マンション現金一括購入のメリットとデメリット
マンション購入を現金一括で検討する際、「税金はいくらかかるのか」「住宅ローン控除を受けられないデメリットはどの程度か」「総支払額でどちらが得なのか」と悩む方も多いでしょう。
この記事では、マンションを現金一括で購入する際の税金、住宅ローン控除を受けられない影響、メリット・デメリット、税務署からの「お尋ね」への対応を、国土交通省や国税庁の公式情報を元に解説します。
現金一括とローンのどちらが自分に適しているか、正しく判断できるようになります。
この記事のポイント
- 現金一括購入の最大のメリットは住宅ローンの金利・手数料(数百万〜数千万円)が不要になること
- 住宅ローン控除(最大455万円、13年間)を受けられないデメリットがある
- 総支払額では現金一括が有利だが、低金利環境下ではローンが有利なケースもある
- 税務署から資金の出所について「お尋ね」が来る可能性があり、証拠書類を準備しておく
- どちらが得かは金利・控除額・資産状況により異なるため、個別に判断する必要がある
(1) メリット1:住宅ローンの金利・手数料が不要
現金一括購入の最大のメリットは、住宅ローンの金利・手数料が不要になることです。35年ローンでは、総支払額が数百万〜数千万円増加するため、現金一括購入により大幅な節約が可能です。
例えば、4,000万円のマンションを変動金利0.5%で35年ローンを組んだ場合、総利息は約370万円です。現金一括購入ならこの負担がありません。
(2) メリット2:審査不要で取引期間が短縮(2週間程度)
現金一括購入は、住宅ローン審査が不要で、最短2週間程度で取引完了できます。ローン購入の場合、審査に1〜2か月かかるため、取引期間が大幅に短縮されます。
急いで引っ越したい方、ローン審査に不安がある方にとって、現金一括購入は有効な選択肢です。
(3) メリット3:値下げ交渉が有利になる可能性
中古マンションでは、現金一括購入により値下げ交渉が有利になる可能性があります。売主にとって、確実・迅速に取引できる現金購入者は魅力的だからです。
ローン審査が通らないリスクがないため、売主が価格交渉に応じやすくなる場合があります。
(4) デメリット1:住宅ローン控除(最大455万円)を受けられない
現金一括購入の最大のデメリットは、住宅ローン控除を受けられないことです。住宅ローン控除は、年末残高の0.7%を最大13年間所得税・住民税から控除できる制度です。
新築マンションで最大455万円(ZEHマンションは最大591.5万円)の控除が受けられるため、現金一括購入ではこの金額を失います。
(5) デメリット2:手元資金が減少し緊急事態に対応できない
現金一括購入により手元資金が大幅に減少すると、病気・失業等の緊急事態に対応できなくなるリスクがあります。
数千万円の資金をマンション購入に充てた場合、急な出費(医療費、教育費等)に対応できなくなる可能性があります。
(6) デメリット3:団体信用生命保険に加入できない
現金一括購入では、団体信用生命保険(団信)に加入できません。団信は、住宅ローン契約者が死亡・高度障害になった場合、残債が免除される保険です。
現金一括購入では、契約者が死亡しても債務免除がないため、遺族の負担軽減効果がありません。
現金一括購入でかかる税金
現金一括購入でも、住宅ローン購入と同様に以下の税金がかかります。
(1) 不動産取得税(土地・建物)
不動産取得税は、不動産を取得した際に課される税金です。標準税率は4%ですが、2027年3月31日までは軽減措置により3%です。
新築マンションの場合、建物の課税標準額から1,200万円(一定要件を満たす場合)が控除されます。
(2) 登録免許税(所有権移転登記)
登録免許税は、所有権移転登記の際に課される税金です。新築マンションの場合、建物の所有権保存登記は0.4%(軽減措置適用で0.15%)、土地の所有権移転登記は2.0%(軽減措置適用で1.5%)です。
現金一括購入でも住宅ローン購入でも、登録免許税は同額です。
(3) 印紙税(売買契約書)
印紙税は、売買契約書に貼付する収入印紙の代金です。契約金額により異なりますが、4,000万円のマンションの場合、1万円です(軽減措置適用)。
住宅ローン控除を受けられない影響
(1) 住宅ローン控除の仕組み(年末残高の0.7%を最大13年間控除)
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマンション購入した場合、年末残高の0.7%を最大13年間所得税・住民税から控除できる制度です。
新築マンションの場合、借入限度額は3,000万円(ZEHマンションは4,500万円)、最大控除額は455万円(ZEHマンションは591.5万円)です。
