連帯債務型住宅ローンの仕組みとメリット・デメリット|契約前の注意点

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/22

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なぜ連帯債務型住宅ローンを検討すべきか

住宅購入を検討する際、「単独では借入額が足りない」「夫婦2人の収入を活かしたい」と考える方は少なくありません。特に共働き夫婦の場合、借入可能額を増やす手段として連帯債務型住宅ローンが選択肢になります。

この記事では、連帯債務型住宅ローンの仕組み、メリット・デメリット、ペアローンや連帯保証との違いを、国税庁住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。

契約前に知っておくべき注意点(離婚・転職・死亡時の扱い)も含め、将来的なリスクを正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 連帯債務型は1本の契約で2人分の収入を合算でき、単独では審査に通らない金額でも借入可能
  • ペアローンより諸費用(事務手数料・印紙代)を抑えられ、1契約分で済む
  • 夫婦2人とも住宅ローン控除を受けられ、2025年時点で新築住宅は年末残高の0.7%を13年間控除可能
  • 連帯債務者は原則として団信に加入できないため、万一のリスク対策が必要
  • 離婚しても連帯債務から外れることはできず、金融機関との契約は継続

連帯債務とは:基本的な仕組み

(1) 連帯債務者と主債務者の違い

連帯債務型住宅ローンは、1つの借入に対して複数の者(主に夫婦)がそれぞれ全額の返済義務を負う契約形態です。

主債務者: 住宅ローン契約の主たる債務者(契約者)

連帯債務者: 主債務者と同じ債務を負う者(夫婦の場合、配偶者が該当)

どちらも全額の返済義務を負うため、金融機関はどちらにも全額請求できます。

(2) 連帯債務者の要件(フラット35の場合)

住宅金融支援機構 フラット35の連帯債務者の要件は以下の通りです。

  • 申込者本人の親族(配偶者、親、子など)
  • 申込時の年齢が70歳未満
  • 日本国籍または永住許可を受けている
  • 申込者と同居する予定

金融機関により要件は異なるため、契約前に確認が必要です。

(3) 返済義務と契約の特徴

連帯債務者は、主債務者と同じ返済義務を負います。

返済義務の特徴

  • どちらかの収入が減少しても返済義務は継続
  • 一方が失業・転職しても減額や免除は認められない
  • 離婚しても契約は継続(後述)

このため、将来的な収入変動やライフイベントを見据えた慎重な判断が必要です。

連帯債務のメリット

(1) 借入可能額の増加(2人分の収入を合算)

連帯債務型は2人分の収入を合算できるため、単独では審査に通らない金額でも借入可能になります。

(年収400万円の夫婦):

借入方法 借入可能額(目安)
夫のみ(単独) 約3,200万円
連帯債務(2人分合算) 約6,400万円

これにより、希望するエリア・物件の選択肢が広がります。

(2) 諸費用の削減(1契約分で済む)

ペアローンと比べて諸費用を抑えられます。

項目 連帯債務 ペアローン
契約本数 1本 2本
事務手数料 1契約分 2契約分
印紙代 1契約分 2契約分

例えば、事務手数料が融資額の2.2%の場合、6,000万円の借入でペアローンより約66万円節約できます。

(3) 住宅ローン控除を2人とも受けられる

連帯債務者も住宅ローン控除を受けられます。2025年時点の制度は以下の通りです(国税庁より)。

2025年の住宅ローン控除

  • 控除率:年末残高の0.7%
  • 控除期間:新築住宅13年間、中古住宅10年間
  • 借入限度額:新築住宅4,500万円(認定住宅の場合)
  • 所得税で引ききれない分は住民税から最大97,500円控除

ただし、持ち分割合と債務負担割合を一致させないと贈与税が発生する可能性があるため、登記時に注意が必要です(詳細は国税庁の公式情報を確認)。

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連帯債務のデメリットと注意点

(1) 連帯債務者は原則として団信に加入できない

連帯債務者は一般的に団体信用生命保険(団信)に加入できません。そのため、連帯債務者に万一のことがあっても住宅ローンは残ります。

リスク

  • 連帯債務者が死亡・高度障害になってもローン残債は弁済されない
  • 残された配偶者が全額の返済義務を負う

対策

  • フラット35の「デュエット(ペア連生団信)」なら連帯債務者も加入可能(金利が年0.18%上乗せ)
  • 民間の生命保険で万一に備える

金融機関により団信の扱いは異なるため、契約前に必ず確認しましょう。

(2) 離婚しても連帯債務から外れられない

離婚しても連帯債務から外れることはできません。金融機関との契約は夫婦の事情で変更不可のためです。

離婚時のリスク

  • 連帯債務から外れるには、一方が残債を完済するか、借り換えが必要
  • 債務変更には贈与税等の税金問題が発生する可能性がある
  • 元配偶者が返済を滞納した場合、自分に全額請求が来る

