住宅ローンの抵当権とは|設定・抹消手続きと注意点を解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/29

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住宅ローンと抵当権の関係:なぜ設定が必要なのか

住宅ローンを組む際、金融機関から「抵当権設定」という言葉を聞いたことはありませんか?多くの方にとって、抵当権は聞き慣れない専門用語ですが、住宅ローン利用において避けて通れない重要な仕組みです。

この記事では、抵当権の法的な意味、設定・抹消手続きの流れ、必要書類、費用、よくあるトラブルへの対処法を、法務局の公式情報を元に解説します。

住宅ローンを検討中の方、すでに利用中の方、そして完済後の手続きを控えている方まで、必要な知識を正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 住宅ローン借入時には抵当権設定が必須で、登録免許税は債権額の0.4%が必要
  • 抵当権は債務不履行時に金融機関が優先的に弁済を受けられる法的な権利
  • 完済後は速やかに抵当権抹消登記を行う必要があり、金融機関から受領する書類には有効期限(3ヶ月以内)がある
  • 抵当権抹消は自分で行うことも可能で、登録免許税は不動産1件につき1,000円のみ

(1) 住宅ローン借入時には抵当権設定が必須

住宅ローンを借りる際、金融機関は必ず購入する土地や建物に抵当権を設定します。これは、借入金額が数千万円という高額になるため、金融機関が貸し倒れリスクを抑えるための仕組みです。

抵当権設定登記は、住宅ローン契約と同時に行われるのが一般的です。手続きは司法書士に委任することが多く、金融機関が指定する司法書士が対応します。

(2) 金融機関が担保として不動産を確保する仕組み

抵当権とは、借入金の返済が滞った場合に、金融機関が担保とした不動産を競売にかけて、その売却代金から優先的に弁済を受けられる権利です。

この仕組みにより、金融機関は数千万円という高額融資を低金利で提供できます。住宅ローン金利が他のローンより大幅に低いのは、抵当権による担保があるためです。

(3) 債務不履行時に優先的に弁済を受けられる権利

万が一、住宅ローンの返済を3〜6ヶ月滞納すると、金融機関は抵当権を実行します。抵当権の実行とは、裁判所を通じて不動産を競売にかけ、売却代金から債権を回収する手続きです。

抵当権者(金融機関)は、他の債権者よりも優先的に弁済を受けられる「優先弁済権」を持ちます。これは民法に基づく法的な権利です。

抵当権とは:法的な意味と仕組み

抵当権は、民法に規定された担保物権の一種です。ここでは、抵当権の法的な定義と、実務上重要な概念(根抵当権との違い、順位、優先弁済権)を解説します。

(1) 抵当権の法的な定義(民法に基づく担保物権)

抵当権は、民法第369条に規定された担保物権です。債務者が債務を履行しない場合に、債権者が担保とした不動産を競売にかけて、その売却代金から優先的に弁済を受けられる権利を指します。

重要な特徴は、債務者(住宅ローン利用者)が不動産を使い続けられる点です。抵当権が設定されていても、通常通り自宅に住み続けることができます。

(2) 根抵当権との違い(一定の極度額まで繰り返し借入可能)

抵当権と混同されやすいのが「根抵当権」です。両者の違いは以下の通りです。

項目 抵当権 根抵当権
借入の性質 1回限りの借入(住宅ローン) 繰り返し借入可能(事業資金等)
債権額 確定している 極度額の範囲内で変動
主な利用者 個人(住宅購入者) 事業者

住宅ローンでは通常、抵当権が設定されます。根抵当権は事業者向けの融資で多く利用されます。

(3) 抵当権の順位(登記順に第一順位・第二順位)

複数の抵当権が設定されている場合、登記の順番によって「第一順位」「第二順位」という順位が決まります。

例えば、住宅ローンで第一順位の抵当権が設定された後、リフォームローンで第二順位の抵当権が設定されるケースがあります。

順位は登記記録(不動産登記簿)で確認できます。法務局で登記事項証明書を取得すれば、どの金融機関がどの順位で抵当権を持っているかが分かります。

(4) 競売時の優先弁済権(第一順位から優先的に弁済)

不動産が競売にかけられた場合、売却代金は第一順位の抵当権者から順に配当されます。

例えば、以下のようなケースを考えます。

  • 物件の競売売却代金:3,000万円
  • 第一順位の債権額:2,500万円
  • 第二順位の債権額:1,000万円

この場合、第一順位の債権者は全額(2,500万円)を回収できますが、第二順位の債権者は残り500万円しか回収できず、500万円が回収不能となります。

このため、第二順位以降の抵当権はリスクが高く、金利も高めに設定されることが一般的です。

抵当権設定の流れと費用

住宅ローン借入時の抵当権設定は、通常、司法書士に委任して行います。ここでは、手続きの流れと必要な費用を具体的に解説します。

(1) 抵当権設定登記の手続きの流れ(司法書士に委任が一般的)

