古家付き土地とは?購入前に知っておくべき基礎知識
土地の購入を検討する際、「古家付き土地」という物件を目にしたことがある方は少なくありません。
この記事では、古家付き土地の購入メリット・デメリット、解体費用の相場、購入時の注意点、トラブル事例と対策を実務的に解説します。
古家付き土地の特徴を理解し、失敗しない土地購入の判断材料を得られるようになります。
この記事のポイント
- 古家付き土地は経済的価値がほぼない古い家が建つ土地で、相場より安く購入できる場合がある
- 解体費用は木造で4-6万円/坪が目安だが、買主負担が基本
- 固定資産税は住宅用地の特例で1/6になるため、すぐに解体しない選択肢もある
- 境界線確認、再建築可否、インフラ状況、契約不適合責任の範囲を購入前に必ずチェック
- 地中埋設物、アスベスト、解体費用の想定超過等のトラブルリスクに注意が必要
(1) 古家付き土地の定義と販売方法
古家付き土地とは、経済的価値がほぼない古い家が建つ土地のことです。「土地※現況古家あり」として、土地の扱いで販売されます。
一般的には、築年数が古く、リフォームやリノベーションでは対応できない状態の住宅が該当します。
(2) 「土地※現況古家あり」の意味
「現況古家あり」は、「建物は経済的価値がないため、あくまで土地として販売するが、現状は古い家が残っている」という意味です。
この表記がある場合、以下を前提としています。
- 建物の解体は買主が行う: 売主は解体せずに引き渡す
- 契約不適合責任が免責される可能性: 建物の不具合は買主が負担
(3) 古家付き土地の市場動向
2024年12月時点の情報として、古家付き土地の需要は比較的安定しています。
都市部や郊外で、注文住宅を建てたい購入者や、土地を安く取得したい投資家等が購入するケースが多いです。
古家付き土地のメリット・デメリット
(1) メリット:相場より安く購入できる
古家付き土地は、更地(建物がない土地)より安く販売されることが多いです。
売主は解体費用を負担せずに売却できるため、その分を価格に反映しています。ただし、解体費用を考慮すると総額で高くなる場合もあるため、慎重な計算が必要です。
(2) メリット:固定資産税が安い(住宅用地の特例)
古家が建っている土地は、住宅用地の特例により固定資産税が1/6(200㎡以下の部分)に軽減されます。
すぐに解体せず、翌年の1月1日まで古家を残しておくことで、固定資産税を抑えることができます。
(出典: 古家付き土地の購入はメリットが多い?古家の基準や魅力と注意点とは)
(3) メリット:建物配置をイメージしやすい
既存の建物を参考に、新築住宅の配置や日当たり、眺望をイメージできます。
敷地の形状や周辺環境を理解しやすく、設計時の参考になります。
(4) デメリット:解体費用が買主負担
解体費用は基本的に買主が全額負担します。木造で4-6万円/坪が目安ですが、構造や立地により変動します。
30坪以上の建物で100-300万円程度の費用がかかるため、購入前に見積もりを取ることが重要です。
(5) デメリット:契約不適合責任の免責
古家付き土地は「現況有姿」での引き渡しとなり、売主の契約不適合責任が免責されることが多いです。
購入後に雨漏り、シロアリ被害、地盤沈下等が発覚しても、買主が全額負担することになります。
(6) デメリット:隠れた費用が発生するリスク
解体費用以外にも、以下の隠れた費用が発生する可能性があります。
- 地中埋設物撤去: 浄化槽、基礎、井戸等の撤去(数十万円)
- 庭木撤去: 大木や庭石の撤去(数万~数十万円)
- インフラ工事: 上下水道の引き込み(数十万~数百万円)
解体費用の相場と費用内訳
(1) 木造・鉄骨・RC別の解体費用相場
解体費用は建物の構造により大きく異なります。
| 構造 | 解体費用の目安(坪単価) | 30坪の場合の総額 |
|---|---|---|
| 木造 | 4-6万円/坪 | 120-180万円 |
| 鉄骨造 | 5-7万円/坪 | 150-210万円 |
| RC造(鉄筋コンクリート) | 6-10万円/坪 | 180-300万円 |
(出典: 土地売却時の解体費用相場 !古家付きと更地売却の違い・メリット比較)
(2) 解体費用に影響する要因(坪数・立地・地中埋設物等)
解体費用は、以下の要因により変動します。
- 坪数: 大きい建物ほど費用が高い
