不動産仲介と売買の違いとは
不動産の売却や購入を検討する際、「不動産仲介」と「不動産売買(買取)」の違いがわからず、どちらを選ぶべきか迷っている方は多いのではないでしょうか。「仲介手数料はいくらかかるのか」「どちらが高く売れるのか」といった疑問もあるかと思います。
この記事では、不動産仲介と買取の違い、仕組み、仲介手数料の計算方法、選び方のポイントを、宅地建物取引業法や業界の最新動向を踏まえて解説します。
初めて不動産売買を行う方でも、自分に合った方法を選べるようになります。
この記事のポイント
- 不動産仲介は売主と買主の間に入る仲介業務、買取は業者が直接買い取る方式
- 仲介手数料は売買価格の「3%+6万円+消費税」が上限で、成功報酬のため売買不成立時は不要
- 媒介契約には専属専任・専任・一般の3種類があり、それぞれメリット・デメリットがある
- 仲介は高値で売れる可能性があるが時間がかかり、買取は早いが価格は市場価格の70-80%程度
- 不動産売買の諸費用は売買価格の4-6%程度(仲介手数料・印紙税・登記費用等)
不動産仲介とは?売買(買取)との違いを理解する
不動産仲介と買取は、不動産の売却方法として大きく異なります。それぞれの特徴を理解しましょう。
(1) 不動産仲介:売主と買主の間に入る仲介業務
不動産仲介とは、不動産の売買や賃貸において、売主・貸主と買主・借主の間に入り、取引を円滑に成立させる業務です。
不動産会社は、以下のような業務を行います。
- 物件の査定・価格設定
- 販売活動(広告掲載、内覧対応等)
- 契約交渉・契約書作成
- 引渡しサポート
取引が成立した際に、売主または買主(または両方)から仲介手数料を受け取ります。
(2) 不動産買取:業者が直接買い取る方式
不動産買取とは、不動産会社が売主から物件を直接買い取る方式です。
買取の場合、以下のような流れになります。
- 不動産会社に査定依頼
- 買取価格の提示
- 売買契約締結
- 引渡し完了
仲介と異なり、買主を探す必要がないため、スピーディーに売却できます。
(3) メリット・デメリット比較(仲介:高値可能性・時間要/買取:早い・価格低め)
仲介と買取のメリット・デメリットを表にまとめると、以下のようになります。
| 項目 | 不動産仲介 | 不動産買取 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格に近い価格で売れる可能性 | 市場価格の70-80%程度 |
| 売却期間 | 3-6ヶ月程度かかる場合がある | 数日~1ヶ月で売却可能 |
| 仲介手数料 | 売買価格の3%+6万円+消費税 | 不要(買取価格に含まれる) |
| リスク | 買主が見つからない可能性 | 買取価格が低め |
| 向いている人 | 時間をかけても高く売りたい方 | すぐに現金化したい方 |
不動産仲介の仕組み-媒介契約とREINSの役割
不動産仲介では、媒介契約を締結し、REINSを活用して販売活動を行います。
(1) 媒介契約の3種類(専属専任・専任・一般)の特徴
媒介契約とは、不動産の売却を不動産会社に依頼する契約です。以下の3種類があります。
専属専任媒介契約:
- 1社のみに仲介を依頼し、自己発見取引も禁止
- 手厚いサポートが期待できるが、制約が強い
- 7日以内にREINS登録義務、週1回以上の活動報告義務
専任媒介契約:
- 1社のみに仲介を依頼するが、自己発見取引は可能
- バランスの取れた契約形態
- 7日以内にREINS登録義務、2週に1回以上の活動報告義務
一般媒介契約:
- 複数社に同時に仲介を依頼できる
- 競争により早期売却の可能性があるが、販売活動が手薄になる可能性も
- REINS登録義務なし、活動報告義務なし
(2) REINS(レインズ)とは?物件情報共有の仕組み
REINS(レインズ)とは、不動産流通標準情報システムのことです。国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営し、全国の不動産会社が物件情報を共有します。
REINSに登録することで、多くの不動産会社が物件情報を閲覧でき、買主候補を広く探すことができます。
(3) 2025年の業界動向(大手仲介手数料収入70%増加、取引件数増加は30%)
2025年の不動産仲介業界では、大手不動産会社の70%以上が仲介手数料収入を増加させています。一方で、取引件数の増加は30%にとどまっており、物件価格の上昇により手数料収入が増加していることを示唆しています。
また、2025年1月には政策金利が0.25%から0.5%に引き上げられ、住宅ローン金利への影響が懸念されています。
仲介手数料の計算方法と支払いタイミング
仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限が定められています。
(1) 仲介手数料の上限:物件価格の3%+6万円+消費税
仲介手数料の上限は、売買価格に応じて以下のように定められています。
| 売買価格 | 仲介手数料の上限 |
|---|---|
| 200万円以下 | 売買価格の5%+消費税 |
| 200万円超~400万円以下 | 売買価格の4%+2万円+消費税 |
| 400万円超 | 売買価格の3%+6万円+消費税 |
一般的な不動産取引(400万円超)では、「売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税」が上限となります。
