固定資産税とは?地方税の基本を理解する
固定資産税は、土地・家屋・償却資産の所有者に課税される地方税です。毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となり、市町村(東京23区は都)に納付します。
この記事のポイント
- 固定資産税は土地・家屋・償却資産の所有者に課税される地方税
- 計算式は「課税標準額×1.4%(標準税率)」が基本
- 住宅用地は200㎡以下で固定資産税が1/6に軽減される
- 支払いは年4回払い(6月・9月・12月・翌年2月等)または一括払い
- 2024年度は評価替えの年で、建築資材高騰により家屋評価額が上昇
(1) 固定資産税の定義と課税対象
固定資産税は、以下の3つの資産を課税対象としています。
| 課税対象 | 内容 |
|---|---|
| 土地 | 宅地、田、畑、山林など |
| 家屋 | 住宅、店舗、工場、倉庫など |
| 償却資産 | 事業用の機械設備、備品など |
(出典: 総務省 固定資産税制度)
(2) 納税義務者は毎年1月1日時点の所有者
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課税されます。年末年始に不動産を売買する場合、日割り精算の交渉が必要です。
例: 2025年1月15日に不動産を売却した場合、2025年度の固定資産税は売主が全額負担(2025年1月1日時点の所有者のため)。実務では日割り精算を契約で取り決めることが一般的です。
(3) 固定資産税と路線価の違い
固定資産税評価額と路線価は異なります。
| 項目 | 固定資産税評価額 | 路線価 |
|---|---|---|
| 用途 | 固定資産税の計算基礎 | 相続税・贈与税の計算基礎 |
| 算定者 | 市町村 | 国税庁 |
| 公示地価との比率 | 約70% | 約80% |
一般的に、固定資産税評価額は路線価の約7割(公示地価の約70%)が目安です。
固定資産税の計算方法と評価額の仕組み
(1) 基本計算式:課税標準額×1.4%
固定資産税の基本計算式は以下の通りです。
固定資産税額 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率)
課税標準額は、固定資産税評価額をベースに住宅用地の特例等の軽減措置が適用された後の金額です。
(2) 固定資産税評価額とは
固定資産税評価額は、市町村が決定する評価額で、以下の方法で算定されます。
- 土地: 地価公示価格の約70%が目安
- 家屋: 再建築価格(同じ建物を新築する場合の費用)から経年劣化分を差し引いた額
(3) 評価替えの仕組み(3年に1度)
固定資産税評価額は3年に1度見直されます(評価替え)。2024年度は評価替えの年です。
評価替えの年度:
- 2021年度
- 2024年度 ← 最新
- 2027年度(次回)
(4) 40坪の土地の固定資産税の目安
40坪(約132㎡)の住宅用地で評価額1,000万円の場合の固定資産税を計算します。
計算例:
- 評価額:1,000万円
- 住宅用地の特例適用(200㎡以下で1/6に軽減)
- 課税標準額:1,000万円 × 1/6 = 約166.7万円
- 固定資産税額:166.7万円 × 1.4% = 約2.3万円
軽減措置がない場合は約14万円になるため、住宅用地の特例は非常に大きな減税効果があります。
固定資産税の支払い時期・納期限・支払い方法
(1) 納税通知書が届く時期(4~6月頃)
固定資産税の納税通知書は、毎年4〜6月頃に郵送されます。自治体により送付時期が異なるため、届かない場合は市町村の税務課に問い合わせてください。
(2) 年4回払いと一括払いの選択
固定資産税の納付方法は以下の2つから選択できます。
- 年4回払い: 一般的に6月・9月・12月・翌年2月の4回(自治体により異なる)
- 一括払い: 第1期の期限までに全額を納付
(3) 納期限と延滞金のリスク
納付期限を過ぎると延滞金が発生します。延滞金の率は自治体により異なりますが、年2.4〜8.7%程度が一般的です。
(4) 支払い方法(窓口・口座振替・auペイ等キャッシュレス決済)
固定資産税の主な支払い方法は以下の通りです。
| 支払い方法 | 内容 |
|---|---|
