不動産会社選びで失敗しないために知っておくべきこと
不動産の売却・購入を検討する際、「どの不動産会社に相談すればいいのか」「大手と地域密着型のどちらが良いのか」「仲介手数料はどのくらいかかるのか」など、様々な疑問が生まれるのではないでしょうか。
この記事では、不動産会社の業態分類、仲介会社の選び方、仲介手数料の相場、トラブル回避策を、不動産ジャパンや三井のリハウスの公式情報を元に解説します。
初めて不動産取引をする方でも、信頼できる業者を見分ける基準を持てるようになります。
この記事のポイント
- 不動産会社は仲介・買取・デベロッパー・管理の4つの業態に分類され、それぞれ役割が異なる
- 大手不動産会社は広範囲の物件検索が可能、地域密着型は地域特化の情報と柔軟な対応が強み
- 仲介手数料の法定上限は売買で物件価格の3%+6万円+消費税、賃貸で家賃1ヶ月分+消費税
- 囲い込み(違法行為)やおとり物件に注意し、複数社の比較と公式データベース活用が重要
- 営業年数、対応速度、契約を急がせないかを確認し、信頼できる不動産会社を選ぶ
不動産会社の業態分類(仲介・買取・デベロッパー・管理)
不動産会社は大きく分けて4つの業態があり、それぞれビジネスモデルと役割が異なります。目的に応じて適切な業態の会社を選ぶことが重要です。
(1) 仲介会社|売主と買主をつなぐ役割
仲介会社は、不動産の売主と買主をつなぎ、取引を仲介する会社です。最も一般的な不動産会社のタイプです。
主な業務:
- 物件の査定・広告
- 購入希望者の募集・案内
- 契約書類の作成・重要事項説明
- 契約成立時に仲介手数料を受け取る
メリット:
- 市場価格での売却・購入が可能
- 複数の購入希望者から選べる(売却時)
- 広範囲の物件情報にアクセスできる(購入時)
デメリット:
- 売却に時間がかかる場合がある
- 仲介手数料が発生する(物件価格の3%+6万円+消費税が上限)
(2) 買取業者|直接買い取りで即金化
買取業者は、不動産を直接買い取る会社です。仲介とは異なり、業者自身が買主となります。
主な業務:
- 物件の査定・即時買取
- リフォーム後に再販売
- 即金化が可能
メリット:
- 売却までの期間が短い(最短1週間程度)
- 仲介手数料が不要
- 瑕疵担保責任を問われない場合が多い
デメリット:
- 買取価格が市場価格の70-80%程度になる
- 交渉の余地が少ない
適したケース:
- 急いで現金化したい場合(相続・離婚・転勤等)
- 築年数が古く、仲介では売りにくい物件
(3) デベロッパー|開発・分譲を手がける
デベロッパーは、不動産の開発・分譲を手がける会社です。新築マンション・戸建ての開発・販売が主な業務です。
主な業務:
- 土地の取得・開発計画の立案
- 建設会社への発注・品質管理
- 新築物件の販売・アフターサービス
代表的な会社:
- 三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産等の大手デベロッパー
メリット:
- 新築物件を直接販売するため、仲介手数料が不要な場合がある
- 建物の保証・アフターサービスが充実
デメリット:
- 中古物件の取り扱いは少ない
- 価格交渉の余地が限られる
(4) 管理会社|賃貸物件の管理を行う
管理会社は、賃貸物件のオーナーから委託を受け、物件管理を行う会社です。
主な業務:
- 入居者募集・契約手続き
- 家賃の集金・督促
- 物件のメンテナンス・クレーム対応
- 退去時の原状回復工事
メリット:
- オーナーの負担を軽減
- 入居者とのトラブル対応を代行
デメリット:
- 管理委託料が発生(家賃の5-10%程度)
仲介会社の選び方(大手vs地域密着型、媒介契約の種類)
仲介会社を選ぶ際は、大手と地域密着型の違い、媒介契約の種類を理解することが重要です。
(1) 大手不動産会社のメリット・デメリット
三井のリハウスによると、大手不動産会社には以下の特徴があります。
メリット:
- 広範囲の物件検索: 全国ネットワークにより、広範囲の物件情報にアクセス可能
- ブランド力: 知名度が高く、購入希望者が集まりやすい
- 充実したサポート: 査定・広告・契約手続きが体系化されている
- 最新の市場データ: 全国規模のデータベースで相場を把握しやすい
デメリット:
- 担当者の異動が多い: 担当者が変わることで対応が一貫しない場合がある
- 地域特化の情報が弱い: 地域密着型に比べて地域特有の情報が少ない
- 柔軟性が低い: 規定に沿った対応が中心で、個別の事情に柔軟に対応しにくい
代表的な大手不動産会社:
- 三井不動産リアルティ(三井のリハウス)