(2) 具体的な計算例(3,000万円の物件なら96万円+税)
3,000万円の物件の場合、仲介手数料の上限は以下のように計算されます。
仲介手数料 = 3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円
消費税 = 96万円 × 10% = 9.6万円
合計 = 96万円 + 9.6万円 = 105.6万円
(3) 支払いタイミング(契約時50%、引渡し時50%が一般的)
仲介手数料は、一般的に以下のタイミングで支払います。
- 売買契約時: 仲介手数料の50%
- 引渡し完了時: 残り50%
仲介手数料は成功報酬のため、売買が不成立の場合は原則として発生しません。
不動産仲介の流れ-査定から引渡しまで
不動産仲介の流れは、以下のようになります。
(1) 物件査定(簡易査定・訪問査定)
不動産会社に査定を依頼します。査定には以下の2種類があります。
- 簡易査定: 物件の基本情報(立地、築年数、面積等)から概算価格を算出
- 訪問査定: 実際に物件を訪問し、詳細に調査して正確な価格を算出
複数の不動産会社に査定を依頼し、実績や対応を比較して選ぶことが重要です。
(2) 媒介契約締結と販売活動開始
不動産会社を選んだら、媒介契約を締結します。媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)を選び、契約期間(通常3ヶ月)を設定します。
契約締結後、不動産会社は以下のような販売活動を行います。
- REINSへの物件登録
- 広告掲載(ポータルサイト、チラシ等)
- 内覧対応
- 買主候補への営業
(3) 契約交渉・締結・物件引渡しまでの流れ
買主候補が見つかったら、契約交渉を行います。売買価格や引渡し条件を調整し、合意に達したら売買契約を締結します。
契約締結後は、以下のような流れで引渡しを行います。
- 手付金の受領(売買価格の5-10%程度)
- 住宅ローン審査(買主側)
- 残代金の決済・引渡し
- 所有権移転登記
不動産売買の注意点-契約書・諸費用・税務申告
不動産売買では、契約書の確認、諸費用の把握、税務申告が重要です。
(1) 売買契約書の必須確認項目(売買価格・支払条件・解除条項・契約不適合責任)
売買契約書には、以下の項目が記載されています。必ず確認しましょう。
- 売買価格: 物件の価格
- 支払条件: 手付金、残代金の支払い時期
- 解除条項: 契約解除の条件(住宅ローン不成立時等)
- 引渡日: 物件の引渡し日
- 物件状態: 設備・付帯物の状態
- 契約不適合責任: 売買契約の内容に適合しない場合の売主の責任(期間や範囲を明確化)
契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)は、個別契約により異なるため、専門家(宅地建物取引士、弁護士)への相談を推奨します。
(2) 諸費用の総額(売買価格の4-6%:仲介手数料・印紙税・登記費用等)
不動産売買には、仲介手数料以外にも以下のような諸費用がかかります。
| 項目 | 内容 | 目安額(3,000万円の場合) |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売買価格の3%+6万円+消費税 | 約105万円 |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付 | 1-3万円 |
| 登記費用 | 所有権移転登記、抵当権設定登記 | 10-30万円 |
| 司法書士報酬 | 登記手続きの代行 | 5-10万円 |
| その他 | 住宅ローン事務手数料等 | 10-20万円 |
諸費用の総額は、売買価格の4-6%程度が目安です。
(3) 売却後の税務申告(譲渡所得税)の注意点
不動産を売却した場合、譲渡所得税が課される可能性があります。
譲渡所得税は、以下のように計算されます。
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
所有期間により税率が異なります。
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下): 約39%(所得税30%、住民税9%)
- 長期譲渡所得(所有期間5年超): 約20%(所得税15%、住民税5%)
売却後は、確定申告が必要です。税理士への相談を推奨します。
まとめ:仲介と買取の選び方とポイント
不動産仲介は、売主と買主の間に入り取引を仲介する業務で、市場価格に近い価格で売れる可能性があります。一方、不動産買取は、業者が直接買い取る方式で、スピーディーに売却できますが、価格は市場価格の70-80%程度になります。
仲介手数料は、売買価格の「3%+6万円+消費税」が上限で、成功報酬のため売買不成立時は不要です。媒介契約には専属専任・専任・一般の3種類があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
不動産売買の諸費用は売買価格の4-6%程度で、仲介手数料以外にも印紙税や登記費用等がかかります。売却後は、譲渡所得税の確定申告も必要です。
時間をかけても高く売りたい方は仲介、すぐに現金化したい方は買取を選びましょう。複数の不動産会社に査定を依頼し、実績や対応を比較して、信頼できる不動産会社を選ぶことが成功のポイントです。
