住宅ローンで配偶者が連帯保証人を求められた方へ
住宅ローンを申し込む際、配偶者に連帯保証人を依頼されることがあります。「連帯保証人になるとどうなるのか」「離婚したらどうなるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、連帯保証人の法的な義務と責任、配偶者が連帯保証人になるケース、連帯債務者との違い、リスクと注意点を解説します。連帯保証人になる前に、正確な知識を持ち、慎重に判断できるようになります。
この記事のポイント
- 連帯保証人は主債務者と同等の返済責任を負い、債権者から直接請求される
- 連帯保証人には催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益がない
- 配偶者が連帯保証人になるケースは、収入合算型・ペアローン・共有名義の3パターン
- 離婚しても連帯保証人の義務は金融機関の承諾なしに外れられない
- フラット35は保証人・保証会社不要で、連帯保証人を立てられない場合の選択肢
連帯保証人とは?法的な義務と責任
(1) 主債務者と同等の返済責任を負う
連帯保証人とは、主債務者(借りた本人)と同等の返済責任を負う保証人です。主債務者が返済できない場合、連帯保証人が全額返済する義務を負います。
三井住友銀行によると、連帯保証人は主債務者と同じ立場で債務を負うため、債権者(金融機関)から直接請求される可能性があります。
(2) 連帯保証人には3つの抗弁権がない
連帯保証人には、以下の3つの抗弁権がありません(アットホーム)。
| 抗弁権 | 内容 | 連帯保証人の扱い |
|---|---|---|
| 催告の抗弁権 | 「まず主債務者に請求せよ」と主張する権利 | なし |
| 検索の抗弁権 | 「まず主債務者の財産を差し押さえよ」と主張する権利 | なし |
| 分別の利益 | 複数の保証人がいる場合に債務を頭数で割る権利 | なし |
これらの権利がないため、連帯保証人は主債務者と全く同じ立場で全額返済義務を負います。
(3) 債権者から直接請求される可能性
主債務者が返済できなくなった場合、債権者(金融機関)は連帯保証人に直接請求できます。「まず主債務者に請求してください」と主張することはできません。
このため、連帯保証人になる際は、主債務者と同等の返済責任を負うことを十分に理解する必要があります。
配偶者が連帯保証人になる必要があるケース
(1) 収入合算型の住宅ローン
収入合算型とは、配偶者や親子の収入を合算して借入額を増やす方式です(SUUMO)。
この場合、収入を合算した配偶者が連帯保証人になることが一般的です。借入額を増やせるメリットがありますが、連帯保証人は住宅ローン控除の対象外です。
(2) ペアローン(夫婦で互いに連帯保証人)
ペアローンとは、夫婦や親子が別々のローンを組み、互いに連帯保証人になる方式です(三菱UFJ銀行)。
それぞれが債務者となるため、両者が住宅ローン控除を受けられます。ただし、互いに連帯保証人になるため、相手が返済できない場合は自分が返済する義務を負います。
(3) 共有名義で物件を購入する場合
共有名義で物件を購入する場合、名義人全員が連帯保証人になることが求められる場合があります。
共有持分に応じて住宅ローン控除を受けられますが、連帯保証人の責任を負う点に注意が必要です。
連帯保証人と連帯債務者の違い
(1) 3パターンの比較表(連帯保証・連帯債務・ペアローン)
連帯保証人と連帯債務者は異なります。以下の比較表で整理します(池田泉州銀行)。
| 項目 | 連帯保証型 | 連帯債務型 | ペアローン |
|---|---|---|---|
| 債務者 | 主債務者のみ | 主債務者+連帯債務者 | 夫婦それぞれ |
| 契約数 | 1本 | 1本 | 2本 |
| 住宅ローン控除 | 主債務者のみ | 両者 | 両者 |
| 団信 | 主債務者のみ | 主債務者のみ(一部金融機関で両者加入可) | 両者 |
| 連帯保証人 | 配偶者が連帯保証人 | 不要 | 互いに連帯保証人 |
(2) 住宅ローン控除の適用対象の違い
連帯保証人は住宅ローン控除の対象外です。連帯債務者とペアローンの債務者は、住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン控除は年末のローン残高の0.7%(最大35万円/年)が所得税・住民税から控除される制度です。連帯保証人はこの制度の対象外となるため、税制上のメリットはありません。
(3) 団体信用生命保険(団信)の加入可否
連帯保証人は団信に加入できません。団信とは、借入者が死亡・高度障害時にローン残高がゼロになる保険です。
連帯保証人の配偶者が死亡した場合でも、団信の対象外のため、ローンは残ります。この点は大きなリスクとなります。
連帯保証人のリスクと注意点
(1) 離婚しても連帯保証人の義務は消滅しない
アットホームによると、離婚しても連帯保証人の義務は金融機関の承諾なしに外れられません。
外れるには、代わりの保証人を立てるか、借り換えが必要です。離婚後も返済義務が残る可能性があるため、連帯保証人になる前に慎重に検討しましょう。
(2) 主債務者が死亡しても団信の対象外
連帯保証人は団信に加入できないため、主債務者が死亡してもローンは残ります。
主債務者が団信に加入していれば、主債務者の死亡時にローン残高はゼロになります。しかし、連帯保証人自身が死亡した場合、団信の対象外のため、ローンは残ります。
(3) 他のローンが組みにくくなる可能性
連帯保証人になると、信用情報に記録されるため、他のローンが組みにくくなる可能性があります。
クレジットカードやカーローンの審査時に、連帯保証人としての返済義務が考慮され、審査が厳しくなる場合があります。
(4) 保証人なしで借りられる方法(フラット35等)
ノムコムによると、2024年現在、住宅ローンは保証会社を利用するため原則連帯保証人は不要です。
フラット35は保証人・保証会社不要で、連帯保証人を立てられない場合の選択肢として有効です。フラット35は住宅金融支援機構が提供する長期固定金利住宅ローンで、保証人なしで借りられます。
まとめ:連帯保証人になる前に確認すべきこと
連帯保証人は主債務者と同等の返済責任を負い、債権者から直接請求されます。催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益がないため、主債務者と全く同じ立場で全額返済義務を負います。
配偶者が連帯保証人になるケースは、収入合算型・ペアローン・共有名義の3パターンです。離婚しても連帯保証人の義務は金融機関の承諾なしに外れられず、団信の対象外のため、リスクを十分に理解する必要があります。
フラット35は保証人・保証会社不要で、連帯保証人を立てられない場合の選択肢として有効です。連帯保証人になる前に、みずほ銀行等の金融機関や、ファイナンシャルプランナー、弁護士に相談し、リスクを十分に把握しましょう。
