住宅ローンと火災保険の関係|加入義務・選び方・見直し方法

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/19

住宅ローンと火災保険の関係|なぜ加入が必要なのか

住宅ローンを組む際、「火災保険に入らないといけないのか」「金融機関指定の保険に入る必要はあるのか」と疑問を持つ方は少なくありません。

この記事では、住宅ローンと火災保険の関係、加入義務と選択肢、保険の選び方・比較ポイント、完済後の見直し方法を、住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。

適切な火災保険を選ぶことで、保険料を抑えながら安心の住宅ライフを実現できます。

この記事のポイント

  • ほとんどの金融機関で火災保険加入が必須だが、保険会社は自由に選べる
  • 金融機関指定保険への加入を強制することは保険業法により禁止されている
  • 火災保険の保険料は木造戸建てで年間1〜3万円程度、マンションで年間5千〜1.5万円程度が相場
  • 2022年10月から最長契約期間が10年から5年に変更された
  • 住宅ローン完済後も火災保険継続が推奨される(災害時の経済的リスク回避)

(1) ほとんどの金融機関で火災保険加入が必須条件

住宅ローンを組む際、ほとんどの金融機関で火災保険への加入が必須条件となっています。

みずほ銀行によると、火災保険未加入の場合、住宅ローン融資が実行されない可能性があります。

ただし、火災保険への加入は法律上の義務ではありません。金融機関が契約条件として設定しているものです。

(2) 担保物件保全のための火災保険|抵当権との関係

金融機関が火災保険加入を求める理由は、担保物件(住宅)の保全です。

住宅ローン契約時、金融機関は住宅に抵当権を設定します。抵当権とは、ローン返済が滞った場合に、金融機関が住宅を差し押さえて売却し、ローン残債を回収する権利です。

もし火災により住宅が損壊すると、担保価値が失われ、金融機関は回収リスクを負います。そのため、火災保険により住宅を復旧できる仕組みを確保しているのです。

(3) 火災時のリスク|住宅ローン返済義務は残る

火災により住宅が損害を受けても、住宅ローンの返済義務は残ります

火災保険未加入の場合、以下のリスクが生じます。

  • 住宅の復旧費用を自己負担しなければならない
  • 復旧費用とローン返済の二重負担となる
  • 復旧できない場合でも、ローン返済は継続する

SBI新生銀行によると、火災保険未加入のリスクは極めて大きく、必ず加入することが推奨されています。

(4) フラット35の火災保険要件|返済終了まで加入必須

住宅金融支援機構のフラット35では、返済終了まで火災保険加入が必須です。

主な要件は以下の通りです。

  • 保険金額: 融資額以上に設定
  • 保険期間: 返済終了まで継続
  • 更新: 保険期間満了前に必ず更新(更新失効は契約違反で一括返済の可能性)

フラット35を利用する場合、火災保険の継続管理が特に重要です。

火災保険の加入義務と選択肢|金融機関指定保険に入る必要はあるのか

(1) 保険会社は自由に選べる|抱き合わせ販売の禁止

金融機関が火災保険加入を必須条件としていても、保険会社は自由に選べます

損保ジャパンによると、保険業法施行規則第234条第1項第7号により、抱き合わせ販売(金融機関が住宅ローン契約の条件として特定の保険への加入を強制すること)は禁止されています。

金融機関が勧める保険に加入する義務はなく、自分で保険会社やプランを選択できます。

(2) 金融機関提携保険と自分で選ぶ保険の違い

金融機関提携保険と自分で選ぶ保険には、それぞれメリット・デメリットがあります。

項目 金融機関提携保険 自分で選ぶ保険
手続き ローン契約と同時に申込できる 自分で保険会社を探し申込が必要
保険料 提携割引がある場合もあるが、必ずしも最安ではない 複数社比較で最適なプランを選べる
補償内容 金融機関の要件を満たすプランが用意されている 自分のニーズに合わせてカスタマイズ可能
相談窓口 金融機関の担当者に質問できる 保険代理店やFPに相談が必要

複数社で見積もりを取り、同等の補償内容で保険料を比較することが推奨されます。

(3) 質権設定とは|金融機関が保険金を受け取る権利

質権設定とは、金融機関が火災保険金を直接受け取る権利を設定することです。

火災時に保険金が確実にローン返済に充てられる仕組みで、以下のような流れになります。

  1. 火災により住宅が損壊
  2. 火災保険金が支払われる
  3. 金融機関が保険金を受け取り、ローン残債に充当
  4. 残った保険金が契約者に支払われる

ただし、みずほ銀行によると、2024年時点で多くの金融機関が質権設定を求めなくなり、契約者の自由度が向上しています。

(4) 住宅ローン対応の火災保険の条件|建物評価額以上の補償

住宅ローン対応の火災保険では、建物の評価額以上の補償が条件とされることが多いです。

例えば、建物評価額3,000万円の住宅の場合、火災保険の保険金額も3,000万円以上に設定する必要があります。

家財は別途加入が必要です。「建物のみ」の補償では、家財(家具・家電等)の損害はカバーされません。

火災保険の選び方|補償内容と保険料の比較ポイント

(1) 補償対象の決め方|建物のみ・家財のみ・両方

火災保険の補償対象は、以下の3つから選択します。

補償対象 内容 推奨ケース
建物のみ 住宅本体の損害を補償 住宅ローン必須条件を満たす最低限の補償
家財のみ 家具・家電・衣類等の損害を補償 賃貸住宅の場合(建物は家主が加入)
建物と家財 両方を補償 持ち家で家財もしっかり守りたい場合

