不動産のレインズ、聞いたことはあるけれど実際何なのか?
不動産の売買を検討していると、「レインズ」という言葉を耳にすることがあります。「不動産会社しか見られないシステム」「一般の人は見られない」と聞いて、「自分には関係ないのか?」と感じた方もいるかもしれません。
この記事では、レインズの基本知識、仕組みと役割、一般の人が情報を見る方法を解説します。国土交通省のレインズ制度改正に関する公式発表やレインズマーケットインフォメーション公式サイトの情報を元に、2025年時点の最新情報をお届けします。
初めて不動産売買を行う方でも、レインズを活用した効果的な物件探し・売却方法を理解できるようになります。
この記事のポイント
- レインズは不動産会社専用のシステムだが、専任媒介契約を結んだ売主は登録証明書のIDで自分の物件情報を確認できる
- 一般人はレインズマーケットインフォメーションで過去の成約価格を無料で検索できる(エリア、築年数、間取りで絞り込み可能)
- 2025年1月から取引状況(ステータス)の登録が義務化され、リアルタイムで確認可能に
- 全国で約14万社の不動産会社がレインズを利用しており、物件情報の共有により早期売却・購入のチャンスが広がる
不動産のレインズ(REINS)とは?【基本知識】
(1) レインズの正式名称と運営組織
レインズ(REINS) は、Real Estate Information Network System の略称です。
国土交通大臣指定の 不動産流通機構 が運営する、不動産会社専用の物件情報共有ネットワークです。
役割:
- 全国の不動産会社が売買物件情報を登録・検索できるシステム
- 物件の早期売却・購入を支援
- 成約価格データの蓄積と公開
(2) 全国4つの指定流通機構(東日本・中部・近畿・西日本)
レインズは、全国を4つの地域に分けて運営されています。
| 組織名 | 対象地域 | 公式サイト |
|---|---|---|
| 東日本レインズ | 北海道・東北・関東・甲信越 | https://www.reins.or.jp/ |
| 中部レインズ | 愛知・岐阜・三重・静岡 | https://www.central-reins.jp/ |
| 近畿レインズ | 大阪・兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山 | https://www.kinkireins.or.jp/ |
| 西日本レインズ | 中国・四国・九州・沖縄 | https://www.nishinihon-reins.or.jp/ |
各組織が独立してシステムを運営していますが、全国の物件情報は相互に検索できます。
(3) 約14万社の不動産会社が利用するネットワーク
2023年度のレインズ統計:
- 会員数: 約14万5,241社
- 新規登録物件数: 427万2,339件
(出典: 各レインズ公式サイト、2023年度実績)
全国のほぼすべての不動産会社がレインズに加盟しており、物件情報を共有しています。
レインズの仕組みと役割
(1) 不動産会社専用の物件情報共有システム
レインズは 不動産会社専用 のシステムです。一般の人が直接アクセスすることはできません。
仕組み:
- 不動産会社が売却物件をレインズに登録
- 全国の不動産会社が24時間検索可能
- 購入希望者に物件を紹介
- 売買成立後、成約価格を報告
メリット: 1社だけでなく、全国の不動産会社が物件を紹介できるため、早期売却の可能性が高まります。
(2) 専任媒介契約とレインズ登録義務
媒介契約の種類により、レインズへの登録義務が異なります。
| 媒介契約の種類 | レインズ登録義務 | 登録期限 |
|---|---|---|
| 専属専任媒介契約 | 義務 | 5日以内 |
| 専任媒介契約 | 義務 | 7日以内 |
| 一般媒介契約 | 任意(義務なし) | - |
専任媒介契約・専属専任媒介契約: 1社の不動産会社のみに売却を依頼する契約。レインズ登録が義務付けられており、全国の不動産会社に物件情報が共有されます。
一般媒介契約: 複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる契約。レインズ登録は任意のため、情報が共有されない場合があります。
(3) 売買成立後の成約価格報告
売買契約が成立した後、不動産会社はレインズに 成約価格 を報告する義務があります。
成約価格の活用:
- レインズマーケットインフォメーション(後述)で一般公開
- 実際の取引価格データとして、相場確認に活用
注意: 売り出し価格(売値)と成約価格は異なる場合があります。成約価格が実際の取引相場を示します。
レインズのメリットとデメリット
(1) メリット:全国の不動産会社が24時間情報共有、早期売却の可能性
メリット:
- 広範囲への情報提供: 全国約14万社の不動産会社が物件情報を検索でき、買主候補が増加
- 早期売却の可能性: 複数の不動産会社が同時に買主を探すため、売却スピードが向上
- 適正価格の把握: 成約価格データにより、相場を正確に把握できる
(2) デメリット:一般媒介契約は登録義務なし、囲い込みリスク
デメリット:
- 一般媒介契約は登録義務なし: レインズに登録されない場合、情報共有が限定され、売却機会が減少
- 囲い込みリスク: 不動産会社が両手仲介(売主・買主双方から手数料を得る)を狙い、他社に物件情報を紹介しない行為が発生する可能性(後述の2025年制度改正で防止策強化)
