パートでも住宅ローンは組めるのか?
「パートで働いているが、住宅ローンは組めるのか」「審査に通るのか不安」と悩む方は少なくありません。
この記事では、パート勤務者の住宅ローン審査の実態、審査基準、借入可能額の目安、フラット35やペアローンの活用方法、審査通過のポイントを詳しく解説します。
パート勤務者でも、適切な準備と選択肢を知ることで、住宅ローンを利用できる可能性があることを理解できるようになります。
この記事のポイント
- パート・アルバイトでも住宅ローンは組めるが、正社員より審査は厳しい
- フラット35は雇用形態に制限がなく、パート・アルバイトでも申し込み可能で最も現実的な選択肢
- 年収200〜300万円以上が目安だが、パート平均年収(約119万円)では届かないケースが多い
- 配偶者との収入合算やペアローンで借入可能額を増やすことができる
- 頭金準備、他ローン完済、信用情報維持が審査通過のポイント
(1) パート・アルバイトの住宅ローン審査の実態
パート・アルバイトでも住宅ローンを組むことは可能ですが、正社員に比べて審査は厳しくなります。
理由は以下の通りです。
- 収入が少ない: パートの平均年収は約119万円(2023年)で、住宅ローンの目安年収200〜300万円に届かないケースが多い
- 雇用が不安定: パートは契約期間が短く、雇用継続性が低いとみなされる
- 金融機関の審査基準: 一部の金融機関はパート・アルバイトの利用を認めていない
(2) パートが審査で不利な理由(収入安定性・雇用継続性)
金融機関が住宅ローン審査で重視するのは、返済能力の継続性です。
パートが不利とされる理由:
| 項目 | 正社員 | パート・アルバイト |
|---|---|---|
| 収入の安定性 | 月給制・賞与あり | 時給制・シフト制(収入変動が大きい) |
| 雇用の継続性 | 無期雇用 | 有期雇用(契約更新の可能性) |
| 社会保険 | 完備 | 勤務時間により未加入の場合がある |
パートは収入・雇用が不安定とみなされるため、審査で不利になります。
(3) 金融機関による対応の違い(三菱UFJ銀行は利用不可等)
金融機関により、パート・アルバイトの住宅ローン利用可否は異なります。
利用不可の例:
- 三菱UFJ銀行はパート・アルバイトの住宅ローン利用を認めていません
利用可能の例:
- フラット35は雇用形態に制限がなく、パート・アルバイトでも申し込み可能
金融機関により審査基準が大きく異なるため、複数の金融機関に相談することを推奨します。
パートの住宅ローン審査基準と借入可能額
パートで住宅ローンを組む場合、審査基準と借入可能額の目安を正確に理解しておくことが重要です。
(1) 必要な年収の目安(200〜300万円以上)
住宅ローンの申請に必要な年収の目安は200〜300万円以上です。
これは、金融機関が「安定した返済能力がある」と判断する最低ラインです。
(2) パートの平均年収(約119万円)との乖離
2023年のパート平均月収は約9.9万円で、年収に換算すると約119万円です。
この金額では、住宅ローンの目安年収200〜300万円に届かないケースが多いため、以下の対策が必要です。
- 勤務時間を増やして収入アップ
- 配偶者との収入合算・ペアローン
- 頭金を多めに準備して借入額を減らす
(3) 返済負担率の基準(年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下)
返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合です。
住宅金融支援機構(フラット35)の基準は以下の通りです。
| 年収 | 返済負担率の上限 |
|---|---|
| 400万円未満 | 30%以下 |
| 400万円以上 | 35%以下 |
計算例:
- 年収300万円の場合: 年間返済額90万円以下(月7.5万円以下)
- 年収400万円の場合: 年間返済額140万円以下(月11.7万円以下)
返済負担率を超えると、他のローン(自動車ローン・カードローン等)を含めた年間返済額の合計が基準を超え、審査に通りません。
(4) 勤続年数の基準(1〜3年以上が目安)
金融機関は勤続年数も重視します。
一般的な基準:
- フラット35: 明確な基準なし(短期間でも可能性あり)
- 民間銀行: 1〜3年以上が目安
勤続年数が短い場合は、フラット35が現実的な選択肢となります。
(5) 信用情報の重要性(延滞・滞納は5年間記録)
クレジットカードや携帯電話の分割払いで延滞・滞納があると、信用情報に5年間記録が残り、審査に悪影響を及ぼします。
信用情報を維持するためには:
- クレジットカードの支払いを期日通りに行う
- 携帯電話の分割払いを延滞しない
- 他のローンを滞納しない
フラット35の活用(雇用形態に制限なし)
パート・アルバイトで住宅ローンを検討する場合、フラット35が最も現実的な選択肢です。
(1) フラット35の特徴(パート・アルバイトでも申込可能)
フラット35は住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローンです。
特徴:
- 雇用形態に制限がない: パート・アルバイトでも申し込み可能
- 固定金利: 金利が返済期間中変わらないため、返済計画が立てやすい
- 保証料不要: 保証料・繰上返済手数料が不要
(2) フラット35の金利動向(2025年9月約1.9%前後)
