土地を売る前に知っておくべき基本的な注意点
「土地を売りたいけど、何に注意すればいいのか分からない」と悩んでいる方は少なくありません。土地売却は人生で何度も経験することではないため、事前に注意点を把握しておくことが重要です。
この記事では、土地売却の準備段階から契約・引渡しまで、各ステップでの注意点を解説します。国土交通省や国税庁の公式情報を元に、失敗しないためのポイントをお伝えします。
この記事のポイント
- 境界確定測量を事前に実施し、隣地とのトラブルを防ぐ(費用35〜45万円)
- 相続登記は2024年4月1日から義務化、3年以内に登記しないと10万円以下の過料
- 譲渡所得税は所有期間5年以下39.63%、5年超20.315%
- 契約不適合責任により、売主が気づかなかった欠陥でも責任を問われる可能性
(1) 土地売却の全体的な流れ
土地売却は以下のステップで進みます。
- 相場調査・情報収集
- 不動産会社への査定依頼
- 媒介契約の締結
- 売却活動・内覧対応
- 売買契約の締結
- 決済・引渡し・所有権移転登記
- 確定申告(譲渡所得がある場合)
(2) 売却にかかる期間の目安(平均86.9日)
土地売却の平均期間は約86.9日(約3ヶ月)とされています。ただし、物件の条件や市場状況により大きく異なります。急ぎの売却が必要な場合は、買取業者への相談も選択肢の一つです。
(3) 相続登記の義務化(2024年4月1日施行)
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。相続した土地を売却する場合は、まず名義変更(相続登記)を完了させてください。
土地売却の準備段階での注意点
売却活動を始める前に、以下の準備を整えましょう。
(1) 境界確定測量の重要性と費用(35〜45万円)
境界確定測量とは、隣地との境界を明確にし、境界標を設置する測量です。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 境界確定測量 | 35〜45万円 |
| 私道面積含む場合 | 60〜80万円 |
境界が未確定のまま売却すると、隣地所有者とのトラブルで損害賠償請求されるリスクがあります。事前に実施しておくことで、買主の信頼を得られ、売却がスムーズに進みます。
(2) 地下埋設物の確認と対策
地下埋設物(井戸、浄化槽、古い基礎など)があると、後からトラブルになる可能性があります。事前に確認し、問題があれば対処方法を検討しておきましょう。
(3) 抵当権の抹消と名義確認
住宅ローンが残っている土地は、売却前に完済し抵当権を抹消する必要があります。登記簿謄本で現在の名義と抵当権の有無を確認してください。
査定・価格設定に関する注意点
適正価格で売却するためのポイントを解説します。
(1) 複数社(3〜5社)への査定依頼
1社だけの査定では相場が分かりません。3〜5社の不動産会社に査定を依頼し、査定額と根拠を比較しましょう。
(2) 相場の調べ方と適正価格の設定
| 指標 | 調べ方 |
|---|---|
| 実勢価格 | 国土交通省の不動産取引価格情報検索 |
| 公示地価 | 国土交通省の地価公示 |
| 路線価 | 国税庁の路線価図 |
相場を把握せずに売却すると、本来より安く売ってしまう失敗が発生します。
(3) 不動産会社・媒介契約の選び方
媒介契約には3種類あります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引も不可 |
| 専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引は可能 |
| 一般媒介 | 複数社に依頼可能 |
土地売却の実績が豊富で、そのエリアの最近の成約事例を持つ不動産会社を選ぶと、見込み客を抱えている可能性が高くなります。
契約時の注意点とよくあるトラブル
(1) 契約不適合責任とは(2020年民法改正)
2020年の民法改正で導入された契約不適合責任により、売主が気づかなかった欠陥でも責任を問われる可能性があります。土壌汚染、地下埋設物、シロアリ被害なども対象になりえます。
事前に調査を行い、契約書に明記しておくことが重要です。
(2) 買主への説明義務と重要事項
買主への説明不足は、契約解除や損害賠償請求の原因となります。以下の点は必ず説明しましょう。
- 境界の状況
- 用途地域・建築制限
- インフラの状況(上下水道、ガス等)
- 地盤の状況
- 過去の災害履歴
(3) よくある失敗事例と回避策
| 失敗事例 | 回避策 |
|---|---|
| 境界トラブル | 事前に境界確定測量を実施 |
| 地下埋設物の発覚 | 事前調査と契約書への明記 |
| 相場より安く売却 | 複数社の査定比較 |
| 不動産会社選びの失敗 | 実績・対応を複数社で比較 |
税金・費用に関する注意点
(1) 譲渡所得税の計算方法と税率
土地売却で利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税がかかります。
| 所有期間 | 税率(所得税+住民税) |
|---|---|
| 5年以下(短期) | 39.63% |
| 5年超(長期) | 20.315% |
(出典: 国税庁)
所有期間は売却した年の1月1日時点で判定されます。
(2) 仲介手数料・測量費用の目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
| 境界確定測量 | 35〜45万円 |
| 登記費用 | 数万円 |
総費用は売却価格の4〜6%程度が目安です。
(3) 特別控除・軽減措置の活用
居住用財産の3,000万円特別控除など、軽減措置が適用される場合があります。詳細は税理士への相談を推奨します。
まとめ:土地売却で失敗しないためのチェックリスト
土地売却で失敗しないためのチェックリストをまとめます。
- 相続登記を完了させたか(2024年4月1日から義務化)
- 境界確定測量を実施したか
- 地下埋設物・土壌汚染を確認したか
- 抵当権を抹消したか
- 複数社(3〜5社)に査定依頼したか
- 契約不適合責任について理解したか
- 譲渡所得税の計算をしたか
具体的な手続きや税金の計算は、宅地建物取引士、土地家屋調査士、税理士などの専門家に相談することを推奨します。


