土地売却を成功させるための基本知識|準備から完了まで3-6ヶ月
土地を売却したいと考えた際、「何から始めればいいか」「いくらで売れるのか」「どのくらい時間がかかるのか」と悩む方は少なくありません。土地売却は準備から完了まで3-6ヶ月程度かかり、手続き・費用・税金など注意すべき点が多くあります。
この記事では、土地売却の流れ、必要費用と税金、高く売るためのポイント、よくあるトラブルと対策を詳しく解説します。国税庁の公式情報を元に、正確な情報を提供します。
この記事のポイント
- 土地売却は準備から完了まで3-6ヶ月程度かかり、余裕を持ったスケジュールが必要
- 仲介手数料は売買価格の3%+6万円+消費税、測量費は30-100万円程度が目安
- 譲渡所得税は所有期間5年以下で39.63%、5年超で20.315%と大きく異なる
- 複数の不動産会社に査定を依頼し、販売戦略を比較することが高値売却のカギ
- 境界確定測量を事前に実施することで、売却後のトラブルを防げる
(1) 土地売却の全体スケジュール(3-6ヶ月)
HOME4Uによると、土地売却は以下のスケジュールで進みます。
| 段階 | 期間 | 主な作業 |
|---|---|---|
| 事前準備 | 1-2週間 | 境界確定測量、書類整理 |
| 査定依頼 | 1-2週間 | 複数の不動産会社に査定依頼 |
| 媒介契約・販売活動 | 2-4ヶ月 | 広告掲載、内見対応 |
| 売買契約 | 1週間 | 契約書締結、手付金受領 |
| 決済・引渡し | 1-2ヶ月 | 残金受領、所有権移転登記 |
| 確定申告 | 翌年2-3月 | 譲渡所得税の申告・納税 |
合計: 3-6ヶ月程度
急いで売却したい場合は買取を検討することもできますが、価格は市場価格の7割程度になります。
(2) 2024年の土地市場動向(成約価格7.5%上昇)
HOME'Sによると、2024年度の土地成約価格は3,794万円で、前年度比7.5%上昇しています。
価格上昇の背景:
- 低金利環境の継続
- 郊外・地方への移住需要の増加
- 相続した土地の売却ニーズの高まり
2020年以降、土地価格は連続して上昇傾向にあり、売却には良いタイミングと言えます。
土地売却の方法|仲介と買取の違いと選び方
(1) 仲介(市場価格で売れるが時間がかかる)
仲介は、不動産会社に買主を探してもらう方法です。
メリット:
- 市場価格で売却できる
- 高値で売れる可能性がある
デメリット:
- 販売活動に2-4ヶ月程度かかる
- 買主が見つからない可能性もある
- 仲介手数料がかかる
向いている人:
- 時間に余裕がある
- できるだけ高く売りたい
- 立地が良い土地を持っている
(2) 買取(価格は7割程度だが早期に現金化)
買取は、不動産会社が直接買い取る方法です。
メリット:
- 最短1週間~1ヶ月で現金化できる
- 仲介手数料がかからない
- 確実に売却できる
デメリット:
- 買取価格は市場価格の7割程度
- 高値での売却は期待できない
向いている人:
- 早急に現金化したい
- 相続税の納税期限が迫っている
- 売れにくい土地を持っている(立地が悪い、形状が悪い等)
(3) 古家付き土地の売却(解体 vs 古家付き)
古家が建っている土地を売却する場合、以下の2つの選択肢があります。
1. 解体して更地にする:
- メリット: 買主が新築しやすく、売れやすい
- デメリット: 解体費用(100-300万円程度)がかかる
- 向いている土地: 住宅地、買主が建築を想定している場合
2. 古家付きのまま売る:
- メリット: 解体費用がかからない
- デメリット: 買主が限定される可能性がある
- 向いている土地: リフォーム需要がある、買主が解体を検討している場合
どちらが良いかは、不動産会社に相談して判断してください。
土地売却の流れ7ステップ|準備から引渡しまで
(1) 事前準備(境界確定測量、書類整理)
境界確定測量:
- 隣地所有者の立会いと承諾を得て、土地の境界を確定
- 確定測量図を作成(費用30-100万円程度)
- 売却後のトラブルを防ぐために必須
必要書類の整理:
- 登記済権利証(登記識別情報)
- 固定資産税納税通知書
- 測量図・境界確認書
- 本人確認書類(運転免許証等)
