住宅ローン借り換えの手数料が気になる人へ
住宅ローンの返済中に金利上昇や家計の見直しで「借り換えたら返済額を減らせるのでは?」と考える方は少なくありません。しかし、借り換えには手数料がかかるため、「費用がいくらかかるのか」「相場はどれくらいか」が気になるところです。
この記事では、住宅ローン借り換えの手数料の種類・相場、費用を抑えるポイント、借り換えで損をしないための判断基準を、住宅金融支援機構や主要金融機関の公式情報を元に解説します。
借り換えを検討している方が、手数料を含めた総返済額を正確に把握し、最適な判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローン借り換えの手数料は30万円~100万円が相場
- 事務手数料、保証料、抵当権設定・抹消費用、全額繰上返済手数料が主な内訳
- 定額型の事務手数料を選べば、借入額が大きくても手数料を抑えられる可能性がある
- 借り換えで得するには、金利差1%以上・残高1,000万円以上・返済期間10年以上が目安
- 住宅ローン控除を受けている場合は、借り換え後も返済期間10年以上を維持する必要がある
(1) なぜ今、住宅ローン借り換えが注目されるのか
2024年3月、日本銀行が17年ぶりにマイナス金利政策を解除し、2024年7月に政策金利を0.25%に、2025年1月には約0.5%に引き上げました。金利上昇局面では、変動金利から固定金利への借り換えに注目が集まっています。
一方、低金利時代に借りた変動金利の住宅ローンを抱える方にとっては、金利上昇による返済額の増加が家計を圧迫するリスクがあります。そのため、借り換えにより金利を固定化し、将来のリスクを抑える選択が重要になっています。
(2) この記事で分かること
この記事では、以下の内容を解説します。
- 住宅ローン借り換え手数料の種類と内訳(事務手数料、保証料、抵当権設定・抹消費用等)
- 手数料の相場と金融機関別の比較
- 借り換え手数料を抑えるポイント
- 借り換えで得するケースと損するリスク
- 住宅ローン控除の適用条件と注意点
住宅ローン借り換え手数料の種類と内訳
住宅ローン借り換えには、様々な手数料が発生します。手数料の総額は30万円~100万円が相場ですが、借入残高や金融機関により大きく異なります。主な手数料の種類と内訳を以下で解説します。
(1) 事務手数料(融資手数料)
事務手数料は、借り換え先の金融機関に支払う手数料です。主に2種類の方式があります。
| 方式 | 内容 | 相場 |
|---|---|---|
| 定額型 | 固定額 | 3万円~5万円 |
| 定率型 | 借入額に対する割合 | 借入額の2.2%程度 |
定額型の例:
- 借入額3,000万円でも5万円の固定額
定率型の例:
- 借入額3,000万円の場合、3,000万円 × 2.2% = 66万円
借入額が大きい場合は定額型の方が有利です。
(2) 保証料
保証料は、住宅ローンの返済が滞った際に保証会社が立て替える費用です。支払い方式には以下の2種類があります。
- 一括前払い方式:借入時に一括で支払う(借入額の2%程度が目安)
- 金利上乗せ方式:金利に0.2%程度上乗せ
ネット銀行やフラット35では保証料不要の場合が多いため、手数料を抑えたい方は検討の価値があります。
(3) 抵当権設定費用と抹消費用
借り換えでは、既存の住宅ローンの抵当権を抹消し、新たな住宅ローンで抵当権を設定する必要があります。
抵当権設定費用:
- 登録免許税:借入額の0.4%
- 司法書士報酬:6万円~10万円程度
抵当権抹消費用:
- 登録免許税:不動産1件につき1,000円
- 司法書士報酬:2万円程度
例(借入額3,000万円の場合):
- 設定費用:3,000万円 × 0.4% + 8万円 = 20万円
- 抹消費用:1,000円 + 2万円 = 約2万円
- 合計:約22万円
(4) 全額繰上返済手数料
既存の住宅ローンを一括返済する際に発生する手数料です。3万円前後が一般的ですが、金融機関により無料の場合もあります。
(5) その他の諸費用(印紙税等)
