固定資産税とは?住宅所有者が知るべき基礎知識
住宅を購入または所有している方にとって、「固定資産税」は毎年必ず発生する税金です。「固定資産税とは何か」「いくらかかるのか」「いつ払うのか」といった疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、固定資産税の基礎知識、計算方法、支払い時期、軽減措置について、総務省の固定資産税制度と各自治体の税制を元にわかりやすく解説します。
初めて固定資産税を支払う方でも、税額の目安や軽減措置を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税は土地・家屋・償却資産などの固定資産を所有する人が、毎年1月1日時点の資産価値に応じて市町村に納める地方税
- 計算式は「課税標準額×1.4%(標準税率)」で、一軒家の固定資産税は年間10~15万円が平均
- 納付書は毎年4月~6月頃に届き、6月・9月・12月・翌2月の年4回に分けて納付
- 小規模住宅用地(200㎡以下)は固定資産税が6分の1、新築住宅は3年間(マンションは5年間)半額になる特例がある
- 2024年は評価替えの年で、材料費高騰の影響により家屋の評価額が上がる可能性がある
(1) 固定資産税の定義と目的
固定資産税は、土地、家屋、償却資産などの固定資産を所有する人が、毎年1月1日時点の資産価値に応じて市町村(東京23区は都)に納める地方税です。
総務省の固定資産税制度によると、固定資産税は市町村の主要な財源であり、地域の公共サービス(道路整備、教育、福祉等)に充てられています。
(2) 固定資産税の税収(2023年度9兆8,073億円)
2023年度の固定資産税の税収は9兆8,073億円で、市町村税収の約41%を占めています。これは住民税に次ぐ規模で、地方財政にとって非常に重要な税目です。
(3) 都市計画税との違い
固定資産税とは別に、市街化区域内の土地・家屋の所有者には「都市計画税」(税率0.3%が上限)も課される場合があります。都市計画税は都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるための税金で、固定資産税と合わせて納付書が送られてきます。
課税対象と納税義務者|土地・家屋・償却資産
(1) 課税対象となる固定資産
固定資産税の課税対象は、以下の3種類です。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 土地 | 宅地、田、畑、山林、雑種地等 |
| 家屋 | 住宅、店舗、工場、倉庫等 |
| 償却資産 | 事業用の機械、装置、器具、備品等 |
この記事では、住宅所有者に関係する「土地」と「家屋」を中心に解説します。
(2) 納税義務者(毎年1月1日時点の所有者)
固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で固定資産を所有している人です。
例えば、2025年1月2日に住宅を売却した場合でも、2025年度の固定資産税は元の所有者が負担します。不動産売買契約では、引渡し日以降の固定資産税を日割り計算で精算することが一般的です。
(3) 免税点(土地30万円未満、家屋20万円未満)
固定資産税には免税点があり、以下の評価額未満の固定資産は課税されません。
- 土地: 30万円未満
- 家屋: 20万円未満
- 償却資産: 150万円未満
小規模な物置や倉庫等は免税点以下の場合があります。
固定資産税の計算方法と税率|評価額×1.4%の仕組み
(1) 基本的な計算式(課税標準額×1.4%)
固定資産税の基本的な計算式は以下の通りです。
固定資産税額 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率)
課税標準額は、固定資産税評価額から各種軽減措置を適用した後の金額です。
(2) 固定資産税評価額の決まり方
固定資産税評価額は、固定資産税を計算する基礎となる価格です。
| 種類 | 評価方法 |
|---|---|
| 土地 | 地価公示価格の約70%が目安 |
| 家屋 | 再建築価格の約70%が目安 |
評価額は市町村が決定し、固定資産課税台帳に登録されます。納税通知書に記載されているため、毎年確認できます。
(3) 評価替え(3年に1度の見直し)
固定資産税評価額は、3年に1度見直されます(評価替え)。2024年度、2027年度が評価替えの年です。
評価替えにより、地価の変動や建物の劣化に応じて評価額が変わります。一般的に、建物は経年劣化により評価額が下がりますが、土地は地価の上昇により評価額が上がる場合があります。
(4) 2024年度の評価替えと影響
