40年住宅ローンが注目される背景
「住宅ローンを35年で組むと、月々の返済額がきつい」と感じている方は少なくありません。物件価格の高騰により借入額が増加する中、月々の返済負担を抑えるために40年ローンを選択する人が増えています。
この記事では、40年住宅ローンの仕組み、35年ローンとの返済額比較、メリット・デメリット、向いている人の条件を、住宅金融支援機構や主要銀行の公式情報を元に解説します。
初めて住宅ローンを組む方でも、40年ローンが自分に適しているかを判断できるようになります。
この記事のポイント
- 40年ローンは月々の返済額を約1万円軽減できる(3,000万円借入時、金利1.8%)
- 総返済額は35年ローンより約160〜249万円増加するため注意が必要
- 20代半ば〜30代前半の若い世代ほど40年ローンのメリットを活かしやすい
- 繰上げ返済を計画的に行えば、月々の負担を抑えつつ総返済額も軽減できる
- 41歳以上は完済時80歳制限により40年ローンを借りられない
40年住宅ローンの仕組みと種類
(1) 40年ローンとは:最長40年で返済できる住宅ローン
40年住宅ローンは、返済期間を最長40年で借りられる住宅ローンです。通常の住宅ローンの最長期間である35年より5年長く設定できます。
返済期間を延ばすことで、毎月の返済額を抑えることができるのが最大の特徴です。
(2) フラット35・フラット50との違い
住宅金融支援機構が提供する住宅ローンには、フラット35(最長35年)とフラット50(最長50年)があります。
フラット50は、長期優良住宅など一定の基準を満たす物件のみが対象となります。一方、40年ローンは民間金融機関が提供する商品で、物件の条件はフラット50より緩やかです。
(3) 40年ローンを扱う金融機関:三井住友信託銀行、住信SBIネット銀行、楽天銀行など
40年ローンを取り扱う金融機関は限定的です。主な金融機関は以下の通りです。
| 金融機関 | 最長返済期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 三井住友信託銀行 | 40年 | メガバンク系で安心 |
| 住信SBIネット銀行 | 50年 | 2023年8月より取扱開始 |
| 楽天銀行 | 50年 | ネット銀行で手続き簡単 |
| SBI新生銀行 | 50年 | 2025年11月17日より取扱開始 |
取扱金融機関が少ないため、複数社の条件を比較することが重要です。
(4) 完済時年齢制限:一般的に80歳まで
多くの金融機関は、完済時の年齢制限を80歳までと設定しています。
逆算すると、41歳以上の方は40年ローンを借りられません。20代半ばなら定年前に完済できる可能性がありますが、30代後半以降は慎重な検討が必要です。
35年ローンとの徹底比較:月々返済額と総返済額
(1) 3,000万円借入時の比較:35年は196,609円/月、40年は182,643円/月(金利1.8%)
3,000万円を金利1.8%で借りた場合の月々の返済額は以下の通りです。
| 返済期間 | 月々返済額 | 差額 |
|---|---|---|
| 35年 | 196,609円 | - |
| 40年 | 182,643円 | 約1万4千円軽減 |
月々約1万円の返済負担を軽減できるため、生活にゆとりが生まれます。
(2) 4,000万円借入時の比較:35年は約5,565万円、40年は約5,814万円で総額249万円の差(金利2.0%)
4,000万円を金利2.0%で借りた場合の総返済額は以下の通りです。
| 返済期間 | 総返済額 | 差額 |
|---|---|---|
| 35年 | 約5,565万円 | - |
| 40年 | 約5,814万円 | 約249万円増加 |
返済期間5年延長で利息負担が大幅に増えることに注意が必要です。
(3) ローン残高の推移:20年後は35年で約2,059万円、40年で約2,394万円
20年後のローン残高を比較すると、以下のようになります。
| 返済期間 | 20年後の残高 | 差額 |
|---|---|---|
| 35年 | 約2,059万円 | - |
| 40年 | 約2,394万円 | 約335万円多い |
40年ローンは元金の減少が遅いため、ローン残高が高い期間が長くなります。売却や借り換えを検討する際に不利になる可能性があります。
(4) 借入可能額の増加:35年は約4,082万円、40年は4,509万円(金利1.5%)
月々の返済額を同じにした場合、40年ローンでは借入可能額が約424万円増加します。
| 返済期間 | 借入可能額 | 差額 |
|---|---|---|
| 35年 | 約4,082万円 | - |
| 40年 | 約4,509万円 | 約424万円増加 |
(金利1.5%、月々の返済額を同額と仮定)
