固定資産税が上がる仕組みと背景
固定資産税の通知書を受け取って「なぜ今年は税額が上がっているのか?」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、固定資産税が上がる主な理由(評価替え、新築軽減措置の終了、増改築等)、上がるタイミング、税額を抑える方法を解説します。2025年時点の最新情報を元に、持ち家所有者が知っておくべき対策をお伝えします。
この記事のポイント
- 新築住宅は3年間(マンションは5年間)の軽減措置があり、期間終了後に税額がほぼ2倍になる
- 固定資産税は3年ごとの評価替え(2024年・2027年)で変動する可能性がある
- 住宅用地の特例(200㎡まで評価額が6分の1)を活用することで税額を抑えられる
- 増築・リフォーム・設備追加により評価額が上昇し、固定資産税が増加する場合がある
- 納税通知書に誤りがあっても訂正されない賦課課税方式のため、毎年確認が必要
固定資産税とは(課税の仕組み・納税義務者)
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している者に課される地方税です。
基本情報:
- 納税義務者: 毎年1月1日時点の固定資産所有者
- 税率: 標準税率1.4%(自治体により異なる場合あり)
- 計算式: 固定資産税額 = 課税標準額 × 税率1.4%
- 免税点: 土地30万円未満、建物20万円未満の場合は課税されない
固定資産税は市町村税で、自治体が税額を計算して納税者に通知する賦課課税方式を採用しています。
なぜ固定資産税は変動するのか(評価替え・軽減措置の終了等)
固定資産税は毎年同じ金額ではなく、以下の理由で変動します。
主な変動要因:
- 3年ごとの評価替え: 固定資産評価額を3年に1度見直す(2024年、2027年、2030年…)
- 新築軽減措置の終了: 新築住宅の税額半額措置が3年間(マンションは5年間)で終了
- 地価の変動: 土地の評価額が上昇または下降
- 建物の経年劣化: 建物の評価額は年々減少するが、下がり幅は小さい
- 増築・リフォーム: 建物の評価額が上昇
- 住宅用地特例の不適用: 空き家を放置して特定空き家に指定されると特例が外れる
これらの要因により、「去年と同じはず」と思っていても、税額が変わることがあります。
2024年度・2025年度の動向(評価替え・税制改正)
2024年度は3年に1度の評価替えの年でした。
2024年の評価替えによる変化:
- 再建築費評点補正率の上昇: 建築資材費の高騰により、木造1.11、非木造1.07に上昇
- 負担調整措置の延長: 急激な税額上昇を抑えるため、2027年3月31日まで3年間延長
- 新築住宅軽減措置の延長: 2026年3月31日まで延長
2025年度は、2024年の評価額に据え置かれます。次の評価替えは2027年に実施予定です。
(出典: 総務省「地方税制度|固定資産税」)
固定資産税の計算方法と基礎知識
課税標準額と税率(1.4%)
固定資産税は、課税標準額に税率1.4%(標準税率)を掛けて計算します。
計算式:
固定資産税額 = 課税標準額 × 1.4%
課税標準額とは、固定資産評価額に各種特例(住宅用地の特例、新築住宅の軽減措置等)を適用した後の金額です。
固定資産評価額の決定方法
固定資産評価額は、自治体が以下の方法で決定します。
建物の評価額:
- 再建築価格方式: 同じ建物を現時点で建て直す場合の費用を基準に算定
- 経年減点補正率: 築年数に応じて評価額を減少
- 再建築費評点補正率: 建築資材費の変動を反映(2024年は木造1.11、非木造1.07)
土地の評価額:
- 路線価方式: 道路に面した土地の1㎡あたりの価格を基準に算定
- 標準地比準方式: 標準地の価格を基準に、形状・接道状況等を考慮
評価額は3年に1度の評価替えで見直されます。
免税点(土地30万円・建物20万円)
固定資産税には免税点があり、以下の金額未満の場合は課税されません。
免税点:
- 土地: 同一自治体内の土地の課税標準額の合計が30万円未満
- 建物: 同一自治体内の建物の課税標準額の合計が20万円未満
小規模な土地や建物の場合、固定資産税がかからない場合があります。
