住宅ローン元金均等返済とは?元利均等との違いとメリット・デメリット

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/22

住宅ローンの返済方法の選択:元金均等返済とは

住宅ローンを組む際、「元金均等返済」と「元利均等返済」のどちらを選ぶべきか迷う方は少なくありません。

この記事では、元金均等返済の仕組み、元利均等返済との違い、メリット・デメリット、総返済額のシミュレーション比較を、住宅金融支援機構国土交通省の公式情報を元に解説します。

返済方法の選択で迷っている方が、適切な判断材料を把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 元金均等返済は毎月の元金返済額が一定で、返済が進むにつれて返済額が減少する
  • 総返済額は元利均等返済より少ない(3000万円・金利1%・35年で約30万円の差)
  • 当初の返済額が高いため、収入に余裕がある方に向いている
  • 全ての金融機関で選択できるわけではなく、事前確認が必要
  • フラット35では元利均等⇔元金均等の変更が手数料無料で可能

元金均等返済の基本的な仕組み:毎月の元金返済額が一定

元金均等返済とは、毎月の元金返済額が一定となる返済方法です。

例えば、3000万円を35年(420回)で返済する場合、毎月の元金返済額は約7.1万円(3000万円÷420回)となります。これに加えて、その月の元金残高に応じた利息を支払います。

返済が進むにつれて元金残高が減るため、利息も減少し、毎月の総返済額も減少していきます。

返済額の推移:当初は高く、返済が進むにつれて減少

元金均等返済では、返済開始当初の返済額が最も高くなります。

返済額の推移例(借入3000万円、金利1%、35年)

返済時期 月額返済額(目安)
返済開始時 約12.5万円
10年後 約11万円
20年後 約10万円
30年後 約9万円
最終月 約9万円

当初は高額ですが、返済が進むにつれて負担が軽減されます。

元金均等返済を選択できる金融機関:フラット35、民間金融機関の一部

元金均等返済は、全ての金融機関で選択できるわけではありません

主な取り扱い金融機関

  • フラット35:元利均等・元金均等の両方に対応
  • 民間金融機関:一部の金融機関のみ対応(三井住友銀行、三井住友信託銀行等)

住宅ローンを検討する際は、希望する金融機関が元金均等返済を取り扱っているか事前に確認しましょう。

元金均等返済と元利均等返済の違い:仕組みと返済額の推移

元金均等返済と元利均等返済の最大の違いは、毎月の返済額の決まり方です。

元利均等返済の仕組み:毎月の総返済額(元金+利息)が一定

元利均等返済とは、毎月の総返済額(元金+利息)が一定となる返済方法です。

返済開始から完済まで、毎月同じ金額を支払います。返済計画が立てやすく、家計管理がしやすいのが特徴です。

返済額の推移比較:元金均等は減少、元利均等は一定

元金均等返済と元利均等返済の返済額推移を比較すると、明確な違いがあります。

返済額推移の比較(借入3000万円、金利1%、35年)

返済時期 元金均等返済 元利均等返済
返済開始時 約12.5万円 約8.5万円
10年後 約11万円 約8.5万円
20年後 約10万円 約8.5万円
30年後 約9万円 約8.5万円

元金均等返済は当初の負担が大きい代わりに、将来の負担が軽減されます。

利息の計算方法:元金残高に応じて利息が減少する仕組み

両方式とも、利息はその月の元金残高に応じて計算されます。

利息の計算式

月々の利息 = 元金残高 × 金利(年率)÷ 12ヶ月

元金均等返済は、毎月一定額の元金を返済するため、元金残高の減少が早く、利息の減少も早いです。そのため、総返済額が少なくなります。

返済計画の立てやすさ:元利均等は一定額で計画しやすい

元利均等返済は、毎月の返済額が一定のため、返済計画が立てやすいです。

家計の収支が安定しており、毎月同じ金額を支払いたい方に向いています。一方、元金均等返済は返済額が変動するため、家計管理にやや注意が必要です。

元金均等返済のメリット:総返済額の削減と将来の負担軽減

元金均等返済には、以下のメリットがあります。

総返済額が少ない:元利均等返済より総利息が少ない

元金均等返済の最大のメリットは、総返済額が少ないことです。

住宅金融支援機構によると、以下のような差があります。

総返済額の比較

条件 元金均等返済 元利均等返済 差額
3000万円・金利1%・35年 約3,558万円 約3,588万円 約30万円
3000万円・金利1.5%・35年 約3,858万円 約3,926万円 約68.5万円

