温泉付き一戸建てが1円で売られる背景
(1) 空き家問題と地方の人口減少
地方では高齢化と都市への人口流出により、空き家が増加しています。所有者が管理しきれない物件が「1円物件」として市場に出されることがあります。
(2) 維持費の負担と所有者の高齢化
不動産を所有すると、固定資産税、修繕費、管理費などの維持費が毎年発生します。高齢化により管理が困難になった所有者が、維持費の負担から解放されるため、象徴的な価格で手放すケースがあります。
(3) 温泉権や温泉設備の維持コストの高さ
温泉付き物件は、温泉権の更新費用や温泉設備の維持費が通常の物件よりも高額です。これらのコストを負担できない所有者が、早期に手放すために格安で販売することがあります。
(4) 自治体の空き家バンクと移住促進政策
自治体は空き家問題の解消と移住促進のため、空き家バンクを運営しています。みんなの0円物件などのマッチングサイトでも、無償譲渡物件が紹介されています。
1円物件のリアルなコストとリスク
この記事のポイント
- 「1円物件」でも実際には登記費用・修繕費用等で数百万円の初期費用がかかる
- 温泉付き物件は月5,000-10,000円の温泉使用料と10年ごとの温泉権更新費用が必要
- 贈与税・固定資産税の負担があり、「負動産」化するリスクがある
- 多くの格安物件は大規模修繕が必要で、居住可能にするまで数百万円の費用がかかる可能性がある
- 購入前に現地確認と専門家(建築士、宅建士等)への相談が必須
(1) 購入時の諸費用(登記費用・仲介手数料・税金)
「1円物件」という表示は物件本体の価格ですが、実際には以下の費用が発生します。
- 登記費用: 司法書士報酬、登録免許税等で数万円~数十万円
- 仲介手数料: 不動産会社を通す場合、法定上限額(物件価格×3%+6万円+消費税)または最低報酬が必要
- 贈与税: 評価額に応じて課税される可能性がある
- 固定資産税: 年間数万円~数十万円(物件により異なる)
実際の事例として、田舎暮らしの本Webによると、静岡県東伊豆町の1円物件では、登記費用・水道維持費・温泉メーター交換等で初期費用約113万円、修繕を含めると約200万円かかったとされています。
(2) リフォーム・修繕費用の見積もり
多くの格安物件は長期間空き家状態にあり、大規模な修繕が必要です。居住可能にするまで、以下のような費用がかかる可能性があります。
- 水回りの修繕(キッチン、浴室、トイレ)
- 屋根・外壁の補修
- 内装のリフォーム
- 電気・ガス・水道の設備更新
修繕費用は物件の状態により数十万円~数百万円、場合によっては数千万円に達することもあります。
(3) 温泉設備の点検・修繕費用
温泉付き物件は、通常の住宅にはない設備維持費が発生します。
- 温泉配管の点検・修繕
- ボイラー・給湯設備の交換
- 温泉メーターの交換
これらの費用は数十万円~数百万円になる場合があります。
(4) 契約条件(居住義務・改修義務・転売禁止等)
格安物件には、自治体や所有者が設定した契約条件がある場合があります。
- 居住義務: 一定期間以上の居住が条件
- 改修義務: 一定期間内に物件を改修することが条件
- 転売禁止: 一定期間内の転売が禁止
これらの条件を満たせない場合、契約違反となり、物件を返還する必要がある場合があります。契約前に詳細を確認してください。
温泉付き一戸建ての維持費と運営費用
(1) 温泉の維持費(引湯料・設備点検・ボイラー等)
温泉付き物件には、通常の住宅にはない維持費が発生します。
HOME'S「温泉付き物件の魅力と注意点」によると、温泉使用料は月5,000-10,000円が目安です。また、10年ごとに温泉権の更新費用が必要となります。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 温泉使用料 | 月5,000-10,000円 |
| 温泉権更新費用 | 10年ごとに数十万円~ |
| 設備点検・修繕 | 年間数万円~数十万円 |
(出典: HOME'S「温泉付き物件の魅力と注意点」、東急バケーションズ「温泉付き物件は面倒くさい?」)
(2) 固定資産税・都市計画税
不動産を所有すると、毎年1月1日時点の所有者に固定資産税が課されます。税率は固定資産税評価額の1.4%(標準税率)が目安です。都市計画税が課される場合は、合わせて1.7%程度になります。
(3) 水道光熱費(温泉のため高額になる可能性)
温泉付き物件は、温泉を沸かすためのボイラーや給湯設備の稼働により、通常の住宅よりも水道光熱費が高額になる可能性があります。
(4) 年間維持費の総額シミュレーション
