頭金なしで住宅ローンを組む方法:メリット・デメリットと審査通過のポイント

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/20

頭金なしで住宅ローンを組むことは可能か

「自己資金が少ないけれど、住宅ローンは組めるのか」「頭金なしで借りると、月々の返済負担はどれくらい増えるのか」と不安に感じている方は少なくありません。頭金なしで住宅ローンを組むことは可能ですが、借入額が増えるため、月々の返済負担や総返済額が増加する点に注意が必要です。

この記事では、頭金なし住宅ローン(フルローン)の仕組み、メリット・デメリット、頭金ありとの返済額比較、審査通過のポイントを、住宅金融支援機構や主要銀行の公式情報を元に解説します。

初めて住宅ローンを組む方でも、頭金なしで借りるべきか、頭金を用意すべきかを判断できるようになります。

この記事のポイント

  • 頭金なし(フルローン)でも住宅ローンは組めるが、融資率9割超の場合は金利が高くなる傾向がある
  • 2021年以降、約36.9%が頭金なしで購入しており、30代では約43%に達している
  • 頭金なしの場合、月々返済額は約2万円増加し、総返済額は約300~400万円増える(物件価格4,000万円の場合)
  • 手元資金を残す戦略として有効だが、諸費用(物件価格の5~10%)は現金で必要
  • 審査では返済負担率(年収の25~35%以内)、勤続年数、信用情報が重視される

頭金なし住宅ローンの仕組みとフルローンの基礎知識

(1) フルローンとは:物件価格全額を借り入れる方式

フルローンとは、頭金なしで物件価格全額を借り入れる住宅ローンです。

例えば、物件価格4,000万円の場合、頭金なしで4,000万円全額を借り入れます。この場合、融資率(物件価格に対する借入額の割合)は100%となります。

(2) 頭金の一般的な目安:新築15~25%、既存10~40%

頭金の一般的な目安は以下の通りです。

物件種別 頭金の目安
新築住宅 物件価格の15~25%
既存住宅(中古) 物件価格の10~40%

(出典: 三井住友銀行

頭金を用意することで、借入額を減らし、月々の返済負担と総返済額を軽減できます。

(3) 2021年以降、約36.9%が頭金なしで購入(30代では約43%)

住宅金融支援機構の調査によると、2021年以降、約36.9%が頭金なしで住宅を購入しています。特に30代では約43%に達しており、若い世代ほど頭金なしで購入する傾向があります。

自己資金が少ない若い世代でも、住宅ローンを組んで早期に住宅を取得できることがわかります。

(4) 融資率9割超の場合の金利への影響

融資率(物件価格に対する借入額の割合)が9割を超える場合、金利が高くなる傾向があります。

特にフラット35では、融資率9割超の場合、金利が約0.2~0.4%高く設定されることがあります。2025年時点で長期金利が1%台後半に差し掛かっており、金利上昇への警戒が必要です。

頭金なし住宅ローンのメリット・デメリット

(1) メリット:手元資金を残せる、早期購入が可能、住宅ローン控除を最大限活用

頭金なし住宅ローンの主なメリットは以下の通りです。

  • 手元資金を残せる: 諸費用、引越し費用、家具・家電購入費等に充てられる
  • 早期購入が可能: 自己資金が貯まるのを待たずに住宅を取得できる
  • 住宅ローン控除を最大限活用: 年末ローン残高の0.7%を所得税から控除できる(2025年入居の場合、最高5,000万円)

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、年末ローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です(国税庁)。

(2) デメリット:借入額が増えて月々返済額が増加、総返済額が増える、オーバーローン(担保割れ)リスク

頭金なし住宅ローンの主なデメリットは以下の通りです。

  • 借入額が増えて月々返済額が増加: 頭金ありと比べて約2万円増加(物件価格4,000万円の場合)
  • 総返済額が増える: 頭金ありと比べて約300~400万円増加
  • オーバーローン(担保割れ)リスク: 住宅売却価格よりもローン残高が多い状態になる可能性

