マンション売却にかかる期間の目安
マンション売却を検討する際、「準備から引渡しまでどれくらいかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、マンション売却にかかる期間の目安、各ステップの所要時間、期間を短縮する方法を解説します。住み替えや資金計画のスケジュール調整に役立ててください。
この記事のポイント
- 準備から引渡しまで平均5~6ヶ月、売り出しから契約まで平均3ヶ月が目安
- 売却期間は物件の立地・価格設定・売り出し時期により大きく変動する
- 内覧対応の工夫や適正価格での売り出しで期間短縮が可能
- 買取サービスを利用すれば約1ヶ月で売却できるが、市場価格の70~80%になる
- 売却費用は売却価格の約3.5~6%、税金は3000万円特別控除で多くの場合課税されない
(1) 準備から引渡までの平均期間(5~6ヶ月)
マンション売却は準備から引渡しまで平均5~6ヶ月かかります。売却の流れは大きく3つの段階に分かれます。
| 段階 | 期間 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 準備・査定 | 1~2週間 | 不動産会社の選定、査定、媒介契約 |
| 売り出し・内覧 | 1~3ヶ月 | 広告掲載、内覧対応、価格交渉 |
| 契約・決済 | 1~2ヶ月 | 売買契約締結、買主のローン審査、引渡し |
この期間は物件の状態や市場環境により変動します。スケジュールには余裕を持たせることが重要です。
(2) 売り出しから契約までの期間(平均3ヶ月)
首都圏の中古マンション平均売却期間は3.22ヶ月です(2022年下期データ)。売り出しから契約までの期間は、物件の魅力や価格設定に大きく左右されます。
1ヶ月以内に契約できるケースもあれば、6ヶ月以上かかる場合もあります。3ヶ月以上売れない場合は、価格見直しや不動産会社の変更を検討しましょう。
(3) 地域別・物件タイプ別の期間差
売却期間は地域や物件タイプにより異なります。以下は一般的な傾向です。
地域別の傾向:
- 都市部(東京23区等): 需要が高く、2~4ヶ月程度で売却できる場合が多い
- 地方都市: 買い手が限られるため、4~6ヶ月以上かかることもある
物件タイプ別の傾向:
- 駅近・築浅物件: 人気が高く、1~2ヶ月で売却できるケースもある
- 築古・駅遠物件: 買い手が見つかりにくく、6ヶ月以上かかる場合もある
マンション売却の流れと各ステップの所要時間
マンション売却は8つのステップに分かれます。各ステップの所要時間を把握することで、スケジュールを立てやすくなります。
(1) 事前準備と不動産会社の選定(1~2週間)
売却の準備段階では、以下の作業を行います。
- 必要書類の準備: 登記簿謄本、固定資産税納税通知書、マンションの管理規約等
- 複数社への査定依頼: 3~5社に査定を依頼し、査定額と対応を比較する
- 不動産会社の選定: 信頼できる会社を選び、媒介契約を結ぶ
この段階で信頼できる不動産会社を選ぶことが、スムーズな売却につながります。
(2) 査定・媒介契約(1~2週間)
不動産会社による査定では、物件の立地・築年数・状態・市場相場を元に売却価格を算出します。
媒介契約には3種類あります。
| 契約種類 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引不可 | 早く確実に売りたい |
| 専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引可 | 特定の会社に任せたい |
| 一般媒介 | 複数社に依頼可能 | 広く買い手を探したい |
契約期間は通常3ヶ月です。契約内容は宅地建物取引士に確認しましょう。
(3) 売り出し・内覧対応(1~3ヶ月)
売り出し期間は売却活動の中で最も長く、1~3ヶ月が目安です。この期間の主な活動は以下の通りです。
- 広告掲載: 不動産ポータルサイト、チラシ等で物件を宣伝
- 内覧対応: 購入希望者の見学に対応(週末に集中)
- 価格交渉: 買い手と売却価格を調整
内覧は週末に集中し、1件あたり30分~1時間かかります。内覧前は徹底的に清掃し、特に水回り(キッチン、浴室、トイレ)を重点的に整えましょう。
(4) 売買契約締結(数日)
買い手が決まったら、売買契約を締結します。契約書の確認や手付金の受け取りに数日かかります。
契約時には以下の費用が発生します。
- 印紙税: 売買契約書に貼付(売買金額により異なる)
- 仲介手数料の一部: 契約時に半額を支払う場合が多い
契約内容は専門家(宅地建物取引士)に確認し、不明点があれば質問しましょう。
(5) 決済・引渡し(1~2ヶ月)
売買契約締結後、決済・引渡しまで1~2ヶ月かかります。この期間は主に買主の住宅ローン審査に充てられます。
引渡し時には以下の手続きを行います。
- 残代金の受領: 売却価格から手付金を差し引いた金額を受け取る
- 所有権移転登記: 司法書士が手続きを代行
- 鍵・書類の引渡し: 物件の鍵、管理規約、保証書等を渡す
引渡し後も2~3ヶ月は売主責任が続くため、税金申告や問題対応が必要です。
売却期間に影響を与える要因
売却期間は複数の要因により変動します。以下の4つが主な影響要因です。
(1) 物件の立地・築年数・状態
物件の魅力が高いほど、売却期間は短くなります。
売却が早い物件:
- 駅徒歩10分以内
- 築10年以内
- リフォーム済み、または状態が良好
売却に時間がかかる物件:
- 駅から遠い(徒歩15分以上)
- 築30年以上
- 設備が古い、修繕が必要
物件の欠陥を隠すと契約不適合責任を問われ、損害賠償請求されるリスクがあります。欠陥は事前に買い手に伝えましょう。
(2) 売り出し価格の設定
