築年数別の一戸建て売却相場を知るべき理由
一戸建ての売却を検討する際、「築年数によって価格はどれくらい変わるのか」「今が売り時なのか」と悩む方は少なくありません。
この記事では、築5年から築60年までの築年数別の売却相場、価格推移の傾向、高く売るための実践的な方法を解説します。国土交通省のデータや不動産業界の統計を元に、各築年数帯の特徴と最適な売却タイミングを明らかにします。
初めて一戸建てを売却する方でも、相場を正確に把握し、最適な売却計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 築5年の一戸建ては購入価格の約70%が相場、築10年で約半分に下がる
- 木造一戸建ての法定耐用年数は22年で、築20年以降の価格下落は緩やかになる
- 築50年を超えると建物価値はゼロ評価され、土地価格のみで査定される
- 複数の不動産会社で査定を受け、境界確定を事前に行うことで高値売却が可能
- 一戸建ての売却期間は平均3〜6ヶ月で、マンションより長くかかる
築年数と売却価格の関係性
一戸建ての売却価格は、築年数によって大きく変動します。この関係性を理解することで、売却タイミングの判断に役立ちます。
(1) 木造一戸建ての法定耐用年数(22年)
木造一戸建ての法定耐用年数は22年です。これは税法上の建物の使用可能年数を指し、実際の居住可能年数とは異なります。
しかし、査定では法定耐用年数が建物価値の評価基準となるため、築22年を超えると建物価値がほぼゼロに近づきます。
(2) 築10年で資産価値が約半分になる理由
木造一戸建ては築10年で資産価値が約半分に下がります。これは以下の理由によります。
- 経年劣化: 屋根・外壁・設備の劣化が進む
- 市場の評価: 新築プレミアムが完全に消失
- メンテナンス費用: 今後のメンテナンスコストが見込まれる
2024年の東京都のデータでは、築5年以下で平均5,164万円、築6〜10年で4,871万円と、約6%下落しています。
(3) 築20年以降の価格推移
築20年以降は価格下落が緩やかになります。国土交通省の不動産価格指数によると、築20年を過ぎると建物価値の下落幅が小さくなり、土地価格が価格の大部分を占めるようになります。
築21〜25年でも十分居住可能なため、建物価値が認められるケースが増えています。
築年数別の売却相場|築5年〜60年の詳細データ
以下、築年数別の売却相場を具体的に解説します。すべて2024年の東京都のデータを基準にしていますが、地域・立地・物件状態により大きく異なるため、あくまで目安としてください。
(1) 築5年以下の売却相場(購入価格の約70%)
築5年以下の一戸建ては、購入価格の約70%が相場です。
| 購入価格 | 売却相場(目安) |
|---|---|
| 5,000万円 | 約3,500万円 |
| 3,000万円 | 約2,100万円 |
特徴:
- 買主需要が高く、早期売却が可能
- 新築に比べ約30%安く購入できるため人気
- 建物価格は70〜75%が目安
築5年以内の物件は「築浅」として扱われ、設備の劣化もほとんどないため、高値で売れやすいタイミングです。
(2) 築6〜10年の売却相場
築6〜10年の一戸建ては、2024年の東京都で平均4,871万円です。築5年以下から約6%下落します。
特徴:
- 築10年で資産価値が約半分に下がる
- 設備の経年劣化が目立ち始める
- メンテナンス履歴が査定に影響
(3) 築11〜20年の売却相場
築11〜20年は価格下落が続きますが、築5〜10年に比べると下落幅は緩やかです。
特徴:
- 築15年前後でリフォームを実施していると査定に有利
- 建物価値の減価が進むが、土地価格は維持される
(4) 築21〜30年の売却相場
築21〜30年の一戸建ては、2024年の東京都で平均4,407万円です。築5年以下から約15%下落しています。
特徴:
- 法定耐用年数(22年)を超えるが、十分居住可能
- 建物価値が低く評価されるが、土地価格が価格の大部分を占める
- リフォーム実施の有無が査定に大きく影響
(5) 築31〜40年の売却相場
築31〜40年は建物価値がほぼゼロに近づきます。売却価格は主に土地価格で決まります。
特徴:
- 建物は老朽化が進み、リフォームや建て替えを前提とした売却が多い
- 土地の立地・形状が価格に大きく影響
(6) 築41〜50年の売却相場
築41〜50年の一戸建ては、建物価値がほぼゼロです。売却方法は「古家付き土地」または「更地」が中心です。
特徴:
- 古家付き土地として売却すれば解体費用を抑えられる
