中古戸建て売却の完全ガイド:流れ・査定・税金・成功のコツ

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/21

中古戸建て売却を成功させるために知るべき基本知識

中古戸建ての売却を検討しているものの、「いくらで売れるのか」「どのくらいの期間がかかるのか」「税金はいくらかかるのか」と不安を感じる方は少なくありません。

この記事では、中古戸建て売却の基本的な流れ、査定方法、税金・諸費用、高く売るためのコツ、売却時の注意点を解説します。初めて売却する方でも、スムーズに進められるよう実践的な情報を提供します。

この記事のポイント

  • 売却期間は3~6カ月程度で、新生活シーズン(3月まで)に向けた年末からの開始が最適
  • 2023年度の全国平均売却価格は約2,500万円(東京都は約5,630万円)、築年数により大きく変動
  • 仲介手数料は最大で「売却価格の3%+6万円+消費税」、3,000万円特別控除でほとんどの売却で税負担がゼロに
  • 査定額は「売れる可能性のある価格」であり、高額査定が実売却価格に直結しない
  • 大規模リフォームは不要で、清掃・修繕にとどめ、インスペクション・瑕疵保険で買主の不安を軽減

(1) 売却期間の目安(3~6カ月)と最適なタイミング

一戸建て売却は、一般的に3~6カ月程度かかります。新生活シーズン(3月まで)の購入需要が高まるため、12月上旬までに売却活動を開始することで、高値売却が期待できます。

売却から3ヶ月経過すると物件に「売れない」イメージが付き、価格交渉が不利になるため、早めの価格見直しや戦略変更が必要です。

(2) 買取と仲介の違い:メリット・デメリット比較

中古戸建ての売却には、「買取」と「仲介」の2つの方法があります。

項目 買取 仲介
売却価格 市場価格の7割程度 市場価格
売却期間 即日~数週間 3~6カ月程度
仲介手数料 不要 必要(最大「売却価格の3%+6万円+消費税」)
内覧対応 不要 必要
向いているケース 急いで売却したい、相続、離婚等 高値で売却したい、時間に余裕がある

中古戸建て売却の流れ:査定から引渡しまでの7ステップ

中古戸建て売却の基本的な流れは、以下の7ステップです。

(1) 査定依頼と相場調査

まず、不動産会社に査定を依頼します。査定前に、不動産情報ライブラリやレインズマーケットインフォメーションで自分で相場を調べることで、査定時に適切な価格設定かを判断できます。

複数社(3~5社程度)に査定を依頼し、査定額だけでなく担当者の質と提案内容を比較しましょう。

(2) 媒介契約の締結(専任媒介・一般媒介の選び方)

査定後、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には以下の3種類があります。

種類 特徴 メリット・デメリット
専属専任媒介 1社のみ、自己発見取引不可 積極的な販売活動が期待できるが、自由度が低い
専任媒介 1社のみ、自己発見取引可 積極的な販売活動が期待でき、自由度も保てる(推奨)
一般媒介 複数社可 複数社に依頼できるが、どこからも優先度が低くなり放置される可能性

専任媒介を選ぶことで、不動産会社が積極的に販売活動を行うインセンティブが働きます。

(3) 売却活動と内覧対応

媒介契約締結後、不動産会社が広告を出し、購入希望者からの問い合わせに対応します。内覧希望者には、清掃を行い、明るく清潔な印象を与えることが重要です。

(4) 売買契約の締結と決済・引渡し

購入希望者との価格交渉が成立したら、売買契約を締結します。契約時には、手付金(売却価格の5~10%程度)を受け取ります。

決済時には、残代金を受け取り、物件を引き渡します。住宅ローンが残っている場合は、売却代金で完済する必要があります。

査定方法と相場の調べ方:適正価格を見極める

査定方法と相場の調べ方を理解することで、適正価格を見極めることができます。

(1) 机上査定と訪問査定の違い

査定には、以下の2種類があります。

  • 机上査定(簡易査定): 物件情報のみで算出する簡易的な査定。短時間で結果が出る
  • 訪問査定(詳細査定): 実際に物件を訪問し、建物の状態を確認して算出する詳細な査定

