土地の固定資産税とは?負担が重いと感じる理由
土地を所有していると、「毎年の固定資産税が思ったより高い」「更地のままにしておくと税金が跳ね上がった」と驚かれる方は少なくありません。
この記事では、土地の固定資産税の計算方法、住宅用地の軽減措置、更地と住宅用地の税額比較、節税対策を、総務省等の公式情報を元に解説します。
固定資産税の仕組みを正しく理解することで、適切な土地活用や税負担の軽減策を検討できるようになります。
(1) 固定資産税の基本と課税対象
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・建物・償却資産の所有者に課される地方税です。総務省によると、標準税率は1.4%ですが、自治体により異なる場合があります。
市町村が所有者を登録し、納税通知書を交付します。納付時期は年4回(6月・9月・12月・2月)に分けて行うのが一般的ですが、自治体により異なる場合があるため確認が必要です。
(2) 市町村税収の約41%を占める重要な財源
総務省によると、2023年度の固定資産税収は約9兆8,073億円で、市町村税収の約41%を占めています。
このため、固定資産税は市町村にとって極めて重要な財源であり、学校・道路・福祉サービス等の公共サービスを支える基盤となっています。
(3) なぜ更地の税負担が重いのか
更地の固定資産税が高く感じる理由は、住宅用地の特例が適用されないためです。住宅が建っている土地は、固定資産税評価額の1/6~1/3に軽減されますが、更地にはこの軽減がありません。
そのため、更地は住宅用地の3~6倍の税額になる場合があります。相続した土地や空き地の税負担が重いと感じる場合は、この特例の有無が大きな要因です。
固定資産税の計算方法と評価額の決まり方
(1) 計算式:課税標準額 × 税率(1.4%)
固定資産税の計算式は以下の通りです。
固定資産税 = 課税標準額 × 税率(標準1.4%)
課税標準額は、固定資産税の計算基礎となる金額です。住宅用地の特例が適用される場合は、固定資産税評価額より低くなります。
固定資産税評価額は、固定資産税の基礎となる評価額で、地価公示価格の約70%を目安として算定されます。
(2) 固定資産税評価額の調べ方(課税明細書・全国地価マップ)
固定資産税評価額は、以下の方法で確認できます。
| 確認方法 | 詳細 |
|---|---|
| 固定資産税課税明細書 | 毎年4月頃に送付される明細書に記載 |
| 固定資産税評価証明書 | 市町村役場の税務課で取得(手数料300円程度) |
| 全国地価マップ | 購入前におおよその固定資産税路線価を確認可能 |
(出典: SUUMO)
購入前に「全国地価マップ」で固定資産税路線価を確認することで、おおよその税額を把握できます。
(3) 地価公示価格の70%を目安とする評価
固定資産税評価額は、地価公示価格の約70%を目安として算定されます。これは、売買取引価格(時価)よりも低く設定されており、税負担を緩和する仕組みです。
評価は3年に1度見直されます(評価替え)。2024年度は評価替えの年にあたり、2023年1月1日時点の地価公示価格等を基に再評価されています。
住宅用地の特例と軽減措置
(1) 小規模住宅用地(200㎡以下):評価額の1/6
住宅が建っている土地のうち、200㎡以下の部分は小規模住宅用地として、固定資産税評価額の1/6に軽減されます。
例えば、評価額3000万円の土地(180㎡)の場合:
- 課税標準額 = 3000万円 × 1/6 = 500万円
- 固定資産税 = 500万円 × 1.4% = 7万円
この特例により、更地の場合(42万円)と比べて35万円の軽減となります。
(2) 一般住宅用地(200㎡超):評価額の1/3
200㎡を超える部分は一般住宅用地として、固定資産税評価額の1/3に軽減されます。
例えば、評価額4500万円の土地(300㎡)の場合:
- 200㎡以下の部分:課税標準額 = 3000万円 × 1/6 = 500万円
- 200㎡超の部分:課税標準額 = 1500万円 × 1/3 = 500万円
- 合計課税標準額 = 1000万円
- 固定資産税 = 1000万円 × 1.4% = 14万円
この特例により、更地の場合(63万円)と比べて49万円の軽減となります。
