不動産投資のリスクを知っておくべき理由
不動産投資に興味があるものの、「リスクが怖い」「失敗したらどうしよう」と不安を感じる方は少なくありません。不動産投資には複数のリスクがありますが、事前に理解し対策することで成功率を高めることができます。
この記事では、不動産投資の7つの主要リスクと、それぞれの具体的な対策方法を解説します。投資判断をする前にリスクを正しく理解しておくことで、無理のない投資計画を立てることができます。
この記事のポイント
- 空室リスクが不動産投資の最大のリスク
- 家賃滞納率は全国で1ヶ月滞納0.8%、2ヶ月以上滞納0.3%(2022年度)と低い水準
- 2024年9月に日銀が金利引き上げを発表し、金利上昇リスクに注意が必要
- リスクを知って対策することで、失敗する確率を下げられる可能性がある
不動産投資の基礎知識(仕組み・利回り)
不動産投資の収益構造
不動産投資は、物件を購入して賃貸に出すことで家賃収入を得る投資方法です。収益は主に2種類あります。
- インカムゲイン: 毎月の家賃収入から経費・ローン返済を引いた利益
- キャピタルゲイン: 物件売却時の売却益(購入価格より高く売れた場合)
多くの投資家は毎月の家賃収入(インカムゲイン)を目的としますが、出口戦略として売却(キャピタルゲイン)も考慮しておく必要があります。
表面利回りと実質利回りの違い
不動産投資の収益性は「利回り」で判断します。
| 種類 | 計算式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 表面利回り | 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100 | 経費を考慮しない |
| 実質利回り | (年間家賃収入 - 経費) ÷ 物件価格 × 100 | 管理費・修繕費等を考慮 |
注意: 表面利回りだけで判断せず、実質利回りで収益性を確認することが重要です。経費を考慮すると、実際の利回りは表面利回りより1〜2%程度低くなることが一般的です。
不動産投資の7つの主要リスク
空室リスク(最大のリスク)
空室リスクは不動産投資の最大のリスクです。入居者がいない期間は家賃収入がゼロになり、ローン返済を自己資金で賄う必要があります。
日本賃貸住宅管理協会のデータによると、入居率は以下の通りです(2024年時点)。
| 地域 | 入居率 |
|---|---|
| 全国平均 | 94.2% |
| 東京圏 | 95.6% |
入居率94%は、100戸のうち6戸が空室という状態を意味します。空室が長期化すると収支が悪化するため、最も注意すべきリスクです。
家賃滞納リスク
家賃滞納リスクは、入居者が家賃を支払わないリスクです。滞納が長期化すると、収入が途絶えながらも維持費やローン返済は続くため、経営が困難になる可能性があります。
2022年度の滞納率は以下の通りです。
| 滞納期間 | 滞納率(全国) |
|---|---|
| 1ヶ月滞納 | 0.8% |
| 2ヶ月以上滞納 | 0.3% |
滞納率は低い水準ですが、発生した場合の影響は大きいため対策が必要です。
家賃下落リスク
家賃下落リスクは、築年数の経過や市場環境の変化により家賃が下落するリスクです。
東京23区の場合、築10年で家賃が年1%ずつ下落し、20〜25年で底を打つ傾向があるとされています。新築物件を購入する場合は、将来の家賃下落を見込んだ収支計画が必要です。
金利上昇リスク(2024年動向)
金利上昇リスクは、変動金利でローンを組んだ場合に金利が上昇し、返済額が増加するリスクです。
2024年9月に日本銀行は金利引き上げを発表しました。今後も段階的な引き上げの可能性が指摘されており、変動金利でローンを組んでいる投資家は注意が必要です。
金利上昇の影響例(借入額3,000万円、35年返済)
| 金利 | 月々返済額 | 金利0.5%上昇時の増加額 |
|---|---|---|
| 1.0% | 約84,700円 | +約7,500円/月 |
| 1.5% | 約92,200円 | +約7,800円/月 |
※計算は目安です。実際の返済額は借入条件により異なります。
修繕リスク
修繕リスクは、経年劣化により修繕費用が発生するリスクです。エアコン、給湯器、水回り設備などは10〜15年で交換が必要になることがあります。
