住宅ローンの土地先行融資とは|注文住宅で土地を先に購入する方法
注文住宅を検討する際、「土地を先に購入したいが、住宅ローンが土地のみでは使えないと知った」「土地先行融資とつなぎ融資の違いがわからない」と悩む方は少なくありません。
この記事では、土地先行融資の仕組み、つなぎ融資との違い、流れと手続き、注意点とリスクを、国税庁・住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
注文住宅で土地を先に購入する方でも、土地先行融資の全体像を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 土地先行融資は土地を担保にして金利が低く、住宅ローン控除も適用可能
- つなぎ融資は無担保で金利が1〜2%高く、住宅ローン控除の対象外
- 建築期限(着工12ヶ月・完成24ヶ月以内等)と住宅ローン控除の「2年以内建築完了」要件に注意
- 抵当権設定が2回必要になり、登記費用・手数料が通常より高額になる
- 元金据置プランを選ぶと賃貸家賃とローン返済の二重負担を軽減できる
土地先行融資の仕組みとメリット|一般的な住宅ローンとの違い
土地先行融資は、注文住宅を建てる際に土地購入代金を先に融資してもらい、建物完成後に建物分の融資を受ける住宅ローンの形態です。
(1) 土地先行融資の定義と基本的な仕組み
一般的な住宅ローンは「土地+建物」をセットで購入する際に利用できますが、土地のみの購入では利用できません。
土地先行融資は、この制約を解消するために、土地購入時に「土地分の融資」を先に実行し、建物完成時に「建物分の融資」を追加で実行する仕組みです。
(2) 土地を担保にするため金利が低い
土地先行融資は、購入した土地を担保(抵当権を設定)にするため、通常の住宅ローンと同じ金利で借入可能です。
三井住友銀行の土地先行融資では、住宅ローンと同じ金利が適用されます。
(3) 住宅ローン控除が適用可能
土地先行融資は住宅ローンの一種のため、住宅ローン控除(住宅ローン残高の一定割合を所得税から控除できる制度)の対象となります。
国税庁によると、土地取得から2年以内に建築を完了し、土地・建物の名義を統一すれば住宅ローン控除が適用されます。
(4) 元金据置プランで二重負担を軽減
住信SBIネット銀行のように、建物完成までの間、元金の返済を据え置き利息のみを支払う「元金据置プラン」を提供する金融機関もあります。
これにより、賃貸家賃とローン返済の二重負担を軽減できます。
土地先行融資とつなぎ融資の違い|金利・担保・住宅ローン控除を比較
土地先行融資とつなぎ融資は、どちらも注文住宅で土地を先に購入する際に利用できますが、仕組みが異なります。
(1) 担保の有無(土地先行融資は担保あり)
土地先行融資は、購入した土地を担保に融資を受けるため、金融機関のリスクが低く、金利も低く設定されます。
つなぎ融資は、無担保のローンです。住宅ローン実行までの間に必要な資金を一時的に借りるため、金融機関のリスクが高く、金利も高く設定されます。
(2) 金利の違い(土地先行融資の方が1〜2%低い)
土地先行融資とつなぎ融資の金利差は、1〜2%程度になることもあります。
| 項目 | 土地先行融資 | つなぎ融資 |
|---|---|---|
| 金利 | 住宅ローンと同金利(0.3〜1.5%程度) | 2〜4%程度 |
| 担保 | あり(土地に抵当権設定) | なし(無担保) |
(出典: みずほ銀行)
(3) 住宅ローン控除の適用(つなぎ融資は対象外)
土地先行融資は住宅ローンの一種のため、住宅ローン控除の対象となります。
つなぎ融資は一時的な借入のため、住宅ローン控除の対象外です。
(4) どちらを選ぶべきか
金利負担を抑えたい場合は土地先行融資が有利です。ただし、土地先行融資を扱う金融機関は限られるため、取扱可否を事前に確認する必要があります。
つなぎ融資は、土地先行融資を扱わない金融機関でも利用できるメリットがあります。
