家と土地の売却を成功させるために
家と土地の売却を検討する際、「どのような流れで進めるのか」「費用や税金はどれくらいかかるのか」「相場はどう調べれば良いのか」と悩む方は少なくありません。
この記事では、家と土地の売却の流れ、費用(仲介手数料、測量費、解体費等)、税金(譲渡所得税、特別控除等)、全国主要都市の相場を、国土交通省の不動産取引価格情報や国税庁の税制情報の公式情報を元に解説します。
一戸建て・土地のみ・古家付き土地の違いを理解し、適正価格で早期売却を実現するための知識を身につけられるようになります。
この記事のポイント
- 家と土地の売却は、査定から引渡しまで3〜6ヶ月が目安
- 古家付き土地を更地にすると固定資産税が最大6倍になり、解体費用も100〜300万円かかる
- 譲渡所得税は所有期間5年以下で39.63%、5年超で20.315%
- 3,000万円特別控除等の節税特例を利用すると数百万〜数千万円単位で節税できる可能性
- 複数の不動産会社(最低3社)への査定依頼で適正な相場を把握できる
1. 家と土地の売却を検討すべきタイミング
(1) 一戸建て・土地のみ・古家付き土地の違い
家と土地の売却には、以下の3つのパターンがあります。
| 売却パターン | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一戸建て売却 | 建物と土地をセットで売却 | 建物の状態が査定に影響 |
| 土地のみ売却 | 更地の状態で売却 | 固定資産税が最大6倍 |
| 古家付き土地 | 建物が建っている状態で売却 | 固定資産税の軽減措置あり |
(2) 2024〜2025年の市場動向(金利上昇の影響)
2024年6月〜2025年6月の東京圏では土地価格が下落傾向にあります。2024年3月にマイナス金利政策が終了し、今後金利上昇が見込まれるため、低金利のうちに売却が有利な可能性があります。
ただし、土地価格は地域・経済状況・開発計画等で変動するため、相場は目安である旨をご理解ください。
(3) 古家付き土地と更地の選択基準
古家付き土地を更地にするかどうかは、以下の要因で判断します。
更地にするメリット:
- 土地の活用イメージが湧きやすい
- 建物の瑕疵を気にする必要がない
更地にするデメリット:
- 固定資産税が最大6倍になる(住宅用地の軽減措置がなくなる)
- 解体費用が100〜300万円かかる
買主ニーズに応じて判断することを推奨します。建物の解体判断は固定資産税・売却タイミング・買主ニーズ等を総合的に検討する必要があります。
(4) 相続した不動産の売却タイミング
相続した土地でも、相続登記をして名義人変更をしないと売却できないため、早めに手続きを完了させることを推奨します。相続登記は売却の前提条件です。
2. 売却の流れ8ステップ:査定から引渡しまで
(1) ①事前準備(相続登記・確定測量図)
土地売却には以下の準備が必要です。
- 相続登記: 相続した不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続き
- 確定測量図: 土地の境界を確定させたことを証明する書類(土地売却に必須)
確定測量図は土地売却に必須の書類で、測量費用は30〜80万円程度です。境界トラブルを避けるため、売却前に測量を完了させることを推奨します。
(2) ②査定依頼(複数社への依頼を推奨)
複数の不動産会社(最低3社)に査定依頼して相場を把握し、実績ある会社を選びます。
国土交通省の不動産情報ライブラリ、地価公示価格、路線価から自分で相場を調べておくと、査定額の妥当性を判断できます。
(3) ③媒介契約(専属専任・専任・一般)
媒介契約は、不動産会社に売却の仲介を依頼する契約で、以下の3種類があります。
| 媒介契約の種類 | 特徴 | 複数社への依頼 |
|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引不可 | 不可 |
| 専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引可 | 不可 |
| 一般媒介 | 複数社に依頼可能 | 可能 |
(4) ④売却活動(3〜6ヶ月が目安)
売却活動にかかる期間は3〜6ヶ月が目安です。境界確定や相続登記が未完了の場合は、さらに時間がかかります。
(5) ⑤売買契約と引渡し
購入希望者が見つかったら、売買契約を締結します。契約時には以下の書類が必要です。
- 登記済権利証または登記識別情報
- 印鑑証明書
- 固定資産税納税通知書
- 確定測量図
土地の欠陥情報(瑕疵)は必ず事前に伝える必要があります。隠蔽すると契約解除や損害賠償請求のリスクがあります。
(6) ⑥確定申告(翌年2〜3月)
売却の翌年2〜3月に確定申告を行います。譲渡所得税の計算や特例控除の適用を受けるため、税理士への相談を推奨します。
