住宅ローン固定金利の現状と今後の見通し
住宅ローンを検討する際、「固定金利は今後どうなるのか」という疑問は多くの方が抱える課題です。
この記事では、2025年時点の固定金利の動向、日銀の金融政策が与える影響、変動金利との比較、選択のポイントを、住宅金融支援機構や日本銀行の公式情報を元に解説します。
住宅購入や借り換えを検討している方が、金利タイプを選ぶ際の判断材料を得られるようになります。
この記事のポイント
- 2025年12月時点でフラット35(21〜35年)の金利は1.97%、前月比+0.07%の上昇傾向
- 2024年3月の日銀マイナス金利解除以降、住宅ローン金利は上昇局面に転換
- 固定金利は10年国債利回りに連動し、変動金利は短期プライムレート(政策金利)に連動
- 政策金利は2026年末までに1.1%程度まで上昇する可能性があり、今後も金利上昇が見込まれる
- 金利上昇リスクを避けたい場合は固定金利、低金利を重視する場合は変動金利が選択肢
固定金利と変動金利の仕組み
住宅ローンの金利タイプは大きく「固定金利」と「変動金利」に分かれ、それぞれ異なる要因で決定されます。
固定金利の決定要因(長期金利との連動)
固定金利型住宅ローンの金利は、10年国債利回りで代表される長期金利に連動します。
長期金利は市場の需給や将来の物価見通しによって変動し、経済成長や物価上昇が見込まれると上昇する傾向があります。
住宅金融支援機構が提供するフラット35は固定金利型住宅ローンの代表的な商品で、借入時の金利が返済期間中ずっと変わりません。
2025年12月時点でフラット35(21〜35年)の金利は1.97%となっており、2024年から継続的に上昇傾向が見られます。
変動金利の決定要因(短期プライムレートとの連動)
変動金利型住宅ローンの金利は、短期プライムレート(銀行が優良企業に1年以内の短期で貸し出す際の最優遇金利)に連動します。
短期プライムレートは日本銀行が設定する政策金利の影響を受けるため、日銀の金融政策決定会合での決定が直接影響します。
2025年時点で変動金利は大手行で0.6〜0.7%の水準ですが、市場金利の変動に応じて半年ごとに金利が見直される仕組みです。
日銀の金融政策と住宅ローン金利への影響
マイナス金利解除と利上げの影響
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除したことで、住宅ローン金利は上昇局面に転換しました。
その後、2024年7月と2025年1月に追加利上げが実施され、変動金利は2025年4月に0.15〜0.35%上昇しています。
2024年7月の利上げでは、大手5行の既存ローン金利が0.15%上昇し、借入額3,000万円で年間約5万円、4,500万円で約8万円の負担増となりました。
固定金利も同様に上昇傾向にあり、フラット35は2024年から継続的に金利が上がっています。
今後の政策金利の見通し
日本銀行の金融政策決定会合では、経済・物価動向を踏まえて政策金利を決定しています。
市場のESP予測調査によると、政策金利は2026年末までに1.1%程度まで上昇する可能性が指摘されており、長期金利も2025年8月平均1.57%から2026年7〜9月に1.63%への上昇が予測されています。
ただし、金利予測は経済状況により変動するため、確実な予測は困難です。
金利上昇局面での住宅ローン選択のポイント
変動金利の5年ルール・125%ルールとリスク
変動金利型住宅ローンには「5年ルール」と「125%ルール」という仕組みがあります。
5年ルールは、金利が変動しても5年間は返済額が変わらない仕組みです。125%ルールは、返済額が見直される際も前回の125%までに抑える仕組みです。
これらは返済額の急上昇を抑える安全装置ですが、金利上昇時には利息が増えて元本が減らないリスクもあります。
金利上昇局面では、変動金利の恩恵を受けにくくなるため、借入時に将来の金利上昇リスクを考慮することが重要です。
金利上昇による返済額増加の試算
政策金利が0.25%上昇した場合、借入額3,000万円で年間約5万円、4,500万円で約8万円の負担増となる試算があります(野村證券の試算)。
政策金利が2026年末に1.1%程度まで上昇する場合、さらなる負担増が見込まれます。
家計の状況や借入額に応じて、返済額増加に耐えられるかを事前に確認しておくことが大切です。
固定金利と変動金利の比較と選び方
それぞれのメリット・デメリット
固定金利と変動金利にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
| 項目 | 固定金利 | 変動金利 |
|---|---|---|
| 金利水準 | 高い(2025年12月時点でフラット35は1.97%) | 低い(2025年時点で0.6〜0.7%) |
| 金利変動リスク | なし(借入時の金利が返済期間中ずっと変わらない) | あり(半年ごとに見直し) |
| 返済額の安定性 | 高い(返済計画が立てやすい) | 低い(金利上昇時に増加) |
| 金利上昇時 | 影響なし(安心感) | 返済額増加のリスク |
| 金利下降時 | 恩恵を受けられない | 恩恵を受けられる |
(出典: 住宅金融支援機構)
借入条件別の選択基準
住宅金融支援機構の調査によると、約80%の新規借入者が変動金利を選択していますが、金利上昇局面で固定金利への関心が高まっています。
以下のような基準で選択することが考えられます。
- 固定金利が適している場合: 金利上昇リスクを避けたい、返済計画を確実に立てたい、長期(20年以上)の借入を予定している
- 変動金利が適している場合: 低金利を重視したい、短期(10年以内)での繰り上げ返済を予定している、金利上昇時の返済額増加に対応できる家計余力がある
借入額・返済期間・家計状況により判断が異なるため、ファイナンシャルプランナーや銀行担当者に相談することを推奨します。
まとめ:専門家への相談を踏まえた金利選択
住宅ローン固定金利は、2024年3月の日銀マイナス金利解除以降、上昇局面に転換しており、2025年12月時点でフラット35は1.97%となっています。政策金利は2026年末までに1.1%程度まで上昇する可能性があり、今後も金利上昇が見込まれます。
固定金利は金利上昇リスクを避けられる安心感がある一方、変動金利より金利が高く設定されています。変動金利は低金利を重視できますが、金利上昇時に返済額が増加するリスクがあります。
金利タイプの選択は、借入額・返済期間・家計状況により異なるため、専門家(ファイナンシャルプランナー、銀行担当者等)に相談しながら、無理のない返済計画を立てることが大切です。