より高額な物件を購入できる可能性がありますが、総返済額の増加には注意が必要です。
40年ローンのメリット・デメリット
(1) メリット:月々約1万円の返済額軽減、借入可能額が約424万円増加、団信保障が40年間継続
40年ローンの主なメリットは以下の通りです。
- 月々の返済額を軽減: 35年ローンより約1万円返済額を抑えられる
- 借入可能額の増加: 約424万円多く借りられる(金利1.5%の場合)
- 団体信用生命保険(団信)が40年間継続: 万が一のリスクに長期間備えられる
- 繰上げ返済で柔軟に対応: 40年で組んでも35年で完済することは可能(逆は不可)
団体信用生命保険とは、住宅ローン借入者が死亡または高度障害になった場合、保険金でローンが完済される保険です。
(2) デメリット:総返済額が約160〜249万円増加、ローン残高の減少が遅い、金利が高い傾向
40年ローンの主なデメリットは以下の通りです。
- 総返済額の増加: 35年ローンより約160〜249万円多く支払う
- ローン残高の減少が遅い: 20年後の残高が35年より約335万円多い
- 金利が高い傾向: フラット35は20年を境に金利が上がる。40年ローンはさらに高い
- 取扱金融機関が限定的: 一部の地方銀行やネット銀行のみ。選択肢が少ない
フラット35などの固定金利型ローンでは、返済期間が20年を超えると金利が上がります。40年ローンではさらに金利が高く設定されることがあります。
(3) 繰上げ返済の活用:40年で組んでも35年で完済可能
繰上げ返済とは、毎月の返済とは別に、元金の一部または全部を返済することです。利息軽減や返済期間短縮が可能です。
40年ローンで組んでも、繰上げ返済を活用すれば35年で完済することができます。逆に35年ローンを後から40年に延ばすことはできません。
繰上げ返済を計画的に行えば、月々の返済負担を抑えつつ総返済額も軽減できます。
(4) 定年後の返済リスク:退職金での一括返済、年金収入での返済継続
40代以上で40年ローンを組むと、定年後も返済が続くリスクがあります。
定年後の返済方法としては、以下の選択肢があります。
- 退職金での一括返済: 退職金で残債を完済する
- 年金収入での返済継続: 年金収入の範囲内で返済を続ける
どちらの場合も、退職金や年金収入が想定通りに得られるか不確実です。定年後の収入が不安定な場合は、40年ローンは避けた方が良いでしょう。
向いている人・向かない人:状況別の判断基準
(1) 向いている人:20代半ば〜30代前半、収入増加が見込まれる人、繰上げ返済を計画的に行える人
40年ローンが向いている人の条件は以下の通りです。
- 20代半ば〜30代前半: 定年前に完済できる可能性が高い
- 収入増加が見込まれる人: 昇給や転職で収入が増え、繰上げ返済しやすい
- 繰上げ返済を計画的に行える人: 月々の負担を抑えつつ総返済額も軽減できる
- 団信保障を長期間つけたい人: 万が一のリスクに40年間備えられる
20代半ばなら40年ローンでも定年退職までに完済できる可能性があります。
(2) 向かない人:40代以上、定年後の収入が不安定な人、総返済額を最小化したい人
40年ローンが向かない人の条件は以下の通りです。
- 40代以上: 定年後も返済が続く可能性が高い
- 定年後の収入が不安定な人: 年金収入だけでは返済が厳しい
- 総返済額を最小化したい人: 35年ローンの方が総返済額を抑えられる
- 金利上昇リスクを避けたい人: 40年ローンは金利が高い傾向がある
総返済額を抑えたい場合は、35年ローンまたはより短期間のローンを検討しましょう。
(3) 41歳以上は40年ローンを借りられない:完済時80歳制限の影響
多くの金融機関は完済時の年齢制限を80歳までと設定しています。逆算すると、41歳以上の方は40年ローンを借りることができません。
年齢によっては選択肢がないため、早めに検討することが重要です。
(4) ファイナンシャルプランナーへの相談を推奨
個別の返済計画は収入・年齢・家族構成により異なります。
40年ローンが自分に適しているかを判断する際は、ファイナンシャルプランナーや金融機関への相談を推奨します。
まとめ:40年ローンを選ぶ際のポイントと次のアクション
40年住宅ローンは、月々の返済額を約1万円軽減できる一方、総返済額が約160〜249万円増加します。20代半ば〜30代前半の若い世代ほど、40年ローンのメリットを活かしやすいと言えます。
繰上げ返済を計画的に行えば、月々の負担を抑えつつ総返済額も軽減できます。ただし、41歳以上は完済時80歳制限により40年ローンを借りられないため、早めの検討が重要です。
40年ローンは選択肢の一つであり、メリット・デメリットを理解した上での判断が重要です。信頼できる金融機関やファイナンシャルプランナーに相談しながら、無理のない返済計画を立てましょう。
