不動産購入の諸費用とは?知っておくべき基礎知識
不動産購入を検討する際、物件価格以外にどのくらいの費用が必要なのか、不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産購入時の諸費用の目安、内訳、支払いタイミング、住宅ローンへの組み込み方法を、LIFULL HOME'S、三菱UFJ銀行、東京都主税局などの信頼できる情報源をもとに解説します。
初めて不動産を購入する方でも、必要な資金を正確に把握し、無理のない資金計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 不動産購入の諸費用は、新築物件で物件価格の3~7%、中古物件で6~10%が目安
- 諸費用は物件関連費用(仲介手数料・印紙税・登記費用・不動産取得税)と住宅ローン関連費用(保証料・事務手数料・保険料)に大別される
- 一部の金融機関では物件価格の110%を上限に諸費用を住宅ローンに組み込み可能だが、借入総額が増えて返済負担が大きくなる
- 諸費用を抑える方法として、金融機関の比較、保証料型と融資手数料型の選択、火災保険の見直しなどがある
諸費用の目安:物件種別ごとの相場
不動産購入の諸費用は、物件の種別(新築/中古、マンション/一戸建て/注文住宅)によって大きく異なります。ここでは物件種別ごとの目安を解説します。
新築マンション:物件価格の3~6%
新築マンションの諸費用は、物件価格の3~6%が目安です。新築物件では仲介手数料が不要なケースが多く、諸費用を抑えられる傾向があります。
ただし、新築マンションでは修繕積立基金(20~40万円程度)が必要になる点に注意が必要です。
中古マンション:物件価格の6~10%
中古マンションの諸費用は、物件価格の6~10%が目安です。仲介手数料(物件価格の3%+6万円+消費税が上限)が必要になるため、新築マンションよりも諸費用が高くなります。
三菱UFJ銀行によると、中古マンションでは登記費用も新築より高くなる傾向があります。
新築一戸建て・建売住宅:物件価格の3~7%
新築一戸建てや建売住宅の諸費用は、物件価格の3~7%が目安です。新築マンションと同様、売主から直接購入する場合は仲介手数料が不要です。
一戸建ての場合、登記費用(所有権保存登記・抵当権設定登記)が必要になります。
中古一戸建て:物件価格の6~10%
中古一戸建ての諸費用は、物件価格の6~10%が目安です。中古マンションと同様、仲介手数料が必要になるため、新築一戸建てよりも諸費用が高くなります。
注文住宅:土地建物合計額の10~12%
注文住宅の諸費用は、土地建物合計額の10~12%が目安です。LIFULL HOME'Sによると、土地購入と建物建築の2段階で諸費用が発生するため、他の物件種別よりも高くなります。
土地購入時には仲介手数料・登記費用・印紙税、建物建築時には建築確認申請費用・上下水道引込工事費用・登記費用などが必要です。
3,000万円の物件購入時の諸費用シミュレーション
LIFULL HOME'Sによると、3,000万円の中古物件を購入する場合、諸費用は約180~300万円が目安です。
| 物件種別 | 物件価格 | 諸費用の目安 | 諸費用額 |
|---|---|---|---|
| 新築マンション | 3,000万円 | 3~6% | 90~180万円 |
| 中古マンション | 3,000万円 | 6~10% | 180~300万円 |
| 新築一戸建て | 3,000万円 | 3~7% | 90~210万円 |
| 中古一戸建て | 3,000万円 | 6~10% | 180~300万円 |
| 注文住宅 | 3,000万円 | 10~12% | 300~360万円 |
(出典: LIFULL HOME'S)
諸費用の内訳:何にいくらかかる?
