マンション建て替えの年数目安|老朽化の判断基準と建て替え手順を解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/29

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マンション建て替えの年数を知るべき理由

築古マンションの区分所有者として、「建て替えはいつ頃行われるのか」「自分のマンションは建て替えが必要か」と悩む方は少なくありません。

この記事では、マンション建て替えの年数目安、老朽化の判断基準、建て替えの手順、費用負担について解説します。国土交通省の統計や建替え円滑化法を元に、建て替え判断のポイントと代替案を明らかにします。

初めて建て替えを検討する管理組合役員の方でも、建て替えの現実と選択肢を正確に把握し、適切な判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • マンション建て替えの平均築年数は約44年、築40〜50年が最多で34.4%を占める
  • 物理的には100年以上居住可能だが、社会的・経済的寿命は40〜60年程度
  • 建て替え決議には区分所有者及び議決権の5分の4(80%)以上の賛成が必要(2024年法改正で75%に緩和予定)
  • 1戸あたりの費用負担は10〜20百万円が相場、仮住まい費用・引越し費用も別途必要
  • 実際に建て替えられたマンションは全体の0.27%のみで、費用負担と合意形成が主要な障壁

マンション建て替えの年数目安|平均築40年

マンション建て替えは平均築40年頃に検討されますが、適切な大規模修繕を行えば60年以上居住可能です。

(1) 建て替え決議時の平均築年数(約44年)

建て替え決議時の平均築年数は約44年です。新築から建て替えまでの期間は、平均約40年となっています。

(2) 築年数別の建て替え割合(築40〜50年が最多で34.4%)

築年数別の建て替え割合は以下の通りです。

築年数 割合
築30〜40年 28.6%
築40〜50年 34.4%(最多)
築50年以上 その他

築40〜50年が最も多く、全体の約3分の1を占めています。

(3) マンションの物理的寿命(100年以上可能)

鉄筋コンクリート造のマンションは、物理的寿命が100年以上あります。構造的には長期間居住可能です。

(4) マンションの社会的寿命(40〜60年)

社会的寿命とは、建物が社会的・経済的に陳腐化し、建て替えが検討される期間を指します。マンションの社会的寿命は40〜60年程度です。

築40年以上になると、天井高が低い、バリアフリー未対応等、現代の生活様式に合わない「社会的陳腐化」が顕著になります。

(5) 大規模修繕により60年以上居住可能

適切な大規模修繕(外壁・屋上防水・配管等の修繕工事、12〜15年周期で実施)を行えば、60年以上居住可能です。

建て替えは必須ではなく、大規模修繕により建物の寿命を延ばすことが可能です。

老朽化の判断基準|いつ建て替えを検討すべきか

建て替えを検討すべきタイミングは、以下の判断基準により決まります。

(1) 耐震性の問題(旧耐震基準・新耐震基準)

1981年6月以前に建築確認を受けた「旧耐震基準」のマンションは、耐震性能が現行基準を満たしていない可能性があります。

耐震診断を実施し、耐震性能が不足している場合は、耐震補強工事または建て替えを検討する必要があります。

(2) 設備劣化(配管・電気設備の老朽化)

築40年を超えると、配管(給水管・排水管)や電気設備の老朽化が進み、大規模な更新工事が必要になります。

配管の全面更新は住戸内部の工事が必要で、居住者の負担が大きいため、建て替えの検討材料となります。

(3) 社会的陳腐化(天井高・バリアフリー未対応)

築40年以上のマンションは、以下の点で現代の生活様式に合わない場合があります。

  • 天井高が低い(約2.4m、現代は約2.7m以上)
  • バリアフリー未対応(段差あり、エレベーター未設置等)
  • 設備が旧式(追い焚き機能なし、断熱性能が低い等)

