マンション耐用年数の完全ガイド:法定耐用年数と実際の寿命の違い

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/20

マンション耐用年数の基礎知識:法定耐用年数と実際の寿命の違い

マンション購入や売却を検討する際、「マンションは何年住めるのか」「法定耐用年数の47年を過ぎたら建て替えが必要なのか」といった疑問を持つ方は少なくありません。

この記事では、マンションの法定耐用年数、物理的寿命、経済的寿命の違いを明確にし、築年数と住宅ローン・資産価値の関係を解説します。国土交通省の公式データや税制情報を元に、正確な知識を提供します。

中古マンション購入やマンション投資を検討する方でも、耐用年数を正しく理解し、適切な判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • マンションの法定耐用年数(47年)は税制上の減価償却期間であり、実際の寿命とは異なる
  • 物理的寿命は117年(国土交通省研究データ)だが、経済的理由で平均68年で建て替えられている
  • 中古マンション購入時の住宅ローンは「法定耐用年数47年-築年数」で借入期間が制限される場合がある
  • 築30年のマンションなら住宅ローンは17年間しか組めない可能性があるため、資金計画に注意が必要
  • 適切なメンテナンス(大規模修繕、外装仕上げ等)により、マンションの寿命を大幅に延ばすことができる

(1) なぜ耐用年数の理解が重要なのか

マンションの耐用年数を正しく理解することは、以下の理由で重要です。

  • 住宅ローンの借入期間: 築年数が古いほど借入期間が短くなり、返済計画に影響する
  • 資産価値の評価: 築年数が経過すると資産価値が下がり、売却時の価格に影響する
  • 管理費・修繕積立金: 築年数が経過すると値上がりする可能性があり、ランニングコストが増加する
  • 投資判断: 減価償却の計算により、投資物件の収益性を評価できる

(2) 本記事で解説する3つの耐用年数

本記事では、以下の3つの耐用年数を解説します。

  1. 法定耐用年数: 税制上の減価償却期間(RC造47年)
  2. 物理的寿命: 建物が物理的に使用可能な期間(117年)
  3. 経済的寿命: 建物が経済的に価値を持つ期間(40~50年、平均68年)

これらの違いを理解することが、マンション選びの第一歩です。

マンションの法定耐用年数とは?税制上の47年の意味

法定耐用年数は、税制上の基準であり、実際の建物の寿命を示すものではありません。ここでは、法定耐用年数の定義と用途を解説します。

(1) 法定耐用年数の定義と用途

法定耐用年数とは、税制上、建物の減価償却期間を算定する基準年数です。国税庁が定めており、不動産投資や事業用建物の経費計上に使用されます。

法定耐用年数は、建物が物理的に使用できる期間を示すものではなく、あくまで税務上の目安です。

(2) 構造別の法定耐用年数(RC造47年、SRC造47年、鉄骨造34年)

構造別の法定耐用年数は以下の通りです。

構造 法定耐用年数
RC造(鉄筋コンクリート造) 47年
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造) 47年
鉄骨造(重量鉄骨) 34年
木造 22年

(出典: 国税庁の耐用年数表)

一般的な分譲マンションはRC造またはSRC造のため、法定耐用年数は47年です。この基準は1998年の税制改正で確定し、2025年時点でも変更されていません。

(3) 減価償却との関係

減価償却とは、建物の取得価格を法定耐用年数で分割し、毎年経費として計上する会計処理です。

: 4,700万円の新築RC造マンション(土地を除く建物価格)
減価償却費(年間) = 4,700万円 ÷ 47年 = 100万円

法定耐用年数を過ぎると、減価償却が終了し、建物の税務上の価値がゼロになります。しかし、物理的には住み続けることが可能です。

(4) 中古マンションの耐用年数計算方法

中古マンションの耐用年数は、以下の計算式で求めます。

計算式:
(法定耐用年数47年-築年数)+築年数×20%、または法定耐用年数×20%(9年)のいずれか長い方

: 築30年のRC造マンション
(47-30)+30×20% = 17 + 6 = 23年

この計算式は、減価償却の残存期間を算定する際に使用されます。

マンションの実際の寿命:物理的寿命117年と経済的寿命68年

法定耐用年数とは別に、マンションには「物理的寿命」と「経済的寿命」があります。

(1) 物理的寿命117年の根拠(国土交通省研究データ)

国土交通省の研究データによると、RC造マンションの物理的寿命は117年と推定されています。これは、建物が構造的に安全に使用できる期間を示しています。

適切なメンテナンス(大規模修繕、外装仕上げ、防水工事等)を実施することで、100~200年住むことも可能です。

(出典: ゼロリノベジャーナル

(2) 経済的寿命40~50年・平均68年の理由

経済的寿命とは、建物が経済的に価値を持つ期間を指します。RC造マンションの経済的寿命は40~50年とされ、実際には平均68年で建て替えられています。

建て替えの理由は、以下の通りです。

  • 設備の老朽化(配管、電気設備等)
  • 耐震基準の不適合(旧耐震基準の建物)
  • 修繕費用が高額になる
  • 建て替えによる資産価値向上

物理的には住めるが、経済的理由で建て替えられるケースが多いのが実情です。

(3) 適切なメンテナンスで寿命は延びる

マンションの寿命を延ばすには、適切なメンテナンスが不可欠です。

主要なメンテナンス:

  • 大規模修繕: 12~15年周期で外壁、屋根、共用部を修繕
  • 防水工事: 屋上・バルコニーの防水層を定期的に補修
  • 配管更新: 給排水管の劣化に応じて交換