金利が高いほど、総返済額の差が大きくなります。

将来的に返済額が減少:教育費・老後資金の確保がしやすい

元金均等返済は、返済が進むにつれて返済額が減少するため、将来的な支出増に備えやすいです。

将来の支出増に備えやすいケース

  • 子育て世帯:子供の教育費が増える時期に返済額が減少
  • 定年後も返済が続く:定年後の収入減に対応しやすい

将来的に支出が増える予定の家庭に適しています。

元金の減少が早い:繰上返済の効果が高い

元金均等返済は、元金の減少が早いため、繰上返済の利息軽減効果が高いです。

繰上返済を検討している方にとって、元金均等返済はより効率的な選択肢となります。

子育て世帯・定年後も返済が続く人に適している

以下のような方に特に適しています。

  • 小さな子どもがいる家庭:将来的に教育費が増える
  • 定年後も返済が続く人:老後の収入減に備えたい
  • 総返済額を最小化したい人:利息を抑えたい

元金均等返済のデメリット:当初の返済額と金融機関の制約

元金均等返済には、以下のデメリットもあります。

当初の返済額が高い:収入に余裕がないと家計が圧迫される

元金均等返済の最大のデメリットは、返済開始当初の返済額が高いことです。

例えば、借入3000万円、金利1%、35年の場合、元金均等返済は当初約12.5万円/月に対し、元利均等返済は約8.5万円/月と、4万円の差があります。

収入に余裕がない場合、家計が圧迫されるリスクがあります。

住宅ローン審査が厳しい可能性:一定の年収が求められる

元金均等返済は、当初の返済額が高いため、住宅ローン審査で一定の年収が求められる可能性があります。

審査基準は金融機関により異なるため、複数の金融機関に相談することをおすすめします。

取り扱い金融機関が限られる:全ての金融機関で選択できるわけではない

元金均等返済は、全ての金融機関で取り扱っているわけではありません

希望する金融機関が元金均等返済を取り扱っていない場合、元利均等返済を選択するか、別の金融機関を検討する必要があります。

低金利・少額借入では総返済額の差が小さい

低金利かつ借入金が少ない場合、元利均等返済との総返済額の差が小さくなります。

2024年10月時点の変動金利は0.625%程度と非常に低く、元金均等返済のメリットが限定的になる可能性があります。

元金均等返済と元利均等返済の総返済額シミュレーション比較

具体的なシミュレーションで、両者の違いを確認しましょう。

シミュレーション条件:借入3000万円、金利1%、35年返済

以下の条件でシミュレーションします。

シミュレーション条件

  • 借入金額:3000万円
  • 金利:年1%(固定)
  • 返済期間:35年(420回)

元金均等返済の返済額推移:当初約12.5万円→最終的に約9万円

元金均等返済の返済額は、以下のように推移します。

元金均等返済の返済額推移

返済時期 月額返済額 内訳(元金+利息)
1回目 約12.5万円 元金7.1万円+利息5.4万円
120回目(10年後) 約11万円 元金7.1万円+利息3.9万円
240回目(20年後) 約10万円 元金7.1万円+利息2.9万円
360回目(30年後) 約9万円 元金7.1万円+利息1.8万円
420回目(最終) 約9万円 元金7.1万円+利息0.3万円

元利均等返済の返済額:毎月約8.5万円で一定

元利均等返済の返済額は、毎月約8.5万円で一定です。

返済開始から完済まで、同じ金額を支払い続けます。

総返済額の差:約30万円(金利1%)、約68.5万円(金利1.5%)

