住宅ローンはみんないくら払ってる?実態を知る意義
「自分の住宅ローン返済額は妥当なのか」「他の人はどれくらい返済しているのか」と不安に感じている方は多いでしょう。
この記事では、住宅ローンの平均借入額、月々の平均返済額、返済負担率、金利タイプ別の選択傾向を、住宅金融支援機構や国土交通省の公式統計データをもとに解説します。
住宅購入を検討している方が、自分に合った返済計画を立てる判断材料を得られるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローンの月々の平均返済額は約11.7万円だが、物件種別で8.4〜14.5万円と大きく異なる
- 返済負担率の平均は19.2%、最多層は15〜20%。無理なく返せる目安は手取り年収の20〜25%以内
- 平均借入額は約3,772万円、平均世帯年収は660〜791万円(年収の4〜6倍を借入)
- 変動金利を選ぶ人が約70%だが、将来の金利上昇リスクを考慮し返済額に余裕を持たせることが重要
- 平均値はあくまで参考。家族構成・地域・生活費により適正額は大きく異なる
(1) 平均値を知ることのメリット
住宅ローンの平均返済額や借入額を知ることで、以下のメリットがあります。
メリット:
- 自分の返済計画が妥当かどうかを判断する材料になる
- 物件価格の設定や予算配分の参考になる
- 金融機関との交渉時に相場感を持てる
- 無理な借入を避けるための基準になる
統計データに基づく平均値を知ることで、客観的な視点から自分の返済計画を見直すことができます。
(2) 平均値に惑わされないことの重要性
一方で、平均値はあくまで参考値であり、個別の状況に応じた返済計画が重要です。
理由:
- 家族構成(子どもの人数・年齢)により教育費負担が異なる
- 地域により物件価格や生活費が大きく異なる
- 共働きか片働きかで可処分所得が異なる
- 将来のライフイベント(育児・介護)により収入・支出が変化する
「平均と同じなら安心」ではなく、自分の家計に合った返済計画を立てることが重要です。
住宅ローンの平均借入額と世帯年収
(1) 平均借入額(約3,772万円)
住宅ローンの平均借入額は、約3,772万円です(住宅金融支援機構調査)。
物件種別ごとの平均借入額は以下の通りです。
| 物件種別 | 平均借入額 |
|---|---|
| 新築注文住宅 | 約4,500万円 |
| 分譲マンション | 約4,000万円 |
| 分譲戸建住宅 | 約3,500万円 |
| 中古マンション | 約2,800万円 |
| 中古戸建住宅 | 約2,500万円 |
新築物件の方が借入額が高く、中古物件は比較的低い傾向があります。
(出典: 伊予銀行)
(2) 平均世帯年収(660〜791万円)
住宅ローン利用者の平均世帯年収は、調査により660〜791万円と報告されています。
調査別の平均世帯年収:
- 2024年4月調査:791.1万円(マネープラザONLINE)
- 住宅金融支援機構調査:660.5万円
平均世帯年収は、調査対象や時期により変動しますが、概ね650〜800万円の範囲にあります。
(出典: マネープラザONLINE、伊予銀行)
(3) 年収に対する借入額の実態(4〜6倍)
平均世帯年収660〜791万円に対し、平均借入額は約3,772万円です。
年収比率:
- 世帯年収660万円の場合:借入額3,772万円は年収の約5.7倍
- 世帯年収791万円の場合:借入額3,772万円は年収の約4.8倍
実態としては、年収の4〜6倍を借り入れる人が多いことがわかります。
これは、一般的な借入可能額の目安(年収の6〜7倍)よりも保守的な水準です。
月々の平均返済額:物件種別ごとの違い
(1) 全体平均(約11.7万円)
住宅ローンの月々の平均返済額は、約11.7万円です(住宅金融支援機構調査)。
ボーナス返済を含めた年間返済額は、約140万円となります。
(出典: 伊予銀行)
(2) 新築注文住宅(約14.5万円)
新築注文住宅の月々の平均返済額は、約14.5万円です。
新築注文住宅は、土地代と建物代の両方が必要なため、借入額が高くなり、返済額も高額になります。
年間返済額は約174万円となります。
(3) 分譲マンション(約12.3万円)
分譲マンションの月々の平均返済額は、約12.3万円です。
分譲マンションは、都市部に多く、物件価格が高額なため、返済額も比較的高い傾向があります。
年間返済額は約148万円となります。
(4) 中古マンション(約8.4万円)
中古マンションの月々の平均返済額は、約8.4万円です。
中古マンションは、新築と比べて物件価格が低いため、借入額・返済額ともに低い水準となります。
年間返済額は約101万円となります。
物件種別ごとの月々返済額まとめ:
| 物件種別 | 月々返済額 | 年間返済額 |
|---|---|---|
| 新築注文住宅 | 約14.5万円 | 約174万円 |
| 分譲マンション | 約12.3万円 | 約148万円 |
| 分譲戸建住宅 | 約10.6万円 | 約127万円 |
| 中古戸建住宅 | 約8.9万円 | 約107万円 |
| 中古マンション | 約8.4万円 | 約101万円 |
(出典: 伊予銀行)
返済負担率の実態:みんなどのくらいの割合を返済に充てている?