国土交通省の研究では、適切な管理により150年以上住めるマンションも存在することが確認されています。

耐用年数と住宅ローン・資産価値の関係

耐用年数は、住宅ローンの借入期間や資産価値に直接影響します。

(1) 住宅ローンの借入期間制限(法定耐用年数-築年数)

金融機関は、中古マンション購入時の住宅ローンの借入期間を「法定耐用年数47年-築年数」で設定することがあります。

(2) 築30年マンションのローン事例(17年間の制限)

築30年のRC造マンションを購入する場合、住宅ローンの借入期間は以下のように制限される可能性があります。

借入期間 = 47年 - 30年 = 17年

一般的な住宅ローンは35年ですが、築年数が古いと借入期間が短くなり、月々の返済額が増加します。

(出典: イエウール

: 3,000万円を借入(金利1.5%)

  • 35年ローン: 月々の返済額 約9.2万円
  • 17年ローン: 月々の返済額 約17.0万円

借入期間が短いと、月々の返済負担が大幅に増加します。

(3) 耐用年数が資産価値に与える影響

築年数が経過すると、マンションの資産価値は下がります。一般的に、築20年までは急激に下落し、その後は緩やかに減少します。

法定耐用年数(47年)を超えると、金融機関の融資が受けにくくなるため、資産価値がさらに下がる可能性があります。

(4) 管理費・修繕積立金の値上がりリスク

築年数が経過すると、以下の費用が増加する傾向があります。

  • 管理費: 共用部の清掃、エレベーター保守等の費用
  • 修繕積立金: 大規模修繕に備えて毎月積み立てる費用

特に修繕積立金は、築年数が経過すると段階的に値上がりすることが多く、ランニングコストが増加します。

築年数別の注意点と長寿命マンションの選び方

築年数別の注意点と、長寿命マンションを見極めるポイントを解説します。

(1) 築10年未満:新築同様だが購入価格に注意

築10年未満のマンションは、設備が新しく、大規模修繕の心配もありません。ただし、購入価格が高いため、資金計画を慎重に検討する必要があります。

(2) 築10~30年:大規模修繕の実施状況を確認

築10~30年のマンションは、購入価格と築年数のバランスが良い時期です。ただし、以下の点を確認することが重要です。

  • 大規模修繕の実施状況(12~15年周期で実施されているか)
  • 修繕積立金の残高(十分な積立があるか)
  • 管理組合の運営状況(適切に管理されているか)

(3) 築30年以上:住宅ローン制限と修繕積立金を重視

築30年以上のマンションは、住宅ローンの借入期間が制限される可能性があります。また、修繕積立金の値上がりリスクも高いため、以下の点を確認しましょう。

  • 住宅ローンの借入可能期間(金融機関に事前確認)
  • 修繕積立金の残高と値上がり予定
  • 耐震基準(1981年以降の新耐震基準か)

(4) 長寿命マンションを見極める2つのポイント

長寿命マンションを見極めるには、以下の2つのポイントが重要です。

ポイント1: 管理状況の確認
管理組合がしっかり機能しており、定期的な大規模修繕が実施されているかを確認します。

ポイント2: 修繕履歴の確認
過去の修繕履歴(外壁補修、防水工事、配管更新等)を確認し、適切なメンテナンスが行われているかを判断します。

まとめ:耐用年数を正しく理解してマンション選びに活かす

マンションの法定耐用年数(47年)は税制上の減価償却期間であり、実際の建物の寿命とは異なります。物理的には117年住むことが可能ですが、経済的理由で平均68年で建て替えられています。

中古マンション購入時は、住宅ローンの借入期間が「法定耐用年数47年-築年数」で制限される可能性があるため、資金計画を事前に確認することが重要です。

適切なメンテナンスが実施されているマンションを選ぶことで、長期間快適に住み続けることができます。

信頼できる不動産会社や宅地建物取引士に相談しながら、耐用年数を正しく理解してマンション選びに活かしてください。

よくある質問

Q1マンションの法定耐用年数は何年ですか?

A1RC造(鉄筋コンクリート造)・SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)は47年、鉄骨造は34年です。1998年の税制改正で確定し、2025年時点でも変更されていません。法定耐用年数は税制上の減価償却期間であり、実際の建物の寿命とは異なります。

Q2法定耐用年数を過ぎたマンションは住めないのですか?

A2いいえ、住めます。法定耐用年数は税制上の減価償却期間であり、実際の建物の寿命とは異なります。国土交通省の研究データによると、RC造マンションの物理的寿命は117年と推定されており、適切な管理により150年以上住むことも可能です。

Q3マンションの実際の寿命は何年ですか?

A3物理的寿命は117年(国土交通省研究データ)ですが、経済的理由で平均68年で建て替えられています。建て替えの理由は、設備の老朽化、耐震基準の不適合、修繕費用の高額化等です。適切なメンテナンス(大規模修繕、防水工事、配管更新等)により100~200年住むことも可能です。

Q4中古マンションの耐用年数はどう計算しますか?

A4(法定耐用年数47年-築年数)+築年数×20%、または法定耐用年数×20%(9年)のいずれか長い方を採用します。例えば築30年のRC造マンションなら(47-30)+30×20%=23年です。この計算式は減価償却の残存期間を算定する際に使用されます。

Q5耐用年数は住宅ローンに影響しますか?

A5はい、影響します。金融機関は中古マンション購入時の住宅ローンの借入期間を「法定耐用年数47年-築年数」で設定することがあります。築30年の物件なら17年間しかローンが組めない可能性があり、月々の返済額が増加します。資金計画を事前に確認することが重要です。

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Room Match編集部

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