- 印鑑証明書、実印
相続した土地の場合は、相続登記を完了させてから売却する必要があります。
(2) 査定依頼(複数の不動産会社に依頼)
複数の不動産会社(3-5社程度)に査定を依頼します。
査定の方法:
- 机上査定: 物件情報だけで概算査定(1-2日)
- 訪問査定: 現地を訪問して詳細査定(1週間程度)
一括査定サイトの活用:
- HOME4U、SUUMO、At Home等のサイトで複数社に一括依頼可能
- 効率的に相場を把握できる
査定額だけでなく、販売戦略・実績・担当者の対応も比較してください。
(3) 媒介契約(専属専任・専任・一般の選択)
不動産会社と媒介契約を結びます。
| 媒介契約の種類 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引も不可 | 不動産会社に全て任せたい |
| 専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引は可 | 1社に集中して売却活動してほしい |
| 一般媒介 | 複数社に依頼可能 | 複数社に競争させたい |
一般的には、専任媒介または専属専任媒介が推奨されます。
(4) 販売活動(広告掲載、内見対応)
不動産会社が以下の販売活動を行います。
主な販売活動:
- REINS(不動産流通標準情報システム)への登録
- 不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)への掲載
- チラシ配布
- 内見対応
売却活動中は、定期的に不動産会社と連絡を取り、状況を把握してください。
(5) 売買契約(契約書締結、手付金受領)
買主が見つかったら、売買契約を締結します。
契約時の手続き:
- 重要事項説明(宅地建物取引士が説明)
- 売買契約書の締結
- 手付金の受領(売買価格の5-10%程度)
- 印紙税の納付(1-6万円程度)
契約書の内容をよく確認し、不明点は宅地建物取引士に質問してください。
(6) 決済・引渡し(残金受領、所有権移転登記)
契約から1-2ヶ月後に決済・引渡しを行います。
決済時の手続き:
- 残代金の受領
- 固定資産税・都市計画税の精算(日割り計算)
- 所有権移転登記
- 抵当権抹消登記(住宅ローンが残っている場合)
- 鍵の引渡し
(7) 確定申告(譲渡所得税の申告・納税)
売却した翌年の2-3月に確定申告を行います。
確定申告の内容:
- 譲渡所得の計算
- 譲渡所得税の申告・納税
- 3,000万円特別控除の適用(マイホームの場合)
税金の計算は複雑なため、税理士への相談を推奨します。
必要費用と税金|仲介手数料・譲渡所得税・測量費の詳細
(1) 仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税、800万円以下は上限33万円)
仲介手数料は、不動産会社に支払う手数料です。
計算式:
- 売買価格200万円以下: 5%+消費税
- 売買価格200-400万円: 4%+2万円+消費税
- 売買価格400万円超: 3%+6万円+消費税
2024年7月改正: 800万円以下の物件は、仲介手数料の上限が33万円に引き上げられました。
例(売買価格3,000万円の場合):
- 3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円
- 96万円 × 1.10(消費税) = 105.6万円
(2) 譲渡所得税(短期39.63%、長期20.315%)
国税庁によると、譲渡所得税は以下の税率で課税されます。
| 所有期間 | 税率 | 内訳 |
|---|---|---|
| 5年以下(短期譲渡所得) | 39.63% | 所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9% |
| 5年超(長期譲渡所得) | 20.315% | 所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5% |
計算式:
- 譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