抵当権設定登記の手続きは、以下の流れで進みます。

  1. 金融機関との住宅ローン契約:抵当権設定契約も同時に締結
  2. 司法書士への委任:金融機関が指定する司法書士が手続きを代行
  3. 登記申請書類の作成:司法書士が登記申請書、登記原因証明情報等を作成
  4. 法務局への申請:司法書士が法務局で抵当権設定登記を申請
  5. 登記完了:通常1〜2週間で登記が完了し、登記識別情報が発行される

個人で手続きすることも理論上は可能ですが、金融機関の多くは司法書士への委任を融資条件としています。

(2) 登録免許税:債権額の0.4%(例:4,000万円で16万円)

抵当権設定登記には、登録免許税(国税)が必要です。税率は債権額の0.4%です。

計算例

  • 住宅ローン借入額:4,000万円
  • 登録免許税:4,000万円 × 0.4% = 16万円

この税金は、登記申請時に収入印紙または現金で納付します。

(3) 司法書士報酬:5万円~10万円が相場

司法書士への報酬は、地域や事務所により異なりますが、一般的に5万円〜10万円が相場です。

報酬には以下の業務が含まれます。

  • 登記申請書類の作成
  • 法務局での登記申請
  • 登記完了後の書類受領と引き渡し

複数の司法書士から見積もりを取ることも可能ですが、金融機関が指定する司法書士を利用するのが一般的です。

(4) 軽減措置:一定の要件で登録免許税が0.1%に軽減

住宅用家屋について、一定の要件を満たす場合、登録免許税が0.4%から0.1%に軽減されます。

軽減措置の主な要件(2025年時点):

  • 自己居住用の住宅であること
  • 床面積が50㎡以上であること
  • 新築または取得後1年以内の登記であること

軽減後の計算例

  • 住宅ローン借入額:4,000万円
  • 登録免許税:4,000万円 × 0.1% = 4万円(12万円の節約)

軽減措置の適用には、市区町村の住宅用家屋証明書が必要です。詳細は最寄りの市区町村にご確認ください。

抵当権抹消の流れと費用

住宅ローンを完済しても、抵当権は自動的には消えません。抵当権抹消登記を行うことで、初めて登記記録から抵当権が削除されます。

(1) 住宅ローン完済後の抵当権抹消登記の必要性

住宅ローンを完済すると、金融機関から抵当権抹消に必要な書類が郵送されます。しかし、抵当権は自動的には消えないため、法務局で抵当権抹消登記を申請する必要があります。

抵当権を放置しても日常生活に直接の支障はありませんが、以下のリスクがあります。

  • 不動産売却時に手続きが複雑化:売却時に抵当権抹消が必要で、当時の金融機関の書類再取得が困難になる場合がある
  • 相続時の手続きが煩雑化:相続人が抵当権抹消手続きを行う必要があり、負担が増える

法務局は、完済後速やかに抹消登記を行うことを推奨しています。

(2) 必要書類(弁済証書・登記識別情報・委任状・金融機関の資格証明書)

抵当権抹消登記に必要な書類は、金融機関から提供されます。主な書類は以下の通りです。

書類名 内容
弁済証書(解除証書) 住宅ローン完済を証明する書類
登記識別情報(または登記済証) 抵当権設定時に発行された12桁の英数字
委任状 司法書士に手続きを委任する場合に使用
資格証明書(登記事項証明書) 金融機関の商号・本店所在地を証明する書類

これらの書類は、完済後1〜2週間程度で金融機関から郵送されます。

(3) 金融機関から受領する書類の有効期限(3ヶ月以内)

金融機関から受領する資格証明書(登記事項証明書)には、有効期限があります。発行後3ヶ月以内に登記申請を行う必要があります。

期限を過ぎた場合、金融機関に資格証明書の再発行を依頼する必要があり、手間と時間がかかります。完済後は速やかに手続きを行いましょう。

(4) 登録免許税:不動産1件につき1,000円

抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。

計算例

  • 土地1筆 + 建物1棟 = 2件
  • 登録免許税:1,000円 × 2件 = 2,000円

この税額は、抵当権設定時と比べて非常に低額です。

(5) 自分で手続きする方法と司法書士に依頼する方法

抵当権抹消登記は、自分で行うことも、司法書士に依頼することも可能です。

自分で行う場合

  • 費用:登録免許税のみ(2,000円程度)
  • 手間:法務局ウェブサイトで申請書の様式を入手し、必要事項を記入して法務局に提出
  • 所要時間:1〜2時間程度(申請書作成・法務局訪問)

司法書士に依頼する場合

  • 費用:登録免許税 + 司法書士報酬(1万円〜3万円程度)
  • 手間:書類を司法書士に渡すだけ
  • 所要時間:ほぼなし

時間に余裕がある方は自分で行うことで費用を節約できます。忙しい方や手続きに不安がある方は、司法書士への依頼を検討しましょう。

よくあるトラブルと注意点

抵当権設定・抹消に関して、よくあるトラブルと注意点を解説します。

(1) 住宅ローン滞納時のリスク(3-6ヶ月で抵当権実行・競売)