このため、離婚を検討する場合は、税理士や弁護士等の専門家への相談を推奨します。詳細は国税庁の公式情報を確認してください。

(3) 持ち分割合と債務負担割合の不一致で贈与税が発生

持ち分割合と債務負担割合を一致させないと、贈与税が発生する可能性があります。

(悪い例):

  • 住宅価格:6,000万円
  • 夫の負担:4,000万円(債務負担割合 2/3)
  • 妻の負担:2,000万円(債務負担割合 1/3)
  • 登記:持ち分を夫婦それぞれ1/2で登記

→ 夫から妻への贈与とみなされ、贈与税が発生

正しい例

  • 持ち分割合と債務負担割合を一致させる(夫2/3、妻1/3)

登記時には司法書士や税理士に相談し、正確な持ち分を設定しましょう。

ペアローン・連帯保証との違い

(1) 契約本数と諸費用の違い

夫婦で住宅ローンを組む方法は3種類あり、契約本数と諸費用が異なります。

項目 連帯債務 ペアローン 連帯保証
契約本数 1本 2本 1本
債務者 2人 2人 1人のみ
諸費用 1契約分 2契約分 1契約分

諸費用を抑えたい場合は連帯債務または連帯保証が有利です。

(2) 団信加入の可否

団信加入の可否は契約形態により異なります。

項目 連帯債務 ペアローン 連帯保証
主債務者 ◯(加入可) ◯(加入可) ◯(加入可)
連帯債務者・保証人 △(原則不可、フラット35のデュエットは可) ◯(加入可) ×(加入不可)

夫婦2人とも団信に加入したい場合は、ペアローンまたはフラット35のデュエットが選択肢になります。

(3) 住宅ローン控除の適用範囲

住宅ローン控除の適用範囲も異なります。

項目 連帯債務 ペアローン 連帯保証
主債務者 ◯(受けられる) ◯(受けられる) ◯(受けられる)
連帯債務者・保証人 ◯(受けられる) ◯(受けられる) ×(受けられない)

夫婦2人とも住宅ローン控除を受けたい場合は、連帯債務またはペアローンが有利です。

まとめ:連帯債務が向いているケース

連帯債務型住宅ローンは、以下のケースに向いています。

連帯債務が向いている人

  • 単独では借入額が足りず、2人分の収入を合算したい
  • 諸費用を抑えたい(ペアローンより安い)
  • 夫婦2人とも住宅ローン控除を受けたい
  • フラット35のデュエットで2人とも団信に加入する予定

注意すべきポイント

  • 連帯債務者は原則として団信に加入できない(万一のリスク対策が必要)
  • 離婚しても連帯債務から外れられない
  • 持ち分割合と債務負担割合を一致させないと贈与税が発生

契約前には、将来的なライフイベント(離婚・転職・死亡)を見据え、金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーに相談しながら、自分に合った借入方法を選びましょう。

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よくある質問

Q1連帯債務とペアローン、連帯保証の違いは何ですか?

A1連帯債務は1本の契約で2人が債務者、ペアローンは2本の契約で互いに連帯保証人、連帯保証は1人のみが債務者で他方は保証人です。諸費用は連帯債務と連帯保証が1契約分、ペアローンが2契約分かかります。団信は連帯債務が原則主債務者のみ(フラット35デュエットは除く)、ペアローンは2人とも加入可、連帯保証は主債務者のみ加入可です。住宅ローン控除は連帯債務とペアローンで2人とも受けられますが、連帯保証は主債務者のみです。

Q2連帯債務者でも住宅ローン控除を受けられますか?

A2受けられます。2025年時点で新築住宅は年末残高の0.7%を13年間控除可能で、所得税で引ききれない分は住民税から最大97,500円控除されます。ただし、持ち分割合と債務負担割合を一致させないと贈与税が発生する可能性があります。正確な持ち分設定については、登記時に司法書士や税理士に相談することを推奨します。詳細は国税庁の公式サイトでご確認ください。

Q3連帯債務者は団信に加入できますか?

A3一般的には加入できません。連帯債務者に万一のことがあっても住宅ローンは残り、残された配偶者が全額の返済義務を負います。ただし、フラット35の「デュエット(ペア連生団信)」なら連帯債務者も加入可能です(金利が年0.18%上乗せ)。金融機関により取り扱いが異なるため、契約前に必ず確認しましょう。民間の生命保険で万一に備えることも選択肢です。

Q4離婚した場合、連帯債務から外れることはできますか?

A4原則として外れられません。金融機関との契約は夫婦の事情で変更不可のためです。連帯債務から外れるには、一方が残債を完済するか、借り換えが必要です。債務変更には贈与税等の税金問題が発生する可能性があり、元配偶者が返済を滞納した場合は自分に全額請求が来るリスクがあります。離婚を検討する場合は、税理士や弁護士等の専門家への相談を推奨します。

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