住宅ローンの変動金利は毎月変わるのか
住宅ローンの変動金利を検討する際、「金利は毎月変わるのか」「返済額はすぐに変わるのか」と不安に感じる方は少なくありません。結論から言うと、変動金利は毎月変わるわけではなく、半年ごとに見直され、返済額は5年間一定に保たれる仕組みになっています。
この記事では、変動金利の見直しタイミング、5年ルール・125%ルールの仕組み、金利上昇時のリスクを解説します。住宅金融支援機構や三井住友信託銀行等の公式情報を元に、2025年時点の最新情報をお伝えします。
この記事のポイント
- 変動金利の適用金利は半年ごと(4月1日・10月1日)に見直されるが、毎月変わるわけではない
- 5年ルール:金利が上昇しても返済額は5年間一定に保たれる(元利均等返済の場合)
- 125%ルール:5年後の返済額見直し時も、前回の返済額の125%が上限となる
- SBI新生銀行・ソニー銀行・PayPay銀行等、5年ルール・125%ルールを採用していない金融機関もある
- 未払利息が発生するリスクがあり、元金が減らない可能性がある
変動金利の見直しタイミングと仕組み
(1) 金利見直しは半年ごと(4月・10月)
変動金利の適用金利は、半年ごと(4月1日・10月1日)に見直されます。auじぶん銀行によると、4月1日の見直しは7月から、10月1日の見直しは翌年1月から適用開始となります。
金利見直しのスケジュール:
| 見直し基準日 | 新金利適用開始 | タイムラグ |
|---|---|---|
| 4月1日 | 7月 | 約3ヶ月 |
| 10月1日 | 翌年1月 | 約3ヶ月 |
金利が見直されても、すぐに返済額が変わるわけではありません。次のセクションで説明する「5年ルール」により、返済額は5年間一定に保たれます。
(2) 返済額変更は5年ごと
変動金利の返済額見直しは、5年ごとに行われます。三井住友信託銀行によると、これは「5年ルール」と呼ばれ、金利が上昇しても返済額を5年間一定に保つことで、返済計画の安定性を高める仕組みです。
返済額見直しのスケジュール:
- 1年目〜5年目:返済額固定
- 6年目〜10年目:返済額固定(5年ルールで見直し)
- 11年目〜15年目:返済額固定(5年ルールで見直し)
- 以降、5年ごとに見直し
金利が上昇しても返済額が一定に保たれる間、利息の割合が増え、元金の割合が減ります。
5年ルールと125%ルールの詳細
(1) 5年ルールのメリット・デメリット
5年ルールには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット:
- 金利が上昇しても、返済額は5年間変わらないため、返済計画が立てやすい
- 急激な返済額増加を避けられる
デメリット:
- 金利上昇時、返済額に占める利息の割合が増え、元金が減りにくくなる
- 5年後の見直し時に、返済額が大きく増加する可能性がある
SBI新生銀行によると、SBI新生銀行、ソニー銀行、PayPay銀行等は5年ルールを採用していないため、金利見直しと同時に返済額も変更されます。金融機関により取り扱いが異なるため、契約前に必ず確認してください。
(2) 125%ルールと未払利息のリスク
125%ルールとは、5年後の返済額見直し時も、新返済額を前回の返済額の125%以内に抑える保護措置です。
125%ルールの例:
- 現在の返済額: 10万円/月
- 5年後の見直し時の上限: 10万円×125%=12.5万円/月
ただし、125%ルールには重大なリスクがあります。金利が大幅に上昇した場合、125%の上限を適用しても利息を払いきれず、未払利息が発生する可能性があるのです。
未払利息の仕組み:
- 本来の利息: 15万円/月
- 125%ルール適用後の返済額: 12.5万円/月
- 未払利息: 15万円-12.5万円=2.5万円/月(繰り越される)
未払利息は毎月累積し、最終回に一括返済が必要になる場合があります。また、元金が全く減らない状態が続く可能性もあります。
金利上昇時の返済額シミュレーション
(1) 日銀の政策金利と住宅ローン金利の関係
変動金利は、日本銀行の政策金利に連動して変動します。住まいサーフィン編集部によると、2025年12月現在の状況は以下の通りです。
日銀の金融政策の推移:
- 2024年3月:マイナス金利政策終了
- 2024年7月:政策金利を0.25%に引き上げ
- 2025年1月:政策金利を0.50%に追加利上げ
- 2026年末まで:約1.1%まで上昇する予測
変動金利型住宅ローンの金利も、これに連動して上昇する見込みです。
(2) 2025年以降の金利動向予測
2025年12月現在、変動金利は横ばい傾向ですが、一部銀行で優遇幅縮小により実質的な金利引き上げが行われています。
金利上昇シミュレーション(借入額3,000万円、35年、元利均等返済の場合):
| 金利 | 毎月返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 0.5% | 77,876円 | 3,271万円 |
| 1.0% | 84,685円 | 3,557万円 |
| 1.5% | 91,855円 | 3,858万円 |
| 2.0% | 99,379円 | 4,174万円 |
金利が1.0%上昇すると、毎月の返済額は約7,000円〜15,000円増加します。5年ルール・125%ルールがあっても、金利上昇のリスクは無視できません。
変動金利を選ぶ際の注意点とリスク
(1) 金融機関によるルールの違い
5年ルール・125%ルールは、すべての金融機関が採用しているわけではありません。
採用していない主な金融機関:
- SBI新生銀行
- ソニー銀行
- PayPay銀行
これらの銀行では、金利見直しと同時に返済額も変更されるため、金利上昇時は即座に返済額が増加します。一方で、未払利息のリスクは発生しません。
契約前に、以下の点を必ず確認してください。
- 5年ルール・125%ルールの適用有無
- 元利均等返済か元金均等返済か(元金均等返済には5年ルールが適用されない場合が多い)
- 金利見直しのタイミングと返済額変更のタイミング
(2) 固定金利との比較ポイント
変動金利と固定金利のどちらを選ぶかは、以下の点を考慮して判断してください。
変動金利が向いているケース:
- 金利上昇時も返済に余裕がある(収入増が見込める、貯蓄がある)
- 短期間で完済予定(10〜15年以内)
- 金利動向を定期的にチェックし、繰り上げ返済等で対応できる
固定金利が向いているケース:
- 金利上昇リスクを避けたい
- 返済計画を長期間固定したい
- 収入が安定しており、余裕がない
住宅金融支援機構によると、「金利のある世界」では固定金利の選択肢も検討すべきとされています。ファイナンシャルプランナーや金融機関に相談し、自分に合った選択をすることを推奨します。
まとめ:変動金利との上手な付き合い方
住宅ローンの変動金利は、毎月変わるわけではなく、半年ごとに見直され、返済額は5年間一定に保たれる仕組みです。5年ルール・125%ルールにより急激な返済額増加は防げますが、未払利息のリスクがあり、元金が減らない可能性もあります。
変動金利との上手な付き合い方:
- 金利見直しのタイミング(4月・10月)を把握し、金利動向をチェック
- 繰り上げ返済を活用して、元金を早期に減らす
- 金利上昇時に備えて、返済額増加分を貯蓄しておく
- 金融機関により5年ルール・125%ルールの適用が異なるため、契約前に必ず確認
変動金利は低金利のメリットがありますが、金利上昇リスクを十分に理解したうえで選択してください。2025年以降は金利上昇局面に入る可能性が高いため、固定金利への借り換えも含めて、ファイナンシャルプランナーや金融機関に相談することを推奨します。


