国土地理院ハザードマップとは?基礎知識と重要性
不動産を購入・賃貸する際、「この物件は災害リスクが低いか」と不安に感じる方は少なくありません。災害リスクを事前に確認するためのツールが、国土地理院が提供するハザードマップです。
この記事では、国土地理院ハザードマップの見方、使い方、不動産購入時の活用法、注意点を、国土地理院ハザードマップポータルサイト等の公的機関の情報を元に解説します。
この記事のポイント
- ハザードマップポータルサイトで全国のハザードマップを無料で閲覧可能、PCとスマートフォン両対応
- 「重ねるハザードマップ」で複数災害を同時確認、「わがまちハザードマップ」で自治体作成マップを検索
- 色が濃いほど浸水深が深い・災害リスクが高いことを示し、避難場所・避難経路も確認可能
- 2020年8月28日から不動産取引時に水害ハザードマップでの物件所在地説明が義務化
- ハザードマップは想定リスクを示すもので、リスクゼロを保証しない。避難計画の準備が重要
(1) ハザードマップの定義と目的
ハザードマップとは、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したものです。避難場所・避難経路も記載されており、災害時の行動計画を立てるために活用されます。
(2) 対象となる災害の種類(洪水・内水・高潮・津波・土砂災害等)
ハザードマップが対象とする主な災害は以下の通りです。
| 災害種類 | 内容 |
|---|---|
| 洪水 | 河川の氾濫による浸水 |
| 内水 | 下水道等の排水能力を超える降雨による浸水 |
| 高潮 | 台風等による海面上昇と浸水 |
| 津波 | 地震による海面変動と浸水 |
| 土砂災害 | 土石流・がけ崩れ・地すべり |
(3) 国土地理院ハザードマップポータルサイトの概要
国土地理院が提供するハザードマップポータルサイトでは、全国のハザードマップを無料で閲覧できます。2025年3月17日に機能改善が行われ、利便性が向上しています。
(4) 不動産選びにおける重要性
不動産購入時にハザードマップを確認することで、災害リスクを事前に把握し、避難計画を立てることができます。2020年8月28日からは、宅建業者による水害ハザードマップの説明が義務化されています。
(出典: 国土交通省 不動産取引時における水害ハザードマップ説明義務化)
ハザードマップポータルサイトの使い方:重ねるハザードマップとわがまちハザードマップ
ハザードマップポータルサイトには、「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の2つの機能があります。
(1) 「重ねるハザードマップ」の機能:複数災害リスクの同時確認
「重ねるハザードマップ」は、国が提供する全国統一のマップで、複数の災害リスクを重ねて表示できます。洪水・内水・高潮・津波・土砂災害等を同時に確認でき、総合的な災害リスクを把握できます。
(2) 「わがまちハザードマップ」の機能:自治体作成マップの検索
「わがまちハザードマップ」は、各自治体が作成・公開しているハザードマップを検索できる機能です。地域の詳細情報(避難場所の収容人数、避難経路の詳細等)が含まれています。
(3) 住所入力・現在地検索の使い方
住所を入力するか、現在地検索機能を使うことで、災害リスクと取るべき行動が文字で表示されます。この機能はユニバーサルデザインに対応しており、視覚障害者等にも利用しやすくなっています。
(4) PCとスマートフォン両対応、操作マニュアル
ハザードマップポータルサイトは、PCとスマートフォンの両方から利用可能です。操作マニュアルもPDF形式で提供されています。
(出典: 国土地理院 ハザードマップポータルサイトを活用して災害に備えよう)
ハザードマップの見方:色の意味と確認すべきポイント
ハザードマップを読み解く際には、色の意味と確認すべきポイントを理解することが重要です。
(1) 色の濃淡の意味:濃い色ほど高リスク(浸水深が深い)
ハザードマップでは、色が濃いほど浸水深が深い・災害リスクが高いことを示します。一般的に、以下のような色分けが使用されます。
| 色 | 浸水深 | リスク |
