住宅ローンと長期金利の関係が重要な理由
住宅ローンを検討する際、長期金利の動向は固定金利型の住宅ローンに直接影響します。金利1%の差は、総返済額に数百万円の差を生むこともあるため、金利タイプの選択は非常に重要です。
この記事のポイント
- 固定金利は10年物国債利回り(長期金利)に連動し、変動金利は日銀の政策金利に連動
- 2025年12月、大手5行の10年固定金利は平均2.446%で5ヶ月連続上昇中
- 変動金利は0.6~0.7%台で据え置きだが、日銀の追加利上げで今後上昇の可能性
- 長期金利は短期金利より先行して上昇する傾向があり、「変動→固定」の借り換えタイミングに注意
- 変動金利利用者は68.1%、固定金利は31.9%(2017年頃から変動が増加傾向)
(1) 金利1%の差が総返済額に与える影響
住宅ローンで借入額3,000万円、返済期間35年の場合、金利1%の差は総返済額に約600万円の差を生みます。
| 金利 | 月返済額 | 総返済額 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1.0% | 約8.5万円 | 約3,557万円 | - |
| 2.0% | 約10.0万円 | 約4,174万円 | 約617万円 |
金利の選択は、長期的な家計に大きな影響を与えるため、慎重な検討が必要です。
(2) 2025年の金利上昇局面での選択の重要性
日本経済新聞によると、2025年12月、大手5行の10年固定金利は平均2.446%で5ヶ月連続上昇中です。
日銀は2024年3月にマイナス金利を終了し、2024年7月・2025年1月に利上げを実施。政策金利は現在0.5%で、今後も追加利上げが検討されています。金利上昇局面での選択は、特に重要性が増しています。
長期金利とは何か、住宅ローン金利との関係
(1) 長期金利(10年物国債利回り)の定義
長期金利とは、10年物国債の利回りを指します。国債は国が発行する債券で、その利回りは市場の需給により決まります。2025年12月現在、1.8%台で推移しています。
(2) 固定金利が長期金利に連動する仕組み
HOME4Uによると、固定金利型住宅ローンは10年物国債利回り(長期金利)に連動します。
銀行は長期固定金利の住宅ローンを提供する際、10年物国債利回りを基準に金利を設定します。長期金利が上昇すると、固定金利型住宅ローンの金利も上昇します。
(3) 変動金利が短期政策金利に連動する仕組み
変動金利型住宅ローンは、日銀の政策金利(短期金利)に連動します。日銀が政策金利を引き上げると、銀行の短期調達コストが上昇し、変動金利も上昇します。
変動金利は半年ごとに見直され、市場金利の変動に応じて金利が変わります。
(4) 長期金利と短期金利の先行性の違い
HOME4Uによると、金利上昇局面では、長期金利は短期金利より先行して上昇する傾向があります。
これは、市場が将来の金利上昇を織り込むためです。「変動金利で借りて金利上昇時に固定へ借り換え」という戦略は、このタイミングの難しさから、実現が難しい場合があります。
固定金利と変動金利の違いとメカニズム
(1) 固定金利のメリット・デメリット
メリット:
- 一定期間または完済まで金利が変わらない
- 返済計画が立てやすい
- 金利上昇リスクを回避できる
デメリット:
- 変動金利より金利が高い
- 金利下降時の恩恵を受けられない
(2) 変動金利のメリット・デメリット
メリット:
- 固定金利より金利が低い(現在0.6~0.7%台)
- 金利下降時に返済額が減少
デメリット:
- 半年ごとに金利が見直され、返済額が変動
- 金利上昇リスクがある
- 返済計画が立てにくい
(3) 金利タイプ別の利用状況(変動68.1%、固定31.9%)
全国銀行協会によると、変動金利利用者は68.1%、固定金利は31.9%で、2017年頃から変動金利が増加傾向にあります。
低金利環境が続いたため、変動金利を選択する人が増えましたが、金利上昇局面では固定金利への関心が高まる可能性があります。
(4) 「変動→固定」借り換えのタイミングと注意点
「変動金利で借りて金利上昇時に固定へ借り換え」という戦略は理論上は可能ですが、長期金利が短期金利より先行して上昇するため、タイミングが難しいです。
変動金利が上昇する頃には、固定金利はすでに高くなっている可能性があり、借り換えのメリットが小さくなるリスクがあります。