(1) 返済負担率の平均(19.2%)
2024年4月調査によると、返済負担率の平均は19.2%です。
計算例:
- 平均世帯年収791万円
- 平均年間返済額152万円(791万円 × 19.2%)
- 月々返済額12.7万円
この水準は、金融機関の審査基準(30〜35%)よりも大幅に低く、無理のない返済を心がけている人が多いことがわかります。
(出典: マネープラザONLINE)
(2) 最多層は15〜20%(26.6%)
返済負担率の分布を見ると、15〜20%の層が最も多く、全体の26.6%を占めています。
返済負担率の分布:
| 返済負担率 | 割合 |
|---|---|
| 10%未満 | 約10% |
| 10〜15% | 約20% |
| 15〜20% | 約27%(最多) |
| 20〜25% | 約22% |
| 25〜30% | 約15% |
| 30%以上 | 約6% |
多くの人が返済負担率を20〜25%以内に抑えており、生活に余裕を持たせた返済計画を立てていることがわかります。
(出典: マネープラザONLINE)
(3) 理想的な返済負担率(手取り年収の20〜25%)
理想的な返済負担率は、手取り年収の20〜25%以内です。
理由:
- 金融機関の返済負担率基準(30〜35%)は税込み年収ベース
- 手取り年収は税込み年収の75〜80%程度
- 手取り年収の25%を超えると、生活費・教育費・老後資金に余裕がなくなる
例:
- 税込み年収700万円
- 手取り年収560万円(80%として計算)
- 理想の年間返済額:112〜140万円(月額9.3〜11.7万円)
多くの住宅ローン利用者が、実際にこの水準を意識した返済計画を立てていることが統計から確認できます。
(出典: SBI新生銀行)
平均金利と金利タイプ別の選択傾向
(1) 変動金利の選択率(約70%)
2025年1月の調査では、住宅購入者の約70%が変動金利を選択しています。
変動金利は、固定金利よりも金利が低く、月々の返済額を抑えられることが選ばれる理由です。
変動金利のメリット:
- 金利が低く、月々の返済額が少ない
- 金利が下がれば返済額も減る
変動金利のリスク:
- 将来の金利上昇リスクがある
- 金利が上がると返済額が増える
(出典: LIFULL HOME'S)
(2) 固定金利の選択率(約30%)
固定金利を選択する人は約30%です。
固定金利は、借入時の金利が返済期間中変わらないため、将来の金利上昇リスクを避けたい人に選ばれます。
固定金利のメリット:
- 返済額が一定で、ライフプランが立てやすい
- 金利上昇リスクがない
固定金利のデメリット:
- 変動金利より金利が高く、月々の返済額が多い
- 金利が下がっても返済額は減らない
(3) 平均金利水準(2024年時点)
2024年時点の平均金利水準は以下の通りです。
| 金利タイプ | 平均金利 |
|---|---|
| 変動金利 | 0.4〜0.7% |
| 固定金利10年 | 1.0〜1.5% |
| フラット35(全期間固定) | 1.5〜2.0% |
変動金利は歴史的な低金利水準にあり、多くの人が変動金利を選ぶ背景となっています。
(4) 金利タイプ選択時の注意点
変動金利を選ぶ人が多数派ですが、将来の金利上昇リスクを考慮することが重要です。
注意点:
- 金利上昇時のシミュレーション:金利が1〜2%上昇した場合の返済額を試算する
- 返済額に余裕を持たせる:金利が上昇しても返済できる金額に設定する
- 繰り上げ返済の準備:金利上昇前に繰り上げ返済で元本を減らす
- 固定金利への借り換え検討:金利が大幅に上昇する前に固定金利に切り替える
LIFULL HOME'Sの調査では、購入検討者は購入者よりも慎重で、変動金利選択率は60%未満となっています。これは、将来の金利上昇リスクを懸念している表れと考えられます。
(出典: LIFULL HOME'S)
まとめ:平均はあくまで参考、自分に合った返済計画を
住宅ローンの月々の平均返済額は約11.7万円、平均借入額は約3,772万円、返済負担率の平均は19.2%です。
物件種別により返済額は8.4〜14.5万円と大きく異なり、多くの人が返済負担率を15〜20%に抑えています。
変動金利を選ぶ人が約70%ですが、将来の金利上昇リスクを考慮し、返済額に余裕を持たせることが重要です。
平均値はあくまで参考値であり、家族構成・地域・生活費により適正額は大きく異なります。自分の家計に合った返済計画を立て、不安がある場合はファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーに相談しながら進めてください。
最新の統計データは、住宅金融支援機構や各金融機関の公式サイトで確認できます。
