固定資産税評価額と時価の違いを知りたいと思ったら
不動産を所有または売却を検討する際、「固定資産税評価額と時価(実勢価格)はどう違うのか」と疑問に思う方は少なくありません。特に売却や相続を考える場合、両者の違いを理解しておくことは、正確な資産価値を把握する上で重要です。
この記事では、固定資産税評価額と時価の定義、違い、乖離が生まれる理由、評価額から時価を推測する方法と限界を、総務省等の公式情報を元に解説します(2025年時点)。
不動産売却や相続を検討されている方が、評価額と時価の関係を正しく理解し、適切な判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税評価額は課税目的で公示時価の約70%に設定され、時価は市場での需給バランスで決まる
- 土地の時価は「評価額÷0.7」で簡易的に算出でき、評価額700万円なら時価は約1,000万円が目安
- 建物の固定資産税評価額は新築時で建築費の50~60%程度だが、築年数により時価との乖離が大きくなる
- 固定資産税評価額は3年に1度の評価替えのため、最新の市場動向を完全には反映していない
固定資産税評価額とは何か?定義と役割
(1) 固定資産税評価額の定義(課税目的の評価額)
固定資産税評価額とは、市区町村が固定資産税・都市計画税等の課税額を算定するために決定する不動産の評価額です。
総務省によると、固定資産税評価額は「課税の公平性」を重視して設定されており、時価(実勢価格)とは評価目的が異なります。
(2) 評価基準(土地:公示地価の約70%、建物:再建築価格方式)
固定資産税評価額の評価基準は、土地と建物で異なります。
| 種別 | 評価基準 |
|---|---|
| 土地 | 公示地価の約70% |
| 建物 | 再建築価格方式(同じ建物を新築した場合の費用を基準に経年減価を考慮) |
土地の評価基準: 国土交通省が毎年1月1日時点で公表する公示地価を基準に、約70%の水準で評価されます。
建物の評価基準: 再建築価格方式により、同じ建物を新築した場合の費用を基準に、築年数に応じた減価償却を考慮して評価されます。新築時で建築費の50~60%程度が目安です。
(3) 評価替えの仕組み(3年に1度、直近2024年、次回2027年)
固定資産税評価額は3年に1度の評価替えで更新されます。
- 直近の評価替え: 2024年(令和6年)
- 次回の評価替え: 2027年(令和9年)予定
評価替えは、最新の地価動向を反映させるために実施されますが、3年に1度のため、最新の市場動向(2024~2025年の価格変動等)を完全には反映していない可能性があります。
(4) 調べ方(課税明細書・固定資産課税台帳)
固定資産税評価額の確認方法は以下の2つです。
- 課税明細書: 毎年4~6月に市区町村から送付される固定資産税の納税通知書に添付された明細。評価額が記載されています
- 固定資産課税台帳: 市区町村が管理する台帳。窓口で閲覧可能(有料の場合あり)
時価(実勢価格)とは何か?形成要因と変動性
(1) 時価の定義(市場での売買価格)
**時価(実勢価格)**とは、不動産が市場で実際に売買される際の価格です。需給バランス、立地、物件状態、市場環境により変動します。
固定資産税評価額が「課税の公平性」を重視した評価額であるのに対し、時価は「市場での需給」を反映した価格です。
(2) 時価の形成要因(立地・需要・市場環境・物件状態)
時価は以下の要因により決まります。
- 立地: 駅からの距離、周辺環境、利便性
- 需要: 買い手の多さ、人気エリアかどうか
- 市場環境: 不動産市場全体の動向、金利水準
- 物件状態: 築年数、リフォームの有無、設備の状態
これらの要因は日々変動するため、時価も常に変化します。
(3) 時価の調べ方(不動産会社の査定・不動産鑑定士)
時価を調べる方法は以下の2つです。
- 不動産会社の査定: 複数の不動産会社に査定を依頼し、相場観を把握する(無料が一般的)
- 不動産鑑定士: 正式な不動産鑑定評価を依頼する(有料、数十万円程度)
売却や相続等の重要な判断が必要な場合は、不動産鑑定士や税理士への相談を推奨します。
固定資産税評価額と時価の違いと乖離が生まれる理由
(1) 評価目的の違い(課税の公平性 vs 市場での需給)
固定資産税評価額と時価の最大の違いは、評価目的です。
| 項目 | 固定資産税評価額 | 時価 |
|---|---|---|