- 譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
例(売却価格3,000万円、取得費1,000万円、譲渡費用200万円、長期譲渡所得の場合):
- 譲渡所得 = 3,000万円 - (1,000万円 + 200万円) = 1,800万円
- 譲渡所得税 = 1,800万円 × 20.315% = 約366万円
(3) 測量費(30-100万円程度)
境界確定測量の費用は、土地の面積・形状により異なります。
| 土地面積 | 測量費の目安 |
|---|---|
| 100㎡未満 | 30-50万円 |
| 100-200㎡ | 50-80万円 |
| 200㎡以上 | 80-100万円以上 |
測量会社に見積もりを依頼し、複数社を比較してください。
(4) その他費用(抵当権抹消、印紙税、解体費用等)
| 費用項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 抵当権抹消費用 | 1-3万円 |
| 印紙税 | 1-6万円 |
| 解体費用(古家付きの場合) | 100-300万円 |
| 登記費用 | 3-10万円 |
(5) 3,000万円特別控除(マイホームの場合)
マイホーム(居住用財産)を売却した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
要件:
- 自分が住んでいた家屋または家屋とともにその敷地を売却
- 売却した年の前年と前々年に、この特例を受けていない
- 売主と買主が親子・夫婦等の特別な関係でない
譲渡所得が3,000万円以下なら、税金はかかりません。
高く売るためのポイントと注意点|境界確定・複数査定・売却タイミング
(1) 境界確定測量を事前に実施(トラブル防止)
HOME'Sによると、境界が不明確な土地は売却後にトラブルになる可能性が高いです。
トラブル例:
- 隣地所有者との境界紛争
- 面積の相違による契約解除
- 損害賠償請求
境界確定測量を事前に実施し、確定測量図を作成することで、これらのトラブルを防げます。
(2) 複数の不動産会社に査定依頼(相場把握と販売戦略比較)
1社だけでなく、複数の不動産会社に査定を依頼することが重要です。
メリット:
- 相場を正確に把握できる
- 販売戦略を比較できる
- 実績・対応を比較できる
一括査定サイト(HOME4U、SUUMO等)を活用すると効率的です。
(3) 売却タイミングの検討(所有期間5年超で税率優遇)
譲渡所得税の税率は、所有期間により大きく異なります。
| 所有期間 | 税率 |
|---|---|
| 5年以下 | 39.63% |
| 5年超 | 20.315% |
所有期間が5年に近い場合は、5年を超えてから売却することで税負担を大幅に軽減できます。
(4) 相続土地の売却(相続登記完了後に売却)
相続した土地を売却する場合は、まず相続登記を完了させる必要があります。
手順:
- 遺産分割協議(相続人全員で協議)
- 相続登記(法務局で手続き)
- 売却活動開始
相続登記は司法書士に依頼することを推奨します(費用5-15万円程度)。
(5) よくあるトラブルと対策(境界不明確、地中埋設物、税金未払い)
トラブル例と対策:
| トラブル | 対策 |
|---|---|
| 境界不明確 | 境界確定測量を実施 |
| 地中埋設物 | 地盤調査を実施 |
| 税金未払い | 売却代金の一部を税金支払いに確保 |
| 住宅ローン未完済 | 売却代金でローン完済、抵当権抹消 |
まとめ|土地売却の成功に向けて
土地売却は準備から完了まで3-6ヶ月程度かかり、仲介手数料・測量費・譲渡所得税など、さまざまな費用がかかります。売買価格3,000万円の場合、総費用は130-250万円程度、譲渡所得税は所有期間により大きく異なります。
複数の不動産会社に査定を依頼し、販売戦略を比較することが高値売却のカギです。境界確定測量を事前に実施することで、売却後のトラブルを防げます。
所有期間が5年を超えると税率が20.315%(5年以下は39.63%)に軽減されるため、売却タイミングの検討も重要です。
信頼できる不動産会社や専門家(宅建士、税理士、測量士等)に相談しながら、冷静な判断で土地売却を進めましょう。