HOME ALSOK研究所「別荘の維持費はいくらかかる?」によると、別荘の年間維持費は約65万円(月5.4万円)が相場とされています。温泉付き物件の場合、温泉維持費が加わるため、これ以上の費用がかかる可能性があります。
| 項目 | 年間費用目安 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 数万円~数十万円 |
| 温泉使用料 | 6-12万円 |
| 設備点検・修繕 | 数万円~数十万円 |
| 水道光熱費 | 数十万円 |
| 管理費・その他 | 数万円~数十万円 |
| 合計 | 数十万円~100万円以上 |
購入前に確認すべき法的・契約上の注意点
(1) 温泉権の確認(共同温泉か専用温泉か)
東急バケーションズ「温泉付き物件は面倒くさい?」によると、温泉権には以下の2種類があります。
- 引湯権: 温泉を引く権利
- 配湯権: 温泉を配る権利
共同温泉の場合は組合への加入・会費が必要で、専用温泉の場合は自己管理が必要です。契約前に温泉権の詳細を確認してください。
(2) 温泉法・建築基準法・旅館業法等の法的規制
温泉付き物件には、以下の法的規制が適用される場合があります。
- 温泉法: 温泉の掘削・利用に関する許可が必要
- 建築基準法: 建物の構造・設備が基準に適合している必要がある
- 旅館業法: 民宿・ゲストハウス等の運営には営業許可が必要
既存不適格建築物や違法建築の可能性がある場合、建て替えや増改築ができないことがあります。
(3) 契約条件の詳細確認(居住義務・改修義務・転売制限)
格安物件には、自治体や所有者が設定した契約条件がある場合があります。以下の点を契約前に確認してください。
- 居住義務の期間と内容
- 改修義務の範囲と期限
- 転売禁止の期間と条件
- 契約違反時のペナルティ
(4) 現地確認と専門家(弁護士・建築士)への相談
物件購入前には、必ず現地確認を行い、以下の専門家への相談を推奨します。
- 建築士: 建物の構造・設備の点検、修繕費用の見積もり
- 宅地建物取引士: 契約条件の確認、法的リスクの説明
- 弁護士: 契約書の内容確認、法的トラブルの相談
- 税理士: 贈与税・固定資産税の試算
実際の購入事例と成功・失敗のポイント
(1) 成功事例:移住・リモートワーク・民宿経営等
格安物件の購入が成功するケースとして、以下のようなパターンがあります。
- 移住先として活用: 地方移住を希望し、DIYでリフォームを楽しむ
- リモートワーク拠点: 静かな環境で仕事に集中できる拠点として活用
- 民宿・ゲストハウス経営: 温泉を活かした宿泊施設として収益化
これらのケースでは、長期的な視点で物件を活用し、地域コミュニティとの関係を構築することが成功の鍵となります。
(2) 失敗事例:維持費の想定外の高さ・リフォーム費用の増大
GKコンサルティング「ゼロ円物件がやばいと言われる理由」によると、0円/1円物件の購入で後悔する理由として、以下が挙げられています。
- 贈与税・固定資産税の負担: 評価額に応じた税金が毎年発生し、「負動産」化
- 再販が困難: 日本の法律では不動産の所有権放棄ができず、売却・寄付が困難
- 大規模修繕が必要: 居住可能にするまで数百万円~数千万円の費用がかかる
(3) 購入を検討すべき人・避けるべき人
購入を検討すべき人:
- 地方移住を真剣に考えている
- DIYや修繕作業を楽しめる
- 長期的な視点で物件を活用できる
- 地域コミュニティとの関係構築に前向き
避けるべき人:
- 短期的な投資目的
- 修繕費用・維持費の負担が難しい
- 遠方に住んでおり、定期的な管理が困難
- 契約条件(居住義務等)を満たせない
(4) 地域コミュニティとの関係構築
地方の格安物件を購入する場合、地域コミュニティとの関係構築が重要です。地域の慣習やルールを尊重し、積極的に地域活動に参加することで、円滑な生活が送れます。
まとめ:温泉付き一戸建て1円物件は買いか
温泉付き一戸建ての「1円物件」は、表面的な価格に惑わされず、総コスト(取得費、修繕費、維持費、温泉設備維持費)を正確に把握することが重要です。
実際には、登記費用・修繕費用等で数百万円の初期費用がかかり、年間維持費は数十万円~100万円以上になる可能性があります。温泉付き物件は、月5,000-10,000円の温泉使用料と10年ごとの温泉権更新費用が必要です。
購入を検討する場合は、現地確認と専門家(建築士、宅建士、弁護士、税理士等)への相談が必須です。契約条件(居住義務、改修義務、転売制限等)を詳細に確認し、長期的な視点で物件を活用できるか慎重に判断しましょう。
地方移住を真剣に考え、地域コミュニティとの関係構築に前向きな方にとっては、魅力的な選択肢となる可能性があります。


