共働き世帯の住宅ローン|年収目安と借入可能額
共働き世帯で住宅購入を検討する際、「世帯年収でいくらまで借りられるのか」「無理のない返済額はいくらか」と悩む方は多いのではないでしょうか。
この記事では、共働き世帯の住宅ローン借入可能額の目安、ペアローン・連帯債務・連帯保証の違い、世帯年収別のシミュレーション、注意点とリスクを解説します。住宅金融支援機構の調査データや金融機関の審査基準を元に、無理のない返済計画を立てるためのポイントをお伝えします。
この記事のポイント
- 共働き世帯の借入可能額は年収の5〜6倍が目安、返済負担率は手取り収入の25%以内が理想的
- ペアローン・連帯債務・連帯保証の3つの方法があり、住宅ローン控除や団信の適用条件が異なる
- 世帯年収600万円なら約3,000万円、800万円なら約4,000万円、1,000万円なら約5,000万円が借入可能額の目安
- 産休・育休・離婚等の収入減少リスクを考慮し、片方の収入だけでも返済可能な計画を立てることが重要
共働き世帯の借入可能額の目安(年収倍率・返済負担率)
共働き世帯の住宅ローン借入可能額を考える際、年収倍率と返済負担率の2つの指標が重要です。
(1) 年収の5〜6倍が目安(最大でも7倍以内)
住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査」によると、住宅ローンの年収倍率は平均で約6倍です。ただし、これはあくまで平均であり、無理のない返済を考えると年収の5〜6倍、最大でも7倍以内に抑えることが推奨されます。
世帯年収が800万円の場合、借入可能額の目安は4,000万円〜4,800万円となります。ただし、金融機関の審査基準や個々の家計状況により異なるため、詳細は金融機関にご確認ください。
(2) 返済負担率は手取り収入の25%以内が理想
返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合です。一般的に、手取り収入の25%以内が理想的とされています。
たとえば、世帯年収800万円(手取り約600万円)の場合、年間返済額は150万円以内(月々約12.5万円以内)が目安です。この基準を超えると、生活費や教育費、老後資金の確保が難しくなる可能性があります。
(3) パートナーの収入合算は慎重に(最大でも半分まで)
共働き世帯では、夫婦の収入を合算して借入額を増やすことができます。ただし、パートナーの手取り収入は最大でも半分までを合算するのが安全です。
たとえば、主たる債務者の年収が500万円、パートナーの年収が300万円の場合、合算する金額は150万円までとし、世帯年収を650万円として計算します。これは、産休・育休・介護等でパートナーの収入が一時的または長期的に減少するリスクを考慮したものです。
共働きで住宅ローンを組む3つの方法
共働き世帯が住宅ローンを組む方法には、ペアローン、連帯債務、連帯保証の3つがあります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解し、家計状況に合った方法を選びましょう。
(1) ペアローン:契約2本、夫婦とも住宅ローン控除・団信適用
ペアローンは、夫婦それぞれが住宅ローンを契約する方法です(契約2本)。
メリット:
- 夫婦とも住宅ローン控除を受けられる
- 夫婦とも団体信用生命保険(団信)に加入できる
- 借入可能額が増える
デメリット:
- 契約手数料が2倍かかる(ローン契約が2本のため)
- 片方が退職しても、もう一方のローンは残る
- 離婚時に共有名義の不動産の処分が複雑になる
(2) 連帯債務:契約1本、夫婦とも住宅ローン控除適用可能
連帯債務は、夫婦が連帯して1つの住宅ローンを借りる方法です(契約1本)。フラット35などで利用できます。
メリット:
- 夫婦とも住宅ローン控除を受けられる
- 契約手数料はペアローンより安い(契約1本)
- フラット35では夫婦とも団信に加入できる(デュエット)
デメリット:
- 取り扱い金融機関が限られる(フラット35等)
- 団信はフラット35のデュエット以外では主たる債務者のみ
(3) 連帯保証:債務者のみ住宅ローン控除・団信適用
連帯保証は、一方が債務者、もう一方が連帯保証人となる方法です。
メリット:
- 契約手数料が最も安い(契約1本、保証人は実質的に追加費用なし)
- 収入合算により借入可能額を増やせる
デメリット:
- 住宅ローン控除は債務者のみ
- 団信も債務者のみ
- 連帯保証人は債務を負うが、税制優遇や保険の恩恵がない