- 東急リバブル
- 住友不動産販売
- 野村不動産ソリューションズ
(2) 地域密着型不動産会社のメリット・デメリット
メリット:
- 地域特化の情報: 地域の相場、学区、商業施設等の詳細情報を持つ
- 柔軟な対応: 個別の事情に応じた柔軟な対応が可能
- 長期的な関係: 担当者が変わりにくく、長期的な関係を築きやすい
- 地域ネットワーク: 地域の住民・事業者とのつながりが強い
デメリット:
- 物件情報の範囲が限られる: 広範囲の物件検索には不向き
- 広告力が弱い: 大手に比べて広告予算が少ない
- ブランド力が低い: 知名度が低く、購入希望者が集まりにくい場合がある
選び方の目安:
| 目的 | 推奨タイプ |
|---|---|
| 都心部の物件を広範囲に探したい | 大手不動産会社 |
| 地域の詳細情報が欲しい | 地域密着型 |
| 柔軟な対応を希望 | 地域密着型 |
| 転勤が多く全国ネットワークが必要 | 大手不動産会社 |
(3) 媒介契約の3種類(専属専任・専任・一般)と選び方
不動産売却時には、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には3種類あり、それぞれメリット・デメリットがあります。
専属専任媒介契約:
- 1社のみに依頼し、自己発見取引(自分で買主を見つける)も禁止
- メリット: 不動産会社が積極的に営業活動を行う、定期的な報告義務がある(1週間に1回以上)
- デメリット: 囲い込みのリスクがある、他社の情報が得られない
専任媒介契約:
- 1社のみに依頼するが、自己発見取引は可能
- メリット: 不動産会社が積極的に営業活動を行う、定期的な報告義務がある(2週間に1回以上)
- デメリット: 囲い込みのリスクがある、他社の情報が得られない
一般媒介契約:
- 複数社に同時に依頼可能
- メリット: 複数社が競争するため、広範囲に情報が流通する、囲い込みのリスクが低い
- デメリット: 不動産会社の営業活動が消極的になる場合がある、報告義務がない
選び方の目安:
| 状況 | 推奨タイプ |
|---|---|
| 人気エリアで早く売りたい | 一般媒介契約 |
| 不動産会社に積極的に営業してほしい | 専任媒介契約 |
| 信頼できる1社に任せたい | 専属専任媒介契約 |
仲介手数料の相場と計算方法
仲介手数料は不動産取引のコストの中で大きな割合を占めます。法定上限と計算方法を理解しておくことが重要です。
(1) 売買時の仲介手数料(物件価格の3%+6万円+消費税)
三井のリハウスによると、売買時の仲介手数料の法定上限は以下の通りです。
法定上限の計算式:
物件価格が400万円超の場合、仲介手数料の上限は以下の簡易計算式で求められます。
仲介手数料 = 物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税
具体例:
| 物件価格 | 仲介手数料(上限) |
|---|---|
| 3,000万円 | 105.6万円((3,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1) |
| 5,000万円 | 171.6万円((5,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1) |
| 1億円 | 336.6万円((1億円 × 3% + 6万円) × 1.1) |
(出典: 三井のリハウス)
重要な注意点:
- 上記は上限であり、値引き交渉が可能な場合がある
- 法定上限を超える請求は違法
- 仲介手数料は成功報酬のため、売買契約が成立しなければ発生しない
(2) 賃貸時の仲介手数料(家賃0.5-1ヶ月分+消費税)
賃貸契約時の仲介手数料の法定上限は、家賃1ヶ月分+消費税です。
一般的な相場:
- 借主負担: 家賃0.5-1ヶ月分+消費税
- 貸主負担: 家賃0-0.5ヶ月分+消費税
- 合計: 家賃1ヶ月分+消費税を超えない範囲
具体例:
| 家賃 | 仲介手数料(上限) |
|---|---|
| 8万円 | 8.8万円(8万円 × 1.1) |
| 10万円 | 11万円(10万円 × 1.1) |
| 15万円 | 16.5万円(15万円 × 1.1) |
重要な注意点:
- 借主・貸主の合計で家賃1ヶ月分+消費税が上限
- 「家賃1ヶ月分は借主負担」という慣例があるが、法律上は借主・貸主双方の合意が必要
- 不動産会社によっては仲介手数料無料のキャンペーンを実施している場合もある
(3) 法定上限を超える請求への対処法