3. 売却にかかる費用と税金:仲介手数料・譲渡所得税
(1) 仲介手数料(売却価格の3%+6万円+消費税)
仲介手数料は、不動産会社に支払う手数料で、売却価格の3%+6万円+消費税が上限です。
| 売却価格 | 仲介手数料(上限) |
|---|---|
| 1,000万円 | 39.6万円 |
| 3,000万円 | 105.6万円 |
| 5,000万円 | 171.6万円 |
(2) 測量費用(30〜80万円)
確定測量図を作成するための測量費用は30〜80万円程度です。境界確定が未完了の場合は、売却前に測量を完了させる必要があります。
(3) 解体費用(100〜300万円、更地化の場合)
古家を解体して更地にする場合、解体費用が100〜300万円かかります。更地化すると固定資産税が最大6倍になるため、売却タイミングを慎重に検討してください。
(4) 譲渡所得税(短期39.63%、長期20.315%)
譲渡所得税は、土地売却時の利益にかかる税金です。
| 所有期間 | 税率 | 備考 |
|---|---|---|
| 5年以下 | 39.63% | 短期譲渡所得(復興特別所得税含む) |
| 5年超 | 20.315% | 長期譲渡所得(復興特別所得税含む) |
(5) 3,000万円特別控除等の節税特例
マイホーム売却時には、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。特例控除の適用要件は複雑で、税理士等の専門家への相談を推奨します。
特例や控除を利用せずに確定申告すると、数百万〜数千万円単位で損をする可能性があります。
(6) 印紙税・登録免許税
売買契約書に貼付する印紙税、所有権移転登記にかかる登録免許税も必要です。
4. エリア別の土地売却相場:全国主要都市の価格動向
(1) 東京・大阪・福岡の相場(都市圏の動向)
都市圏の土地価格は、2024〜2025年も高水準を維持していますが、東京圏では下落傾向が見られます。金利上昇の影響を受け、今後も変動する可能性があります。
(2) 北海道・札幌の相場
北海道・札幌の土地価格は、都市部と比較すると低めですが、札幌市中心部は堅調に推移しています。
(3) 沖縄の相場
沖縄の土地価格は、観光需要や外国人投資家の影響を受けて上昇傾向にあります。
(4) 岐阜・地方都市の相場
岐阜等の地方都市では、都市部と比較して低めの価格で推移していますが、駅近・利便性の高いエリアは需要があります。
(5) 不動産情報ライブラリ・地価公示価格・路線価での調べ方
自分で相場を調べる方法は以下の通りです。
不動産情報ライブラリ:
国土交通省の不動産情報ライブラリで、実際の取引価格を四半期ごとに確認できます。
地価公示価格:
国土交通省が毎年3月に公示する標準地の1㎡あたり単価です。標準地・基準地検索システムで確認できます。
路線価:
相続税・贈与税算定の基準となる価格で、公示価格の約80%です。路線価÷0.8×1.1で実勢価格(実際に取引される市場価格)を算出できる目安があります。
5. 売却成功のポイントと注意点
(1) 複数の不動産会社への査定依頼(最低3社)
複数の不動産会社(最低3社)に査定依頼することで、適正な相場を把握できます。経験の少ない不動産会社に依頼すると、価格設定や販売戦略で最適な判断ができないリスクがあります。
(2) 境界の確定(確定測量図が必須)
境界が未確定のまま売却すると、後でトラブルになる可能性が高いため、売却前に測量を完了させることを推奨します。
(3) 土地の欠陥情報の開示義務
土地の欠陥情報(瑕疵)は必ず事前に伝える必要があります。隠蔽すると契約解除や損害賠償請求のリスクがあります。
(4) 固定資産税の軽減措置(更地化で6倍になるリスク)
住宅用地(200㎡以下)は固定資産税が1/6、都市計画税が1/3になる特例があります。更地化すると軽減措置がなくなり、固定資産税が最大6倍になるため注意が必要です。
(5) 税金の支払い計画(納税資金の確保)
売却代金を受け取った後、税金の支払いを考慮せずに使い込むと、納税資金が不足するリスクがあります。譲渡所得税の計算を事前に行い、納税資金を確保しておくことを推奨します。
6. まとめ:適正価格で早期売却を実現する
家と土地の売却は、査定から引渡しまで3〜6ヶ月が目安です。古家付き土地を更地にするかどうかは、固定資産税・解体費用・買主ニーズを総合的に検討して判断します。
譲渡所得税は所有期間5年以下で39.63%、5年超で20.315%ですが、3,000万円特別控除等の節税特例を利用すると数百万〜数千万円単位で節税できる可能性があります。
複数の不動産会社(最低3社)に査定依頼し、国土交通省の不動産情報ライブラリや地価公示価格で自分でも相場を調べ、適正な売却価格を設定しましょう。境界の確定、土地の欠陥情報の開示、納税資金の確保を怠らないことが重要です。詳細は宅地建物取引士・税理士等の専門家にご相談ください。