売り出し価格は売却期間に最も大きく影響します。
- 査定額かやや低め: 1ヶ月以内の早期売却が可能
- 査定額より高め: 3ヶ月以上かかる、または売れない
価格設定は慎重に行いましょう。売却価格を極端に下げると損失が大きくなるため、適正価格の設定が重要です。
(3) 売り出し時期(繁忙期と閑散期)
マンション売却には繁忙期と閑散期があります。
| 時期 | 特徴 | 売却期間への影響 |
|---|---|---|
| 2~3月(繁忙期) | 転勤・進学シーズン、買い手が多い | 短縮(1~2ヶ月) |
| 8月(閑散期) | 夏休み、買い手が少ない | 長期化(4~6ヶ月) |
| 12月(閑散期) | 年末年始、動きが鈍い | 長期化(4~6ヶ月) |
繁忙期の2~4月前(売却の2~3ヶ月前)に準備を始めると、成約しやすくなります。
(4) 買主の住宅ローン審査期間
買主の住宅ローン審査に時間がかかる場合、契約から引渡しまで1~2ヶ月かかります。審査が長引くと引渡しが遅れる場合もあります。
売却期間を短縮する方法とコツ
売却期間を短縮するには、以下の4つの方法が有効です。
(1) 繁忙期(2~3月)の活用
繁忙期(2~3月)に売り出すと、買い手が多く、成約しやすくなります。繁忙期を狙う場合は、売却の2~4月前に準備を開始しましょう。
(2) 適正価格での売り出し
適正価格での売り出しが早期売却の鍵です。以下のポイントを押さえましょう。
- 複数社に査定を依頼: 3~5社に査定を依頼し、平均値を参考にする
- 査定額かやや低めに設定: 1ヶ月以内の早期売却が可能になる
- 相場を確認: 国土交通省の不動産取引価格情報で地域の相場を確認する
(3) 内覧対応の工夫(清掃・印象改善)
内覧時の第一印象が成約率に大きく影響します。以下の工夫で印象を改善しましょう。
- 徹底的な清掃: 特に水回り(キッチン、浴室、トイレ)を重点的に
- 整理整頓: 不要な物を片付け、広く見せる
- 明るさの確保: カーテンを開け、照明をつける
- においの除去: ペット臭、タバコ臭を消す
内覧対応の負担を減らすため、不動産会社に代行を依頼することも検討しましょう。
(4) 買取サービスの活用(約1ヶ月で売却)
早急に現金化したい場合は、買取サービスの活用が有効です。
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却期間 | 3~6ヶ月 | 約1ヶ月 |
| 売却価格 | 市場価格 | 市場価格の70~80% |
| 仲介手数料 | あり | なし |
買取は市場価格の70~80%になりますが、内覧対応や清掃の負担がなく、約1ヶ月で現金化できます。急ぐ場合の選択肢として検討しましょう。
売却時の費用と税金の詳細
マンション売却時には費用と税金がかかります。事前に把握しておきましょう。
(1) 仲介手数料(物件価格の約3%+6万円+消費税)
仲介手数料は不動産会社に支払う手数料で、売却価格により異なります。
計算式:
仲介手数料 = 売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税
例(売却価格3,000万円の場合):
3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円
96万円 × 1.1(消費税) = 105.6万円
仲介手数料は売買契約時に半額、引渡し時に残額を支払う場合が多いです。
(2) その他の諸費用(印紙税・登記費用等)
仲介手数料以外にも以下の費用がかかります。
| 費用 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 印紙税 | 1~3万円 | 売買契約書に貼付 |
| 抵当権抹消登記費用 | 1~3万円 | 住宅ローン完済時の登記 |
| 司法書士報酬 | 5~10万円 | 登記手続きの代行 |
これらを合わせると、税金以外で売却価格の約3.5~6%が相場です。
(3) 譲渡所得税と3000万円特別控除
売却時に利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税が課税されます。
計算式(国税庁):
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
3000万円特別控除: 居住用財産(自宅マンション)を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できます(国税庁)。多くの場合、この控除により課税されません。
税率:
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下): 39.63%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超): 20.315%
詳細は税理士に相談することを推奨します。
まとめ:状況別の売却戦略
マンション売却にかかる期間は、準備から引渡しまで平均5~6ヶ月、売り出しから契約までは平均3ヶ月です。売却期間は物件の立地・価格設定・売り出し時期により大きく変動します。
状況別の売却戦略:
- 時間に余裕がある場合: 繁忙期(2~3月)を狙い、適正価格で売り出す
- 早く売りたい場合: 査定額よりやや低めに価格設定し、内覧対応を徹底する
- 急いで現金化したい場合: 買取サービスを活用(約1ヶ月、市場価格の70~80%)
売却活動は内覧対応や清掃の繰り返しで疲れることもあります。3ヶ月以上売れない場合は、価格見直しや不動産会社の変更を検討しましょう。
信頼できる不動産会社や専門家(宅地建物取引士、税理士等)に相談しながら、無理のない売却計画を立てることが成功の鍵です。