|---|---|---|
| 濃い青・赤 | 3.0m以上 | 非常に高い |
| 中程度の青・赤 | 1.0〜3.0m | 高い |
| 薄い青・赤 | 0.5〜1.0m | 中程度 |
| 最も薄い色 | 0.5m未満 | 低い |
(2) 浸水想定区域の種類と深度
浸水想定区域は、洪水・内水・高潮・津波により浸水が想定される区域です。水防法に基づき指定され、浸水深が色分けで表示されます。
(3) 土砂災害警戒区域の表示
土砂災害警戒区域は、土砂災害のおそれがある区域で、土砂災害防止法に基づき都道府県が指定します。土石流・がけ崩れ・地すべりの種類別に表示されます。
(4) 避難場所・避難経路の確認方法
ハザードマップには、指定緊急避難場所や避難経路が記載されています。自宅・学校・勤務先から最寄りの避難場所までの経路を確認し、実際に歩いてみることをお勧めします。
(出典: 関西電力 ハザードマップの見方をわかりやすく解説)
不動産購入時のハザードマップ活用法:重要事項説明と確認義務
不動産を購入・賃貸する際には、ハザードマップを必ず確認しましょう。
(1) 2020年8月28日から宅建業法で説明義務化
2020年8月28日から、宅建業法により、不動産取引時に水害ハザードマップでの物件所在地の説明が義務化されました。宅建業者は、重要事項説明の際にハザードマップを提示し、物件の所在地を説明する必要があります。
(2) 売買・交換・賃貸すべてで説明が必要
説明義務は、売買・交換・賃貸のすべての取引で適用されます。浸水想定区域外の物件でも、所在地の表示は必須です。
(3) 購入前のチェックポイント:自宅・学校・勤務先周辺のリスク確認
不動産購入前には、以下のポイントを確認しましょう。
- 自宅周辺: 浸水想定区域・土砂災害警戒区域に該当するか
- 学校・勤務先周辺: 通学・通勤経路の災害リスク
- 避難場所: 最寄りの指定緊急避難場所の位置と収容人数
- 避難経路: 実際に歩いて確認、浸水時に通行可能か
(4) 国と自治体のマップ両方を確認する重要性
国のハザードマップポータルサイトと自治体作成のハザードマップでは、更新時期が異なる場合があります。両方を確認し、最新情報を把握することをお勧めします。
(出典: SUUMO ハザードマップとは?安心な住まいを買う、建てる、借りるために)
ハザードマップの限界と注意点:想定外リスクへの備え
ハザードマップは有用なツールですが、以下の限界と注意点があります。
(1) ハザードマップは想定災害を示すもので、リスクゼロを保証しない
ハザードマップは、想定される災害リスクを示すものです。リスクゼロを保証するものではなく、想定を超える災害が発生する可能性もあります。
(2) 浸水想定区域外でも水害が発生する可能性
浸水想定区域外でも、想定を超える降雨や河川氾濫により水害が発生する可能性があります。過信は禁物です。
(3) 記載のないリスク(地震、火災等)への対策
ハザードマップには、地震や火災等のリスクは記載されていません。総合的な防災対策が必要です。
(4) 避難計画の重要性と実際の避難経路確認
ハザードマップを確認したら、避難計画を立て、実際の避難経路を確認しましょう。家族で避難場所・避難方法を共有することが重要です。
まとめ:災害リスクを考慮した不動産選びのチェックリスト
国土地理院ハザードマップポータルサイトでは、全国のハザードマップを無料で閲覧できます。「重ねるハザードマップ」で複数災害を同時確認、「わがまちハザードマップ」で自治体作成マップを検索できます。
色が濃いほど浸水深が深い・災害リスクが高いことを示し、避難場所・避難経路も確認可能です。2020年8月28日から不動産取引時に水害ハザードマップでの物件所在地説明が義務化されています。
ハザードマップは想定リスクを示すもので、リスクゼロを保証しません。浸水想定区域外でも水害が発生する可能性はあり、避難計画の準備が重要です。不動産購入時は、自宅・学校・勤務先周辺のリスクを確認し、国と自治体のマップ両方を確認することをお勧めします。
災害リスクを考慮した不動産選びを進めるために、ハザードマップを活用し、信頼できる不動産会社や専門家(宅建士、防災士等)に相談しながら、納得のいく物件選びを進めてください。