訪問査定の方が精度が高いため、売却を真剣に検討する場合は訪問査定を依頼しましょう。

(2) 自分で相場を調べる方法(レインズ・不動産情報ライブラリ)

不動産会社に相談する前に、以下のサイトで自分で相場を調べることができます。

  • レインズマーケットインフォメーション: 不動産流通標準情報システムの成約価格データ
  • 不動産情報ライブラリ: 国土交通省の不動産取引価格情報

これらのサイトで、同じエリア・築年数・間取りの物件の成約価格を確認しましょう。

(3) 築年数と価格の関係(築20年以上は土地価格中心)

木造住宅の法定耐用年数は22年です。築20年以上の場合、建物の価値はほぼゼロとなり、土地価格のみで評価される傾向があります。

2023年度の中古戸建ての全国平均売却価格は約2,500万円、東京都は約5,630万円です。築年数により大きく変動します。

売却時の税金と諸費用:3,000万円特別控除と仲介手数料

売却時には、以下の税金と諸費用が発生します。

(1) 仲介手数料の計算方法(売却価格の3%+6万円+消費税)

仲介手数料は、不動産会社に支払う手数料です。法律上の上限は「売却価格×3%+6万円+消費税」です。

例えば、売却価格が3,000万円の場合:

3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円
96万円 × 1.1(消費税) = 105.6万円

(2) 譲渡所得税と3,000万円特別控除の適用要件

譲渡所得税は、不動産売却時の利益(譲渡所得)にかかる税金です。

譲渡所得の計算式:

譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用

税率:

  • 所有期間5年以下:短期譲渡所得(税率39.63%)
  • 所有期間5年超:長期譲渡所得(税率20.315%)

3,000万円特別控除: 居住用不動産の譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。以下の要件を満たす必要があります。

  • 自分が住んでいた住宅である
  • 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
  • 売った年の前年・前々年にこの特例を受けていない

ほとんどの居住用不動産の売却では、この特例により税負担がゼロになります。

(3) その他の費用(印紙税・登記費用・測量費用等)

その他に以下の費用が発生します。

費用項目 内容 目安額
印紙税 売買契約書に貼付 1~6万円(売却価格により異なる)
登記費用 抵当権抹消登記等 1~3万円
測量費用 境界確定が必要な場合 50~100万円
ハウスクリーニング 内覧対応のため 5~10万円

高く売るためのコツと売却時の注意点

高く売るためのコツと、売却時の注意点を確認しましょう。

(1) 清掃・修繕のポイント(大規模リフォームは不要)

大規模リフォームは費用回収が困難なため、基本的に不要です。以下の清掃・修繕にとどめましょう。

  • 清掃: 水回り(キッチン、浴室、トイレ)、窓、玄関を重点的に
  • 修繕: 壁紙の破れ、畳の張り替え、建具の調整など、安価に修繕できる箇所
  • 庭の手入れ: 雑草除去、植木の剪定

内覧時には、明るく清潔な印象を与えることが重要です。

(2) インスペクション(建物検査)と瑕疵保険の活用

インスペクション(建物検査)と瑕疵保険の導入は、買主の不安を軽減し、売主の契約不適合責任リスクを減らす効果があります。

  • インスペクション: 建物の状態を専門家が調査する建物検査(費用:5~10万円)
  • 瑕疵保険: 売却後に建物の不具合が発覚した場合の修繕費用を補償する保険(費用:5~15万円)

これらを実施することで、買主の安心感が高まり、成約率が向上します。

(3) 契約不適合責任とリスク対策

契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)とは、売却後に物件の不具合が発覚した場合、売主が買主に対して負う責任です。

リスク対策:

  • 物件の不具合を買主に事前に伝える(告知義務)
  • インスペクション・瑕疵保険の導入
  • 契約書で契約不適合責任の範囲・期間を明確にする

契約内容を慎重に確認し、宅建士・司法書士に相談しましょう。

(4) 住宅ローン残債の処理方法

住宅ローンは売却時に完済が必要です。売却価格で残債を返済できるか事前に確認し、不足する場合は自己資金で補填する必要があります。

売却価格が住宅ローン残債を下回る状態を「オーバーローン」と言います。この場合、売却できないため、自己資金の準備が必要です。

まとめ:中古戸建て売却で失敗しないために

中古戸建て売却の基本的な流れは、査定依頼、媒介契約、売却活動、内覧対応、売買契約、決済・引渡しの7ステップです。売却期間は3~6カ月程度で、新生活シーズン(3月まで)に向けた年末からの開始が最適です。

仲介手数料は最大で「売却価格の3%+6万円+消費税」、3,000万円特別控除によりほとんどの売却で税負担がゼロになります。査定額は「売れる可能性のある価格」であり、高額査定が実売却価格に直結しないため、担当者の質と提案内容を重視しましょう。

大規模リフォームは不要で、清掃・修繕にとどめ、インスペクション・瑕疵保険で買主の不安を軽減することが成功のポイントです。

売却前に確認すべきポイント:

  • 売却相場の調査(レインズ・不動産情報ライブラリ)
  • 複数社の査定比較(3~5社)
  • 媒介契約の種類選択(専任媒介を推奨)
  • 住宅ローン残債の確認
  • 契約不適合責任の範囲・期間
  • インスペクション・瑕疵保険の導入検討
  • 税金・諸費用の確認(3,000万円特別控除の要件)

信頼できる不動産会社や専門家(宅建士、司法書士、税理士)に相談しながら、無理のない売却計画を立てましょう。

2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除して以降、金利上昇の兆しがあり、住宅購入希望者の借り入れ環境に影響が出始めています。市場動向を注視しながら、最適なタイミングで売却を進めることが重要です。

よくある質問

Q1中古戸建ての売却にかかる期間はどれくらいですか?

A1一般的に3~6カ月程度です。新生活シーズン(3月まで)の購入需要が高まるため、12月上旬までに売却活動を開始することで、高値売却が期待できます。売却から3ヶ月経過すると物件に「売れない」イメージが付き、価格交渉が不利になるため、早めの価格見直しや戦略変更が必要です。立地・築年数・状態・市況により変動するため、不動産会社に相談して現実的なスケジュールを立てましょう。

Q2売却時の税金はいくらかかりますか?

A2譲渡所得税は、売却益(売却価格-取得費-譲渡費用)にかかります。居住用不動産の3,000万円特別控除により、ほとんどの売却で税負担がゼロになります。所有期間5年超は税率20.315%、5年以下は39.63%です。特別控除の要件は、自分が住んでいた住宅であること、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどです。詳細は税理士への相談を推奨します。

Q3査定は無料ですか?

A3一般的に無料です。査定額は「売れる可能性のある価格」であり、実売却価格を保証するものではありません。高額査定が実売却価格に直結しないため、企業規模より担当者の質と提案内容を重視すべきです。複数社(3~5社程度)に査定を依頼し、査定額だけでなく販売戦略・実績・対応スピードを比較しましょう。査定前に自分で相場を調べることで、適切な価格設定かを判断できます。

Q4売却前にリフォームすべきですか?

A4大規模リフォームは費用回収が困難なため基本的に不要です。安価に修繕できる箇所の清掃・修繕にとどめるのが推奨されます。水回り(キッチン、浴室、トイレ)、窓、玄関を重点的に清掃し、壁紙の破れ、畳の張り替え、建具の調整など、安価に修繕できる箇所を対応しましょう。内覧時には明るく清潔な印象を与えることが重要です。インスペクション・瑕疵保険の導入で買主の不安を軽減する方が効果的です。

Q5住宅ローンが残っていても売却できますか?

A5売却時に住宅ローンの完済が必要です。売却価格で残債を返済できるか事前に確認し、不足する場合は自己資金で補填する必要があります。売却価格が住宅ローン残債を下回る状態を「オーバーローン」と言い、この場合は自己資金の準備が必須です。金融機関や不動産会社に相談し、売却可能かどうかを早めに確認しましょう。住み替えローンなどの選択肢もあるため、専門家に相談することを推奨します。

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Room Match編集部

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