外国人が日本で住宅ローンを組む際の課題と現状(2024年)
日本に在住する外国人の方が住宅を購入する際、住宅ローンを組むことは可能ですが、日本人とは異なる審査条件や必要書類があります。
この記事では、外国人が日本で住宅ローンを組む際の審査条件、必要書類、対応金融機関をauじぶん銀行やSBI新生銀行の公式情報を元に解説します。
永住権の有無による審査基準の違いや、審査通過のためのポイントを理解できるようになります。
この記事のポイント
- 永住権ありの場合は日本人とほぼ同等の審査基準で審査される
- 永住権なしの場合は在留資格・在留期間・勤続年数が厳格に審査される
- 2024年時点で日本在住外国人は340万人超と過去最高を記録
- 自己資金を20%以上準備することで審査通過の可能性が高まる
- スルガ銀行、SBI新生銀行等が外国人向け住宅ローンを提供している
(1) 2024年時点で日本在住外国人は340万人超と過去最高
出入国在留管理庁のデータによると、2023年末時点で日本在住外国人は340万人超を記録し、過去最高に達しています。
外国人の住宅購入ニーズは年々増加しており、金融機関も外国人向け住宅ローン商品を拡充しています。スルガ銀行の「Dream-Jホームローン」等、外国人専用の住宅ローン商品も登場しています。
(2) 金融機関が懸念する帰国リスクと収入安定性
auじぶん銀行によると、金融機関が外国人向け住宅ローンで懸念するのは以下の2点です。
- 帰国リスク: 在留資格の期限切れや個人的理由により帰国する可能性
- 収入の安定性: 転職や帰国により返済が継続できなくなるリスク
これらのリスクを抑えるため、金融機関は在留資格の種類、在留期間の残存期間、勤続年数等を厳格に審査します。
外国人の住宅ローン審査条件:永住権の有無による違い
外国人の住宅ローン審査は、永住権の有無により大きく異なります。永住権ありの場合は日本人とほぼ同等の審査基準で審査されますが、永住権なしの場合は条件が厳しくなります。
(1) 永住権ありの場合:日本人とほぼ同等の審査基準
永住者の在留資格を持つ場合、在留期間の制限がなく、帰国リスクが低いと判断されます。そのため、日本人とほぼ同等の審査基準で審査されます。
永住権取得により、以下のメリットがあります。
- 金利が優遇される場合がある
- 自己資金比率が低くても審査通過の可能性がある
- 選択できる金融機関が増える
(2) 永住権なしの場合:在留資格・在留期間・勤続年数が重視される
永住権なしの場合、多くの金融機関では融資を行っていない現状があります。対応している金融機関でも、以下の条件が厳格に審査されます。
| 審査項目 | 一般的な基準 |
|---|---|
| 在留期間の残存期間 | 最低3年以上 |
| 勤続年数 | 6ヶ月~2年以上 |
| 年収要件 | 200万円~500万円以上 |
| 自己資金比率 | 20%以上推奨 |
SBI新生銀行によると、在留資格の種類と残存期間が重要な審査基準となります。
(3) 就労制限のない在留資格(定住者、日本人配偶者等)の優位性
以下の在留資格を持つ場合、就労制限がないため審査が有利になります。
- 定住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 特別永住者
これらの在留資格を持つ方は、収入の安定性が高いと判断され、審査通過の可能性が高まります。
(4) 永住権取得の要件(10年以上の在留、素行善良、生計能力等)
永住権を取得することで、住宅ローン審査が有利になります。永住権取得の要件は以下の通りです。
- 10年以上継続して日本に在留している(就労資格または居住資格で5年以上)
- 素行が善良である(法律を遵守し、納税義務を果たしている)
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有する
永住権取得の要件は法改正により変更される可能性があるため、出入国在留管理庁の最新情報を確認してください。
外国人が住宅ローンを組むために必要な書類と手続き
外国人が住宅ローンを組む際、日本人よりも多くの書類が必要になります。金融機関により異なりますが、以下が一般的な必要書類です。
(1) 身分証明書類(パスポート、在留カード、住民票等)
以下の身分証明書類が必要です。
- パスポート: 顔写真ページと在留資格のページ
- 在留カード: 在留資格、在留期間、就労制限の有無が記載
- 住民票: 現住所と世帯構成を証明
在留カードには在留資格の種類、在留期間の満了日が記載されており、これが審査の重要な判断材料となります。
(2) 収入証明書類(源泉徴収票、課税証明書、納税証明書等)
以下の収入証明書類が必要です。
- 源泉徴収票: 直近1〜3年分
- 課税証明書: 所得額と住民税額を証明
- 納税証明書: 納税義務を果たしていることを証明
リクルートによると、金融機関は納税証明書により、税務上の義務を果たしているかを確認します。
(3) 物件関連書類(売買契約書、重要事項説明書等)