2024年度は評価替えの年で、2023年1月1日時点の地価公示価格等の7割を目安に評価されます。2024年度税制改正大綱によると、材料費高騰の影響で家屋の評価が上がる可能性があります。
2024年の再建築費評点補正率:
- 木造家屋: 1.11
- 非木造家屋: 1.07
この補正率は、材料費の高騰を反映しており、新築住宅や築浅の住宅では評価額が上がる可能性があります。
固定資産税の支払い時期と方法|年4回の納付スケジュール
(1) 納付書の送付時期(4月~6月頃)
固定資産税の納付書は、毎年4月~6月頃に市町村から郵送されます。納付書には、固定資産税評価額、課税標準額、税額、納期限等が記載されています。
(2) 納付時期(6月・9月・12月・翌2月の年4回)
固定資産税は、原則として年4回の納期ごとに分割納付します。
一般的な納期:
- 第1期: 6月
- 第2期: 9月
- 第3期: 12月
- 第4期: 翌2月
自治体により納期が異なる場合があるため、納付書で確認してください。
(3) 支払い方法(窓口・コンビニ・口座振替・クレジットカード等)
固定資産税の支払い方法は、以下の選択肢があります(自治体により異なります)。
- 窓口納付: 市町村役場、金融機関の窓口
- コンビニ納付: バーコード付き納付書でコンビニエンスストア
- 口座振替: 指定の口座から自動引き落とし
- クレジットカード: 専用サイトでカード払い
- スマホ決済: PayPay、LINE Pay等のアプリ
(4) 一括納付と分割納付の選択
固定資産税は、第1期の納期限までに全額を一括納付することも可能です。ただし、一括納付による割引制度はありません。
分割納付の方が資金繰りに余裕が生まれるため、一般的には年4回の分割納付が選ばれます。
軽減措置と特例|小規模住宅用地・新築住宅の減額
(1) 小規模住宅用地の特例(200㎡以下で6分の1)
住宅用地には、固定資産税の軽減措置があります。
| 区分 | 固定資産税の軽減 | 都市計画税の軽減 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 6分の1 | 3分の1 |
| 一般住宅用地(200㎡超の部分) | 3分の1 | 3分の2 |
例えば、土地の固定資産税評価額が1,000万円の場合、小規模住宅用地の特例により課税標準額は約167万円となり、固定資産税は約2.3万円(167万円×1.4%)です。
(2) 新築住宅の減額措置(3年間または5年間半額)
新築住宅には、固定資産税の減額措置があります。
| 住宅種別 | 減額期間 | 減額内容 |
|---|---|---|
| 一戸建て・マンション(3階建て以下) | 3年間 | 120㎡相当分まで固定資産税が半額 |
| マンション(3階建て以上) | 5年間 | 120㎡相当分まで固定資産税が半額 |
この特例は2026年3月31日まで延長されています(2024年度税制改正大綱)。
(3) 負担調整措置(令和6年4月1日~令和9年3月31日)
評価替えにより評価額が急激に上がる場合、負担調整措置により税額の上昇が段階的に抑えられます。この措置は3年間延長され、令和9年3月31日まで適用されます。
(4) 軽減措置の適用条件と注意点
小規模住宅用地の特例:
- 住宅用地であること(更地は対象外)
- 200㎡以下の部分が対象
新築住宅の減額措置:
- 床面積が50㎡以上280㎡以下であること
- 2026年3月31日までに新築された住宅
- 減額期間終了後は税額が大幅に上がる点に注意
まとめ:固定資産税を理解して住宅購入・所有を計画する
固定資産税は、土地・家屋を所有する人が毎年納める地方税で、「課税標準額×1.4%」で計算されます。一軒家の固定資産税は年間10~15万円が平均で、小規模住宅用地や新築住宅には軽減措置があります。
固定資産税のポイント:
- 納税義務者: 毎年1月1日時点の所有者
- 税額の目安: 年間10~15万円(新築一戸建て2,000万円~4,000万円の場合)
- 納付時期: 6月・9月・12月・翌2月の年4回
- 軽減措置: 小規模住宅用地(6分の1)、新築住宅(3年間または5年間半額)
- 2024年の変化: 評価替えの年で、材料費高騰により家屋の評価額が上がる可能性
注意点:
- 新築住宅の軽減措置は期間限定で、終了後は税額が大幅に上がる可能性があります
- 固定資産税の税額は個別の状況(所在地、広さ、築年数等)により異なるため、具体的な税額は市区町村の納税通知書または税理士への確認を推奨します
- 納期限を過ぎると延滞金が発生するため、納付スケジュールを把握しておくことが重要です
詳細な計算や軽減措置の適用条件については、総務省の固定資産税制度または市区町村の税務課にご確認ください。