2025年の住宅ローン金利動向と今後の見通し
(1) 2025年12月の最新金利(変動・固定)
住まいサーフィンによると、2025年12月の最新金利は以下の通りです。
| 金利タイプ | 金利 | 前月比 |
|---|---|---|
| 変動金利 | 0.6~0.7%台 | 据え置き |
| 10年固定金利 | 平均2.446% | +0.176%(5ヶ月連続上昇) |
| フラット35 | 1.970% | +0.07% |
(出典: 住まいサーフィン)
(2) 日銀の金融政策転換(マイナス金利終了、利上げ)
SBI新生銀行によると、日銀は2024年3月にマイナス金利を終了し、2024年7月・2025年1月に利上げを実施しました。
政策金利は現在0.5%で、今後も追加利上げが検討されています。賃上げとインフレが続く限り、利上げ継続の可能性が高いとされています。
(3) 10年固定金利の5ヶ月連続上昇
日本経済新聞によると、大手5行の10年固定金利は2025年12月から5ヶ月連続で上昇しています。
10年物国債利回り(長期金利)の上昇を反映し、平均2.446%となっています。
(4) エコノミスト予測(2026年末に政策金利1.1%)
住まいサーフィンによると、エコノミスト約40名の予測では、2026年末に政策金利が1.1%へ上昇する見込みです。
変動金利は今後上昇する可能性が高く、固定金利もさらに上昇する可能性があります。
金利タイプの選び方と注意点
(1) 家計状況・自己資金から見た選択基準
三井住友銀行によると、以下の基準で選択できます。
- 家計に余裕がある: 変動金利で金利上昇リスクに対応できる
- 自己資金が多い: 借入額が少ないため、変動金利でも返済負担が軽い
- 家計に余裕がない: 固定金利で返済計画を安定させる
(2) 借入額・借入期間から見た選択基準
- 借入額が少ない・借入期間が短い: 変動金利でも返済負担が軽い
- 借入額が多い・借入期間が長い: 固定金利で金利上昇リスクを回避
(3) 金利上昇リスクの許容度
- 金利上昇リスクを許容できる: 変動金利で低金利のメリットを享受
- 金利上昇リスクを避けたい: 固定金利で安定した返済計画
(4) 諸費用・保障内容の確認ポイント
三井住友銀行によると、金利だけでなく以下の諸費用・保障内容も確認が必要です。
- 事務手数料
- 保証料
- 団体信用生命保険(団信)
- 繰上返済手数料
総コストを比較し、ファイナンシャルプランナーへの相談を推奨します。
状況別の金利タイプ選択ポイント
状況別の金利タイプ選択ポイントは以下の通りです。
| 状況 | 推奨金利タイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 家計に余裕がある | 変動金利 | 低金利のメリットを享受、金利上昇リスクに対応可能 |
| 自己資金が多い | 変動金利 | 借入額が少なく、返済負担が軽い |
| 借入額が少ない | 変動金利 | 金利上昇時の影響が小さい |
| 借入期間が短い | 変動金利 | 短期間で完済、金利上昇リスクが限定的 |
| 返済計画の安定性重視 | 固定金利 | 金利変動がなく、計画が立てやすい |
| 長期借入 | 固定金利 | 金利上昇リスクを回避 |
| 金利上昇リスクを避けたい | 固定金利 | 返済額が一定で安心 |
ファイナンシャルプランナーや金融機関に相談しながら、最適な金利タイプを選択しましょう。
まとめ
固定金利は10年物国債利回り(長期金利)に連動し、変動金利は日銀の政策金利に連動します。2025年12月、大手5行の10年固定金利は平均2.446%で5ヶ月連続上昇中、変動金利は0.6~0.7%台で据え置きですが、日銀の追加利上げで今後上昇の可能性があります。
長期金利は短期金利より先行して上昇する傾向があり、「変動→固定」の借り換えタイミングは難しいため、最初から固定金利を選ぶか、変動金利のリスクを許容するかの判断が重要です。
変動金利利用者は68.1%、固定金利は31.9%で、家計に余裕があり、自己資金が多く、借入額が少ない人は変動金利が向いています。返済計画の安定性を重視し、長期借入で金利上昇リスクを避けたい人は固定金利が向いています。
金利だけでなく諸費用・保障内容も確認し、ファイナンシャルプランナーへの相談を推奨します。