オーバーローン(担保割れ)とは、住宅売却価格よりもローン残高が多い状態です。売却や借り換えを検討する際に不利になる可能性があります。

(3) 諸費用(登記費用、手数料等)は現金で必要

諸費用(登記費用、手数料、印紙税、保証料等)は原則現金で必要です。諸費用の目安は物件価格の5~10%程度です。

物件価格 諸費用の目安
3,000万円 150~300万円
4,000万円 200~400万円
5,000万円 250~500万円

頭金なしで組む場合でも、諸費用分の最低限の手元資金は確保が必要です。

(4) 金利上昇リスクへの対処法

2025年は金利上昇への警戒感が高まっており、長期金利が1%台後半に差し掛かっています。

金利上昇リスクへの対処法としては、以下があります。

  • 固定金利を選択: 借入から完済まで金利が変わらない全期間固定金利(フラット35等)
  • 繰上返済の活用: 手元資金を残して計画的に繰上返済
  • 返済期間の短縮: 35年ではなく25~30年で設定

頭金ありとの徹底比較:返済額シミュレーション

(1) 物件価格4,000万円のケース:頭金なし vs 頭金2割(800万円)

物件価格4,000万円の場合の返済額を比較します(返済期間35年、金利1.5%、元利均等返済)。

項目 頭金なし 頭金2割(800万円) 差額
借入額 4,000万円 3,200万円 800万円
月々返済額 122,444円 97,955円 24,489円
総返済額 約5,142万円 約4,114万円 約1,028万円

頭金なしの場合、月々約2.4万円、総返済額で約1,000万円増加します。

(2) 月々返済額の差:頭金なしは約2万円増加

頭金なしの場合、月々の返済額は頭金2割の場合と比べて約2~2.5万円増加します。

手取り年収の25%以内に月々の返済額を抑えることが無理のない返済の目安です。例えば、手取り年収500万円の場合、月々の返済額は約10.4万円以内が目安となります。

(3) 総返済額の差:頭金なしは約300~400万円増加

頭金なしの場合、総返済額は頭金2割の場合と比べて約300~1,000万円増加します(物件価格・金利により異なる)。

金利が高いほど、総返済額の差が大きくなります。

(4) 手元資金を残す戦略:繰上返済の活用

頭金なしで組んで手元資金を残し、計画的に繰上返済すれば総返済額を軽減できます。

繰上返済とは、毎月の返済とは別に、元金の一部または全部を前倒しで返済することです。利息軽減や返済期間短縮が可能です。

例えば、頭金なしで4,000万円借りて、5年後に800万円を繰上返済すれば、総返済額を大幅に軽減できます。

月々の返済負担を抑えつつ、ライフイベント(子育て、教育費等)に対応できる戦略として有効です。

審査通過のポイントと成功事例・注意点

(1) 審査で重視されるポイント:返済負担率・勤続年数・信用情報

頭金なし住宅ローンの審査では、以下のポイントが重視されます。

審査項目 内容
返済負担率 年収に占める年間返済額の割合、一般的に25~35%以内
勤続年数 安定した収入があるかを判断、一般的に3年以上が目安
信用情報 過去の借入・返済履歴、延滞がないか

頭金なしでも審査は可能ですが、融資率が9割超となり審査が厳しくなる傾向があります。

(2) 手取り年収の25%以内に月々返済額を抑える目安

手取り年収の25%以内に月々の返済額を抑えることが無理のない返済の目安です。

手取り年収 月々返済額の目安(25%以内)
400万円 約8.3万円
500万円 約10.4万円
600万円 約12.5万円
700万円 約14.6万円

減収や金利上昇など、悪条件でシミュレーションして返済計画を立てることが重要です。

(3) 妻名義で住宅ローンを組む場合の注意点:団信は妻のみ、産休・育休中のリスク

妻名義で住宅ローンを組む場合、以下の点に注意が必要です。

  • 団信は妻だけが対象: 夫の死亡時も返済が継続する
  • 産休・育休中のリスク: 妊娠・出産で働き方を変える可能性があり、収入減少リスクに注意

団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金でローンが完済される保険です。

妻名義の場合、夫が亡くなっても返済が継続する点に注意が必要です。ペアローン(夫婦それぞれが債務者として別々に住宅ローンを組む方式)や連帯債務も選択肢として検討しましょう。