これらの問題は、大規模修繕では解決できないため、建て替えの検討材料となります。

(4) 修繕費用の増大

築40年を超えると、修繕費用が増大します。大規模修繕を繰り返すよりも、建て替えの方がトータルコストが抑えられる場合があります。

修繕積立金の不足、修繕費用の見積もりが高額になる場合は、建て替えを検討するタイミングです。

(5) 大規模修繕との比較

大規模修繕と建て替えを比較し、トータルコスト・効果を検討します。

項目 大規模修繕 建て替え
費用 1戸あたり100〜200万円 1戸あたり10〜20百万円
効果 建物の寿命延長(15〜20年) 新築同様の性能・設備
期間 約1年 約10年(準備含む)
居住 居住しながら実施可能 仮住まいが必要(約2年)

大規模修繕で対応可能な場合は、建て替えよりも費用・期間の負担が小さくなります。

マンション建て替えの流れと手順

マンション建て替えは、準備から完成まで約10年かかります。以下の4段階で進みます。

(1) 準備段階(勉強会・情報収集)

管理組合で勉強会を開催し、建て替えに関する情報を収集します。専門家(建築士、弁護士、マンション管理士等)を招いて、基礎知識を学びます。

(2) 検討段階(建替え検討委員会設置・専門家導入)

建替え検討委員会を設置し、専門家を正式に導入します。建て替えの可否、費用、スケジュールを検討します。

(3) 決議段階(管理組合総会で5分の4以上の賛成)

管理組合総会で建て替え決議を行います。区分所有者及び議決権の5分の4(80%)以上の賛成が必要です(区分所有法)。

2024年法改正:

  • 建て替え決議要件が5分の4(80%)から4分の3(75%)に緩和される予定
  • 合意形成のハードルが若干下がる

(4) 実施段階(建替組合設立・権利変換・工事実施)

建て替え決議が可決されると、以下の手順で実施します。

  1. 建替組合の設立:マンション建替円滑化法に基づき、法人格を持つ建替組合を設立
  2. 権利変換:建て替え前の区分所有権を、建て替え後の新マンションの区分所有権に変換
  3. 工事実施:既存マンションを解体し、新マンションを建設

(5) 準備から完成まで約10年

準備段階から新マンション完成まで、約10年かかります。

事例:

  • 若潮ハイツ(千葉県):12年かかった事例
  • 四谷コーポラス(1956年築):築61年で建て替え

早期の検討開始が重要です。

(6) 2024年法改正(決議要件80%→75%に緩和予定)

2024年に区分所有法の改正が進められており、建て替え決議の要件が5分の4(80%)から4分の3(75%)に緩和される予定です。

これにより、合意形成のハードルが若干下がり、建て替えが進みやすくなる可能性があります。

建て替え費用と資金調達

マンション建て替えの費用負担は大きく、資金調達が課題となります。

(1) 1戸あたりの費用負担(10〜20百万円)

1戸あたりの費用負担は10〜20百万円が相場です。最大で1戸あたり30百万円かかる場合もあります。

2017〜2021年の平均負担額は19.41百万円でした。

(2) 仮住まい費用(2〜3百万円、約2年間)

建て替え工事期間中(約2年間)は、一時的な住居が必要です。月10〜15万円、総額2〜3百万円の仮住まい費用がかかります。

(3) 引越し費用(30〜50万円、2回分)

仮住まいへの引越しと、新マンションへの引越しの2回が必要です。1回あたり30〜50万円、2回で60〜100万円の引越し費用がかかります。

(4) 資金調達方法(保留床売却・容積率緩和・金融機関融資)

建て替え費用を抑える方法は以下の通りです。

方法 内容
保留床売却 建て替え後の余剰住戸を第三者に売却し、売却益で費用を賄う
容積率緩和 建築基準法の特例により、容積率を緩和して住戸数を増やす
金融機関融資 建替組合が金融機関から融資を受ける

(5) 建て替えに反対する住民への対応(売渡し請求)

建て替え決議に反対する区分所有者は、売渡し請求により立ち退きを求められる可能性があります。

売渡し請求とは、建て替え決議に賛成した区分所有者が、反対する区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すよう請求できる制度です。

