住宅ローン借り入れ可能額の完全ガイド:計算方法・年収別目安・審査基準

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/20

住宅ローン借り入れ可能額とは:「借りられる額」と「返済できる額」の違い

「自分はいくらまで住宅ローンを借りられるのか」「年収に対して適正な借入額はどのくらいか」と悩んでいる方は多いでしょう。

この記事では、住宅ローンの借り入れ可能額の計算方法、年収別の目安、返済負担率の基準、無理のない返済計画の立て方を、金融機関の公式情報をもとに解説します。

住宅購入を検討している方が、自分に合った借入額を判断できるようになります。

この記事のポイント

  • 借入可能額は年収の6〜7倍が目安だが、無理なく返済できる適正額は年収の5倍程度
  • 返済負担率は手取り年収の20〜25%以内に抑えると生活に余裕が生まれる
  • 金融機関の返済負担率基準(30〜35%)は「貸せる上限」であり、「無理なく返せる金額」ではない
  • 返済負担率の計算には住宅ローン以外の借入(カーローン、リボ払い等)も含まれる
  • 将来の支出変化(教育費、老後資金)や金利上昇リスクを考慮した計画が重要

(1) 借入可能額の定義

借入可能額とは、金融機関が貸し出せる上限金額のことです。

年収、返済負担率、返済期間、担保価値などを基準に算出されます。一般的に年収の6〜7倍が借入可能額の目安とされています。

ただし、借入可能額はあくまで「借りられる上限」であり、「無理なく返済できる金額」とは異なります。

(出典: SBI新生銀行

(2) 適正借入額との違い

適正借入額とは、無理なく返済できる金額のことです。

項目 借入可能額 適正借入額
定義 金融機関が貸せる上限 無理なく返済できる金額
年収比率 年収の6〜7倍 年収の5倍程度
返済負担率 30〜35%(金融機関基準) 手取り年収の20〜25%
リスク 教育費・老後資金に余裕がない 生活に余裕が生まれる

借入可能額の上限まで借りると、教育費・老後資金・突発的な支出に対応できず、生活が苦しくなるリスクが高まります。

(出典: 三井住友銀行

借り入れ可能額の計算方法と年収別の目安

(1) 基本的な計算式(年収×返済負担率×返済期間)

借入可能額は、以下の要素で決まります。

計算の基本:

  • 年収(税込み総額)
  • 返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)
  • 返済期間(最長35年)
  • 借入金利

簡易計算式:

年間返済可能額 = 年収 × 返済負担率 借入可能額 = 年間返済可能額 ÷ 返済比率(金利・返済期間から算出)

具体的な金額は、各金融機関が提供するシミュレーションツールで計算できます。

(出典: 三菱UFJ銀行

(2) 年収別の借入可能額シミュレーション

年収別の借入可能額の目安は以下の通りです(返済負担率35%、金利1.5%、返済期間35年の場合)。

年収 借入可能額(上限) 適正借入額(年収の5倍)
400万円 約2,800万円 2,000万円
500万円 約3,500万円 2,500万円
600万円 約4,200万円 3,000万円
700万円 約4,900万円 3,500万円
800万円 約5,600万円 4,000万円

※金利・返済期間により変動します。詳細は各金融機関のシミュレーションツールで確認してください。

(出典: 住信SBIネット銀行イオン銀行

(3) フラット35と民間銀行の借入上限の違い

フラット35と民間銀行では、借入上限と返済負担率の基準が異なります。

項目 フラット35 民間銀行
借入上限 8,000万円 1億円(金融機関により異なる)
返済負担率基準 年収400万円未満:30%以下
年収400万円以上:35%以下
25〜35%(金融機関により異なる)
金利タイプ 固定金利のみ 変動金利・固定金利を選択可能

フラット35は長期固定金利で安心感がある一方、借入上限は民間銀行より低く設定されています。

(出典: フラット35公式サイト

返済負担率の基準と理想値

(1) 返済負担率の計算方法

返済負担率は、年収に占める年間返済額の割合です。

計算式:

返済負担率(%)= 年間返済額 ÷ 年収 × 100

例:

  • 年収500万円
  • 住宅ローン年間返済額120万円(月額10万円)
  • カーローン年間返済額30万円(月額2.5万円)

返済負担率 = (120万円 + 30万円) ÷ 500万円 × 100 = 30%

(出典: SUUMO

(2) 金融機関の審査基準(30〜35%)

金融機関の返済負担率基準は、一般的に30〜35%です。

年収別の基準:

  • 年収400万円未満:30%以下(フラット35基準)
  • 年収400万円以上:35%以下(フラット35基準)

この基準は「貸せる上限」であり、実際に無理なく返済できる金額ではありません。

(出典: 住信SBIネット銀行

(3) 理想的な返済負担率(手取り年収の20〜25%)

理想的な返済負担率は、手取り年収の20〜25%以内です。

理由:

  • 金融機関の基準(30〜35%)は税込み年収ベース
  • 実際の手取りは税込み年収の75〜80%程度
  • 手取り年収の25%を超えると、生活費・教育費・老後資金に余裕がなくなる

例:

  • 税込み年収500万円
  • 手取り年収400万円(80%として計算)
  • 理想の年間返済額:80〜100万円(月額6.7〜8.3万円)

2023年度フラット35利用者の実態では、返済負担率15〜20%の層が最も多く、25%以内に抑える人が増加傾向にあります。

(出典: イオン銀行

(4) 返済負担率に含まれるもの(住宅ローン以外の借入も含む)

返済負担率の計算では、住宅ローン以外の借入も含める必要があります。

含まれる借入:

  • カーローン
  • 教育ローン
  • クレジットカードのリボ払い
  • 携帯端末の分割払い
  • その他の消費者ローン

これらの借入が多いと、住宅ローンの借入可能額が減少します。

(出典: SUUMO

無理のない適正借入額の考え方

(1) 年収の5倍が安全ライン

無理なく返済できる適正借入額は、年収の5倍程度が目安です。

理由:

  • 年収の6〜7倍まで借りると、返済負担率が30〜35%となり生活が苦しくなる
  • 教育費、老後資金、突発的な支出に対応する余裕がなくなる
  • 変動金利の場合、金利上昇リスクに対応できない

年収の5倍に抑えることで、返済負担率が手取り年収の20〜25%以内に収まり、生活に余裕が生まれます。

(出典: 三井住友銀行

(2) 将来の支出変化を考慮する(教育費・老後資金)

住宅ローンの返済は最長35年と長期にわたるため、将来の支出変化を考慮する必要があります。

考慮すべき支出:

時期 主な支出 目安金額
子育て期 教育費(幼稚園〜大学) 子ども1人あたり1,000〜3,000万円
老後期 老後生活費 月額25〜30万円×20〜30年
突発的 住宅修繕・介護費用 数百万円

これらの支出に対応するため、住宅ローンの返済額を抑え、貯蓄の余裕を確保することが重要です。

(3) 変動金利の場合の金利上昇リスク

変動金利で住宅ローンを借りる場合、将来の金利上昇リスクを考慮する必要があります。

例:

  • 借入額4,000万円、返済期間35年
  • 金利0.5% → 月額返済額10.3万円
  • 金利2.0% → 月額返済額13.2万円(約3万円増)

金利が上昇すると返済負担率も上昇するため、余裕を持った借入額にすることが推奨されます。

(4) 共働き世帯の収入合算リスク

共働き世帯は夫婦の年収を合算できますが、将来の収入減を考慮する必要があります。

リスク:

  • 育児・介護で片方が退職・時短勤務になる
  • 収入が減っても住宅ローンの返済額は変わらない
  • 返済負担率が急上昇する

収入合算する場合でも、主たる収入のみで返済できる計画を立てることが推奨されます。

借り入れ可能額を増やす方法と注意点

(1) 収入合算・ペアローン

夫婦や親子で収入を合算することで、借入可能額を増やせます。

方法:

  • 収入合算:1人が主たる債務者、もう1人が連帯保証人
  • ペアローン:夫婦それぞれが主たる債務者として借入

注意点:

  • 将来の育児・介護での収入減リスク
  • 連帯保証人・連帯債務者になると、離婚時も返済義務が残る

(2) 返済期間を延ばす

返済期間を延ばすことで、月々の返済額を減らし、借入可能額を増やせます。

例:

  • 借入額3,000万円、金利1.5%
  • 返済期間25年 → 月額返済額12.0万円
  • 返済期間35年 → 月額返済額9.2万円

注意点:

  • 返済期間が長いと、総返済額が増える
  • 完済時の年齢が高くなり、老後資金に影響

(3) 頭金を増やして融資率を下げる

頭金を増やすことで、融資率(物件価格に対する借入額の割合)を下げ、審査で有利になります。

メリット:

  • 借入額が減り、総返済額が減少
  • 融資率が80%以下だと金利優遇がある金融機関も
  • 審査通過の可能性が上がる

目安:

  • 物件価格の10〜20%の頭金を用意すると安心

(4) 他の借入を完済する

住宅ローン以外の借入(カーローン、リボ払い等)を完済することで、返済負担率が下がり、借入可能額が増えます。

例:

  • 年収500万円
  • カーローン年間返済額30万円を完済
  • 住宅ローンの借入可能額が約600万円増加

住宅ローン申込前に、他の借入を完済しておくことが推奨されます。

まとめ:自分に合った借入額の決め方

住宅ローンの借入可能額は年収の6〜7倍が目安ですが、無理なく返済できる適正額は年収の5倍程度です。

返済負担率は手取り年収の20〜25%以内に抑えることで、教育費・老後資金・突発的な支出に対応する余裕が生まれます。

金融機関の返済負担率基準(30〜35%)は「貸せる上限」であり、「無理なく返せる金額」ではありません。将来の支出変化や金利上昇リスクを考慮した計画が重要です。

具体的な借入可能額は、各金融機関が提供する公式シミュレーションツールで計算し、不安がある場合はファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーに相談しながら決めてください。

よくある質問

Q1年収に対してどのくらい借りられますか?

A1年収の6〜7倍が借入可能額の目安ですが、無理なく返済できる適正額は年収の5倍程度です。返済負担率は手取り年収の20〜25%以内に抑えると生活に余裕が生まれます。金融機関の返済負担率基準(30〜35%)は「貸せる上限」であり、教育費・老後資金・突発的な支出を考慮すると、適正額はそれより低く設定すべきです。

Q2借入可能額と適正借入額の違いは何ですか?

A2借入可能額は金融機関が貸せる上限金額(年収の6〜7倍)、適正借入額は無理なく返済できる金額(年収の5倍程度)です。金融機関の返済負担率基準(30〜35%)は「貸せる上限」であり、「無理なく返せる金額」ではありません。借入可能額の上限まで借りると、教育費・老後資金に余裕がなくなり、生活が苦しくなるリスクが高まります。

Q3返済負担率の計算方法を教えてください

A3計算式は「年間返済額÷年収×100」です。年収は税込み総額(源泉徴収票の「支払金額」欄)、返済額には住宅ローンだけでなく、カーローン、クレジットカードのリボ払い、携帯端末分割払い等も含めます。金融機関の審査基準は30〜35%ですが、理想は手取り年収の20〜25%以内です。手取り年収は税込み年収の75〜80%程度のため、税込み年収ベースで25%を超えると生活が苦しくなります。

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Room Match編集部

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