修繕費用の目安は以下の通りです。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| エアコン交換 | 10〜15万円 |
| 給湯器交換 | 10〜20万円 |
| 原状回復工事 | 10〜30万円 |
| 大規模修繕(マンション) | 100〜200万円/戸 |
災害リスク
災害リスクは、地震・火災・台風・水害などの自然災害により建物が損傷するリスクです。
日本は地震大国であり、水害リスクも年々高まっています。物件購入前にハザードマップで災害リスクを確認し、火災保険・地震保険に加入することが重要です。
流動性リスク
流動性リスクは、不動産を売却したいときにすぐに売れないリスクです。株式と異なり、不動産は売却に数ヶ月かかることが一般的です。
急いで売却しようとすると、相場より安い価格で売ることになる可能性があります。出口戦略を事前に計画しておくことが重要です。
各リスクへの具体的な対策方法
賃貸需要の高い地域を選ぶ
空室リスクを軽減するには、賃貸需要の高い地域を選ぶことが有効です。
- 駅から徒歩10分以内
- 商業施設・スーパーが近い
- 大学・企業が集まるエリア
- 人口増加傾向の地域
物件購入前に、管理会社の入居率データを確認することをおすすめします。
滞納保証サービスの活用
家賃滞納リスクに備えて、滞納保証サービスの利用を検討してください。滞納保証サービスを利用すると、入居者が滞納した場合でも管理会社が家賃を立て替えてくれます。
手数料は家賃の数%程度かかりますが、収入の安定化につながります。
修繕費の積立と計画
修繕リスクに備えて、毎月の修繕費積立を計画してください。
積立の目安:
- ワンルーム: 毎月1万円程度
- ファミリータイプ: 毎月1.5〜2万円程度
大規模修繕のタイミング(築15〜20年)に備えて、計画的に資金を確保しておくことが重要です。
火災保険・地震保険の加入
災害リスクに備えて、火災保険・地震保険に加入してください。
- 火災保険: 火災・落雷・風災・水災などを補償
- 地震保険: 地震・噴火・津波による損害を補償(火災保険とセットで加入)
物件購入前にハザードマップで災害リスクを確認し、リスクの低い物件を選ぶことも有効です。
不動産投資で失敗しないためのポイント
出口戦略を含めた投資計画
不動産投資は「購入」がゴールではありません。出口戦略(いつ・いくらで売却するか)を含めた投資計画を立ててください。
- 何年後に売却するか
- いくらで売却できるか(築年数による価格下落を考慮)
- 売却時のローン残高はいくらか
出口戦略を事前に計画することで、想定外の損失を防ぐことができます。
自己資金と借入額のバランス
金利上昇リスクに備えて、自己資金を増やして借入額を抑えることが有効です。
自己資金の割合が高いほど、金利上昇時の影響を小さくできます。また、空室が発生した場合の返済負担も軽減できます。
専門家への相談
不動産投資は複雑な投資です。以下の専門家への相談を推奨します。
- 不動産会社: 物件選び・市場動向
- 税理士: 税金対策・確定申告
- ファイナンシャルプランナー: 資金計画・ライフプラン
複数の専門家の意見を聞き、総合的に判断することが重要です。
まとめ:リスクを理解して賢く投資する
不動産投資には空室リスク、家賃滞納リスク、金利上昇リスクなど複数のリスクがあります。しかし、リスクを事前に理解し対策することで、失敗する確率を下げることができます。
リスク対策のまとめ
| リスク | 対策 |
|---|---|
| 空室リスク | 賃貸需要の高い地域を選ぶ |
| 家賃滞納リスク | 滞納保証サービスを利用する |
| 金利上昇リスク | 自己資金を増やし借入額を抑える |
| 修繕リスク | 毎月の修繕費積立を計画する |
| 災害リスク | 火災保険・地震保険に加入する |
「不動産投資は9割が失敗する」という話もありますが、公式な統計はありません。成功の定義は人により異なりますが、リスクを知って対策することで成功率を高められる可能性があります。
不動産投資を検討する際は、専門家(不動産会社、税理士、ファイナンシャルプランナー等)に相談し、慎重に判断してください。