住宅ローン契約時は「建物のみ」が最低条件ですが、家財も守りたい場合は「建物と家財」を選びましょう。

(2) 補償内容の検討|火災・風ひょう雪災・水災・地震保険

火災保険の補償内容は、以下のようなリスクをカバーします。

補償項目 内容 備考
火災 火災による損害 基本補償
落雷 落雷による損害 基本補償
風ひょう雪災 台風・雪・ひょうによる損害 基本補償
水災 洪水・土砂崩れによる損害 特約(地域により必要性が異なる)
衝突・破損 車の衝突・子どもの破損等 特約
盗難 盗難による損害 特約
地震 地震・噴火・津波による損害 地震保険(別途加入が必須)

重要: 地震による損害は火災保険では補償されません。地震保険への加入が別途必要です。

(3) 地域特性に応じた補償選択|海抜・川の近さ・高台

ソニー損保によると、補償内容は地域特性に応じて選ぶ必要があります。

水災補償の必要性:

  • 必要なケース: 海抜が低い、川が近い、過去に浸水被害があるエリア
  • 不要な場合もあるケース: 高台、山の上、水害リスクが極めて低いエリア

ハザードマップで自宅の水害リスクを確認し、必要な補償を選びましょう。

(4) 保険料の相場|木造戸建て vs マンション

火災保険の保険料は、建物構造・所在地・補償内容により異なります。

みずほ銀行によると、一般的な相場は以下の通りです(概算)。

建物種別 年間保険料の目安
新築木造戸建て 1〜3万円程度
マンション 5千〜1.5万円程度

※補償内容・地域・保険会社により大きく異なるため、複数社で見積もりを取ることが重要です。

(5) 複数社の見積もり比較|同等補償で保険料を抑える

複数の保険会社で見積もりを取り、同等の補償内容で保険料を比較することが推奨されます。

比較のポイント:

  1. 補償内容を揃える: 火災・落雷・風ひょう雪災・水災等、同じ補償内容で比較
  2. 保険金額を統一: 建物評価額3,000万円なら、全社とも3,000万円で見積もり
  3. 契約期間を合わせる: 1年・3年・5年など同じ期間で比較
  4. 特約の有無を確認: 追加特約により保険料が変わる場合がある

価格.comなどの比較サイトを活用すると、効率的に比較できます。

火災保険の加入手続き|タイミングと必要書類

(1) 補償開始日は引き渡し日に合わせる

火災保険の補償開始日は、住宅の引き渡し日に合わせる必要があります。

引き渡し日に火災保険が間に合わないと、以下のリスクが生じます。

  • 物件の引き渡しを受けられない
  • 住宅ローン融資が実行されない
  • 引き渡し後すぐに火災が発生しても補償されない

(2) 申込タイミング|引き渡し日の2週間前が目安

みずほ銀行によると、火災保険の申込は引き渡し日の2週間前が目安です。

推奨スケジュール:

  • 引き渡し日の2ヶ月前: 複数社で見積もりを取り、比較検討を開始
  • 引き渡し日の1ヶ月前: 保険会社・プランを決定
  • 引き渡し日の2週間前: 正式に申込
  • 引き渡し日: 補償開始

(3) 比較検討は2ヶ月前から着手

複数社の見積もり比較には時間がかかるため、引き渡し日の2ヶ月ほど前から着手することが理想的です。

特に初めて火災保険を選ぶ場合、以下の作業が必要です。

  • 補償内容の理解
  • 自宅のリスク評価(ハザードマップ確認等)
  • 複数社への見積もり依頼
  • 保険会社・プランの比較

(4) 必要書類と手続きの流れ

火災保険の申込時に必要な主な書類は以下の通りです。

  • 建物の情報(所在地・構造・床面積・建築年等)
  • 建築確認申請書または建築確認済証のコピー
  • 住宅ローン契約書のコピー(金融機関の要件確認)
  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)

手続きの流れ:

  1. 保険会社に見積もり依頼
  2. 補償内容・保険料を比較
  3. 保険会社・プランを決定
  4. 申込書類を提出
  5. 保険料を支払い
  6. 保険証券を受け取る
  7. 補償開始(引き渡し日)