住宅ローン契約書に貼付する印紙税が発生します。借入額により異なりますが、2万円~6万円程度が目安です。
| 借入額 | 印紙税 |
|---|---|
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 6万円 |
借り換え手数料の相場と金融機関別の比較
(1) 手数料の総額相場(30万円~100万円)
住宅ローン借り換え手数料の総額は、借入額や金融機関により異なりますが、30万円~100万円が一般的な相場です。
手数料総額の内訳例(借入額3,000万円の場合):
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 事務手数料(定率型2.2%) | 66万円 |
| 抵当権設定費用 | 20万円 |
| 抵当権抹消費用 | 2万円 |
| 全額繰上返済手数料 | 3万円 |
| 印紙税 | 2万円 |
| 合計 | 93万円 |
一方、定額型の事務手数料を選んだ場合:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 事務手数料(定額型) | 5万円 |
| 抵当権設定費用 | 20万円 |
| 抵当権抹消費用 | 2万円 |
| 全額繰上返済手数料 | 3万円 |
| 印紙税 | 2万円 |
| 合計 | 32万円 |
定額型を選ぶことで、手数料を約60万円削減できます。
(2) 定額型と定率型の事務手数料の比較
借入額により、どちらが有利かが変わります。
| 借入額 | 定額型(5万円) | 定率型(2.2%) | 有利な方 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 5万円 | 22万円 | 定額型 |
| 2,000万円 | 5万円 | 44万円 | 定額型 |
| 3,000万円 | 5万円 | 66万円 | 定額型 |
| 5,000万円 | 5万円 | 110万円 | 定額型 |
借入額が大きいほど、定額型の方が手数料を大幅に抑えられます。
(3) 大手銀行・ネット銀行の手数料比較
2025年5月時点の主要金融機関の金利と手数料の例を以下に示します。
| 金融機関 | 変動金利 | 事務手数料 | 保証料 |
|---|---|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 0.595% | 借入額の2.2% | 必要 |
| みずほ銀行 | 0.525% | 借入額の2.2% | 必要 |
| 三井住友銀行 | 0.925% | 借入額の2.2% | 必要 |
| りそな銀行 | 0.640% | 借入額の2.2% | 必要 |
| ネット銀行A | 0.319% | 定額5万円 | 不要 |
| ネット銀行B | 0.380% | 借入額の2.2% | 不要 |
(出典: 各金融機関公式サイト、2025年5月時点)
ネット銀行では保証料不要の場合が多く、定額型の事務手数料を選べる金融機関もあります。複数社で比較することが重要です。
(4) フラット35への借り換え
住宅金融支援機構のフラット35は、全期間固定金利の住宅ローンで、保証料不要、繰上返済手数料無料が特徴です。
フラット35のメリット:
- 金利が固定されるため、将来の金利上昇リスクを回避できる
- 保証料不要
- 繰上返済手数料無料
デメリット:
- 事務手数料は借入額の1.1%~2.2%程度
- 物件検査費用が別途必要(5万円程度)
変動金利から固定金利への借り換えを検討する方には、フラット35も選択肢の一つです。
借り換え手数料を抑えるポイント
(1) 定額型の事務手数料を選ぶメリット
借入額が大きい場合、定額型の事務手数料を選ぶことで大幅に費用を抑えられます。借入額3,000万円で定率型(2.2%)の場合は66万円ですが、定額型(5万円)なら61万円の差が生まれます。
(2) 複数の金融機関でシミュレーションする
金融機関により、金利・手数料・保証料が異なります。必ず複数社でシミュレーションを実施し、手数料を含めた総返済額を比較してください。
シミュレーションのポイント:
- 事務手数料(定額型or定率型)