住宅ローンの返済を滞納すると、以下の流れで抵当権が実行されます。

  1. 滞納3ヶ月:金融機関から督促状・催告書が届く
  2. 滞納6ヶ月:期限の利益喪失(残債務の一括返済を求められる)
  3. 競売申立:金融機関が裁判所に競売を申し立てる
  4. 競売実施:裁判所が物件を競売にかけ、売却代金から債権を回収

返済が困難になった場合は、早期に金融機関に相談することが重要です。返済計画の見直し(リスケジュール)や借り換え等の選択肢があります。

(2) 抵当権抹消を放置した場合のリスク(将来の売却時に手続き複雑化)

抵当権抹消を放置しても、すぐに問題が生じるわけではありません。しかし、以下のリスクがあります。

  • 不動産売却時:抹消登記が必要だが、金融機関の合併・統廃合により書類再取得が困難になる場合がある
  • 相続時:相続人が抹消手続きを行う必要があり、負担が増える
  • 不動産担保ローン利用時:抹消されていない抵当権があると、新たな融資が受けにくくなる場合がある

完済後は、速やかに抹消登記を行うことを推奨します。

(3) 書類紛失時の対処法(金融機関への再発行依頼)

金融機関から受領した書類を紛失した場合、金融機関に再発行を依頼します。

ただし、金融機関の合併・統廃合により、当時の金融機関が存在しない場合もあります。その場合、合併後の金融機関に問い合わせる必要があり、手続きが複雑化します。

書類は大切に保管し、紛失しないようにしましょう。

(4) 複数の抵当権がある場合の注意点(順位変更には関係者全員の合意が必要)

住宅ローンとリフォームローンなど、複数の抵当権が設定されている場合、抹消の順番に注意が必要です。

通常、完済した抵当権から順次抹消します。ただし、順位変更(第一順位と第二順位を入れ替える等)を行う場合は、関係者全員(全抵当権者)の合意と登記が必要です。

複数の抵当権がある場合は、司法書士への相談を推奨します。

まとめ:手続きのポイントと専門家への相談

住宅ローンの抵当権について、設定から抹消までの流れを解説しました。

(1) 抵当権設定は住宅ローン利用に必須

住宅ローンを借りる際、抵当権設定は避けて通れない手続きです。登録免許税(債権額の0.4%)と司法書士報酬(5万円〜10万円)が必要ですが、一定の要件で登録免許税が0.1%に軽減されます。

(2) 完済後は速やかに抹消登記を実施

住宅ローン完済後は、速やかに抵当権抹消登記を行いましょう。金融機関から受領する書類には有効期限(3ヶ月以内)があります。自分で手続きすれば登録免許税のみ(2,000円程度)で済みます。

(3) 司法書士・弁護士への相談を推奨

抵当権の設定・抹消は法律行為です。不明点や複雑なケース(複数の抵当権、書類紛失等)は、司法書士や弁護士への相談を推奨します。

税金や制度は改正される可能性があるため、最新の情報は法務局の公式サイトでご確認ください。

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よくある質問

Q1抵当権とは何か?

A1抵当権は、住宅ローン借入時に土地や建物を担保として設定する権利です。債務不履行時に金融機関が優先的に弁済を受けられる仕組みで、民法に基づく担保物権の一種です。抵当権が設定されていても、債務者(住宅ローン利用者)は通常通り自宅に住み続けることができます。

Q2抵当権設定にかかる費用は?

A2抵当権設定登記には、登録免許税(債権額の0.4%)と司法書士報酬(5万円~10万円程度)が必要です。例えば、4,000万円の住宅ローンを借りる場合、登録免許税は16万円です。一定の要件を満たす場合、登録免許税が0.1%に軽減され、4万円で済みます。軽減措置の適用には、市区町村の住宅用家屋証明書が必要です。

Q3住宅ローン完済後、抵当権はどうなる?

A3住宅ローンを完済しても、抵当権は自動的には消えません。抵当権抹消登記を行うことで、初めて登記記録から抵当権が削除されます。金融機関から提供される書類(弁済証書、登記識別情報、委任状、資格証明書)を使用して、法務局で手続きを行います。資格証明書は発行後3ヶ月以内に登記申請する必要があり、期限切れの場合は再取得が必要です。

Q4抵当権抹消は自分でできる?費用は?

A4抵当権抹消登記は、自分で行うことも可能です。費用は登録免許税のみで、不動産1件につき1,000円です(土地1筆+建物1棟=2,000円)。法務局ウェブサイトで申請書の様式を入手し、必要事項を記入して法務局に提出します。司法書士に依頼する場合は、登録免許税に加えて報酬1万円~3万円程度が必要です。時間に余裕がある方は自分で行うことで費用を節約できます。

Q5抵当権の順位とは?なぜ重要?

A5抵当権の順位とは、複数の抵当権がある場合の優先順位で、登記の順番で決まります。競売時は第一順位から優先的に弁済されるため、第二順位以降は売却代金が不足すると弁済を受けられない可能性があります。例えば、売却代金3,000万円で第一順位の債権額が2,500万円、第二順位の債権額が1,000万円の場合、第二順位の債権者は500万円しか回収できません。このため、第二順位以降の抵当権はリスクが高く、金利も高めに設定されることが一般的です。

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Room Match編集部

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