2025年9月時点のフラット35の金利は約1.9%前後です。
2025年12月現在、住宅ローン金利(変動・固定とも)は上昇傾向にあり、今後も利上げの可能性が高いことを考慮してください。
(3) 借入可能額の計算方法
フラット35の借入可能額シミュレーションで計算できます。
計算例(金利1.9%、返済期間35年、年収300万円):
- 返済負担率30%以下の場合: 借入可能額約1,800万円
(4) フラット35の審査基準
フラット35の審査基準:
- 返済負担率: 年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下
- 勤続年数: 明確な基準なし
- 物件基準: 床面積70㎡以上(マンション30㎡以上)、技術基準を満たす住宅
ペアローン・収入合算の活用方法
配偶者が正社員の場合、ペアローン・収入合算で借入可能額を増やすことができます。
(1) 収入合算とは(夫婦等の収入を合算)
収入合算とは、夫婦等の収入を合算して住宅ローンを申し込む方法です。
メリット:
- 借入可能額が増える
- 主債務者1人で審査を受けるより通りやすい
デメリット:
- 連帯保証人となる配偶者も返済義務を負う
- 住宅ローン控除は主債務者のみ
(2) ペアローンとは(夫婦それぞれが債務者)
ペアローンとは、夫婦それぞれが債務者となり、2本の住宅ローンを組む方法です。
メリット:
- 借入可能額が増える
- 住宅ローン控除を2人分受けられる
デメリット:
- 契約手数料・登記費用が2倍かかる
- どちらかが退職・転職すると返済が苦しくなる可能性がある
(3) 収入合算とペアローンの違い
| 項目 | 収入合算 | ペアローン |
|---|---|---|
| 債務者 | 1人(主債務者のみ) | 2人(夫婦それぞれ) |
| 住宅ローン控除 | 1人分 | 2人分 |
| 契約手数料 | 1本分 | 2本分 |
| 団体信用生命保険 | 主債務者のみ | 2人とも加入可能 |
(4) 配偶者が正社員の場合の活用方法
配偶者が正社員の場合、以下の方法で借入可能額を増やすことができます。
- パート+正社員の収入合算: 正社員の配偶者が主債務者、パート配偶者が連帯保証人
- パート+正社員のペアローン: 夫婦それぞれが債務者となり、2本のローンを組む
審査通過のポイントと注意点
パートで住宅ローンの審査に通るためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
(1) 頭金を多めに準備する(物件価格の20%が目安)
頭金を多めに準備すると、借入額が減り、審査に通りやすくなります。
目安は**物件価格の20%**です。
例:
- 物件価格3,000万円の場合: 頭金600万円、借入額2,400万円
借入額が少ないほど、返済負担率が下がり、審査に通りやすくなります。
(2) 他のローンを事前に完済する
自動車ローン・カードローン等の他のローンを事前に完済し、返済負担率を下げることが重要です。
例:
- 年収300万円、自動車ローン年間返済額60万円の場合:
- 返済負担率: 60万円 ÷ 300万円 = 20%
- 住宅ローンの年間返済額上限: 90万円 - 60万円 = 30万円(月2.5万円)
自動車ローンを完済すれば、住宅ローンの年間返済額上限が90万円(月7.5万円)に増えます。
(3) 信用情報を維持する(延滞・滞納を避ける)
クレジットカードや携帯電話の分割払いで延滞・滞納がないよう注意してください。
信用情報は5年間記録が残り、審査に悪影響を及ぼします。
(4) 複数の金融機関に相談する
金融機関により審査基準が異なるため、複数の金融機関に相談することを推奨します。
- フラット35(住宅金融支援機構)
- 地域密着型の信用金庫・信用組合
- ネット銀行
(5) 無理のない返済計画を立てる(家計を圧迫しない)
審査に通っても、返済が家計を圧迫するリスクがあるため、無理のない返済計画が必須です。
返済額の目安:
- 手取り月収の25%以内が理想
- 手取り月収の30%を超えると家計が苦しくなる
例(手取り月収20万円の場合):
- 理想的な返済額: 月5万円以内
- 上限: 月6万円
ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザー等の専門家への相談を推奨します。
(6) 金利上昇リスク(2025年12月時点で上昇傾向)
2025年12月現在、住宅ローン金利(変動・固定とも)は上昇傾向にあり、今後も利上げの可能性が高いことを考慮してください。
変動金利を選ぶ場合は、金利上昇時の返済額増加に備えた資金計画が必要です。
まとめ:パートの住宅ローン借入判断のポイント
パート・アルバイトでも住宅ローンは組めますが、正社員より審査は厳しくなります。
フラット35は雇用形態に制限がなく、パート・アルバイトでも申し込み可能で最も現実的な選択肢です。年収200〜300万円以上が目安ですが、パート平均年収(約119万円)では届かないケースが多いため、配偶者との収入合算やペアローンの検討を推奨します。
審査通過のポイントは、頭金準備、他ローン完済、信用情報維持、複数の金融機関への相談です。
審査に通っても返済が家計を圧迫するリスクがあるため、無理のない返済計画を立て、ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザー等の専門家に相談しながら、慎重に判断してください。