(6) 建て替えが進まない理由(費用負担・合意形成の難しさ)

マンション建て替えが進まない主要な理由は以下の2つです。

  1. 費用負担の重さ:1戸あたり10〜20百万円の負担が難しい住民が多い
  2. 合意形成の難しさ:5分の4(80%)の賛成が必要で、ハードルが高い

実際に建て替えられたマンションは、全体のマンションストックに対して0.27%のみです(2024年までの累計297棟・約24,000戸)。

まとめ:建て替え判断のポイントと代替案

マンション建て替えの平均築年数は約44年、築40〜50年が最多で34.4%を占めます。物理的には100年以上居住可能ですが、社会的・経済的寿命は40〜60年程度です。

建て替え決議には区分所有者及び議決権の5分の4(80%)以上の賛成が必要で(2024年法改正で75%に緩和予定)、1戸あたりの費用負担は10〜20百万円が相場です。仮住まい費用2〜3百万円、引越し費用30〜50万円も別途必要です。

実際に建て替えられたマンションは全体の0.27%のみで、費用負担と合意形成が主要な障壁となっています。

建て替えが難しい場合は、以下の代替案を検討しましょう。

代替案:

  1. マンション敷地売却制度:マンション敷地を一括で売却し、住民が新居を購入
  2. 大規模修繕:外壁・屋上防水・配管等の修繕工事で建物の寿命を延ばす
  3. 個別売却:区分所有権を個別に売却し、他のマンションに転居

建て替えの検討は、専門家(建築士、弁護士、マンション管理士、不動産鑑定士等)に相談しながら、管理組合全体で慎重に進めることが重要です。

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よくある質問

Q1マンション建て替えは築何年で行われますか?

A1建て替え決議時の平均築年数は約44年です。築年数別では、築40〜50年が最多で34.4%、築30〜40年が28.6%を占めています。物理的には鉄筋コンクリート造で100年以上居住可能ですが、社会的・経済的寿命は40〜60年程度です。適切な大規模修繕を行えば60年以上居住可能なため、建て替えは必須ではありません。耐震性・設備劣化・修繕費用等を総合的に判断して決定します。

Q2マンション建て替えにかかる費用はいくらですか?

A21戸あたり10〜20百万円が相場です。2017〜2021年の平均負担額は19.41百万円でした。仮住まい費用2〜3百万円(約2年間、月10〜15万円)、引越し費用30〜50万円(2回分)が別途必要です。最大で1戸あたり30百万円かかる場合もあります。費用負担が重く、建て替えが進まない主要な理由となっています。保留床売却や容積率緩和等で費用を抑える方法もあります。

Q3マンション建て替えの流れはどうなっていますか?

A3準備→検討→決議→実施の4段階です。①準備段階:勉強会・情報収集、②検討段階:建替え検討委員会設置・専門家導入、③決議段階:管理組合総会で5分の4以上の賛成、④実施段階:建替組合設立・権利変換・工事実施へ進みます。準備から完成まで約10年かかります。若潮ハイツ(千葉県)は12年かかった事例もあります。早期の検討開始が重要です。

Q4マンション建て替えの決議要件は?

A4区分所有者及び議決権の5分の4(80%)以上の賛成が必要です(区分所有法)。2024年の法改正で4分の3(75%)に緩和される予定です。合意形成のハードルが高く、建て替えが進まない主要な理由の一つです。建て替え決議に反対する区分所有者は、売渡し請求により立ち退きを求められる可能性があるため、事前に権利関係を確認することが重要です。

Q5実際にマンション建て替えは行われていますか?

A52024年までの累計297棟(約24,000戸)が建て替え実施されました。全体のマンションストックに対して0.27%のみで、極めて少ないです。費用負担(1戸あたり10〜20百万円)と合意形成(5分の4の賛成が必要)が主要な障壁となっています。建て替えが難しい場合は、マンション敷地売却制度、大規模修繕、個別売却等の代替案を検討することを推奨します。

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Room Match編集部

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