住宅ローンの平均借入額を知る重要性
住宅購入を検討する際、「自分の年収でどれくらい借りられるのか」「他の人はどれくらい借りているのか」と気になる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、住宅ローンの平均借入額の実態データ、年収別の借入可能額の目安、無理のない返済計画の立て方を解説します。住宅金融支援機構のフラット35利用者調査を元に、自分に合った借入額を判断できるようになります。
この記事のポイント
- 注文住宅の平均借入額は約3,772万円、分譲戸建は約3,054万円
- 年収倍率は5〜7倍が目安、無理のない返済を考えると5〜6倍が理想
- 返済負担率は手取り年収の20〜25%以内に抑えると生活に余裕が出やすい
- 頭金は購入価格の20〜30%が平均
- 借入可能額(上限)と適正借入額は異なるため注意が必要
住宅種別ごとの平均借入額データ
注文住宅・分譲戸建・分譲マンションの平均
住宅金融支援機構のフラット35利用者調査によると、住宅種別ごとの平均借入額は以下の通りです(2024年度データ)。
| 住宅種別 | 平均借入額 | 年収倍率 |
|---|---|---|
| 注文住宅(土地付) | 約4,694万円 | 7.6倍 |
| 注文住宅(建物のみ) | 約3,772万円 | 6.9倍 |
| 分譲戸建 | 約3,054万円 | 6.3倍 |
| 分譲マンション | 約4,528万円 | 7.4倍 |
分譲マンションは都市部の価格高騰を反映して借入額が高く、年収倍率も7倍を超えています。一方、分譲戸建は比較的手頃な価格帯で、年収倍率6.3倍と抑えられています。
中古住宅の平均借入額と傾向
中古住宅の平均借入額は以下の通りです。
| 住宅種別 | 平均借入額 | 年収倍率 |
|---|---|---|
| 中古戸建 | 約2,150万円 | 5.3倍 |
| 中古マンション | 約2,550万円 | 5.8倍 |
中古住宅は新築と比べて借入額が抑えられ、年収倍率も5〜6倍程度となっています。2024年度調査では中古住宅の利用割合が34.8%と過去10年で最高を記録しており、新築価格の高騰を受けて中古を選ぶ方が増えています。
年収別の借入可能額と適正借入額の目安
年収倍率の考え方(5〜7倍の目安)
年収倍率とは、借入額が年収の何倍かを示す指標です。一般的な目安は以下の通りです。
- 審査上の上限: 年収の7〜8倍程度
- 一般的な目安: 年収の5〜7倍
- 無理のない返済: 年収の5〜6倍
年収倍率が高いほど返済負担が大きくなり、将来の収入減少や支出増加(教育費・介護費等)に対応しにくくなります。平均値はあくまで参考であり、個人の状況に応じて判断することが重要です。
年収400万〜800万円の借入額シミュレーション
年収別の借入額目安は以下の通りです(年収倍率5〜6倍で計算)。
| 年収 | 5倍 | 6倍 |
|---|---|---|
| 400万円 | 2,000万円 | 2,400万円 |
| 500万円 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 600万円 | 3,000万円 | 3,600万円 |
| 700万円 | 3,500万円 | 4,200万円 |
| 800万円 | 4,000万円 | 4,800万円 |
ただし、これはあくまで目安です。金融機関の審査では、他の借入(カーローン・奨学金・カードローン等)も含めて返済能力を判断するため、実際の借入可能額は個人によって異なります。
返済負担率と返済計画の立て方
返済負担率の計算方法と適正ライン
返済負担率(返済比率)とは、年収に占める年間返済額の割合です。計算式は以下の通りです。
返済負担率 = 年間返済額 ÷ 年収 × 100
| 返済負担率 | 評価 |
|---|---|
| 20%以下 | 余裕あり |
| 20〜25% | 理想的 |
| 25〜30% | やや高い |
| 30%以上 | 審査上限付近・生活が苦しくなる可能性 |
フラット35利用者の返済負担率の全体平均は23.2%です。金融機関の審査上限は30〜35%程度ですが、上限まで借りると生活に余裕がなくなる可能性があります。
注意点として、返済負担率は額面年収で計算されます。手取りベースでは負担率がより高くなることを考慮しましょう。
頭金の割合と借入額への影響
頭金とは、住宅購入時に自己資金で支払う金額です。頭金を多くすることで借入額を減らし、返済負担を軽減できます。
| 頭金の割合 | 傾向 |
|---|---|
| 10%未満 | フルローンに近い |
| 10〜20% | 平均よりやや少なめ |
| 20〜30% | 平均的 |
| 30%以上 | 余裕のある計画 |
購入価格の20〜30%が平均的な頭金の割合です。ただし、頭金のために貯蓄をすべて使い切ると、病気や失業時の生活防衛資金がなくなります。生活費の3〜6カ月分は手元に残すことを推奨します。
借入額を決める際の注意点とよくある失敗
借入可能額と適正借入額の違い
金融機関の審査で認められる「借入可能額」と、無理なく返済できる「適正借入額」は異なります。
- 借入可能額: 返済負担率30〜35%で計算される上限値
- 適正借入額: 返済負担率20〜25%で計算される現実的な値
「審査に通ったから大丈夫」と借入可能額の上限まで借りると、将来の収支変動(ボーナス減少、教育費増加、金利上昇等)に対応できなくなる可能性があります。
将来の収支変動を考慮したシミュレーション
借入額を決める際は、以下の将来変動を考慮しましょう。
- 収入減少リスク: 転職・昇給停止・リストラ・育児休業等
- 支出増加リスク: 教育費(子ども1人あたり1,000万円以上)、介護費用、住宅の修繕費
- 金利上昇リスク: 変動金利の場合、将来の返済額増加を想定
2024年時点で変動金利を選択する世帯は78.6%と圧倒的多数を占めていますが、将来の金利上昇に備えた余裕ある借入が重要です。
まとめ:無理のない借入額を決めるポイント
住宅ローンの平均借入額は住宅種別により異なり、注文住宅で約3,772万円、分譲戸建で約3,054万円です。ただし、平均値はあくまで参考であり、自分の状況に応じた判断が必要です。
無理のない借入額を決めるチェックリスト
- 年収倍率: 5〜6倍以内に抑える
- 返済負担率: 手取り年収の20〜25%以内
- 頭金: 購入価格の20〜30%を目標
- 生活防衛資金: 生活費3〜6カ月分は手元に残す
- 将来の変動: 収入減少・支出増加・金利上昇を想定
借入可能額の上限まで借りるのではなく、余裕を持った返済計画を立てることが重要です。住宅ローンは長期にわたる返済となるため、ファイナンシャルプランナーに相談しながら、ライフプラン全体を見据えた借入額を決定しましょう。
フラット35の借入可能額シミュレーションも活用して、具体的な数字を確認することを推奨します。