| 窓口払い | 金融機関、コンビニで納付書を使って支払い |
| 口座振替 | 指定口座から自動引き落とし |
| クレジットカード | 自治体のWebサイトから支払い(手数料がかかる場合あり) |
| QRコード決済 | auペイ、PayPay、d払い等のキャッシュレス決済 |
自治体により利用可能な支払い方法が異なるため、納税通知書または自治体のWebサイトで確認してください。
固定資産税の軽減措置を活用する
(1) 住宅用地の特例(宅地は1/6または1/3に軽減)
住宅用地は固定資産税が大幅に軽減されます。
| 区分 | 軽減率 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 1/6 | 住宅1戸あたり200㎡以下 |
| 一般住宅用地 | 1/3 | 住宅1戸あたり200㎡超 |
計算例(評価額1,000万円の土地):
- 軽減措置なし:1,000万円 × 1.4% = 14万円
- 小規模住宅用地:1,000万円 × 1/6 × 1.4% = 約2.3万円
(2) 新築住宅の減額措置(3年間または5年間1/2に減額)
新築住宅は固定資産税が減額されます。
| 区分 | 減額期間 | 減額率 |
|---|---|---|
| 一般住宅 | 3年間 | 1/2 |
| 3階建以上の耐火・準耐火建築物(マンション等) | 5年間 | 1/2 |
適用要件:
- 2026年3月31日までに新築された住宅
- 床面積が50㎡以上280㎡以下
(出典: 国土交通省 新築住宅に係る税額の減額措置)
(3) 耐震・省エネ・バリアフリー改修による減額
以下の改修工事を行った場合、固定資産税が減額されます。
- 耐震改修: 1982年1月1日以前の住宅を耐震改修した場合、1年間1/2に減額
- 省エネ改修: 窓の断熱改修等を行った場合、1年間1/3に減額
- バリアフリー改修: 高齢者・障がい者向けの改修を行った場合、1年間1/3に減額
(4) 軽減措置の申告期限と手続き
軽減措置の中には、自動適用されず申告が必要なものがあります。
- 住宅用地の特例: 自動適用(申告不要)
- 新築住宅の減額: 翌年1月31日までに市町村に申告
- 改修工事による減額: 工事完了後3か月以内に申告
期限を過ぎると軽減措置が適用されないため、注意が必要です。
2024年度の税制改正と評価替えの影響
(1) 2024年度は評価替えの年:家屋評価額が上昇
2024年度は3年に1度の評価替えの年です。家屋の評価額を算定する再建築費評点補正率が以下のように上昇しました。
- 木造家屋: 1.11(前回1.05)
- 非木造家屋: 1.07(前回1.04)
(2) 建築資材高騰による評価額への影響
2024年度の評価替えでは、以下の要因により家屋の評価額が上昇しています。
- ウッドショック(木材価格の高騰)
- アイアンショック(鋼材価格の高騰)
- ウクライナ危機による資材高騰
このため、2024年度の固定資産税が増額する可能性があります。
(3) 新築住宅減額措置の2年間延長(2026年3月31日まで)
2024年度税制改正により、新築住宅の減額措置が2年間延長されました。2026年3月31日までに新築された住宅に適用されます。
(4) 管理不全空き家への課税強化(最大6倍)
2023年の法改正により、「管理不全空き家」に指定された場合、住宅用地の特例が適用されなくなりました。
影響:
- 通常:固定資産税が1/6に軽減
- 管理不全空き家:軽減措置なし(最大6倍の税額)
空き家を所有している場合は、適切な管理が必要です。
まとめ:固定資産税を正しく理解し、軽減措置を活用しよう
固定資産税は、土地・家屋の所有者が毎年納める地方税です。課税標準額×1.4%が基本ですが、住宅用地の特例や新築住宅の減額措置により大幅に軽減されます。
固定資産税を抑えるポイント:
- 住宅用地の特例を活用(200㎡以下で1/6に軽減)
- 新築住宅の減額措置を活用(3〜5年間1/2に減額)
- 耐震・省エネ・バリアフリー改修で減額を受ける
- 軽減措置の申告期限を守る
2024年度は評価替えの年で、家屋の評価額が上昇する可能性があります。納税通知書が届いたら、評価額と軽減措置の適用状況を確認しましょう。
詳細は市町村の税務課または税理士にご相談ください。
