不動産仲介業者の選び方と比較のポイント|失敗しないための基礎知識

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/21

なぜ不動産仲介業者選びが重要なのか

不動産の売却や購入を検討する際、「どの仲介業者に依頼すればよいのか」と迷う方は少なくありません。業者によって得意分野、手数料、対応品質が大きく異なるため、選び方を誤ると売却価格が下がったり、トラブルに巻き込まれたりするリスクがあります。

この記事では、不動産仲介業者の種類と特徴、選び方のポイント、手数料の仕組み、トラブル回避のコツを解説します。国土交通省不動産流通推進センターの公式情報を元に、複数の業者タイプを公平に比較します。

初めて不動産取引をする方でも、自分に合った業者を見つけられるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産仲介業者には大手と地域密着型があり、それぞれメリット・デメリットがある
  • 仲介手数料は法律で上限が定められており、売買価格400万円超の場合「(売買価格の3%+6万円)+消費税」が上限
  • 複数の業者から査定を取得し、営業担当者の対応や知識、料金体系の透明性を総合的に判断することが重要
  • 囲い込みや虚偽広告などの不当行為を避けるため、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で過去の行政処分歴を確認する

不動産仲介の基礎知識(定義・種類・仕組み)

(1) 不動産仲介業者とは何か

不動産仲介業者とは、売主と買主の間に立って物件の売買や賃貸を成立させる業者のことです。自ら物件を所有する販売業者とは異なり、仲介業者は取引成立時に成功報酬として仲介手数料を受け取ります。

仲介業者の主な業務は以下の通りです。

  • 物件の査定と価格設定のアドバイス
  • 広告宣伝活動(レインズへの登録、ポータルサイト掲載等)
  • 購入希望者の募集と内覧対応
  • 契約条件の調整と契約書作成
  • 重要事項説明(宅地建物取引士による法定業務)
  • 決済・引き渡しのサポート

不動産取引は高額で専門知識が必要なため、宅地建物取引士の資格を持つ専門家が仲介することで、トラブルを防ぎスムーズな取引が可能になります。

(2) 大手業者と地域密着型業者の違い

不動産仲介業者は、大きく「大手業者」と「地域密着型業者」に分けられます。それぞれの特徴を比較すると以下の通りです。

項目 大手業者 地域密着型業者
広告宣伝力 多様な媒体で効果的な宣伝が可能 地域限定だが密度の高い情報発信
ネットワーク 全国規模の顧客網 地域の独自ネットワーク
対応の柔軟性 マニュアル化された対応 個別事情に応じた柔軟な対応
仲介手数料 上限に近い設定が多い 値引き交渉の余地がある場合も
地域情報 全国的な知識 地域特有の情報に精通

大手業者は広告宣伝力と全国ネットワークを活かした幅広い顧客層へのアプローチが強みです。一方、地域密着型業者は地元の市場動向や学区情報、周辺環境に詳しく、きめ細かい対応が期待できます。

どちらが優れているかは一概に言えず、物件の立地や売主・買主の状況により最適な選択が異なります。

(3) 媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)

不動産会社に仲介を依頼する際、以下の3種類の媒介契約から選びます。

専属専任媒介契約

  • 1社のみに依頼、自己発見取引も不可
  • レインズ登録義務:契約から5日以内
  • 業務報告義務:1週間に1回以上
  • 業者の販売活動が最も積極的になる

専任媒介契約

  • 1社のみに依頼、自己発見取引は可
  • レインズ登録義務:契約から7日以内
  • 業務報告義務:2週間に1回以上
  • 専属専任とほぼ同等の販売活動が期待できる

一般媒介契約

  • 複数社に同時依頼が可能
  • レインズ登録義務なし
  • 業務報告義務なし
  • 広く買主を探せるが、業者の活動が消極的になる可能性

契約形態により業者の販売活動の積極性が変わるため、物件の特性や売却期間の希望に応じて選択する必要があります。

仲介業者の選び方と比較のポイント

(1) 複数の業者から査定を取得する重要性

不動産仲介業者を選ぶ際、最も重要なのは複数の業者から査定を取得することです。1社だけでは適正価格がわからず、高すぎる査定で契約後に値下げを迫られたり、安すぎる査定で損をしたりするリスクがあります。