以下の物件関連書類が必要です。
- 売買契約書: 購入物件の価格、条件を記載
- 重要事項説明書: 宅地建物取引士が交付する物件・契約条件の説明書
- 物件の登記簿謄本: 物件の所有権、抵当権等を証明
これらの書類は不動産会社が用意しますが、内容を理解できる日本語能力が必要です。
(4) 日本語での意思疎通能力の証明
金融機関の説明を理解し、契約内容に同意できる日本語能力が必須です。日本語能力試験(JLPT)N2以上の取得が推奨される場合があります。
通訳を介しての契約は認められないことが多いため、日本語能力に不安がある場合は、日本人配偶者や日本語が堪能な方に同席してもらうことが推奨されます。
外国人向け住宅ローンを提供する金融機関と商品の特徴
外国人向け住宅ローンを提供する金融機関は限られていますが、専用商品を用意している金融機関もあります。金融機関ごとに条件が異なるため、複数社に相談することが推奨されます。
(1) スルガ銀行「Dream-Jホームローン」等の外国人専用商品
スルガ銀行は、外国人専用の住宅ローン商品「Dream-Jホームローン」を提供しています。
主な特徴:
- 永住権なしでも申込可能
- 在留期間の残存期間が1年以上あれば申込可能(金融機関により異なる)
- 日本人配偶者が連帯保証人になることで審査が有利になる
(2) SBI新生銀行、イオン銀行等の対応金融機関
以下の金融機関が外国人向け住宅ローンに対応しています。
| 金融機関 | 永住権なし対応 | 主な条件 |
|---|---|---|
| スルガ銀行 | ○ | 在留期間1年以上、自己資金20%以上 |
| SBI新生銀行 | ○ | 年収200万円以上、勤続年数6ヶ月以上 |
| イオン銀行 | ○ | 永住権なしでも条件により対応 |
金融機関により条件が大きく異なるため、複数の金融機関に相談することが重要です。
(3) 金融機関ごとの条件の違い(年収要件、自己資金比率、在留期間等)
金融機関により以下の条件が異なります。
- 年収要件: 100万円~500万円以上
- 自己資金比率: 10%~30%以上
- 在留期間の残存期間: 1年~5年以上
- 勤続年数: 6ヶ月~3年以上
自分の条件に合った金融機関を見つけるため、事前に複数社の条件を比較することが推奨されます。
審査通過のためのポイントとリスク管理
外国人が住宅ローン審査に通過するためには、自己資金の準備、勤続年数の確保、返済負担率の管理が重要です。
(1) 自己資金を20%以上準備することで審査通過の可能性を高める
リクルートによると、自己資金を20%以上準備することで、永住権なしでも審査通過の可能性が高まります。
自己資金が多いほど、金融機関の貸倒リスクが低くなり、審査が有利になります。頭金として物件価格の20%以上を用意することが推奨されます。
(2) 勤続年数を6ヶ月~2年以上確保し、安定した収入基盤を示す
勤続年数が長いほど、収入の安定性が高いと判断されます。一般的に6ヶ月~2年以上の勤続年数が求められます。
転職を検討している場合は、住宅ローン申込後に転職することが推奨されます。
(3) 日本人配偶者が連帯保証人になることで審査が有利になる
日本人配偶者がいる場合、連帯保証人になることで審査通過の可能性が高まります。連帯保証人がいることで、金融機関の貸倒リスクが低くなります。
また、日本人の配偶者等の在留資格を持つ場合は、就労制限がないため審査が有利になります。
(4) 返済負担率を30~35%以内に抑える
返済負担率は、年収に占める年間返済額の割合です。一般的に30~35%以内が審査通過の基準とされています。
返済負担率 = 年間返済額 ÷ 税込年収 × 100
例えば、年収400万円、年間返済額120万円の場合、返済負担率は30%です。
他の借入(自動車ローン、カードローン等)がある場合、それらも年間返済額に含まれるため、返済負担率が高くなります。住宅ローン申込前に他の借入を完済することが推奨されます。
(5) 団体信用生命保険への加入と健康状態
多くの金融機関では、団体信用生命保険(団信)への加入が必須条件です。健康状態が悪い場合、団信審査で否決され、住宅ローンが組めない可能性があります。
健康状態に不安がある場合は、団信加入が任意のフラット35を検討してください。
まとめ:外国人が日本で住宅ローンを組むための次のステップ
外国人が日本で住宅ローンを組むことは可能ですが、永住権の有無により審査基準が大きく異なります。永住権ありの場合は日本人とほぼ同等の審査基準で審査されますが、永住権なしの場合は在留資格・在留期間・勤続年数が厳格に審査されます。
自己資金を20%以上準備し、勤続年数を6ヶ月~2年以上確保し、返済負担率を30~35%以内に抑えることで、審査通過の可能性が高まります。
スルガ銀行、SBI新生銀行等が外国人向け住宅ローンを提供していますが、金融機関により条件が大きく異なるため、複数の金融機関に相談することが推奨されます。ファイナンシャルプランナーや不動産会社に相談しながら、自分に合った住宅ローンを見つけましょう。