- 保証料(必要or不要)
- 抵当権設定・抹消費用
- 総返済額(金利×返済期間)
(3) 保証料不要の金融機関を選ぶ
ネット銀行やフラット35では保証料不要の場合が多く、手数料を抑えられます。借入額3,000万円の場合、保証料(2%)は60万円程度になるため、大きな節約効果があります。
(4) 司法書士報酬の見積もりを取る
抵当権設定・抹消の司法書士報酬は、依頼先により異なります。複数の司法書士から見積もりを取ることで、費用を抑えられる可能性があります。
住宅ローン借り換えのメリット・デメリットと注意点
(1) 借り換えのメリット(金利削減・返済額削減)
借り換えの最大のメリットは、金利を下げることで毎月の返済額や総返済額を削減できることです。
削減額の例(借入残高3,000万円、残り返済期間20年):
| 現在の金利 | 借り換え後の金利 | 金利差 | 毎月の削減額 | 総削減額 |
|---|---|---|---|---|
| 1.5% | 0.5% | 1.0% | 約2万円 | 約480万円 |
| 1.0% | 0.5% | 0.5% | 約1万円 | 約240万円 |
金利差が大きいほど、削減効果も大きくなります。
(2) 借り換えで得するケース(金利差1%以上・残高1,000万円以上等)
一般的に、以下の条件を満たす場合に借り換えのメリットが出やすいと言われています。
- 金利差が1%以上
- 借入残高が1,000万円以上
- 返済期間の残りが10年以上
ただし、個別の状況により異なるため、必ず手数料を含めた総返済額をシミュレーションしてください。
(3) 借り換えで損するリスク(手数料が削減額を上回る等)
以下のケースでは、手数料が削減額を上回り、借り換えで損をする可能性があります。
- 借入残高が少ない(500万円以下等)
- 返済期間の残りが短い(5年以下等)
- 金利差が小さい(0.3%以下等)
損する例(借入残高500万円、残り返済期間5年、金利差0.3%):
- 総削減額:約8万円
- 手数料総額:30万円
- 結果:22万円の損
手数料を含めた総返済額を必ず確認しましょう。
(4) 住宅ローン控除の適用条件
住宅ローン控除を受けている場合、借り換え後も以下の条件を満たせば控除を継続できます。
- 返済期間が10年以上
- 借り換え後のローンが当初の住宅取得のためのローンであること
借り換え後の返済期間が10年未満になると、控除が適用されなくなるため注意が必要です。詳しくは税理士や金融機関の担当者にご相談ください。
(5) 金利適用時期とタイミングの注意点
住宅ローンの金利は、申込時ではなく融資実行時に適用されます。申込から融資実行までの間に金利が上昇するリスクがあるため、タイミングには注意が必要です。
金利上昇リスクを抑えるポイント:
- 申込から融資実行までの期間を短くする
- 金利が上昇傾向にある場合は早めに手続きを進める
まとめ:住宅ローン借り換えで損をしないための判断基準
(1) 借り換え手数料の要点整理
住宅ローン借り換えの手数料は30万円~100万円が相場です。事務手数料、保証料、抵当権設定・抹消費用、全額繰上返済手数料が主な内訳で、借入額が大きい場合は定額型の事務手数料を選ぶことで費用を大幅に抑えられます。
保証料不要のネット銀行やフラット35も検討の価値があります。
(2) 状況別の判断基準と推奨アクション
借り換えで得するかどうかは、金利差・借入残高・返済期間の残り・手数料の総額により異なります。以下の基準を参考に判断してください。
借り換えがおすすめのケース:
- 金利差が1%以上
- 借入残高が1,000万円以上
- 返済期間の残りが10年以上
慎重に検討すべきケース:
- 借入残高が500万円以下
- 返済期間の残りが5年以下
- 金利差が0.3%以下
必ず複数の金融機関でシミュレーションを実施し、手数料を含めた総返済額を比較してください。住宅ローン控除の適用条件も確認し、借り換え後の返済期間が10年以上を維持できるか確認しましょう。
信頼できる金融機関やファイナンシャルプランナー(FP)に相談しながら、無理のない資金計画を立てることが重要です。