住宅ローン完済後の火災保険|見直しと継続のポイント

(1) 完済後も火災保険継続が推奨される理由

SBI新生銀行によると、住宅ローン完済後も火災保険契約を続けることが推奨されます。

完済したからといって解約すると、以下のリスクが生じます。

  • 火災時の復旧費用を自己負担しなければならない
  • 災害時の経済的リスクが大きい
  • 住宅の資産価値を守れない

住宅を維持する限り、火災保険の継続が基本です。

(2) 質権設定の解除手続き

住宅ローン完済後、質権設定を解除する手続きを行います。

手続きの流れ:

  1. 金融機関に連絡し、質権設定解除を申請
  2. 金融機関から「質権設定解除証明書」を受け取る
  3. 保険会社に解除証明書を提出
  4. 質権設定が解除される

質権設定解除後も、火災保険契約自体は継続します。

(3) 契約期間変更(2022年10月〜)|最長5年への短縮

SBI損保によると、2022年10月から火災保険の最長契約期間が10年から5年に変更されました。

これにより、住宅ローン完済までに複数回の見直しタイミングが発生します。

影響:

  • 長期一括契約による割引メリットが縮小
  • 5年ごとに保険料が見直される可能性が高い
  • 更新時に補償内容を見直す機会が増える

(4) 見直しタイミング|5年ごとの更新時が目安

火災保険の見直しは、5年ごとの更新時が目安です。

見直しポイント:

  • 保険料が適正か(複数社で比較)
  • 補償内容が現在のニーズに合っているか
  • 新しい特約が追加されていないか
  • 家財の評価額が変わっていないか

ライフステージの変化(子どもの独立、リフォーム等)に応じて、補償内容を調整しましょう。

まとめ|適切な火災保険で安心の住宅ライフを実現

住宅ローンを組む際、ほとんどの金融機関で火災保険への加入が必須ですが、保険会社は自由に選べます。

金融機関指定保険への加入を強制することは保険業法により禁止されており、複数社で見積もりを取り、同等の補償内容で保険料を比較することが推奨されます。

火災保険の保険料は、木造戸建てで年間1〜3万円程度、マンションで年間5千〜1.5万円程度が相場ですが、補償内容・地域・建物構造により大きく異なります。

2022年10月から最長契約期間が10年から5年に変更されたため、住宅ローン完済までに複数回の見直しタイミングが発生します。

住宅ローン完済後も、住宅を維持する限り火災保険契約を続けることが基本です。完済したからといって解約すると、災害時の経済的リスクが大きくなります。

火災保険の申込は引き渡し日の2週間前が目安で、比較検討は2ヶ月ほど前から着手することが理想的です。

詳細な保険選択は、ファイナンシャルプランナーや保険代理店など専門家への相談も推奨します。

よくある質問

Q1住宅ローンに火災保険は必須ですか?

A1ほとんどの金融機関が火災保険加入を必須条件としています。法律上の義務ではありませんが、金融機関は担保物件(住宅)の保全のため加入を求めます。特にフラット35では返済終了まで加入が必須です。火災により住宅が損壊しても住宅ローンの返済義務は残るため、復旧費用とローン返済の二重負担を避けるためにも火災保険加入が推奨されます。

Q2金融機関指定の火災保険に入らないといけませんか?

A2保険業法施行規則により抱き合わせ販売は禁止されており、金融機関が指定した保険への加入を強制することはできません。自分で保険会社やプランを自由に選択できます。複数社で見積もりを取り、同等の補償内容で保険料を比較することが推奨されます。ただし、住宅ローン対応の火災保険として建物評価額以上の補償が条件とされることが多いため、金融機関の要件は確認しましょう。

Q3火災保険の保険料の相場はいくらですか?

A3建物構造・所在地・補償内容により異なりますが、一般的に新築木造戸建てで年間1〜3万円程度、マンションで年間5千〜1.5万円程度です。補償内容(水災補償の有無、家財補償の有無等)や地域(水害リスクの高低)、契約期間(1年・3年・5年)により保険料は変動します。複数社で見積もりを取ることで適切な保険料を確認できます。

Q4住宅ローン完済後も火災保険は必要ですか?

A4完済後も住宅を維持する限り火災保険契約を続けることが推奨されます。完済したからといって解約すると、火災時の復旧費用を自己負担しなければならず、災害時の経済的リスクが大きくなります。ただし、質権設定(金融機関が保険金を受け取る権利)の解除手続きは可能です。完済後は5年ごとの更新時に補償内容や保険料を見直しましょう。

Q5火災保険の契約期間はどのくらいですか?

A52022年10月から最長契約期間が10年から5年に変更されました。そのため、住宅ローン完済までに複数回の見直しタイミングが発生します。長期一括契約による割引メリットは縮小しましたが、更新時に補償内容を見直す機会が増えるというメリットもあります。5年ごとの更新時に、保険料・補償内容・特約の追加などを確認しましょう。

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Room Match編集部

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