(3) 申請方法と提出期限(1月31日まで)
住宅用地の特例を受けるには、HOME4Uによると、土地取得の翌年1月31日までに市町村役場へ「固定資産税住宅用地申告書」を提出する必要があります。
既に住宅が建っている土地を購入した場合は、自動的に特例が適用される場合がありますが、新築の場合は申請が必要です。詳細は自治体の税務課にご確認ください。
更地と住宅用地の税額比較と注意点
(1) 具体的な計算例(評価額3000万円の場合)
HOME4Uによると、評価額3000万円の土地(180㎡)の場合、更地と住宅用地では以下のように税額が大きく異なります。
| 土地の状況 | 課税標準額 | 固定資産税(土地) | 建物の固定資産税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 更地 | 3000万円 | 42万円 | - | 42万円 |
| 住宅用地 | 500万円(1/6) | 7万円 | 2.8万円 | 9.8万円 |
(出典: HOME4U)
更地は住宅用地の約4.3倍の税額になります。このため、相続した土地を更地のままにしておくと、税負担が大幅に増加します。
(2) 1月1日時点の土地の状況が基準
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地の状況で課税されます。このため、建物を解体・建築するタイミングが重要です。
- 12月末に解体: 翌年は更地として課税(税額増加)
- 1月初旬に解体: 当年は住宅用地として課税(税額据え置き)
建物の建て替えを検討する場合は、1月1日を基準に解体・建築のスケジュールを調整することで、税負担を軽減できる場合があります。
(3) 駐車場やコインパーキングは特例適用外
更地のまま放置すると税負担が重いため、駐車場やコインパーキングにして活用する方法がありますが、これらは住宅用地の特例が適用されません。
あくまで「住宅が建っている土地」でなければ特例は適用されないため、税額は更地と同じです。賃貸住宅を建てる等、住宅用地としての活用を検討する必要があります。
固定資産税の節税対策と評価替えの仕組み
(1) 3年に1度の評価替え(2024年度は評価替えの年)
MONEYIZMによると、固定資産税評価額は3年に1度見直されます(評価替え)。2024年度は評価替えの年で、2023年1月1日時点の地価公示価格等の70%を目安に評価されています。
地価が上昇しているエリアでは、評価替えにより税額が増加する可能性があります。逆に、地価が下落しているエリアでは税額が減少する場合もあります。
評価替えの年は、固定資産税課税明細書で評価額の変動を確認し、必要に応じて自治体の税務課に問い合わせることを推奨します。
(2) 建物を建てるタイミングの工夫
住宅用地の特例を最大限活用するには、建物を建てるタイミングが重要です。
- 1月1日までに住宅を建てる: 翌年から住宅用地の特例が適用される
- 1月2日以降に住宅を建てる: 当年は更地として課税され、翌年から特例適用
相続した土地や購入した土地に住宅を建てる場合は、1月1日を基準にスケジュールを調整することで、税負担を軽減できます。
(3) 免税点(課税標準額30万円未満)の活用
総務省によると、課税標準額の合計が土地30万円未満の場合、固定資産税は課税されません(免税点)。
小規模な土地や評価額の低いエリアでは、この免税点により固定資産税が発生しない場合があります。ただし、建物や他の土地と合算して30万円以上になる場合は課税されます。
まとめ:土地の固定資産税を理解し適切に対応する
土地の固定資産税は、課税標準額×1.4%で計算されます。評価額3000万円の更地なら年42万円、住宅用地(200㎡以下)なら約7万円と、住宅用地の特例により大幅に軽減されます。
更地は住宅用地の3~6倍の税額になるため、1月1日時点で住宅が建っていることが重要です。駐車場やコインパーキングにしても特例は適用されません。
2024年度は3年に1度の評価替えの年で、地価上昇エリアでは税額が増加する可能性があります。建物を建てるタイミングを工夫することで、税負担を軽減できる場合もあります。
固定資産税の詳細は自治体の税務課や税理士にご相談いただき、適切な土地活用と税負担の軽減策を検討しましょう。