- 立地: 重機が入れない狭小地は人力解体となり費用増
- 地中埋設物: 浄化槽、基礎等の撤去で追加費用
- アスベスト: アスベスト含有建材がある場合、調査費用と撤去費用が追加
(3) 自治体の解体補助金制度
一部の自治体では、古家の解体費用を補助する制度があります。
補助額や条件は自治体により異なるため、購入前に確認することをおすすめします。
(出典: 古家の解体費用 古家を解体するメリットとデメリット)
(4) 解体費用を抑える方法
解体費用を抑える方法:
- 複数の解体業者から見積もりを取る: 相見積もりで費用を比較
- 自治体の補助金を活用: 補助金制度の確認と申請
- 解体時期を調整: 繁忙期を避けると費用が抑えられる場合がある
古家付き土地購入時の5つの注意点
(1) 境界線の確認(確定測量図と境界標)
境界線が曖昧な場合、以下のリスクがあります。
- 隣地とのトラブル: 境界をめぐる紛争
- 金融機関の融資拒否: 境界が未確定だと融資が受けられない
購入前に確定測量図と登記書類をチェックし、境界標の有無を確認しましょう。確定測量費用は30-80万円程度です。
(出典: 古家付きの土地の購入はトラブルのリスクあり?確認すべき注意点を解説)
(2) 再建築不可物件でないかの確認
再建築不可物件とは、建築基準法の接道義務(幅4m以上の道路に2m以上接する)を満たさない等の理由で、解体後に建て直せない物件です。
再建築不可の場合、土地の利用価値が大幅に下がるため、購入前に必ず確認が必要です。
(3) インフラ(上下水道)の状況確認
上下水道の引き込み状況を確認しましょう。
古家では、以下のケースがあります。
- 浄化槽を使用: 下水道へ切り替える場合は工事費用が必要(数十万円)
- 上水道の引き込みがない: 引き込み工事が必要(数十万~数百万円)
これらの費用は事前に見積もりを取り、総費用に含めることが重要です。
(4) 地中埋設物・アスベストのリスク確認
地中埋設物(浄化槽、基礎、井戸等)は、解体後に発見されることが多く、予想外の撤去費用が発生します。
アスベスト含有建材がある場合、調査費用(3-5万円)と撤去費用(通常の解体費用の1.5-2倍)が追加で必要になります。
(5) 契約不適合責任の範囲確認
契約書で「現況有姿」「契約不適合責任免責」と記載されている場合、購入後の不具合は買主が全額負担します。
契約前に宅地建物取引士に相談し、免責の範囲を正確に理解することを推奨します。
よくあるトラブル事例と対策
(1) 境界線トラブルと金融機関の融資拒否
事例: 購入後に隣地所有者から「境界が違う」と主張され、紛争に発展。金融機関も融資を拒否。
対策: 購入前に確定測量を実施し、境界標を設置。隣地所有者の立ち会いのもと境界を確定させる。
(2) 解体費用の想定超過(地中埋設物発見)
事例: 解体工事開始後、地中から浄化槽や基礎が発見され、撤去費用が50万円追加。
対策: 購入前に解体業者に現地調査を依頼し、地中埋設物のリスクを見積もりに含める。
(3) 再建築不可で建て直せないケース
事例: 購入後に再建築不可物件と判明。解体したが建て直せず、土地が塩漬けに。
対策: 購入前に建築基準法・都市計画法を確認し、建築士に再建築可否を確認してもらう。
(4) インフラ工事費用の追加発生
事例: 上下水道の引き込みがなく、工事費用で200万円が追加発生。
対策: 購入前にインフラ状況を確認し、引き込み工事の見積もりを取る。
まとめ:古家付き土地の購入が向いている人
古家付き土地は、経済的価値がほぼない古い家が建つ土地で、相場より安く購入できる場合があります。解体費用は木造で4-6万円/坪が目安ですが、買主負担が基本です。
固定資産税は住宅用地の特例で1/6になるため、すぐに解体しない選択肢もあります。購入時は、境界線確認、再建築可否、インフラ状況、契約不適合責任の範囲を必ずチェックし、専門家(不動産業者、建築士、解体業者)への相談を推奨します。
古家付き土地の購入が向いている人:
- 初期費用を抑えたい方: 更地より安く購入できる可能性
- 注文住宅を建てたい方: 既存の建物を参考に配置をイメージできる
- 時間に余裕がある方: 解体や各種手続きに時間をかけられる
一方で、解体費用、インフラ工事、地中埋設物等の隠れた費用が発生するリスクがあるため、総費用を慎重に見積もることが重要です。複数の不動産業者や専門家に相談しながら、慎重に判断しましょう。