複数社に査定を依頼することで以下のメリットがあります。

  • 適正な市場価格の把握
  • 各業者の対応品質の比較
  • 査定根拠の妥当性の確認
  • 営業担当者との相性の判断

一般的には3-5社程度に査定を依頼し、査定価格だけでなく、その根拠や販売戦略を詳しく聞くことが推奨されます。

(2) 営業担当者の対応と知識の確認

仲介業者を選ぶ際、会社のブランドだけでなく、実際に対応する営業担当者の質が重要です。以下のポイントをチェックしましょう。

  • 宅地建物取引士の資格: 有資格者かどうか
  • 地域の市場動向の知識: 周辺相場や成約事例を把握しているか
  • コミュニケーション能力: 質問に丁寧に答えてくれるか
  • レスポンスの速さ: 連絡が迅速か
  • 販売戦略の具体性: 広告計画や販売スケジュールが明確か

査定時の対応や説明の丁寧さは、取引開始後のサービス品質を予測する重要な指標になります。

(3) 国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」の活用

国土交通省が運営する「ネガティブ情報等検索サイト」では、不動産業者の過去の行政処分歴を検索できます。このサイトで業者名を検索し、以下の情報を確認しましょう。

  • 業務停止処分の有無
  • 指示処分の内容(誇大広告、重要事項説明の不備等)
  • 処分の理由と時期

行政処分歴がある業者すべてが不適切とは限りませんが、同じような処分を繰り返している場合は注意が必要です。

(4) 料金体系の透明性と実績の確認

仲介手数料は法律で上限が定められていますが、業者によっては独自の追加費用(コンサルタント料、広告費等)を請求する場合があります。契約前に以下を確認しましょう。

  • 仲介手数料の計算方法と総額
  • 追加費用の有無と内容
  • 支払いのタイミング(契約時・引き渡し時等)
  • キャンセル時の扱い

また、業者の実績(年間取引件数、成約率、平均売却期間等)を確認することで、販売力を判断できます。

仲介手数料の仕組みと計算方法

(1) 売買の仲介手数料の上限計算(物件価格の3%+6万円)

売買の仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限が定められています。計算方法は物件価格により以下のように異なります。

物件価格 仲介手数料の上限
200万円以下 物件価格の5%+消費税
200万円超400万円以下 物件価格の4%+2万円+消費税
400万円超 物件価格の3%+6万円+消費税

計算例(物件価格3,000万円の場合)

  • 仲介手数料:3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円
  • 消費税(10%):96万円 × 10% = 9.6万円
  • 合計:105.6万円

この金額を超える請求は違法です。ただし、依頼者の特別な依頼で発生した広告費等は別途請求できる場合があります。

(出典: 国土交通省

(2) 賃貸の仲介手数料の上限(家賃1カ月分)

賃貸の仲介手数料は、貸主・借主の合計で家賃1カ月分+消費税が上限です。原則として、貸主と借主がそれぞれ家賃の0.5カ月分ずつ負担しますが、承諾があれば一方が1カ月分全額を負担することも可能です。

計算例(家賃10万円の場合)

  • 仲介手数料:10万円 × 1カ月 = 10万円
  • 消費税(10%):10万円 × 10% = 1万円
  • 合計:11万円(貸主・借主の合計)

(3) 成功報酬型とキャンセル時の扱い

仲介手数料は成功報酬型です。売買契約が成立した時点で支払い義務が発生し、一般的には契約時に半額、引き渡し時に残額を支払います。

契約成立前にキャンセルした場合、仲介手数料を支払う必要はありません。ただし、業者が実施した広告費用等を別途請求される場合があるため、媒介契約書でキャンセル時の扱いを確認しておくことが重要です。

トラブルを避けるための注意点

(1) 囲い込みとその対策

囲い込みとは、売却依頼された物件を他社に紹介せず、自社に仲介を依頼している買主にしか紹介しない不当行為です。業者は売主・買主双方から仲介手数料を得られる「両手仲介」を狙い、他社からの問い合わせを拒否します。

囲い込みにより、売却期間が長引いたり、適正価格より安く売却せざるを得なくなったりするリスクがあります。

対策

  • 専属専任・専任媒介契約ではレインズ登録証明書を必ず確認
  • 定期的にレインズで物件が公開されているか確認
  • 複数の業者に相談し、市場での反響を把握
  • 業者から「買主が見つからない」と言われたら、価格設定や広告戦略を再検証