(2) ZEHマンションの控除額(最大年24.5万円)
ZEHマンション(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス基準を満たす省エネ性能の高いマンション)の場合、最大年24.5万円(4,500万円×0.7%×0.78)の控除が受けられます。
(3) 子育て世帯・若者夫婦世帯の優遇措置(最大年31.5万円)
2025年の住宅ローン控除では、子育て世帯・若者夫婦世帯(19歳未満の子を有する世帯、夫婦いずれかが40歳未満の世帯)に対し、借入限度額が上乗せされます。
ZEHマンション入居で最大年31.5万円の控除が受けられる場合があります。
(4) 現金一括購入で失う控除額のシミュレーション
4,000万円のZEHマンションを購入する場合、13年間で最大455万円の控除を失います。この金額を考慮すると、住宅ローン利用の方が総支払額で有利になるケースがあります。
現金一括購入とローン購入の総支払額比較
(1) 現金一括購入の総支払額
現金一括購入の場合、総支払額は物件価格+諸費用(税金・手数料)です。4,000万円のマンションの場合、諸費用は約200〜300万円(物件価格の5〜7.5%)です。
総支払額:約4,200〜4,300万円
(2) 住宅ローン利用時の総支払額(利息+控除)
4,000万円のマンションを変動金利0.5%で35年ローンを組んだ場合、総利息は約370万円です。住宅ローン控除(最大455万円)を差し引くと、実質的な利息負担は約-85万円(控除額が利息を上回る)です。
総支払額:約4,200〜4,300万円 + 370万円 - 455万円 = 約4,115〜4,215万円
(3) 低金利環境下での機会損失の考え方
低金利環境下では、現金をマンション購入に充てるよりも、その資金を投資に回した方が高いリターンが得られる可能性があります(機会損失)。
例えば、4,000万円を年利3%で運用した場合、35年間で約1億円(元本+利息)になります。住宅ローンの利息が年0.5%の場合、投資に回した方が2.5%分有利です。
(4) 手元資金を投資に回した場合のシミュレーション
手元資金をインデックス投資(年利3〜5%想定)に回した場合、住宅ローンの利息(年0.5%)を上回るリターンが期待できます。ただし、投資にはリスクがあるため、個人の判断が必要です。
税務署からの「お尋ね」への対応
(1) 「お尋ね」が届く理由と対象者
現金一括購入後、税務署から資金の出所について「お尋ね」が届く場合があります。お尋ねは、高額購入や年齢・収入と比べて不自然な場合に送付される傾向があります。
お尋ねは強制力のある調査ではありませんが、回答が推奨されます。
(2) 資金の出所を説明する証拠書類
お尋ねに回答する際は、資金の出所を説明できる証拠書類を準備します。
証拠書類の例
- 貯金通帳のコピー(給与・賞与の振込履歴)
- 退職金の源泉徴収票
- 不動産・株式の売却契約書
- 親からの贈与契約書(贈与税申告書)
(3) 贈与税のリスク(親から資金援助を受ける場合)
親から資金援助を受ける場合、贈与税が課される可能性があります。年間110万円を超える贈与は、贈与税の申告が必要です。
住宅取得等資金の贈与税の非課税措置(2024年1月1日〜2026年12月31日、最大1,000万円)を活用すれば、贈与税を軽減できます。
(4) 回答の準備と専門家への相談
お尋ねに回答できない場合、税務調査に発展する可能性があります。資金の出所が不明瞭な場合、贈与税・所得税の追徴課税を受けるリスクがあります。
不安な場合は、税理士に相談してください。
まとめ:現金一括購入すべき人・ローンが向く人
現金一括購入の最大のメリットは住宅ローンの金利・手数料が不要になることで、35年ローンで数百万〜数千万円の利息を節約できます。ただし、住宅ローン控除(最大455万円)を受けられないデメリットがあります。
総支払額では現金一括が有利ですが、低金利環境下では住宅ローン控除や手元資金の維持を考慮すると、ローンが有利なケースもあります。
現金一括購入が向く人
- 十分な資産があり、手元資金が減っても問題ない
- 住宅ローン控除のメリットよりも利息負担回避を重視する
- ローン審査に不安がある、迅速に取引を完了したい
ローンが向く人
- 住宅ローン控除(最大455万円)を活用したい
- 手元資金を投資・緊急予備資金として残したい
- 団体信用生命保険に加入したい
どちらが得かは金利・控除額・資産状況・ライフプランにより異なるため、ファイナンシャルプランナーや税理士に相談してください。