(4) 年齢別の注意点:35歳以上は65歳完済、50歳以上は75歳完済を目標

年齢別の注意点は以下の通りです。

年齢 完済目標 注意点
35歳未満 65歳までの完済 余裕のある返済計画
35歳以上 65歳までの完済 返済期間を短くする必要がある
50歳以上 75歳までの完済 定年後の収入源を確保

65歳までの完済を目標に借入期間を設定すると、老後の資金負担を減らせます。

まとめ:頭金なし住宅ローンを選ぶ際の判断基準と次のアクション

頭金なし(フルローン)でも住宅ローンは組めますが、融資率9割超の場合は金利が高くなる傾向があります。2021年以降、約36.9%が頭金なしで購入しており、若い世代ほど頭金なしで購入する傾向があります。

頭金なしの場合、月々返済額は約2万円増加し、総返済額は約300~400万円増えますが、手元資金を残す戦略として有効です。ただし、諸費用(物件価格の5~10%)は現金で必要なため、最低限の手元資金は確保が必要です。

審査では返済負担率(年収の25~35%以内)、勤続年数、信用情報が重視されます。手取り年収の25%以内に月々返済額を抑えることが無理のない返済の目安です。

信頼できる金融機関やファイナンシャルプランナーに相談しながら、無理のない返済計画を立てましょう。

よくある質問

Q1頭金なしで住宅ローンを組むと審査に通りにくいですか?

A1頭金なしでも審査は可能ですが、融資率が9割超となり審査が厳しくなる傾向があります。審査では返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)が25~35%以内、勤続年数(一般的に3年以上)、信用情報(過去の借入・返済履歴、延滞がないか)が重視されます。手取り年収の25%以内に月々返済額を抑えることが無理のない返済の目安です。

Q2頭金なしと頭金ありでは金利はどれくらい違いますか?

A2特にフラット35では融資率9割超の場合、金利が約0.2~0.4%高く設定されることがあります。2025年時点で長期金利が1%台後半に差し掛かっており、金利上昇への警戒が必要です。固定金利を選択するか、繰上返済を活用することで金利上昇リスクに対処できます。

Q3妻名義で住宅ローンを組む場合の注意点は何ですか?

A3団体信用生命保険(団信)は妻だけが対象で、夫の死亡時も返済が継続します。妊娠・出産で働き方を変える可能性があり、収入減少リスクに注意が必要です。ペアローン(夫婦それぞれが債務者として別々に住宅ローンを組む方式)や連帯債務も選択肢として検討しましょう。産休・育休中の返済資金の確保を事前に計画することが重要です。

Q4頭金なしで組んだ場合、後から繰上返済すればリスクは減りますか?

A4はい、可能です。頭金なしで組んで手元資金を残し、計画的に繰上返済すれば総返済額を軽減できます。例えば、頭金なしで4,000万円借りて、5年後に800万円を繰上返済すれば、総返済額を大幅に軽減できます。月々の返済負担を抑えつつ、ライフイベント(子育て、教育費等)に対応できる戦略として有効です。

Q5諸費用はどうすればよいですか?

A5諸費用(登記費用、手数料、印紙税、保証料等)は原則現金で必要です。諸費用の目安は物件価格の5~10%程度です。例えば、物件価格4,000万円の場合、諸費用は200~400万円程度です。頭金なしで組む場合でも、諸費用分の最低限の手元資金は確保が必要です。

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Room Match編集部

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