(2) 虚偽広告・誇大広告の見分け方

不動産業界では、宅地建物取引業法や景品表示法により、以下のような表現が禁止されています。

  • 「日本一」「最高の」「絶対」等の最上級表現(根拠がない場合)
  • 「破格」「格安」等の著しく安いと誤認させる表現
  • 実際と異なる物件情報(築年数、面積、設備等の虚偽)

こうした表現を多用する業者は、宅建業法違反の可能性があります。物件情報は複数の情報源で確認し、現地視察を必ず行いましょう。

(3) 仲介手数料以外の追加費用に注意

一部の業者は、仲介手数料以外に以下のような名目で費用を請求する場合があります。

  • コンサルタント料
  • 物件調査費
  • 広告費(依頼者の特別な依頼によらないもの)
  • 書類作成費

これらの費用は、依頼者の特別な依頼がない限り、仲介手数料に含まれるべきものです。契約前に費用の内訳を明確にし、不明な項目があれば説明を求めましょう。

(4) 重要事項説明の不備によるトラブル

重要事項説明は、宅地建物取引士が契約前に必ず行う法定業務です。以下のような事項が説明されます。

  • 物件の権利関係(所有権、抵当権等)
  • 法令上の制限(用途地域、建ぺい率等)
  • インフラ整備状況(上下水道、ガス、電気等)
  • 契約解除の条件
  • 瑕疵の有無(事故物件、騒音問題、日照問題等)

説明が不十分な場合、契約後にトラブルが発生するリスクがあります。重要事項説明書を事前に受け取り、不明点は納得できるまで質問することが重要です。

まとめ:状況別の業者選び

不動産仲介業者の選び方は、物件の種類や売却・購入の目的により異なります。大手業者は広告宣伝力と全国ネットワークが強みで、短期間で幅広い層にアプローチしたい場合に適しています。地域密着型業者は地元の市場動向に精通しており、個別事情に応じた柔軟な対応が期待できます。

仲介手数料は法律で上限が定められており、売買価格400万円超の場合「(売買価格の3%+6万円)+消費税」を超える請求は違法です。複数の業者から査定を取得し、営業担当者の対応や知識、料金体系の透明性を総合的に判断しましょう。

国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で過去の行政処分歴を確認し、囲い込みや虚偽広告などの不当行為を避けることが重要です。信頼できる宅地建物取引士に相談しながら、納得のいく不動産取引を実現してください。

よくある質問

Q1不動産仲介業者と不動産販売業者の違いは何ですか?

A1仲介業者は売主と買主を仲介し、取引成立時に成功報酬として仲介手数料を受け取ります。一方、販売業者は自ら物件を所有し売却するため、仲介手数料は不要です。仲介業者は幅広い物件から選べるメリットがありますが、販売業者は自社物件に限定される代わりに仲介手数料がかからない点が特徴です。

Q2仲介手数料の相場はいくらですか?

A2売買の場合、物件価格が400万円を超える場合「(売買価格の3%+6万円)+消費税」が上限です。例えば3,000万円の物件なら105.6万円(税込)です。賃貸の場合、貸主・借主の合計で家賃1カ月分+消費税が上限です。この金額を超える請求は宅地建物取引業法違反となります。ただし、依頼者の特別な依頼による広告費等は別途請求される場合があります。

Q3複数の業者に同時に依頼することはできますか?

A3一般媒介契約であれば、複数の業者に同時に依頼することが可能です。専任媒介・専属専任媒介は1社のみの契約となります。一般媒介は幅広く買主を探せるメリットがありますが、業者の販売活動が消極的になる可能性もあります。専任媒介は業者が積極的に販売活動を行う一方、選択肢が1社に限られます。物件の特性や売却期間の希望に応じて選択しましょう。

Q4囲い込みとは何ですか、どう避けるべきですか?

A4囲い込みとは、売却依頼された物件を他社に紹介せず、自社に仲介を依頼している買主にしか紹介しない不当行為です。業者は売主・買主双方から仲介手数料を得る「両手仲介」を狙います。対策として、専属専任・専任媒介契約ではレインズ登録証明書を必ず確認し、定期的に物件が公開されているかチェックしましょう。複数の業者に相談し、市場での反響を把握することも有効です。

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Room Match編集部

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