賦課課税方式の注意点(誤課税リスク)
固定資産税は賦課課税方式を採用しており、自治体が税額を計算して納税者に通知します。
賦課課税方式のリスク:
- 誤課税があっても訂正されない: 納税者が申し出ない限り、誤った税額が継続する
- 5年前まで遡って還付請求可能: 誤りに気づいた場合は還付請求ができる
納税通知書を毎年確認し、疑問点があれば自治体の税務係に問い合わせることが重要です。
(出典: 総務省「地方税制度|固定資産税」)
固定資産税が上がる6つの主要因
新築住宅の軽減措置終了(3年間・5年間)
新築住宅には、建物の固定資産税が半額になる軽減措置があります。
軽減措置の期間:
- 一戸建て: 3年間(新築後4年目から通常税額)
- マンション(3階建て以上の耐火・準耐火建築物): 5年間(新築後6年目から通常税額)
- 長期優良住宅: 一戸建て5年間、マンション7年間
軽減措置の対象:
- 床面積120㎡までの部分が対象
- 120㎡を超える部分は軽減されない
この軽減措置が終了すると、税額がほぼ2倍になるため、新築4年目(マンションは6年目)に「急に税額が上がった」と感じるケースが多くあります。
3年ごとの評価替え(2024年・2027年)
固定資産税の評価額は、3年ごとに見直し(評価替え)が行われます。
評価替えのスケジュール:
- 2021年(令和3年)
- 2024年(令和6年)
- 2027年(令和9年)
- 2030年(令和12年)
2024年の評価替えによる変化:
- 建築資材費の高騰: 再建築費評点補正率が木造1.11、非木造1.07に上昇
- 税額への影響: 建物の評価額が上昇し、固定資産税が増加する可能性
評価替えは3年に1度のため、次回は2027年に実施されます。
地価上昇による評価額の増加
土地の評価額は、地価の変動により上昇または下降します。
地価上昇のケース:
- 駅前再開発・商業施設の建設により地価が上昇
- 周辺エリアの人気上昇により地価が上昇
- 評価替え時に路線価が上昇
地価が上昇すると、土地の固定資産税も上昇します。
負担調整措置による段階的増額
負担調整措置とは、評価替えによる税額の急激な上昇を抑えるため、段階的に税額を引き上げる措置です。
仕組み:
- 評価額が上昇した場合、一度に全額を反映せず、数年かけて段階的に増額
- 2024年度税制改正で、2027年3月31日まで延長
負担調整措置により、評価額が変わっていないのに税額が毎年少しずつ上がることがあります。
住宅用地特例の不適用(特定空き家指定)
住宅用地の特例が適用されなくなると、固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。
特例の内容:
- 小規模住宅用地(200㎡まで): 評価額が6分の1に軽減
- 一般住宅用地(200㎡超): 評価額が3分の1に軽減
特例が外れるケース:
- 特定空き家に指定: 倒壊の危険や衛生上の問題がある空き家として自治体が指定
- 住宅が取り壊された: 更地になると特例が適用されない
空き家を放置すると特定空き家に指定され、固定資産税が大幅に増加するリスクがあります。
増築・リフォーム・設備追加による評価額上昇
増築や設備追加により、建物の評価額が上昇し、固定資産税が増加する場合があります。
税額が上がる可能性があるケース:
- 増築: 床面積が増えると評価額が上昇
- サンルーム・カーポートの追加: 建物として評価される場合がある
- 太陽光パネルの設置: 建物一体型の場合は評価額に含まれる
- 大規模リフォーム: 構造を変更する工事は評価額が上昇する可能性
税額が上がらないケース:
- 軽微な修繕: 壁紙張替え、設備の交換等
- 内装のみのリフォーム: 構造に影響しない工事
リフォーム前に自治体に確認することを推奨します。
固定資産税が上がるタイミングと時期
新築4年目(マンションは6年目)の急増
新築住宅の軽減措置が終了する**4年目(マンションは6年目)**に、税額が急増します。
例:新築一戸建ての固定資産税
| 年数 | 軽減措置 | 建物の税額 |
|---|---|---|
| 1-3年目 | 適用あり | 5万円(半額) |