(4) 3つの方法の比較表(メリット・デメリット)
以下の表で3つの方法を比較します。
| 項目 | ペアローン | 連帯債務 | 連帯保証 |
|---|---|---|---|
| 契約数 | 2本 | 1本 | 1本 |
| 住宅ローン控除 | 夫婦とも適用 | 夫婦とも適用 | 債務者のみ |
| 団信 | 夫婦とも加入可能 | フラット35のみ夫婦とも加入可能 | 債務者のみ |
| 契約手数料 | 高い(2倍) | 中程度 | 安い |
| 取り扱い金融機関 | 多い | 限定的(フラット35等) | 多い |
(参考: リクルート「ペアローンと連帯保証と連帯債務」)
世帯年収別の借入可能額シミュレーション
世帯年収別に借入可能額をシミュレーションします。年収倍率5〜6倍を目安とし、返済負担率が手取り収入の25%以内に収まるかを確認しましょう。
(1) 世帯年収600万円の場合(借入可能額約3,000万円)
- 借入可能額: 約3,000万円(年収倍率5倍)
- 月々の返済額: 約8.3万円(金利1.5%、35年返済の場合)
- 年間返済額: 約100万円
- 手取り収入: 約450万円(税・社会保険控除後)
- 返済負担率: 約22%(手取り収入の範囲内)
このケースでは、返済負担率が25%以内に収まっており、無理のない返済計画と言えます。
(2) 世帯年収800万円の場合(借入可能額約4,000万円)
- 借入可能額: 約4,000万円(年収倍率5倍)
- 月々の返済額: 約11.1万円(金利1.5%、35年返済の場合)
- 年間返済額: 約133万円
- 手取り収入: 約600万円(税・社会保険控除後)
- 返済負担率: 約22%(手取り収入の範囲内)
世帯年収800万円の場合、4,000万円の借入が現実的な目安となります。
(3) 世帯年収1,000万円の場合(借入可能額約5,000万円)
- 借入可能額: 約5,000万円(年収倍率5倍)
- 月々の返済額: 約13.8万円(金利1.5%、35年返済の場合)
- 年間返済額: 約166万円
- 手取り収入: 約750万円(税・社会保険控除後)
- 返済負担率: 約22%(手取り収入の範囲内)
世帯年収1,000万円の場合、5,000万円の借入が目安です。ただし、教育費や老後資金も考慮し、余裕を持った計画を立てることが重要です。
共働きで住宅ローンを組む際の注意点とリスク
共働き世帯で住宅ローンを組む際には、以下のリスクを考慮する必要があります。
(1) 産休・育休での収入減少リスク
出産・育児により、一時的または長期的に収入が減少する可能性があります。産休・育休中は給付金が支給されますが、通常の給与より低くなるため、返済が厳しくなる場合があります。
対策: 片方の収入だけでも返済可能な計画を立てる、または緊急予備資金を確保しておく。
(2) 離婚時の共有名義問題と債務継続
ペアローンで離婚した場合、共有名義の不動産の処分や債務の継続が問題になります。売却しても残債が残る場合、夫婦で分担する必要があります。
対策: 事前に離婚時の取り決めを明確にしておく、または連帯債務・連帯保証を検討する。
(3) 片方が死亡してももう一方のローンは残る
ペアローンでは、片方が死亡して団信により債務が免除されても、もう一方のローンは残ります。遺族が返済を続ける必要があるため、注意が必要です。
対策: 収入保障保険や生命保険で補填する、または連帯債務(フラット35のデュエット)を検討する。
(4) ローン肩代わりによる贈与税リスク
夫婦の一方がローンを肩代わりした場合、贈与税がかかる可能性があります。たとえば、夫が妻の分のローンを代わりに返済した場合、その金額が年間110万円を超えると贈与税の対象となります。
対策: 税理士に相談し、贈与税の申告が必要かどうかを確認する。
まとめ:無理のない返済計画を立てるためのポイント
共働き世帯の住宅ローン借入可能額は、年収の5〜6倍が目安、返済負担率は手取り収入の25%以内が理想的です。ペアローン・連帯債務・連帯保証の3つの方法があり、住宅ローン控除や団信の適用条件が異なるため、家計状況に合った方法を選びましょう。
産休・育休・離婚等の収入減少リスクを考慮し、片方の収入だけでも返済可能な計画を立てることが重要です。また、金融機関により審査基準が異なるため、複数の金融機関に相談することをおすすめします。
詳細な返済計画や税金の計算については、ファイナンシャルプランナーや税理士への相談を推奨します。無理のない返済計画を立て、安心して住宅購入を進めましょう。