不動産購入の諸費用は、物件関連費用と住宅ローン関連費用に大別されます。SBIマネープラザによると、諸費用の多くは現金支払いが必要です。
物件関連費用:仲介手数料・印紙税・登記費用・不動産取得税
仲介手数料
不動産会社に支払う手数料です。物件価格の3%+6万円+消費税が上限で、新築物件や売主直販の場合は不要です。
例:3,000万円の物件の場合 (3,000万円 × 3% + 6万円)× 1.10(消費税)= 105.6万円
印紙税
売買契約書や住宅ローン契約書に貼る印紙代です。契約金額により異なります。
| 契約金額 | 印紙税(軽減措置適用時) |
|---|---|
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 10,000円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 30,000円 |
登記費用
所有権移転登記・抵当権設定登記にかかる費用です。登録免許税と司法書士報酬の合計で、10~30万円程度が目安です。
不動産取得税
不動産取得時に課される地方税です。東京都主税局によると、固定資産税評価額 × 3%で計算されます。
宅地は固定資産税評価額を1/2に軽減、新築住宅は1,200万円控除があります。
計算例:固定資産税評価額2,000万円の新築住宅(宅地)の場合
- 建物:(2,000万円 - 1,200万円)× 3% = 24万円
- 土地:(2,000万円 × 1/2)× 3% = 30万円
- 合計:54万円
住宅ローン関連費用:保証料・事務手数料・火災保険料・地震保険料
ローン保証料
住宅ローンの保証会社に支払う料金です。一括前払い型(50~100万円程度)と金利上乗せ型(金利+0.2%程度)があります。
融資手数料
金融機関に支払う住宅ローンの事務手数料です。定額型(3~5万円程度)と定率型(借入額の2.2%程度)があります。
火災保険料
火災・水災等に備える保険です。住宅ローン契約時に加入が必須で、10年一括払いで20~30万円程度が目安です。
地震保険料
地震による損害に備える保険です。火災保険とセットで加入します。保険料は都道府県や建物構造により異なります。
その他の費用:引越費用・家具家電・修繕積立基金(新築マンション)
その他、引越費用(10~20万円程度)、家具家電の購入費用、新築マンションの場合は修繕積立基金(20~40万円程度)が必要です。
現金支払いが必要な費用と後払い可能な費用
諸費用の多くは契約時・引渡し時に現金で支払う必要があります。不動産取得税のみ、購入後6ヶ月~1年半後に納税通知書が届き、後払いとなります。
諸費用の支払いタイミング
諸費用は、契約時・引渡し時・引渡し後の3段階で支払います。三井のリハウスによると、支払いタイミングを把握しておくことが重要です。
契約時に必要な費用:仲介手数料の一部・印紙税
契約時には、仲介手数料の一部(50%程度)と印紙税を支払います。数十万円程度の現金が必要です。
引渡し時に必要な費用:仲介手数料の残金・登記費用・ローン保証料・保険料
引渡し時には、仲介手数料の残金、登記費用、ローン保証料、火災保険料・地震保険料を支払います。数百万円の現金が必要になるため、事前に準備が必要です。
引渡し後に必要な費用:不動産取得税(購入後6ヶ月~1年半後)・引越費用
不動産取得税は、SUUMOジャーナルによると、購入後6ヶ月~1年半後に納税通知書が届きます。納税資金の準備が必要です。
引越費用は引渡し後に支払います。
諸費用を住宅ローンに組み込む方法と注意点
一部の金融機関では、諸費用を住宅ローンに組み込んで借入することが可能です。ここでは組み込みの方法と注意点を解説します。
諸費用ローンとは:物件価格の110%を上限に借入可能
三菱UFJ銀行によると、物件価格の110%を上限に、諸費用を含めて借入可能です。手元資金が不足している場合に有効な方法です。
組み込み可能な費用:印紙税・登記費用・保証料・保険料・仲介手数料・引越費用等
組み込み可能な費用は、印紙税、登記費用、保証料、保険料、仲介手数料、引越費用などです。不動産取得税は購入後に発生するため、通常は組み込めません。
フラット35の諸費用ローン:条件と上限
ファミリーライフサービスによると、フラット35でも一部の諸費用を借入金額に組み込めます。ただし、条件や上限があるため、詳細は金融機関への確認が必要です。
諸費用を組み込むメリット:手元資金を残せる
諸費用をローンに組み込むことで、手元資金を残せます。緊急時の備えや家具家電の購入資金として活用できます。
諸費用を組み込むデメリット:借入総額が増え返済負担が大きくなる
諸費用をローンに組み込むと、借入総額が増えて返済負担が大きくなります。SBIマネープラザによると、利息負担も増加するため、慎重な判断が必要です。
まとめ:諸費用を抑えるポイントと資金計画
不動産購入の諸費用は、新築物件で物件価格の3~7%、中古物件で6~10%が目安です。数百万円になるため、事前に正確な金額を把握しておくことが重要です。
諸費用を抑える方法:金融機関の比較・保証料型と融資手数料型の選択・火災保険の見直し・仲介手数料の交渉
諸費用を抑える方法として、以下の方法があります。
- 金融機関の比較:複数の金融機関で見積もりを取り、保証料や融資手数料を比較する
- 保証料型と融資手数料型の選択:保証料型(一括前払い)と融資手数料型(定率)の総負担額を比較し、有利な方を選ぶ
- 火災保険の見直し:複数社で見積もりを取り、保険料を10~20%削減できる場合がある
- 仲介手数料の交渉:不動産会社によっては仲介手数料の値引きに応じる場合がある
2024年以降の住宅ローン控除:新築は省エネ性能が必須要件
ファミリーライフサービスによると、2024年以降、新築で住宅ローン控除を受けるには省エネ性能(省エネ基準適合住宅以上)が必須要件となりました。
省エネ性能の確認が必要な場合は、宅地建物取引士への相談を推奨します。
専門家への相談:宅建士・税理士・ファイナンシャルプランナー
諸費用の計算や資金計画に不安がある場合は、宅地建物取引士、税理士、ファイナンシャルプランナーへの相談を推奨します。
税制は改正される可能性があるため、最新の情報は国税庁や各自治体の公式サイトで確認してください。(執筆時点:2025年)