| 4年目以降 | 適用なし | 10万円(通常税額) |
マンションの場合は6年目から通常税額になります。
評価替え年度(3年ごと:2024年・2027年)
評価替えが実施される年度(2024年・2027年・2030年)に、税額が変動する可能性があります。
評価替えによる変動:
- 建築資材費が高騰した場合、建物の評価額が上昇
- 地価が上昇した場合、土地の評価額が上昇
- 逆に、地価が下落した場合は税額が下がる可能性もある
2024年の評価替えでは、再建築費評点補正率が上昇したため、税額が増加した物件もあります。
住宅用地特例が外れたとき
住宅用地の特例が適用されなくなると、税額が最大6倍に増加します。
特例が外れるタイミング:
- 空き家が特定空き家に指定された年の翌年
- 建物を取り壊して更地にした年の翌年
空き家を放置せず、適切に管理することが重要です。
増改築・リフォーム完了後の翌年
増築や大規模リフォームを行った場合、完了後の翌年(1月1日時点)から税額が上がります。
例:
- 2024年10月に増築完了 → 2025年1月1日時点で新しい評価額が適用 → 2025年度の固定資産税から増額
リフォーム計画時に、固定資産税への影響を確認しておくことを推奨します。
固定資産税を抑える方法と軽減措置
住宅用地の特例(小規模住宅用地200㎡まで6分の1)
住宅用地の特例を活用することで、土地の固定資産税を大幅に抑えられます。
特例の内容:
| 区分 | 対象面積 | 軽減率 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 200㎡まで | 評価額が6分の1 |
| 一般住宅用地 | 200㎡超 | 評価額が3分の1 |
例:200㎡の土地の場合
- 評価額: 2,000万円
- 特例適用後: 2,000万円 × 1/6 = 約333万円
- 固定資産税: 333万円 × 1.4% = 約4.7万円
特例を適用するには、土地の上に住宅が建っている必要があります。
新築住宅の軽減措置(3年間または5年間、税額半額)
新築住宅を取得した場合、建物の固定資産税が半額になる軽減措置を活用できます。
軽減措置の条件:
- 床面積50㎡以上280㎡以下
- 床面積120㎡までの部分が対象
例:床面積100㎡の新築一戸建て
- 建物の評価額: 1,000万円
- 通常税額: 1,000万円 × 1.4% = 14万円
- 軽減措置適用: 14万円 × 1/2 = 7万円
軽減措置は自動的に適用されるため、申請は不要です。
長期優良住宅の認定による軽減期間延長
長期優良住宅の認定を取得すると、軽減措置の期間が延長されます。
軽減期間の比較:
| 住宅の種類 | 一般住宅 | 長期優良住宅 |
|---|---|---|
| 一戸建て | 3年間 | 5年間 |
| マンション | 5年間 | 7年間 |
長期優良住宅の認定を受けるには、耐震性・耐久性・省エネ性等の基準を満たす必要があります。
納税通知書の確認と還付請求(5年前まで遡及可能)
固定資産税は賦課課税方式のため、誤課税があっても自動的に訂正されません。
確認すべきポイント:
- 評価額が適正か(周辺の物件と比較)
- 軽減措置が正しく適用されているか
- 床面積・土地面積に誤りがないか
誤りに気づいた場合、5年前まで遡って還付請求ができます。自治体の税務係に問い合わせてください。
専門家への相談(税理士・自治体税務係)
固定資産税の計算が複雑な場合や、疑問がある場合は、専門家への相談を推奨します。
相談先:
- 自治体の税務係: 固定資産税課・資産税課等
- 税理士: 固定資産税の試算・還付請求のサポート
相談は無料の場合が多いため、気軽に問い合わせてください。
まとめ:固定資産税上昇への対策チェックリスト
固定資産税が上がる主な理由は、新築軽減措置の終了(3年間・5年間)、3年ごとの評価替え、地価上昇、住宅用地特例の不適用、増改築等です。
税額を抑えるには、住宅用地の特例(200㎡まで評価額6分の1)、新築住宅の軽減措置、長期優良住宅の認定を活用してください。
納税通知書を毎年確認し、誤りがあれば5年前まで遡って還付請求が可能です。疑問がある場合は、自治体の税務係や税理士に相談することを推奨します。