囲い込みとは: 不動産会社が自社顧客のみに物件を紹介し、他社には紹介しない行為。宅地建物取引業法違反のおそれがあります。
(3) SUUMOやHOME'Sとの違い
SUUMOやHOME'Sとの比較:
| 項目 | レインズ | SUUMO・HOME'S |
|---|---|---|
| 利用者 | 不動産会社のみ | 一般の人も閲覧可能 |
| 情報内容 | 全国の売買物件情報 | 広告として掲載された物件 |
| 成約価格 | 報告義務あり | 掲載なし |
| 目的 | 業者間の情報共有 | 消費者向け広告 |
SUUMOやHOME'Sは一般向けの広告媒体ですが、レインズは業者間の情報共有システムです。レインズに登録されているすべての物件が、SUUMOやHOME'Sに掲載されるわけではありません。
一般の人がレインズ情報を見る方法
(1) 売主は登録証明書のIDで自分の物件を確認できる
専任媒介契約または専属専任媒介契約を結んだ売主は、自分の物件情報を確認できます。
手順:
- 不動産会社からレインズ 登録証明書 を受け取る
- 登録証明書に記載された 専用ID・パスワード を使用
- レインズの 売主専用画面 にアクセス
- 自分の物件の取引状況を確認
確認できる情報:
- 物件の登録状況
- 取引状況(公開中・申込あり・一時停止中)
- 登録内容の詳細
2025年1月から: QRコード付き登録証明書が導入され、スマホで簡単にアクセスできるようになりました(後述)。
(2) レインズマーケットインフォメーションで成約価格を検索
レインズマーケットインフォメーション は、レインズの成約価格データを一般公開したサイトです。
公式サイト: http://www.contract.reins.or.jp/
検索できる情報:
- 成約価格: 実際に売買契約が成立した価格
- 検索条件: エリア、築年数、間取り、専有面積等
- データ期間: 過去2年間(一部地域は過去1年間)
- グラフ表示: 価格推移をグラフで確認
使い方:
- レインズマーケットインフォメーションにアクセス
- 「マンション」または「戸建」を選択
- 都道府県・市区町村を選択
- 築年数・間取り等を絞り込み
- 成約価格の統計データを表示
注意: 現在売り出し中の物件情報は見られません。過去の成約価格のみです。
(3) 不動産会社に来店してレインズの物件情報を見せてもらう
購入を検討している場合、不動産会社に来店すれば、レインズに登録されている物件情報をその場で見せてもらえます。
手順:
- 不動産会社に来店
- 希望条件(エリア、価格、間取り等)を伝える
- 不動産会社がレインズで物件を検索
- その場で物件情報を確認
メリット: SUUMOやHOME'Sに掲載されていない物件も見つかる可能性があります。
2025年1月施行の新制度【ステータス管理義務化】
(1) 取引状況の3つのステータス(公開中・申込あり・一時停止中)
2025年1月1日から、国土交通省が宅地建物取引業法施行規則を改正し、レインズへの 取引状況(ステータス)登録が義務化 されました。
3つのステータス:
| ステータス | 意味 |
|---|---|
| 公開中 | 通常通り物件を紹介可能 |
| 書面による購入申込あり | 購入申込書が提出されているが、まだ契約は成立していない |
| 売主都合で一時紹介停止中 | 売主の事情により一時的に紹介を停止 |
(出典: 国土交通省「レインズにおける取引状況の登録制度の導入」)
目的: リアルタイムで物件の取引状況を共有し、囲い込みを防止
(2) QRコード付き登録証明書で簡単アクセス
2025年1月4日から、レインズ登録証明書に QRコード が追加されました。
使い方:
- 不動産会社から受け取った登録証明書のQRコードをスマホで読み取る
- 売主専用画面に自動でアクセス
- 自分の物件の取引状況をリアルタイムで確認
メリット: ID・パスワードの手入力が不要で、簡単にアクセスできます。
(3) 囲い込み防止と取引透明性の向上
ステータス管理義務化により、以下の効果が期待されています。
効果:
- 囲い込みの防止: 「公開中」のステータスが表示されているのに他社が紹介できない場合、囲い込みの疑いがあると判断できる
- 取引透明性の向上: 売主が自分の物件の状況をリアルタイムで確認でき、不動産会社の対応を監視できる
注意: 不動産会社がステータスを正しく更新しない場合、情報が不正確になるリスクがあります。売主は定期的に確認しましょう。
まとめ:レインズを活用した賢い不動産売買
レインズは不動産会社専用のシステムですが、専任媒介契約を結んだ売主は登録証明書のIDで自分の物件情報を確認でき、一般の人はレインズマーケットインフォメーションで過去の成約価格を無料で検索できます。
2025年1月から取引状況(ステータス)の登録が義務化され、「公開中」「申込あり」「一時停止中」の3つがリアルタイムで確認可能になりました。QRコード付き登録証明書でスマホから簡単にアクセスできます。
全国で約14万社の不動産会社がレインズを利用しており、物件情報の共有により早期売却・購入のチャンスが広がります。不動産売買を検討している方は、不動産会社にレインズ登録の有無を確認し、登録証明書を受け取って取引状況を定期的に確認しましょう。
詳細はレインズマーケットインフォメーションや不動産会社にご確認ください。