- 更地にする場合、解体費用(数百万円)が発生
(7) 築51年以上の売却相場(建物価値ゼロ評価)
築51年以上の一戸建ては、建物価値が完全にゼロ評価されます。査定は土地価格のみで行われます。
特徴:
- 木造一戸建ての法定耐用年数(22年)を大幅に超過
- 古家付き土地として売却が一般的
- 安易に更地にすると解体費用が回収できないリスク
一戸建てを高く売るための実践的なコツ
築年数にかかわらず、以下の方法で売却価格を引き上げることが可能です。
(1) 複数の不動産会社で査定を受ける
複数の不動産会社で査定を受けることで、会社ごとの得意分野や地域の違いを比較でき、最適な売却価格と期間を見極められます。
メリット:
- 相場を正確に把握できる
- 会社ごとの販売戦略の違いを比較できる
- 高値で売却してくれる会社を見つけられる
(2) 境界確定を事前に行う
契約前に境界確定を行うことで、隣地とのトラブルを防ぎ、スムーズな取引が可能になります。
境界が不明確な場合、買主が購入を躊躇することがあり、売却価格の低下や売却期間の長期化につながります。
(3) インスペクション(建物状況調査)の活用
専門家による建物状況調査を実施することで、買主の不安を解消し、契約不適合責任のリスクを軽減できます。
インスペクション費用は5〜10万円程度ですが、売却価格の向上や早期売却につながることが多いです。
(4) 古家付き土地か更地かの選択
築古物件の場合、「古家付き土地」として売却するか、建物を解体して「更地」にするかの判断が重要です。
| 売却方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 古家付き土地 | 解体費用がかからない | 買主が解体費用を負担するため価格が下がる可能性 |
| 更地 | 買主が即座に建築可能、高値で売れる可能性 | 解体費用(数百万円)がかかる |
判断基準: 立地が良く買主需要が高い場合は更地、需要が不透明な場合は古家付き土地がリスクを抑えられます。
売却時の注意点・費用・税金
一戸建て売却時には、諸費用・税金・法的リスクに注意が必要です。
(1) 売却にかかる諸費用(売却価格の4〜6%)
一戸建て売却の諸費用は、売却価格の4〜6%が目安です。
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格の3%+6万円+消費税(上限) | 最大の費用 |
| 登録免許税 | 抵当権抹消登記の費用 | 1〜2万円 |
| 司法書士報酬 | 登記手続きの代行費用 | 5〜10万円 |
| 測量費用 | 境界確定のための測量 | 30〜50万円 |
| 解体費用 | 更地にする場合 | 数百万円 |
(2) 仲介手数料の計算方法
仲介手数料は、売却価格の3%+6万円+消費税が上限です。
計算例:
- 売却価格3,000万円の場合:(3,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 105.6万円
(3) 譲渡所得税と3000万円控除
不動産売却時の利益には譲渡所得税がかかります。
| 所有期間 | 税率 |
|---|---|
| 5年以下(短期譲渡所得) | 39.63% |
| 5年超(長期譲渡所得) | 20.315% |
3000万円控除: 自宅売却時、一定要件を満たすと譲渡所得から3000万円を控除できます。詳細は税理士にご相談ください。
(4) 契約不適合責任のリスク
2020年4月に導入された契約不適合責任により、売却後に契約内容と異なる欠陥が見つかると、売主が責任を負う可能性があります。
インスペクションを実施することでリスクを軽減できます。
(5) 売却期間の目安(平均3〜6ヶ月)
一戸建ての売却期間は平均3〜6ヶ月です。マンションは約3ヶ月で売れますが、一戸建ては個別性が高く約6ヶ月かかります。
古い物件や不便な立地では1〜2年かかる場合もあるため、余裕を持ったスケジュールが必要です。
まとめ:築年数別の最適な売却タイミング
築年数別の一戸建て売却相場は、築5年で購入価格の約70%、築10年で約半分、築20年以降は緩やかに下落します。築50年を超えると建物価値はゼロ評価され、土地価格のみで査定されます。
高く売るためには、複数の不動産会社で査定を受け、境界確定やインスペクションを事前に行うことが重要です。
売却期間は平均3〜6ヶ月ですが、築古物件や立地が不便な場合は1〜2年かかることもあります。税金や費用を含めた資金計画を立て、信頼できる不動産会社や税理士に相談しながら、無理のない売却計画を進めましょう。