仲介手数料の法定上限を超える請求をされた場合、以下の対処法があります。
1. 宅地建物取引業法の上限を確認:
- 宅地建物取引業法で定められた上限を超える請求は違法
- 不動産会社に上限の根拠を示し、訂正を求める
2. 国土交通省のネガティブ情報検索システムで確認:
- 行政処分を受けた不動産会社は公式データベースで確認可能
- 過去にトラブルがある会社は避ける
3. 消費者センターや宅建協会に相談:
- 不当な請求が続く場合、消費者センターや宅建協会に相談
- 悪質な場合は行政処分の対象になる
不動産会社とのトラブル回避策(囲い込み・おとり物件対策)
不動産会社とのトラブルを避けるためには、囲い込みやおとり物件等の悪質な手法を理解し、対策を取ることが重要です。
(1) 囲い込みとは|違法だが一部で横行
囲い込みとは、不動産会社が物件情報を適切に広告せず、自社で買主・売主両方から仲介手数料を得ようとする違法行為です。
囲い込みの手法:
- 他社からの問い合わせに「既に商談中」と虚偽の回答をする
- REINS(不動産流通機構)への登録を遅らせる、または「商談中」と表示する
- 自社の購入希望者のみに物件を紹介する
囲い込みのリスク:
- 売却価格が市場価格より低くなる
- 売却期間が長引く
- 適切な購入希望者を逃す
対策:
- 一般媒介契約を選ぶ: 複数社に依頼することで、囲い込みのリスクを低減
- REINSの登録証明書を確認: 専任・専属専任媒介契約の場合、REINSへの登録証明書を確認
- 複数社に問い合わせ: 他社から自分の物件の情報を確認し、適切に広告されているかをチェック
(2) おとり物件の見分け方
おとり物件とは、成約見込みが低いのに魅力的な物件として提示し、顧客を呼び込む悪質な手法です。
おとり物件の特徴:
- 相場より著しく安い価格
- 「好条件すぎる」物件(駅近・築浅・広い・安い等が全て揃う)
- 問い合わせると「既に成約済み」と言われ、他の物件を勧められる
対策:
- 相場を事前に確認: SUUMOやHOME'Sで相場を把握
- 複数社で同じ物件を確認: 他社でも同じ物件が同じ条件で掲載されているかをチェック
- 公式Webサイトで確認: 不動産会社の公式サイトで物件情報を確認
(3) 複数社比較と公式データベース活用
不動産会社選びでは、複数社の比較と公式データベースの活用が重要です。
複数社比較のメリット:
- 査定額の相場を把握できる
- 仲介手数料やサービス内容を比較できる
- 担当者の対応・専門性を確認できる
公式データベースの活用:
不動産ジャパンのトラブル事例集では、過去のトラブル事例を確認できます。
- 国土交通省ネガティブ情報検索システム: 行政処分を受けた不動産会社を検索
- 不動産ジャパン: 業界団体が運営する公式サイトで、トラブル事例を確認
- 口コミサイト: Google口コミ、マンションレビュー等で評判を確認
確認すべきポイント:
- 宅地建物取引業免許の更新回数(5年ごとに更新、更新回数が多いほど営業年数が長い)
- 過去の行政処分歴
- 顧客の口コミ・評判
- 売却実績・取引件数
まとめ|信頼できる不動産会社を見分けるチェックリスト
不動産会社選びでは、業態の違い、大手vs地域密着型の特徴、仲介手数料の相場、トラブル回避策を総合的に理解することが重要です。
仲介会社は売主と買主をつなぐ役割を担い、仲介手数料の法定上限は売買で物件価格の3%+6万円+消費税、賃貸で家賃1ヶ月分+消費税です。大手不動産会社は広範囲の物件検索が可能、地域密着型は地域特化の情報と柔軟な対応が強みです。
囲い込み(違法行為)やおとり物件に注意し、複数社の比較と公式データベース活用で信頼できる不動産会社を選びましょう。営業年数、対応速度、契約を急がせないかを確認し、自分のペースで決められる会社を選ぶことが成功の鍵です。
不動産会社選びのチェックリスト:
- 宅地建物取引業免許の更新回数を確認したか(5年ごとに更新)
- 国土交通省ネガティブ情報検索システムで行政処分歴を確認したか
- 複数社(3社以上)の査定を比較したか
- 仲介手数料が法定上限を超えていないか確認したか
- 媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)を理解したか
- 対応速度(問い合わせ当日に詳細な資料送付、数分以内のコールバック)を確認したか
- 契約を急がせず、自分のペースで決められる会社か確認したか
- 重要事項説明書を丁寧に説明してくれる会社か確認したか
- 口コミサイトや公式Webサイトで評判を確認したか
- 専門家(宅建士、弁護士等)への相談を検討したか