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土地先行融資の流れと手続き|申込から融資実行まで
土地先行融資の具体的な流れと手続きを確認しましょう。
(1) 土地先行融資の審査・申込
土地先行融資の審査は、一般的な住宅ローンと同様に、年収・返済負担率・信用情報等を確認します。
建物の建築計画(建築会社の見積書、建築確認申請書等)の提出が必要です。
(2) 土地購入時の融資実行(抵当権設定1回目)
審査に通過すれば、土地購入時に「土地分の融資」が実行されます。
この時点で、購入した土地に抵当権(住宅ローンの担保として土地・建物に設定される権利)を設定します(1回目)。
(3) 建物完成時の融資実行(抵当権設定2回目)
建物が完成すると、「建物分の融資」が実行されます。
この時点で、建物に抵当権を設定します(2回目)。
(4) 取扱金融機関(三井住友銀行、住信SBIネット銀行等)
土地先行融資を扱う金融機関は以下の通りです。
| 金融機関 | 特徴 |
|---|---|
| 三井住友銀行 | 住宅ローンと同じ金利で借入可能。着工12ヶ月以内・完成24ヶ月以内の条件 |
| 住信SBIネット銀行 | ネット銀行初の土地先行プラン。元金据置で二重負担軽減 |
| みずほ銀行 | 分割融資にも対応 |
(出典: 各金融機関公式サイト、2025年時点)
土地先行融資の注意点とリスク|期限・控除・二重負担を徹底解説
土地先行融資を利用する際の注意点とリスクを確認しましょう。
(1) 建築期限の制約(着工12ヶ月・完成24ヶ月以内等)
多くの金融機関では、土地融資実行から着工まで12ヶ月以内、完成まで24ヶ月以内という期限を設けています。
工期遅延により期限を超過すると、住宅ローン控除が受けられなくなるリスクがあります。
(2) 住宅ローン控除の「2年以内建築完了」要件
国税庁によると、土地取得から2年以内に建築を完了し、土地・建物の名義を統一することが住宅ローン控除の適用要件です。
建築会社選定の遅れや工事遅延により、この期限を超過するケースもあるため注意が必要です。
(3) 賃貸家賃とローン返済の二重負担
土地融資実行と同時に返済が始まるため、建物完成までは賃貸家賃とローン返済の二重負担が発生する可能性があります。
元金据置プラン(建物完成までの間、元金の返済を据え置き利息のみを支払う)を選ぶと、二重負担を軽減できます。
(4) 登記費用・手数料が2回分必要
土地購入時と建物完成時で抵当権設定が2回必要になるため、登記費用・手数料が通常の住宅ローンより高額になります。
費用の目安:
- 抵当権設定登記費用(1回目・土地): 10〜15万円
- 抵当権設定登記費用(2回目・建物): 10〜15万円
- 司法書士手数料(2回分): 10〜20万円
合計で30〜50万円程度の追加費用を見込む必要があります。
(5) 工期遅延リスクと対策
建築会社の倒産、資材不足、天候不良等により工期が遅延すると、建築期限や住宅ローン控除の「2年以内建築完了」要件を満たせなくなる可能性があります。
対策として、以下の点に注意しましょう。
- 建築会社の信頼性を確認: 過去の実績、財務状況、評判等
- 余裕を持った工期設定: 工期遅延のバッファを見込む
- 建築確認申請の早期提出: 行政手続きの遅延を防ぐ
まとめ|土地先行融資を成功させるために
土地先行融資は、土地を担保にして金利が低く、住宅ローン控除も適用可能なため、注文住宅で土地を先に購入する際に有利な選択肢です。つなぎ融資と比較して金利差が1〜2%程度になることもあります。
ただし、建築期限(着工12ヶ月・完成24ヶ月以内等)と住宅ローン控除の「2年以内建築完了」要件に注意が必要です。抵当権設定が2回必要になり、登記費用・手数料が通常より高額になる点も考慮しましょう。
元金据置プランを選ぶと賃貸家賃とローン返済の二重負担を軽減できます。詳細な融資条件や建築計画については、ファイナンシャルプランナーや宅地建物取引士への相談をおすすめします。