総返済額の差は、金利により変動します。

総返済額の比較

金利 元金均等返済 元利均等返済 差額
1% 約3,558万円 約3,588万円 約30万円
1.5% 約3,858万円 約3,926万円 約68.5万円

金利が高いほど、元金均等返済の総返済額削減効果が大きくなります。

2024年の金利動向:変動金利0.625%、固定金利1.5〜1.6%

2024年10月時点の住宅ローン金利は以下の通りです。

2024年10月の金利動向

  • 変動金利型:0.625%
  • 固定金利特約型5年:1.50%
  • 固定金利特約型2年:1.60%

現在の低金利情勢では、元金均等返済と元利均等返済の総返済額の差は小さくなる傾向があります。

まとめ:元金均等返済が向いている人・元利均等返済が向いている人

元金均等返済と元利均等返済、どちらを選ぶべきかは、収入状況・ライフプランにより異なります。

元金均等返済が向いている人:収入に余裕がある、将来的に支出増が予想される、総返済額を最小化したい

以下のような方に向いています。

  • 収入に余裕がある(当初の高い返済額に耐えられる)
  • 将来的に支出が増える予定(子育て、定年後など)
  • 総返済額を最小化したい(利息を抑えたい)
  • 繰上返済を積極的に検討している

元利均等返済が向いている人:当面の返済額を抑えたい、返済計画を立てやすくしたい、収入に変動がある

以下のような方に向いています。

  • 当面の返済額を抑えたい(当初の負担を軽減)
  • 返済計画を立てやすくしたい(毎月一定額)
  • 収入に変動がある(安定した返済額が望ましい)
  • 元金均等返済を取り扱っていない金融機関を利用

返済方法の変更:フラット35では手数料無料で変更可能、民間金融機関でも条件付きで可能

住宅金融支援機構のフラット35では、元利均等⇔元金均等の変更が手数料無料で可能です。

民間金融機関でも、条件付きで変更できる場合があります。契約前に、返済方法の変更が可能かどうか確認しておくと良いでしょう。

専門家(ファイナンシャルプランナー)への相談を推奨

返済方法の選択は、将来のライフプランに大きく影響します。

相談先

  • ファイナンシャルプランナー(FP):ライフプラン全体を考慮したアドバイス
  • 住宅ローンアドバイザー:住宅ローンの専門的な知識
  • 金融機関の窓口:具体的な返済シミュレーション

複数の専門家に相談し、自分に合った返済方法を選びましょう。

よくある質問

Q1元金均等返済と元利均等返済では総返済額はどのくらい違いますか?

A1借入3000万円、金利1%、35年の場合、元金均等返済の方が約30万円少なくなります。金利1.5%の場合は約68.5万円の差となります。ただし、低金利(2024年10月時点で変動金利0.625%程度)や少額借入では差が小さくなります。金利が高いほど、元金均等返済の総返済額削減効果が大きくなります。

Q2途中で元利均等返済から元金均等返済に変更できますか?

A2フラット35では手数料無料で変更可能です。民間金融機関でも変更できる場合がありますが、条件や手数料は金融機関により異なるため、事前に確認が必要です。契約前に、返済方法の変更が可能かどうか、手数料はいくらかを確認しておくことをおすすめします。

Q3元金均等返済を選ぶと住宅ローン審査に影響しますか?

A3元金均等返済は当初の返済額が高いため、審査では一定の年収が求められる可能性があります。例えば、借入3000万円、金利1%、35年の場合、元金均等返済は当初約12.5万円/月に対し、元利均等返済は約8.5万円/月と4万円の差があります。ただし、審査基準は金融機関により異なるため、複数の金融機関に相談することをおすすめします。

Q4元金均等返済と繰上返済はどちらがお得ですか?

A4元金均等返済は元金の減少が早いため、繰上返済の利息軽減効果が高くなります。両方を組み合わせることで、総返済額をさらに削減できます。ただし、繰上返済は手元資金を減らすリスクもあるため、ライフプラン(教育費、老後資金等)を考慮して判断する必要があります。

Q5元金均等返済と元利均等返済、どちらを選ぶべきですか?

A5収入に余裕があり将来的に支出が増える予定(子育て、定年後など)の場合は元金均等返済、当面の返済額を抑えたい場合は元利均等返済が向いています。2024年の低金利情勢では、総返済額の差が小さくなる傾向があります。ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談し、ライフプラン全体を考慮して選ぶことをおすすめします。

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Room Match編集部

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