| 評価目的 | 課税の公平性 | 市場での需給 |
| 評価主体 | 市区町村 | 買い手と売り手 |
| 更新頻度 | 3年に1度 | 日々変動 |
| 評価基準 | 公示地価の約70% | 需給バランス |
固定資産税評価額は「課税の公平性」を重視し、市場の変動に左右されないよう、やや低めに設定されています。
(2) 土地の乖離(評価額は公示時価の70%、時価は需給で変動)
土地の固定資産税評価額は公示地価の約70%に設定されています。一方、時価は市場での需給バランスで決まるため、公示地価を上回る場合も下回る場合もあります。
例: 公示地価1,000万円の土地
- 固定資産税評価額: 1,000万円 × 70% = 700万円
- 時価: 需給により変動(人気エリアなら1,200万円、需要が低いエリアなら800万円等)
(3) 建物の乖離(耐用年数・残価率が異なる、事例で2.9倍の乖離)
建物は、固定資産税評価と時価評価で耐用年数・残価率が異なるため、築年数が経過するほど乖離が大きくなります。
不動産鑑定士の事例では、時価17.65億円に対し固定資産税評価額6.11億円で2.9倍の乖離がありました(マンションの場合)。
建物の時価は、以下の要因により大きく変動します。
- 築年数: 築年数が経過するほど減価償却が進む
- 設備の状態: リフォームの有無、設備の老朽化
- 需要: 人気エリア・物件種別かどうか
(4) 評価時点の違い(評価替えは3年に1度、時価は日々変動)
固定資産税評価額は3年に1度の評価替えで更新されますが、時価は日々変動します。
例: 2024年評価替え後の変動
- 固定資産税評価額: 2024年1月1日時点の評価額(2027年まで据え置き)
- 時価: 2024年~2027年の市場動向により変動
2024年~2025年に不動産市場が活発化した場合、時価は上昇しますが、固定資産税評価額は2027年まで変わりません。
評価額から時価を推測する方法と精度・限界
(1) 土地の時価推測(評価額÷0.7、評価額700万円→時価約1,000万円)
土地の時価は、固定資産税評価額を0.7で割ることで簡易的に算出できます。
計算式:
土地の時価 ≒ 固定資産税評価額 ÷ 0.7
例: 固定資産税評価額700万円の土地
時価 ≒ 700万円 ÷ 0.7 = 1,000万円
この計算は、評価額が公示地価の約70%であることを前提としています。
(2) 建物の時価推測(新築時50~60%、築年数で大きく変動)
建物の固定資産税評価額は、新築時で建築費の50~60%程度です。
例: 建築費3,000万円の新築住宅
固定資産税評価額 ≒ 3,000万円 × 50~60% = 1,500~1,800万円
ただし、築年数が経過するほど減価償却の方法が異なるため、評価額からの簡易計算では正確な時価を算出できません。
(3) 推測の限界(立地・形状・需要により大きく乖離)
固定資産税評価額からの時価推測は、あくまで簡易的な目安です。以下の要因により、実際の時価と大きく乖離する可能性があります。
- 立地: 駅からの距離、周辺環境、利便性
- 形状: 土地の形状(整形地・不整形地)、接道状況
- 需要: 人気エリアかどうか、市場環境
- 物件状態: リフォームの有無、設備の老朽化
(4) 正確な時価評価が必要な場合(相続・売却時は専門家へ依頼)
以下の場合は、正確な時価評価が必要です。
- 相続: 相続税の申告、遺産分割協議
- 売却: 売却価格の設定、税金の計算
- 離婚: 財産分与の協議
- 担保評価: 融資の担保評価
これらの場合は、不動産鑑定士や税理士への依頼を推奨します。費用は数十万円程度かかりますが、正確な評価が得られます。
まとめ|評価額と時価を正しく理解して不動産評価を活用する
固定資産税評価額と時価(実勢価格)は、評価目的が異なるため乖離が生まれます。固定資産税評価額は課税の公平性を重視し公示時価の約70%に設定され、時価は市場での需給バランスで決まります。
土地の時価は「評価額÷0.7」で簡易的に算出できますが、立地・形状・需要により実際の時価と大きく乖離する可能性があります。建物は築年数により減価償却が異なるため、評価額からの簡易計算では正確な時価を算出できません。
固定資産税評価額は3年に1度の評価替えのため、最新の市場動向を完全には反映していない可能性があります。売却や相続等の重要な判断では、不動産鑑定士や税理士への相談を推奨します。


