 仲介手数料: 契約時に50%、決済時に50%が一般的
- 印紙税: 売買契約書作成時に支払い
- 抵当権抹消費用: 決済時に支払い
- 譲渡所得税: 確定申告後(売却の翌年3月15日まで)に納付
仲介手数料の計算方法と相場
(1) 仲介手数料の上限計算式(売却価格×3%+6万円+消費税)
仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法により定められています。売却価格400万円超の場合、上限は以下の計算式で求められます。
仲介手数料の上限計算式(400万円超の場合)
仲介手数料(税込) = (売却価格 × 3% + 6万円) × 1.1
例えば、3,000万円で売却した場合の仲介手数料は以下の通りです。
(3,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 105.6万円
(2) 売却価格別の仲介手数料早見表
仲介手数料早見表(税込)
| 売却価格 | 仲介手数料(上限) |
|---|---|
| 1,000万円 | 39.6万円 |
| 2,000万円 | 72.6万円 |
| 3,000万円 | 105.6万円 |
| 4,000万円 | 138.6万円 |
| 5,000万円 | 171.6万円 |
(3) 2024年7月改定(800万円以下の物件は上限33万円)
2024年7月より、800万円以下の不動産売買時は、売主・買主合意の元、仲介手数料の上限が33万円(税込)になりました。
これにより、低価格帯の不動産売却でも、仲介会社が適正な報酬を得られるようになりました。
(4) 仲介手数料の支払いタイミング(契約時・決済時)
仲介手数料は成功報酬であり、売買契約が成立して初めて支払い義務が発生します。一般的には、契約時に50%、決済時に50%を支払います。
契約が解除された場合、仲介手数料の支払い義務はありません(ただし、解除理由により異なる場合があります)。
譲渡所得税の計算と税率
(1) 譲渡所得の計算式(収入金額 - 取得費 - 譲渡費用)
譲渡所得税は、不動産売却で得た利益(譲渡所得)にかかる税金です。譲渡所得は以下の計算式で求められます。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)
- 収入金額: 売却価格
- 取得費: 購入価格、仲介手数料、登記費用等(購入時にかかった費用)
- 譲渡費用: 仲介手数料、測量費、解体費等(売却時にかかった費用)
例えば、3,000万円で購入したマンションを4,000万円で売却し、諸費用が合計300万円だった場合、譲渡所得は以下の通りです。
譲渡所得 = 4,000万円 - (3,000万円 + 300万円) = 700万円
(2) 長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率差(20% vs 40%)
譲渡所得税の税率は、所有期間が5年を超えるかどうかで大きく異なります。
譲渡所得税の税率
| 所有期間 | 税率 | 内訳 |
|---|---|---|
| 5年超(長期譲渡所得) | 20.315% | 所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315% |
| 5年以下(短期譲渡所得) | 39.63% | 所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税0.63% |
所有期間5年以下で売却すると、税率が約40%と非常に高くなるため、売却時期の判断は慎重に行う必要があります。
(3) 3000万円特別控除の適用要件
マイホーム売却の場合、国税庁の公式情報によると、3000万円特別控除が適用できます。この特例により、譲渡所得から3,000万円を控除できます。
3000万円特別控除の主な要件
- 自分が住んでいた家屋を売却すること
- 売却先が配偶者や直系血族等の特別な関係者でないこと
- 売却した年の前年・前々年にこの特例を受けていないこと
例えば、譲渡所得が700万円の場合、3000万円特別控除を適用すると、譲渡所得は0円となり、譲渡所得税はかかりません。
(4) 確定申告の時期と方法(翌年2月16日~3月15日)
不動産を売却した場合、売却の翌年の2月16日~3月15日に確定申告を行う必要があります。
確定申告では、譲渡所得の金額、特別控除の適用の有無等を申告します。3000万円特別控除を受ける場合も、確定申告が必要です。
登記費用とその他の諸費用
(1) 抵当権抹消費用(登録免許税1,000円/件 + 司法書士報酬1.5~2万円)
住宅ローンが残っている場合、抵当権を抹消する手続きが必要です。抵当権抹消費用は以下の通りです。
- 登録免許税: 不動産1件につき1,000円
- 司法書士報酬: 1.5〜2万円
マンション(土地・建物で2件)の場合、登録免許税は2,000円です。
(2) 印紙税(売買契約書に貼付)
印紙税は、売買契約書に貼付する収入印紙の費用です。売却価格に応じて以下の通り変動します(軽減措置適用後)。
印紙税額(軽減措置適用後)
| 売却価格 | 印紙税額 |
|---|---|
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 6万円 |
(3) 測量費・解体費(物件状況により数十万~数百万円)
土地の境界が不明確な場合、測量費(50〜80万円)が必要です。古い建物を解体する場合、解体費(100〜300万円)がかかります。
これらの費用は物件の状況により大きく異なるため、事前に見積もりを取得してください。
(4) 引越し費用・ハウスクリーニング費用
その他、引越し費用(10〜30万円)、ハウスクリーニング費用(5〜10万円)等も必要になる場合があります。
諸費用を抑える方法と節税対策
(1) 3000万円特別控除の活用
マイホーム売却の場合、3000万円特別控除を活用することで、譲渡所得税を大幅に軽減できます。要件を満たすか確認してください。
(2) 所有期間5年超での売却
所有期間が5年を超えてから売却することで、譲渡所得税の税率を約40%から20%に半減できます。売却時期を調整できる場合は、5年超での売却を検討してください。
(3) 仲介手数料の交渉と複数社比較
仲介手数料は上限が法律で定められていますが、上限額が必ず適用されるわけではありません。複数の不動産会社に見積もりを依頼し、仲介手数料を比較・交渉することで、費用を抑えられる場合があります。
(4) 譲渡費用として認められる費用の範囲
譲渡費用として認められる費用には、仲介手数料、測量費、解体費、建物の取り壊し費用等があります。国税庁の公式情報によると、これらの費用を計上することで、譲渡所得を減らし、税負担を軽減できます。
まとめ:手取り額を最大化するために
不動産売却にかかる諸費用の総額は売却価格の4~6%程度が目安です。主な内訳は仲介手数料(売却価格の約3.3%)、譲渡所得税(所有期間5年超で20%、5年以下で約40%)、登記費用等です。
マイホーム売却の場合は3000万円特別控除が適用でき、税負担を大幅に軽減できます。所有期間5年超での売却、複数社の仲介手数料比較、譲渡費用として認められる範囲の最大化等により、諸費用を抑えることができます。
売却価格から諸費用を差し引いた手取り額を正確に把握するため、不動産会社や税理士に相談してください。詳細な税額計算・節税対策は税理士への相談を推奨します。


